三浦しらとり園のモニタリング結果の報告について 資料7 県は、県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)における利用者支援に対する県の関与について、その実態を自ら検証し、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の意見を踏まえ、県立施設に対して行う運営指導やモニタリングについて改善を図っている。以下の日程により、芹が谷やまゆり園のモニタリングを実施したところであり、この取組が持続的かつ適切に行われているか、外部評価を受けるため、神奈川県障害者施策審議会に報告する。 ○ 定期モニタリングの充実強化 【概要】 ・ 県が県立施設に対して実施する定期モニタリングについて、令和2年度は利用者の居室や支援場面に入り支援内容を直接確認する等の改善を図った。 ・ 令和3年度からは、県立直営施設も含め、各県立施設による自己点検を実施したうえで、集中的なモニタリングを実施する等、更なる充実強化を行っている。 ・ また、モニタリングは、障害サービス課職員に他の県立施設の職員が加わった「当事者目線の支援サポートチーム」により実施し、現場職員の当事者目線の支援への理解や実践につなげ、県立施設全体の底上げを図る。 【実施スケジュール】 実施施設 実施時期 障害者施策審議会への報告 中井やまゆり園     令和3年7月 令和3年9月(報告済み) 津久井やまゆり園 (かながわ共同会) 令和4年1月 令和4年9月(報告済み) 芹が谷やまゆり園 (かながわ共同会) 令和4年8月 令和4年11月(報告済み) 愛名やまゆり園 (かながわ共同会) 令和4年10月 今回の同審議会で報告 三浦しらとり園 (清和会)     令和4年12月 今回の同審議会で報告 ※ 他の県立施設については令和5年度以降に実施予定 三浦しらとり園のモニタリング結果について 当事者目線の支援サポートチームによるモニタリング実施要領に基づき、三浦しらとり園(以下、「園」という。)のモニタリングを次のとおり実施した。 1 実施日 (1) 現地調査 令和4年12月6日(火)、12月7日(水)、12月8日(木)、12月14日(水) (2) 幹部ヒアリング 令和5年1月13日(金)にオンラインにより実施 2 参加者(当事者目線の支援サポートチーム) (1) 障害サービス課運営指導グループ 南部副主幹、新熊主事、落合主事 (2) 当事者目線の支援推進マネージャー 金子地域支援課長(中井やまゆり園)、加藤生活三課長(厚木精華園)、長尾地域サービス課長(愛名やまゆり園)、細貝ゆのはな寮長(愛名やまゆり園)、宮田地域サービス課主任(津久井やまゆり園)広瀬地域支援課活動支援班長(三浦しらとり園)、今岡8寮長(三浦しらとり園)、山本支援課長(七沢学園) 3 実施内容 (1) 自己点検 介護施設を参考に作成した評価表や国の手引きに定める障害者虐待防止 チェックリストにより、園が自己点検を実施した。 ア 施設支援自己評価表による自己点検 ※ 介護施設におけるユニットケアの評価を参考に作成 イ 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストによる自己点検 ※ 障害者虐待防止の手引き(社会福祉法人全国社会福祉協議会「障害者の虐待防止に関する検討委員会」平成23年3月版)を使用 (2) 現地調査 「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」からの指摘を踏まえ、施設内ラウンドを中心に、生活環境や利用者支援の状況を確認した。 また、身体拘束廃止の実践報告、医療的ケアが必要である利用者の受入れについての実践報告、令和3年度の園の取組についての動画視聴、見守りカメラ設置に係る利用者への説明資料の共有などを行った。 ア 障害サービス課運営指導グループによるモニタリング(2日間) (ア) 施設内ラウンド及び職員ヒアリング 〇 生活環境及び利用者支援の状況の調査 (イ) 書類調査 〇 身体拘束廃止や権利擁護に関する文書 〇 利用者の個人記録など イ 当事者目線の支援サポートチームによるモニタリング(2日間) (ア) 施設内ラウンド及び職員ヒアリング ・生活環境及び利用者支援の状況の調査 (イ) 園からの取組の報告等   ・身体拘束廃止の実践報告会 ・医療的ケアが必要である利用者の受入れについての実践報告会 ・令和3年度の園の取組についての動画視聴 ・見守りカメラ設置に係る利用者への説明資料の共有 ウ 幹部職員へのヒアリング   園長、支援部長にヒアリングを実施した。 4 実施結果 (1) 自己点検の結果 ○ 施設支援自己評価表 施設支援自己評価表の「設備面への配慮」、「取組体制」、「個別支援の実践」の各項目を点検した。寮(全8寮)ごとに自己評価を実施し、平均は87.6/108点であった。 園全体の傾向として、建物の老朽化や多床室を中心とした居住環境などの影響から、環境整備やプライバシーの配慮などに関する設問が低い評価点となっていた。 ○ 施設・地域における障害者虐待防止チェックリスト 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストの「規定などの整備」、「職員への研修」、「外部からのチェック」、「体制の整備」の各項目を点検し、概ね実施できている評価であったが、個別支援計画作成会議への利用者本人の参加、福祉サービス第三者評価事業の定期受審等が実施できていないという結果であった。 (2) 施設内ラウンド及び職員ヒアリングの結果 ア 生活環境 〇 児童寮では利用者のニーズに合わせWi-Fiが設置されていることを確認した。 〇 日中であっても日が入らず、廊下の照明の光量が不十分な寮があった。 〇 一部、鍵を所持している利用者がいるが、多床室を個室化した居室では、手前の部屋の利用者が施錠してしまうと奥の部屋の利用者が自室に入れなくなってしまう作りになっていた。 〇 4人部屋に2つの壁を増設し、3部屋の個室を作ることで、利用者一人ひとりが一定のスペースを確保できる居室を確認した。 〇 食堂には支援員が自作した木枠のパネルを設置し、新型コロナウイルスの感染防止対策に努めている寮を確認した。 〇 複数の寮で、壁や扉の穴や壁の剥がれを確認した。 〇 日中活動の作業スペースは、支援員自ら壁塗りを行うなどし、環境整備に努めていた。 〇 一部の寮では、多くの居室にポータブルトイレを設置していた。 〇 清潔感があり、季節に合わせた華やかな装飾が施されている寮と清掃が行き届いておらず、装飾のない殺風景な印象の寮が混在していた。 〇 デイルームの壁一帯にデザイン性の高い緩衝材が施され、利用者の安全への配慮とともに老朽化した壁面をカバーする工夫がされていた。 〇 トイレにオムツがむき出しに置いてある寮を確認した。 〇 一部のシャワールームは、老朽化が進み、汚れが目立っていた。 〇 男性寮を中心に各利用者の居室内の高い場所を中心にホコリがたまっている箇所が散見された。 〇 洗面所の入り口の扉にカギがかかっており、利用者が自由に出入りできない寮を確認した。   イ 利用者支援 〇 季節に合わせた行事や余暇に力を入れていた。 〇 利用者に移動を促す際に袖を引いて対応する支援員を確認した。 〇 食事支援では、立ちながらの介助、下を向いた利用者の顔を持ち上げる行為、エプロンに落ちた食事をかき集めてお皿に戻す行為などの気にかかる支援を確認した。 〇 日中活動には、寮の専任職員だけでなく、担当職員も積極的に参加していることを確認した。 〇 日中活動では、i-phoneの解体作業を試行するなど、先進的な受注作業を取り入れていることを確認した。 ○ 外部事業所に通所している入所利用者はいなかった。 ウ その他 〇 園の理学療法士は、同園の元支援員であったことから、支援員の目線を持ちながら利用者の機能訓練を担っていることを確認した。 〇 心理職は利用者支援だけでなく、職員の相談にのるなどのフォローを行っていることを確認した。 〇 食事メニューは全利用者共通であるが、児童が登校している昼食時には高齢者向けの薄味、夕食は児童が好む濃い味を提供するなど、一日の中でバランスをとる工夫を行っていた。 〇 摂食嚥下チーム(歯科医師・衛生士・理学療法士・管理栄養士・生活支援員などで構成)は、各専門職の観点から利用者の食事の様子を観察し、介助の方法、姿勢、口腔ケア、食事形態の検討などを行っていることを確認した。 (3) 書類調査の結果 過去に身体拘束を実施していた利用者の身体拘束実施記録を確認したところ、適切に記載されていたが、個別支援計画への記載が確認できなかった。 (4)園からの取組の報告等 (ア) 身体拘束廃止の実践報告会 過去に居室施錠とホールディングを実施していた利用者に対して、強度行動障害担当や寮職員がチームアプローチを行った。TEACCHに基づいたアセスメントを行うなどの専門的な視点や、「利用者の生活をより豊かにするにはどうしたらよいか」という視点の融合により廃止を実現したことを確認した。 (イ) 医療的ケアが必要である利用者の受入れについての実践報告会 園では、「胃ろう」のある利用者の支援経験がなかったが、入所者が胃ろうを造設することになったことを機に、他の施設への情報収集や研修受講などの準備を整え、受入れを実現したことを確認した。 (ウ) 令和3年度の園の取組についての動画視聴 園長が園の1年間を振り返る動画を作成しており、利用者・家族・園職員が視聴する機会を設けている。利用者の生活の様子や職員の支援の様子を確認した。 (エ) 見守りカメラ設置に係る利用者への説明資料 利用者自治会の場を活用し、「当事者目線の障がい福祉実現宣言」、「園の身体拘束の廃止」の報告などと併せて、見守りカメラ設置の意義を利用者に向けて説明したことを確認した。 (5) 幹部職員へのヒアリング結果 ア 現地調査時の指摘(確認)事項への対応について ○ 食事支援では、すでに寮会議でも共有しており、第三者から見て不適切と感じられる支援はしないよう徹底した。 ○ 居室を縦に区切ることについては、利用者からも好評であり、よい工夫ができたと自負している。多床室の改善は引き続き務めたい。 ○ 居室内のポータブルトイレについては、検討の上、解消できるものから対応していきたい。 ○ 多床室の分割については、現地調査実施後に完成したところがあるため、是非、ご確認いただきたい。 ○ 各所の修繕については、早急に対応するよう指示しているが、予算の関係があるため、優先順位をつけて対応していく。 ○ 個別支援計画に身体拘束実施に関する記載がなかったという指摘については改めて確認し、今後は適切な記載となるよう対応したい。 イ 摂食嚥下チームについて ○ 摂食嚥下チームは歯科医師、歯科衛生士、理学療法士、管理栄養士、現場支援者で構成されている。支援部長も専門家と現場の調整役として入っていた時期があった。 ○ 支援員にも専門家の一人として自覚を持ってもらう狙いもあった。 ○ コロナ禍で全面実施できてはいないが、実際に食事場面に出向いて モニタリングする機会も作っている。 ○ 食べやすいメニューなどを実際の食事風景を見て検討している。 ○ 支援員は、チームのメンバーに食事支援を直接見てもらうことで、自分の支援が正しいという自信をもつことができている。 ウ 令和3年度の園の取組の動画について ○ 毎年、同様の動画を作成している。人権尊重や虐待防止という言葉だけでは足りないと感じており、思い遣りや優しい気持ちが大切である。 ○ 黒岩知事から「温かみのある職場に」という年頭の言葉があったが、そこには思い遣りが必要だと思う。 ○ 利用者・支援員ともに、感動の体験が非常に重要であり、そのようなことを動画で表現したい。 5 総括 (1) 生活環境の整備 〇 当モニタリングの現地調査でサポートチームから指摘したことについて、速やかに対応する姿勢があった。 ○ 支援員が修繕や環境整備に積極的に努めていることを確認した。 〇 利用者のプライバシーの配慮のため、多床室を区切り、個別空間を作ることに努めていた。 【課題】 ○ 建物の築年数が約40年を経過し、老朽化が進み、多くの修繕箇所を抱えており、修繕が追い付いていない。 ○ 個室化のための改修を順次行っているが、不便さを感じるであろう居室が多いため、引き続き改善に努めてもらいたい。 〇 寮ごとに生活環境や日常の支援に差がみられたことから、職員は所属する寮と他の寮を見比べる機会を作ることが有効であると考える。 (2) 利用者支援 〇 当モニタリングの現地調査でサポートチームから指摘したことについて、速やかに対応する姿勢があった。 〇 「その利用者の生活をより豊かにする」ということを目標として、チームアプローチにより、身体拘束を廃止することができた事例については、当事者目線の支援の実践として評価できる。 〇 身体拘束の実施件数は、令和2年12月1日時点で1件であったが、令和4年12月1日時点では、廃止(0件)となった。 ○ 摂食嚥下チームの取組は、利用者の豊かな生活の実現や安心・安全を守る意味でも非常に重要な取組であることを確認した。 【課題】 〇 食事支援のうち、介助の仕方については、摂食嚥下チームの取組による安全性の面ではなく、支援員が提供するサービスとしての適切性などの視点からも評価し、見直していく必要がある。 ○ 日常全般の利用者への接し方についても、粗雑に見えてしまう行為がみられたことから、普段から丁寧な接し方を意識し、職員間で振り返りの機会を設けることが必要である。 (3) 地域生活移行に向けた取組 ○ 園内の日中活動には利用者の生活支援を担う寮職員も積極的に参加し、充実に努めていることを確認した。 【課題】 ○ 地域生活移行が進んでいない状況を確認した。今後は、意思決定支援を推進し、外部の生活介護事業所やグループホームの体験利用などから進めていくなど、積極的に取り組んでいくことが必要である。