(資料5) (表紙) 中井やまゆり園の支援の改善に向けた取組状況 令和5年3月 障害サービス課 (1ページ) 1 中井やまゆり園の概要 所在地 神奈川県足柄上郡中井町 種類 知的障がい者を対象とする入所施設(障害者支援施設) 開設 昭和47年(平成14年再整備) 運営 県直営 定員 122名(現員89名) 平均障害支援区分 5.7 平均年齢 46歳(平均入所18年) 特徴 強度行動障がい対策の中核施設 (2ページ) 2 県立施設の支援の検証 (1) 経緯 令和2年 7月 利用者目線の支援推進検討部会を設置(障がい当事者、学識者、施設関係者、家族関係者で構成) →長時間の身体拘束が確認され、身体拘束が重大な人権侵害であるという認識の不足や施設の閉鎖性等を指摘 令和2年 12月 身体拘束ゼロの実現を目指し、身体拘束実施状況の公表を開始 (3ページ) 令和3年 9月 支援改革プロジェクトチームを設置 (障がい当事者、学識者、施設関係者、医療関係者、県で構成) →身体拘束について当事者目線による改善を議論  <令和2年12月>61件 → <令和4年10月現在>13件 →令和元年7月に発生した骨折事案の再調査の中で、事実であれば不適切な支援と思われる情報を複数把握 令和4年 3月 外部調査委員会を設置 (支援改革プロジェクトチームの外部委員で構成) →情報を把握した全91件を対象とする調査結果を令和4年9月に公表 (4ページ) 3 中井やまゆり園外部調査委員会(令和4年9月) 県が把握した91件の情報のうち、25件が「虐待が疑われる事案」と判断 →11自治体に虐待通報を実施 虐待が疑われる事案例 ・ 居室の天井が便まみれとなっている環境で生活をさせていた。 ・ 肛門内にナットが入っていた。 ・ 居室に閉じ込め、施錠したまま放っておいた。 虐待の背景の考察 ・ 不適切な対応を受けた利用者の多くは、地域での生活が難しくなり、中井やまゆり園という閉鎖的な環境の中での不適切な支援が常態化した。 ・ 利用者が人間らしい生活を送れなくなっており、支援職員も利用者を人間として見られなくなっている。 ・ 人権意識の大きな欠如が生じている。 →利用者・職員・施設が、地域から孤立 (5ページ) 4 改善策(現在の取組) (1) 支援の改善 ア 民間の支援改善アドバイザーによる当事者目線の支援の実践指導 ・ 利用者の再アセスメント、成育歴の再調査 ・ 身体拘束の削減 イ 障がい当事者との意見交換(人権研修) ウ 日中活動の充実 ・ 民間の地域共生コーディネーターによる日中活動の場の開拓 ・ 秦野駅前への日中活動拠点の設置(公園等の環境整備活動) ・ 施設内での日中活動の導入(手帳・カレンダーの解体・ボールペン組立等) エ 生活環境の改善 ・ トイレ・居室の修繕や見守りカメラの増設 (2) マネジメントの改善・風通しのよい職場づくり ・ 幹部職員の「ラウンド強化」「人手が足りない場面への応援(利用者への食事支援等)」など (6ページ) (3) 県本庁の関与の強化 ・ 本庁幹部職員が園に常駐し、園とともに運営体制改善策の検討 ・ 監査の改善・強化、県本庁・他の県立施設職員のサポートチームによるモニタリング (4) 地域のネットワークの構築・県単補助金の活用 ・ 当事者目線の障害福祉推進事業コーディネーターによる地域の事業所とのネットワーク構築 ・ 利用者が外部事業所を体験利用する場合などに補助金を交付  ■当事者目線の障害福祉推進事業費補助   県立施設入所者の地域生活移行のための、民間事業所へのかかり増し経費の補助   <日中活動・体験>外部事業所への日中活動受入費、GHへの体験受入費   <地域生活移行支援>緊急短期受入枠費、在宅支援費  ■県立障害福祉施設利用者移行促進事業費補助   県立施設入所者の受け入れに伴い加配を行った民間事業所への人件費補助・設備費補助 (7ページ) 障がい当事者と園職員との意見交換(令和4年10月26日・31日) 《障がい当事者から》 〇 利用者の表情はよかった。よくなっていると思う。 〇 自分もイライラすることがあるが、職員の関り方によって気持ちは変わる。 〇 あんなに狭いところに住むのはきつい。 《園職員から》 〇 当事者の視点の率直な意見がとても勉強になった。 〇 あらためて自分たちの支援を振返る機会となった。 (8ページ) 地域のネットワークの構築  令和4年度は、「(社福)風祭の森」に「当事者目線の障害福祉推進事業コーディネーター」を委託し、県西・湘南西部圏域を中心とした関係機関に事業説明などを行い、取組への参画を促進してきた。  コーディネーターの協力を得ながら、下図@の役割により右図Aのようなネットワーク構築の実現を目指している。 @コーディネーターの役割 支給決定自治体・相談支援事業所と、中井やまゆり園との間に入り、サポートを行う等、地域との調整などを担うことで、本人の望む暮らしの実現が達成される。 Aネットワーク会議のイメージ 中井やまゆり園の利用者が「私は、○○な生活がしたい!」と思った場合、コーディネーター・中井やまゆり園・障害サービス課を筆頭に、市町村CWや相談支援専門員が、A法人グループホーム・B法人生活介護事業所・C法人生活介護事業所・D法人就B事業所・E法人生活介護事業所を招集し、ネットワーク会議を行い、利用者の望む暮らしを実現する。 (9ページ) 対外的な説明(令和4年11月26日 中井やまゆり園報告会) 出席者: 関係団体・民間施設等・市町村職員、利用者家族など73名、 県議会議員2名、報道6社 《アンケートの主な意見》 〇 とても前向きな報告を聞くことができて有意義だった。(利用者家族) 〇 職員が変化している様子を感じることができた。(民間施設) 〇 利用者主体の考え方で改善を試みていることは素晴らしい。(関係団体) 〇 県立施設職員は異動があるため、しっかり引継ぎと教育を行わないと、元に戻る可能性がある。(関係団体) 〇 表面的な改善は長続きしない。自閉症スペクトラムの特性を根幹から理解し、科学的なエビデンスのある取組を行ってもらいたい。(民間事業所) 〇 園の立地が地域に出る機会を狭めているように感じる。(民間施設) (10ページ) 民間の支援改善アドバイザーによる当事者目線の支援の実践指導 「環境が変われば、利用者は変わる」 →具体的には…日中活動を充実するなど、利用者の生活を整える 園内 民間企業と連携したリサイクル業務(古い手帳の解体) 園外 自治体の公園里親制度と連携した花壇の手入れ、就労体験 (11ページ) 5 当事者目線の障がい福祉の実現 神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例 〜ともに生きる社会を目指して〜 (1)前文  平成28年7月26日、県立障害者支援施設である津久井やまゆり園において、19名の生命が奪われるという大変痛ましい事件が発生した。この事件は、障害者やその家族のみならず、多くの県民に言いようもない衝撃と不安を与えた。  県は、このような事件が二度と繰り返されないよう、平成28年10月、県議会の議決を経て「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定し、これを、ともに生きる社会の実現を目指す県政の基本的な理念とした。 (12ページ)  県は、津久井やまゆり園の再生を進める過程において、利用者に対するより良い支援のあり方を模索してきた。そうしたところ、これまでは利用者の安全を優先するという理由で管理的な支援が行われてきたが、本人の意思を尊重し、本人が望む支援を行うためには、当事者本人の目線に立たなくてはならないことに改めて気付いた。  そして、障害者との対話を重ね、その思いに寄り添うために全力を注いだ。その結果、障害者一人一人の心の声に耳を傾け、支援者や周りの人が工夫しながら支援することが、障害者のみならず障害者に関わる人々の喜びにつながり、その実践こそが、お互いの心が輝く当事者目線の障害福祉であるとの考えに至った。    そこで、令和3年11月、「当事者目線の障がい福祉実現宣言」を発信し、これまでの障害福祉のあり方を見直し、当事者目線の障害福祉に転換することを誓った。 (13ページ)  顧みると、我が国においては、昭和56年の国際障害者年を転機として、ノーマライゼーションの理念の下、全ての障害者が自立と社会参加をすることができるよう環境の整備が進められてきた。また、障害者基本法の改正、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の制定等の国内法の整備が行われ、平成26年には、障害者の権利に関する条約が批准された。しかしながら、全ての障害者が自分らしく暮らしていくことができる社会環境の整備は、いまだ道半ばである。  私たちは、この現状に真摯に向き合い、誰もが安心していきいきと暮らすことのできる地域共生社会の実現を目指して、障害者も含めた県民、事業者、県等が互いに連携し、一体となった取組を進めるべく、普遍的な仕組みを構築していかなければならない。 このような認識の下、当事者目線の障害福祉の推進が、「ともに生きる社会かながわ憲章」の実現につながるものと確信し、その基本となる理念や原則を明らかにした、当事者目線の障害福祉を進めていくための基本的な規範として、ここに、この条例を制定する。 (14ページ) (2) 条例の基本理念 当事者目線の障がい福祉」を進めるときは、以下の点を大事にします。 @ すべての県民が、人として大切にされること。自分の生き方を自分で決められること。   自分が大切にしている考え方を大事にされること。 A 障がいのある人が、自分のことは自分で決められるようにすること。 B 障がいのある人が、住みたい場所で、自分らしく暮らすことができるようにすること。 C 障がいのある人の性別、年齢、障がいの様子、生活に合わせて、   周りの人たちが協力し、本人が活躍できるようにすること。 D 障がいのある人だけではなく、周りの人たちも、うれしいと感じられること。 E すべての県民が、障がいや障がいのある人のことをよく理解すること。   地域に住んでいる人がお互いに支え合いながら、社会全体で取り組むこと。 (15ページ) 6 当事者目線の障がい福祉の実現 中井やまゆり園が、通過型施設として地域生活移行を進めることにより、地域での暮らしを実現し、条例の目指す「当事者目線の障がい福祉」を具現化していく 《通過型施設》中井やまゆり園 地域生活移行 緊急一時入所 地域での暮らし 家族・友達・支援者(仲間との居場所) 就労・ボランティア活動 教育・生涯学習 交通 国際交流 防災・防犯 スポーツ 文化・芸術 住居 医療 買い物・旅行 公共施設 地域で当たり前の暮らしができるようにするための環境整備も必要! (16ページ) 7 伝えたいこと 〇 県は、すべての利用者が、地域で多くの人とのつながりを大切にしながら、  一人ひとりの人生を豊かなものにしていけるよう、園と一体となって取組を進め、  県立直営の中井やまゆり園が先頭を切って、通過型施設を目指していきます。 〇 こうした取組は、県や園だけでなく、皆様のご理解とご協力が不可欠です。 〇 今後、モニタリング会議等では、園の取組やご本人の暮らしの様子を見ていただき、  ご本人、支給決定市町村、相談支援事業所、ご家族・後見人とともに、ご本人  の暮らしが豊かになる取組を一緒に考えながら、チームで支援を進めていきたい  と考えています。 (17ページ) 〇 そのためには、豊かなご本人の暮らしを視野に入れた、外部事業所の利用やGH  体験利用等が不可欠であるため、サービス等利用計画への反映や柔軟な支給決定につ  いて、ご協力をお願いします。 〇 さらに、こうした取組を、すべての県立施設が率先して実践し、当事者目線の  障がい福祉の実現に向けて、取組を進めていきます。