中井やまゆり園における利用者支援について 資料6 中井やまゆり園については、令和元年7月に発生した骨折事案を再調査する中で、「事実であれば不適切な支援と思われる情報」を複数把握した。 把握した情報の調査を行うため、令和4年3月3日に「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会」(以下「外部調査委員会」という。)を設置した。同年4月26日に調査結果(第一次)を公表し、9月5日に調査結果報告書を公表したところである。また、外部調査委員会から虐待が疑われると判断された25事案について、関係自治体(11自治体)に関係資料を送付するなどし、虐待通報を行ってきたところである。調査結果や今後の対応について、報告する。 (1) 外部調査委員会の調査結果について ア これまでの開催状況 〔第1回〕開催日 令和4年3月11日(金) 議 題 ・ 調査の進め方の確認 ・ 個別事案の意見交換 〔第2回〕開催日 令和4年3月25日(金) 議 題 ・ 個別事案の意見交換 〔第3回〕開催日 令和4年4月11日(月) 議 題 ・ 個別事案の意見交換 〔第4回〕開催日 令和4年4月26日(火) 議 題 ・ 個別事案の意見交換 ・ 調査結果(第一次)のとりまとめ 〔第5回〕開催日 令和4年6月7日(火) 議 題 ・ 調査の進め方の確認 ・ 個別事案の意見交換 〔第6回〕開催日 令和4年7月8日(金)〜20日(水)<書面開催> 議 題 ・ 個別事案の意見交換 〔第7回〕開催日 令和4年8月2日(火) 議 題 ・ 個別事案の意見交換 ・ 調査結果報告書(案)の議論 〔第8回〕開催日 令和4年9月1日(木) 議 題 ・ 個別事案の意見交換 ・ 調査結果報告書のとりまとめ イ 調査方法     支援記録等の書面調査、関係職員及び利用者等へのヒアリング、外部調査委員及び本庁職員による実地調査、御家族へのアンケート ウ 調査時期 令和4年3月から同年9月まで エ ヒアリング人数 131名(延べ213名) オ 調査対象とした事案の状況(91件) (ア) 虐待が疑われる事案(25件) 県が把握した情報の一部又は全部が事実であったことから、障害者虐待防止法に規定される虐待が疑われ、県として関係自治体に虐待通報した。 (イ) 不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき事案(12件) 県が把握した情報の一部又は全部が事実であるが、外部調査委員会では、虐待が疑われる事案とするか、不適切な支援等とするか、判断が難しかった。 (ウ) 事実の特定が困難な事案(17件) 県が把握した情報が推測や伝聞による情報で、書面調査やヒアリング調査でも事実関係が明らかにならない等、事実が特定できなかった。 こうした事案の中には、園が把握した時点で徹底的に調査を行っていれば、事実究明ができていた可能性がある事案もあり、当時の園の対応が不十分だった。  (エ) 事実が判然としていない事案(24件) 7月以降に把握した事案などは、現時点で情報提供者へヒアリングができていない等、調査を継続する必要がある。 (オ) 事実ではなかった事案(8件) 県が把握した情報が情報提供者の事実誤認であったり、ヒアリング調査で異なる証言を複数確認し、情報の信憑性が低いと考えられたり、県が把握した情報は事実ではなかったと判断した。 (カ) 過去の虐待通報事案で通報・公表済等の事案(5件) 令和元年11月に職員が利用者に水をかけたとして虐待認定された事案等、過去に虐待通報や職員の処分、県としての公表等を行っていた事案であった。 カ 調査結果に関する外部調査委員会の考察<抜粋>    〇 人権意識の大きな欠如が生じている。 〇 利用者が人間らしい生活を送れなくなっており、また、支援職員も利用者を人間として見られなくなっている状況である。以下、具体例を列挙する。例えば、     ・ 動かないからといって台車で運ぶという行為が、なんのためらいもなく行われている。     ・ 食事の提供について、監視という形で提供しており、人間らしい食事ではない。     ・ 利用者が使うトイレはあまりに汚いので、職員が使うことはなく、職員が使わないようなトイレを利用者に使わせて、トイレを使う場所を利用者と職員とで分けている。     ・ 天井に便が付いていても、それを放置している、施設全体をきれいにしていない。 〇 不適切な対応を受けた利用者の多くは、民間の施設での支援・対応が困難という理由で、県立施設で受け入れてきた背景があるが、受け入れ段階で、地域との連携が途絶することとなり、その結果、閉鎖的な環境の中での不適切な支援が、常態化することとなった。 〇 支援や対応が難しい利用者が入所する寮では、利用者の支援について職員同士で話し合う環境になく、職員間での対立や風通しの悪さなど、支援職員同士の人間関係の問題があった。実態を把握していた幹部職員は、適切に対応ができておらず、利用者の実態把握を踏まえることさえもせずに、管理職の行うべき、マネジメント機能も失われていた。 〇 総じて、利用者の支援についての支援計画書及び日常の記録、園内の会議など、すべての面で、種々の課題を繰り返して考えるという、アセスメントが不足している。 〇 なにより、重要なこととして、可能な限り、利用者本人が望む生活を組み立てていくという意識が欠如している。 〇 県としても、入所させることに留まって、その後の各利用者の生活状況の変化を定期的に把握しようとすることを行わずに、放置していた。その結果、利用者の心身の状況はより重度化したと思われる。 〇 県本庁は、こうした状況を適切に指導・修正の基礎となるはずの施設監査等を行う際において、現場を十分に見ることはなかった状況も重大な問題である。 キ 今後の対応 〇 外部調査委員会による調査は終了するが、現時点で事実が判然とせず、調査を継続する事案については、県と園が調査を行い、年度内に県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム(以下「支援改革プロジェクトチーム」という。)に報告する。 〇 外部調査委員会委員には、引き続き、支援改革プロジェクトチームに参画していただく。 〇 支援改革プロジェクトチームでは、次の内容に取り組む。 ・ 中井やまゆり園の支援改革プログラムの作成 ・ 外部調査委員会において、事実が判然としていない事案の調査への助言 (2) 県立中井やまゆり園の改善の取組について 外部調査委員会からの指摘に対して、次の取組を実施している。 ア 本庁幹部職員が園に常駐し、園とともにマネジメントを改善(3月から実施) イ 民間の支援改善アドバイザーによる当事者目線の支援の実践指導(4月から実施) ウ 御家族にアンケート調査を実施(5月に実施) エ 男性寮5寮、女性寮2寮の7寮体制を、男性寮4寮、女性寮2寮の6寮体制に再編(6月から実施) オ 日中活動の充実(6月から実施) ・ 園内で手帳解体作業を開始 ・ 施設外の事業所の体験利用など   カ 生活環境の整備(9月から実施)    ・ 職員による寮内の清掃、整理整頓、簡易的な補修等    ・ トイレ、天井等の修繕工事 キ 見守りカメラの増設等(10月に実施) 現在の2寮12台から6寮76台へ増設 <別添参考資料>  参考資料「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会 調査結果報告書」