県立中井やまゆり園における 利用者支援外部調査委員会 調査結果(第一次) 令和4年4月26日 県立中井やまゆり園における 利用者支援外部調査委員会 <目次> Ⅰ 調査の概要 Ⅱ 調査結果(第一次) Ⅲ 調査結果(第一次)に関する考察 Ⅳ その他 Ⅰ 調査の概要  1 外部調査委員会設置の経緯 ○ これまで、県は、県立中井やまゆり園(以下「園」という。)の支援 改善に向け、外部有識者による「中井やまゆり園の当事者目線の支援改革プロジェクトチーム(以下「支援改革プロジェクトチーム」という。)」を令和3年9月27日に設置し、検討を行ってきたところである。   〇 県は、支援改革プロジェクトを進めていく中で、令和元年7月に発生した骨折事案に関する職員ヒアリングを実施したところ、事実であれば不適切な支援と思われる情報を複数把握した。そこで、不適切な支援と思われる情報が他にもないか確認するため、令和3年12月から令和4年1月にかけて園の職員等を対象に匿名アンケートを実施したところ、事実であれば不適切な支援と思われる情報を職員ヒアリングと合わせて約40件把握した。   〇 県は、その把握した情報について徹底的に調査を行うため、支援改革プロジェクトチームの構成員による「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会」(以下「外部調査委員会」という。)」を設置した。  2 メンバー                     (五十音順、敬称略) 氏名 所属 区分 大川 貴志 社会福祉法人同愛会 てらん広場統括所長 施設関係 小川 陽 特定非営利活動法人 かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク 意思決定支援 小西 勉 ピープルファースト横浜 会長 当事者関係 佐藤 彰一 (委員長) 國學院大学 法学部 教授   学識関係 隅田 真弘 足柄上地区委託相談支援事業所相談支援センター りあん ピアサポーターフレンズ 当事者関係 野崎 秀次 汐見台病院 小児科、児童精神科、精神保健指定医 医師  医療関係 渡部 匡隆 (副委員長) 国立大学法人横浜国立大学大学院教育学研究科 教授  学識関係  3 開催状況     4回開催(令和4年4月26日現在) Ⅱ 調査結果(第一次) 県が匿名アンケートやその後の調査等で把握した約40件の情報のうち、事実であれば、虐待と言わざるを得ない事案8事案について、優先的に調査を実施した。   1 調査時期    令和4年3月3日から同年4月26日  2 調査方法 各事案について、園の関係職員からのヒアリング、利用者及び家族からのヒアリング、医師等の専門家へのヒアリング並びに関係資料の確認を実施している。  3 ヒアリング人数 園の関係職員等 59人  4 調査の概要  (1)虐待通報すべき事案(5件)     次の事案は、いずれも県が把握した情報の一部又は全部が事実であったことから、障害者虐待防止法に規定される虐待が疑われ、県として関係市町村に虐待通報すべきと判断した。 ア 塩水事案 把握情報:服薬用のコップの水等に、塩や砂糖が混ぜられていた。 調査結果:異物を入れたと疑われた職員は否定しており、入れた職員は特定できなかったが、利用者の水等に異物が入っていたことは事実であり、身体的虐待が疑われる。 イ ナット事案 把握情報:利用者の肛門内にナットが入っていた。 調査結果:利用者の体内にナットが入っていたことは事実であり、現時点で、ナットは肛門から入った可能性が高く、職員が入れた可能性が高いと考えられ、身体的虐待が疑われる。 ※ 当該事案については、いつ、どのように体内に入ったのか、特定できていないため、利用者本人に、体調を確認しながら、ヒアリングを実施するなど、調査を継続する。    ウ スクワット事案      把握情報:数百回に及ぶ回数のスクワットをさせた。      調査結果:当初、運動不足の解消を目的として行われていたが、個別支援計画に定めず、シーツ交換を行う条件などとして、一部では数百回に及ぶ過度なスクワットを一部の職員がやらせ、それが寮内で見過ごされてきたことは事実であり、身体的虐待や心理的虐待が疑われる。 ※ 当該事案については、他の利用者にも行われていた可能性があるため、調査を継続する。    エ 粗暴事案 把握情報:職員が怒り、殴ったことで利用者が頭を打ち、失神した。 調査結果:情報提供者に再度確認したところ、殴ったのではなく、正確には振り払ったとの目撃情報であった。虐待を行った疑いのある職員本人は事実を否定し、事実は確認できていないが、目撃情報がある以上、振り払ったとしても身体的虐待が疑われる。    オ オリゴ糖事案 把握情報:4人の利用者に対し、食事の際に多量のオリゴ糖シロップをかけて食べさせていた。 調査結果:オリゴ糖シロップを摂取させること自体は問題ないが、多くの職員が個々の判断で多量のオリゴ糖シロップをかけ、また、組織のチェック機能が働かず、職員個人の判断で多量に購入されていたことは事実であり、身体的虐待や経済的虐待等が疑われる。  (2)調査を継続する事案(3件)     次の事案は、職員へのヒアリングなどが終了しておらず、事実が明らかになっていないため、調査を継続する。 ア 寿司にワサビをたくさん盛りつけて利用者に食べさせたとされる事案 イ 利用者の顔に消毒液をかけたとされる事案 ウ 職員が蹴り、消化管穿孔で救急搬送されたとされる事案  各事案の調査結果の詳細は別添のとおり Ⅲ 調査結果(第一次)に関する考察  ○ 人権意識の大きな欠如が生じている。 〇 今回の調査は8件だけであるが、他にも把握している40数件以外にも、虐待があり、県と園とがそれを認識できていない可能性が強い。その中で、利用者が人間らしい生活を送れなくなっている。また、支援職員も利用者を人間として見られなくなっている。  〇 なぜそうなったのかということについては、これまでの経緯を遡って調査していく必要がある。 〇 こうした利用者は、対応が困難という理由で県立直営の園で受け入れ、支援をしてきていたが、不適切な対応へとつながった。 〇 まだ調査を行ったのは、一部の事案であるが、総じて、利用者の支援についてのアセスメントが不足していると認められる。 〇 園の支援は、利用者を、人として支援することに欠如し、行動特性を適切に把握できずに、放置に近い対応をしていた。利用者本人が望む生活を組み立てていくという点が欠如している。 〇 また、園全体として「虐待」に対する認識が甘く、虐待が疑われる事案に関係する利用者だけでなく、他の利用者への支援も同じような問題がある可能性が高い。  〇 さらに、支援や対応が難しい利用者が入所する寮では、利用者の支援について職員同士で話し合う環境になく、職員間での対立や風通しの悪さなど、人間関係の問題があった。また、こうした実態を把握していた幹部職員は、適切に対応ができておらず、現場の把握をせずにマネジメント機能も失われていた。 〇 利用者一人ひとりに対するケアマネジメントが機能しておらず、自己完結型の支援で、機関連携が行われていなかった。  〇 県本庁は、園の不適切な対応が行われていることを十分に把握できていなかった。 Ⅳ その他                          その他の事案についても、順次、調査を行い、公表する。 外部調査委員会調査結果(第一次) 事案の概要 服薬用のコップの水等に、塩や砂糖が混ぜられていたとされる事案  情報提供の内容 ○ 令和2年7月~令和2年11月頃、利用者が頻繁に嘔吐することから、複数の利用者のコップの水を確認したところ塩水であった。 〇 園長のほか幹部職員に報告をしたが、黙認するような感じで、園幹部職員からは、職場をすぐに改革はできないとのことだった。 利用者の年齢・性別 利用者5名 (20代・男性:1名、30代・男性:1名、40代・男性:3名) 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員1名(情報提供者の内容による) 調査のポイント ○ 誰が何の目的で、服薬用のコップの水等に塩水など入れたのか、職員へのヒアリングなどにより確認した。 ○ コップの水等に混入されたのが、本当に塩や砂糖だったのか確認した。 〇 職員から報告を受けた園幹部職員は、なぜ黙認したのか確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 ○ 書類調査では、当時、職員から報告を受けた園長が寮職員に対して、コップの中身を確認するよう調査を指示し、その結果をまとめた資料を確認した。この資料により令和2年7月から同年11月までの間、複数(5名)の利用者の服薬用の水やみそ汁に異物が入れられたことは事実であることを確認した。なお、園でまとめた資料によると異物は塩や砂糖であるとのことであった。 ○ ヒアリング調査では、情報提供者から、異物を入れた職員として、特定の職員の名前が挙げられたが、疑われた職員は、異物が入れたことについてヒアリングで否定しており、塩や砂糖を入れた職員は特定できなかった。 ○ また、園幹部職員のヒアリングでは、当時から職員間の対立があり、公に調査することで、職員間の対立がさらに悪化してしまうことを懸念し、内部で調査を進めながら、混入された異物を確認した場合には、捨てることで、利用者と職員双方を守ろうとする思いがあった、との証言があった。 【委員会の判断】 〇 異物などを入れた目的や、入れた者の特定はできなかったが、調査結果から、職員が入れた可能性は極めて高く、関係市町村への虐待通報を行うべきである。 ○ また、園幹部職員は異物が混入されるという利用者の健康被害が発生するような事実を把握しておきながら、一部の職員に確認するよう指示しただけで、園幹部職員は、適切な手立てをとっていなかった。 〇 利用者が摂取する飲食物に何らかの異物の混入を疑った段階で、すぐに、その提供を止め、利用者の安全確保を第一に行い、続いて現場保全を行い、警察通報及び救急対応を取ったうえで、徹底した調査を行う等、適切な対応を取るべきである。 〇 そうした対応がなされなかったことは、利用者の安心や安全を守るべき施設として、許されない対応である。園幹部職員はもちろん、異物が混入されていたことを、以前から知っていた可能性が高く、寮職員も含め、園全体としてのネグレクトも疑われる事案である。 〇 何が異物として混入されているのか分からない中で、そうしたことを味見させて確認させること自体が問題である。 〇 利用者がいつから嘔吐していたのか、時期も含めてきちんと調査をするべきであった。また、利用者と家族、その関係者にもきちんと報告すべきであった。 外部調査委員会調査結果(第一次)   事案の概要 利用者の肛門内にナットが入っていたとされる事案 情報提供の内容 〇 職員が利用者の肛門にナットを入れた可能性があるのに、利用者が自ら肛門にナットを入れたと報告されていた。 利用者の年齢・性別 50代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 令和元年度に勤務していた当該寮職員15名全員 調査のポイント ○ ナットが、肛門内にいつ、どのように入ったのか事実関係を確認した。 ○ 書類調査や職員ヒアリングのほか、御家族から過去のエピソードを確認した。 ○ 医師などの専門家にどのような可能性が考えられるかを確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 (調査で確認した事案の概要) 〇 令和2年3月26日、夕食前に遅番職員が当該利用者の様子がいつもと違うことに気づき、トイレでの清拭時に夜勤職員とともに、肛門に固いものがあることを確認した。その際は、出血はないため、様子をみることとした。 〇 夕食後の19時半頃の清拭時にも、夜勤職員が肛門に固いものを感じたので、利用者の肛門に指を入れて確認したところ、穴の開いた固いものがあった。 〇 夜勤職員は、利用者が以前、脱肛の手術をしており、その際の遺物か、身近な金属として、寮内の日課で使用していたナットではないかと考えた。 〇 この際も、利用者には出血がなく、本人もすぐに部屋で寝てしまったため、遅番職員や他の夜勤職員と相談して、緊急性はないと判断した。 〇 翌朝、夜勤職員が状況を早番の職員に引き継ぎ、その職員と看護師が確認したところ、肛門内に異物があることが認められたことから、受診した医療機関で手術を行い、ナットが取り出された。 〇 当時、この事案に関する事故報告書は令和2年3月27日に作成され、園長まで報告されていた。 〇 事故発生日は、令和2年3月27日とされ、“肛門にナットのような異物を確認し、医療機関に入院、全身麻酔の上、手術を行い、肛門内にあったナットを摘出した”との記載があった。 〇 原因は、“ナットを使用した日課を行っている時に、ナットを自分で肛門に入れてしまったと推測される”と報告されていた。 (書面調査) ○ 支援記録により、利用者が肛門を気にしだした日付が特定され、3月25日頃からナットが肛門内にあった可能性があると考えられた。 〇 また、ナットは、ボルトのつけ外しを利用者の日課として行われた際に使用されていたものが体内に入っていたと考えられた。 〇 この日課は、寮内のデイルームや、居室で日常的に行われており、職員が同席せずに利用者一人で行うこともあった。 〇 利用者が、自分の指で肛門を触ってしまうといった記録は確認できたが、過去に異物を飲み込んだり、肛門から入れたりする行為、吐血や下血といった記録は確認できなかった。 (職員へのヒアリング調査) ○ ナットが肛門内に入ったと推測される日前後に、利用者が生活していた寮に勤務していた職員等17名のうち、現時点で14名にヒアリングを行った。 〇 利用者が肛門からナットを入れてしまう可能性に関する次の証言があった。 ・ 日課のナットは、自由に一人でやっていて、数量管理していなかったので、ひとつ無くなっても分からず、飲み込むこともないとは言えない。目の前から無くすために飲み込んだ可能性もあるかなと思った。 ・ 当時、他の利用者に対する支援が大変で、目が行き届かない状況であった。 ・ 過去に異食も、肛門から異物を入れることもなく、誰かが入れようとしたら、絶対に本人は暴れ、ドアを壊すくらいの行為があると思う。 ○ 一方で、職員がナットを入れる可能性に関する次の証言もあった。 ・ 肛門、陰部を触られることを嫌がる方で、異食もなく、利用者が自分で肛門にナットを入れることはないというのが、当時の大半の職員の意見だった。 ・ 第三者が入れた可能性があるという話が出ていたのは事実で、お尻を触られるのを嫌がる人でも力づくに押さえれば入れることができるのではないか。 ・ 本人が入れるということは絶対にないと思い、可能性として、利用者と関係性の悪い職員が入れたのではないかと思うことはあったが、職員が入れることができるか分からない。職員がナットを入れるまでの行為はしないと思う。 (医師などの専門家へのヒアリング調査) ○ 当時、利用者が入院していた病院の主治医、外部調査委員である医師、消化器外科専門医等に当時の医療記録等を提示して、次のような所見を伺ったが、いつ、どうやって入ったのか明らかな事実は確認できなかった。 ・ 口から飲み込む可能性は低く、肛門から入った可能性が高い。 ※ 医師により、胃や腸で引っかかる可能性が高く、口から飲み込むことは考え難いとする見解と、ナットのサイズ・形状から飲み込んでしまうことは可能とする見解とがあったが、総じて肛門から入った可能性が高いとの所見だった。 ・ 摘出されたナットの変色具合や発見された直腸の位置を見ても、ナットが入った時期の特定はできない。 ・ 口から入った場合であれば、肛門まで達するまで最低3日間はかかる。 ・ 過去に異物を飲み込んだり、肛門から入れたりする行動がないのであれば、利用者本人が自身で入れたと考え難い。 ・ 入院・手術当時、外傷は確認できなかったため、嫌がる利用者本人の肛門に傷を付けずに職員がナットを入れることは難しいと考えられる。 ・ 嫌がっている利用者であっても、利用者が便座に座って、排便をしようと力んだ時には、介助する側からは、肛門は開いており、この時に押し込めば、容易に入ってしまう可能性もある。 ・ 肛門括約筋が緊張し収縮している場合は、ナットを入れることは困難と考えるが、利用者が介助を受け入れていている時、弛緩している時間があったと考えると、挿入は不可能とはいえない。 ・ 当時の医療記録によれば、通院の際、職員が金属ナットのような物の写真を持参しており、診断を受ける前に異物を推測していたような動きが不自然。園内で、何らかの介助上の誤りであったのか、まさに虐待を行ったかどうかの判断はできないが、意図的に、職員によってナットは挿入されたものという事象であった可能性が極めて高いと考えることが自然である。 (利用者本人・家族へのヒアリング調査) ○ 利用者本人にヒアリングを行ったが、ナットを見ると、「ボルト」と話し、手渡すと自らはめたり外したりと自然に行っている様子は確認できたが、当時の状況を聞き出すまでには至っていない。また、利用者の御家族にも、利用者の自宅での様子等を確認し、過去に異物を飲み込んだり、肛門内に入れたりといったエピソードがなかったか確認したが、そうした事実は認められなかった。 【委員会の判断】 〇 現時点の調査結果では、ナットは肛門から入った可能性が高いと考えられる。また、利用者本人が入れた可能性は低く、職員が入れた可能性が高い。さらに職員が入れたということを他の職員は知っていたということも考えられるため、身体的虐待が疑われる。 〇 県は、関係市町村への虐待通報を行うべきである。 ○ ただし、肛門から誰がどのように入れたのか、いつ入ったのかを特定できる事実は確認できておらず、職員が入れたということを他の職員は知っていたことも考えられるため、引き続き調査する必要がある。 〇 ヒアリング未実施の職員については、速やかに実施する必要がある。 〇 利用者の意思を十分に確認できていないため、再度利用者へのヒアリングを実施し、当時の状況を確認していく必要がある。 〇 前日の夜に発見した際に、すぐに救急対応をすべきであった。 外部調査委員会調査結果(第一次) 事案の概要 数百回に及ぶ回数のスクワットをさせたとされる事案 情報提供の内容 〇 特定の利用者の拘りにより、一日に幾度もベッドシーツの交換要求が生じた際に、意識の切り替えを図ることを目的として、職員が数回~数百回にも及ぶスクワットをやらせており、支援のレベルを超えていた。 利用者の年齢・性別 30代・男性    ※現在はすでに退所 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 利用者が生活を送っていた2つの寮で直接支援にあたっていた職員(約40名) 調査のポイント ○ どのような目的で、どの程度の回数を行わせていたか、支援記録や支援にあたっていた職員に事実を確認した。 〇 スクワットについて、個別支援計画に位置付けるなど、利用者への支援として効果検証も含め、適切に行われていたか確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 ○ 利用者の拘りによるベッドのシーツ交換要求が幾度もあり、職員がこれを支援する際等に、スクワットを利用者に行わせていたことは事実であった。 〇 平成29年4月から退所するまでの生活支援記録にスクワットに関する記載があり、スクワットは職員個々の判断で行われており、一日に数回のこともあれば、数百回に及ぶこともあった。 〇 スクワット自体は当初、運動不足の解消や気分転換等を目的として、職員間で運動内容や支援を行うタイミングが検討された上で、日々の運動プログラムの一環として取り入れられていた。 〇 一方で、「個別支援計画」に基づく利用者への統一された支援として行われておらず、また、定期的に支援効果も検証されていなかった。 〇 この利用者は、在園期間中、時期を分け2つの寮で生活を送っていたが、当初の「運動プログラムの一環」としてだけではなく、利用者の拘りから生じる要求が発生した際の「気持ちの切り替え」を目的として行われることもあり、要求を受け入れる際の「交換条件」や、職員が他の支援で手が回らない時の「時間稼ぎ」など、一部に不適切と考えられる対応が行われていた。 〇 他の利用者の支援記録からも、スクワットを実際に行っていたとされる記録も散見された。 【委員会の判断】 〇 上記の結果を受け、スクワットの回数については、数回から数百回と差があったが、効果検証もせず、個々の職員の判断により、実施の目的を設定し、シーツ交換を行う条件などとして、身体に負荷のかかる過度な反復運動を利用者に課すことは「不適切」であり、身体的虐待や心理的虐待が疑われる。 〇 さらに、アセスメントなしに、過度なスクワットを組織ぐるみでやらせていた。 〇 県は、関係市町村に虐待通報を行うべきである。 〇 ヒアリング未実施の職員については、速やかに実施する必要がある。 〇 他の利用者に関しても、同様の不適切と捉えられる運動が課されていた可能性があることから、組織として不適切な支援をしていたことが伺える。引き続き、調査範囲を広げて調査する必要がある。 外部調査委員会調査結果(第一次)   事案の概要 職員が怒り、殴ったことで利用者が頭を打ち、失神したとされる事案 情報提供の内容 ○ 平成27年5月下旬~6月上旬頃、朝の引継ぎ時、利用者が構ってほしくて職員に近寄ったときに怒り、殴った。 ○ 利用者は、飛んで頭を打ち、失神した。廊下に倒れ、動かず、職員が揺さぶり起こした。 利用者の年齢・性別 50代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員1名 調査のポイント ○ 情報提供者と虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員に、直接事実を確認した。 ○ 当時の日誌や事故報告など、書類により、利用者が飛んで頭を打ち、失神した事実があるか確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 ○ 書面調査では、情報提供者の情報をもとに、平成27年4月から同年6月までの支援記録などを確認したが、情報提供の内容を裏付ける記録はなく、事故報告書や医療記録もなかった。 ○ ヒアリング調査では、情報提供者は、毎朝、寮で行われる職員間の引継ぎ時に、利用者が職員に構ってほしくて近づいたところ、職員が利用者に掴まれた腕を振り払い、倒れ、失神したところを直接見たと証言した。なお、情報提供者は、当初、「殴った」としていた情報を、「左腕で振り払った」と証言を訂正した。 ○ また、虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員へのヒアリングでは、本件事案について、失神したという事案は記憶にない、常識的に突き飛ばすことはない、体幹が安定しない利用者で支援には注意していたと証言し、事実を否定した。 ○ このほか、当時の同寮職員4名にヒアリングを行ったが、2名は事案について覚えがないとのことだった。また、もう2名は、情報提供者から本件事案の話を聞いたことがあると証言した。なお、そのうち1名は、「情報提供者は、人間関係や自身の待遇に不満があり、虐待を行った疑いのある職員を良く思っていないということや、仕事の仕方について言う人には凄く攻撃的な人で、あることないことを作って、攻撃していたのではないかと思った」と、情報提供者の証言を疑っていた。 【委員会の判断】 ○ この事案は、職員が利用者に掴まれた腕を振り払ったという目撃情報であるが、腕を振り払っただけであったとしても、福祉専門職の行為としては、不適切であり、身体的虐待が疑われる。 ○ 情報提供者の目撃情報がある以上、関係市町村に虐待通報を行うべきである。 ○ 一方で、情報提供者や情報提供者から話を聞いた職員は、日誌等に記録を残しておらず、医務課や上司にも報告していなかった。 ○ 園として、改めて記録の徹底や現場職員による救急対応などを職員に指示する必要がある。 ○ 実際に倒れた利用者に対して、支援者として救急要請等の適切な対応を迅速に行うべき基本姿勢が欠如していた。 外部調査委員会調査結果(第一次) 事案の概要 4名の利用者に対し、食事の際に多量のオリゴ糖シロップをかけて食べさせていたとされる事案 情報提供の内容 ○ 寮の利用者4名に対して自然排便を促すことを目的に、毎食多量のオリゴ糖シロップを摂取させていた。 ○ オリゴ糖シロップを摂取していた利用者の担当職員は、他の職員にも強要し、同様の行為をさせていた。 ○ 園長他幹部職員は、オリゴ糖シロップの摂取について承知していたが、摂取量を把握していなかった。 利用者の年齢・性別 利用者4名 (50代・男性/40代・男性/40代・男性/40代・男性) 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 当該寮の職員全員(約25名)(令和元年度~3年度在籍者) 調査のポイント ○ 寮の利用者4名の食事に使われたオリゴ糖シロップの使用開始時期、使用量・使用方法を確認した。 ○ オリゴ糖シロップを摂取していた利用者の担当職員が、他の職員にオリゴ糖シロップの使用をどのように指示していたのか事実関係を確認した。 ○ オリゴ糖シロップを食事に使用することについての園の認識を確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 ○ 書類調査では、オリゴ糖シロップの摂取に関する支援手順書を確認し、平成24年10月頃から1名の利用者に、平成26年8月頃から別の1名の利用者に、その後、平成30年9月から別の2名の利用者に、計4名の利用者に対して、オリゴ糖シロップの摂取が開始されていたことを確認した。 ○ 支援手順書は担当職員が作成し、寮内で回覧されていたが、組織として決定された記録は確認できなかった。 ○ また、いずれの利用者も便秘が続くことから、その改善のためにオリゴ糖シロップが使用されていたが、個別支援計画には、オリゴ糖シロップに関する使用目的や使用方法等は位置付けられていなかった。加えて、オリゴ糖シロップの使用に関して、  家族の同意が確認できる書類もなかった。 ○ オリゴ糖シロップの購入について、預り金出納帳やレシートからは、最も多い利用者で、年間188本のオリゴ糖シロップ(1リットル)を購入しており、年間に使用する預り金のうち飲食費支出において4割を占めていた。また、預り金出納帳は定期的に園幹部職員が確認していたが、頻繁に購入されるオリゴ糖シロップの量が是正された様子は見られなかった。 ○ さらに、購入本数から1食あたりの使用量を試算すると、開始当初に担当職員が 作成した支援手順書に示す以上の多量のオリゴ糖シロップが使用されていることが確認できた。 ○ ヒアリング調査では、多くの寮職員がオリゴ糖シロップを提供する目的を「自然排便を促すため」と証言する一方、提供するオリゴ糖シロップの量は「適量が分からない。」、「人それぞれだと思う」、「多量に使用している」等の証言があり、職員個々の判断で多量のオリゴ糖シロップを、様々な食べ物などにかけて、提供していたことを確認した。 ○ また、複数の職員からは、担当職員が味見して、少ないともっと入れるよう指摘されたといった証言があった。 ○ 担当職員は、ヒアリングで、多量にかけるよう指示はしていなかったと証言した。 ○ さらに、家族へのヒアリングでは、利用者本人の預り金からオリゴ糖シロップを購入することについては了解していたが、オリゴ糖シロップをかけて提供された食事を見たことがなく、毎食どのくらいの量をかけているか、承知していなかった。 【委員会の判断】 ○ 食品であるオリゴ糖シロップを摂取させること自体が問題と捉えるものではない。 ○ オリゴ糖シロップを使用することについて、家族や後見人が承知していたとはいえ、排便を促すといった支援を目的として行うのであれば、組織として、多職種も加わりながら、その目的や使用方法、使用量等を検討した上で、個別支援計画に位置づけ、統一した支援を行うべきであった。 〇 担当職員は、オリゴ糖シロップの使用について、寮職員等に説明はしたが、使用する量については説明をしていなかった。 ○ 今回、明らかとなったのは、組織として十分な対応がなされず、結果として担当職員任せで支援が決められ、支援方法のコンセンサスが取れていなかったことで、当初の支援手順書に示す以上の多量のオリゴ糖シロップが、職員個々の判断で、様々な食べ物などにかけられていたことである。 ○ こうした職員の行為は、利用者が日々の食事を味わい、食べる楽しみを奪うといった人権を軽視するものであり、断じて許されるものではなく、「身体的虐待」が疑われる。 ○ また、多量にオリゴ糖シロップをかけることについて、誰も指摘せずに見過ごしてきた寮職員、さらには何ら手立てを取らなかった園幹部職員らによる園全体としてのネグレクトにあたる可能性もある。 〇 さらには、利用者の意向や趣向に応じた金銭使用がなされていないこと、組織としてのチェック機能が働かず、職員個人の判断で多量のオリゴ糖シロップが購入されていたことは「経済的虐待」にもあたる可能性もある。 ○ 県は、関係市町村への虐待通報を行うべきである。 外部調査委員会調査結果(第一次) 事案の概要 寿司にワサビをたくさん盛りつけて利用者に食べさせたとされる事案 情報提供の内容 ○ 令和4年1月10日に行われた新年会で、利用者に提供された寿司に、職員がワサビをたくさん盛り付けて食べさせ、反応を見て楽しんでいた。 利用者の年齢・性別 30代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員1名 調査のポイント ○ 誰が、どのようにワサビを盛り付けたのか、寿司を食べた時の食事支援にあたった4名の職員に、当時の事実関係を確認した。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 ○ 書面調査では、寿司を食べた新年会当日(令和4年1月10日昼食)の寮日誌や支援記録を確認したが、多量のワサビの使用を推測できるような記録はなかった。 〇 ヒアリング調査では、新年会で昼食の支援にあたっていた職員4名のうち、情報提供者以外の職員3名と寿司を購入し事前準備に関わった職員1名へのヒアリングで、4名とも当時、昼食で寿司を提供したことは認めたが、多量のワサビを盛りつけたことやそうした場面を見たこともないと証言した。 〇 一方、情報提供者は、初回のヒアリングで、「見た。」との証言を、2回目には「聞いた。」と変え、また、当時、昼食の支援にあたっていなかった職員、つまり、その場にいなかった職員から「話を聞いた。」と証言をする等、発言の信ぴょう性が疑われた。 〇 さらに、園幹部職員へのヒアリングでは、情報提供者は、新年会当時の状況について、利用者の違和感ある行動の原因を多量のワサビと結び付けて思い込んでいるのではないかという証言もあった。 〇 また、利用者本人へのヒアリングを行ったが、当時、ワサビを食べたのか、どのように感じたのか、当時の状況を聞き出すまでには至っていない。 【委員会の判断】 〇 情報提供者は、ヒアリングのたびに証言内容が異なっており、情報自体が正確なのか判然としていないため、再度ヒアリングを行う必要がある。 〇 利用者にその場面での話を十分に確認できていないため、再度利用者へのヒアリングを実施し、当時の状況を確認していく必要がある。 外部調査委員会調査結果(第一次) 事案の概要 利用者の顔に消毒液をかけたとされる事案 情報提供の内容 〇 職員がモップにピューラックスを塗って、利用者の顔を叩いたと思っている。 利用者の顔につけようとしていたことも見たことがある。 利用者の年齢・性別 30代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員1名 調査のポイント 〇 情報提供内容の事実を確認する。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 〇 利用者の顔が赤かったことは、令和元年11月1日の支援・生活記録、寮日誌、看護日誌に記録にあるが、その原因は特定できていない。 〇 当時の診療記録等を整理したうえで、皮膚科専門医等の所見を仰ぎ、状況を判断する必要がある。 【委員会の判断】 〇 調査を進め、見解を示す必要がある。 外部調査委員会調査結果(第一次)   事案の概要 職員が蹴り、消化管穿孔で救急搬送されたとされる事案 情報提供の内容 ○ 令和元年5月1日、職員に腹を蹴られ、消化管穿孔で救急搬送されたが、原因は「イレウス(腸閉塞)」とされた。 利用者の年齢・性別 30代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員1名 調査のポイント 〇 職員に腹を蹴られたという利用者がいることについての事実関係を確認する。 〇 日常からの支援計画の中に、過去に開腹手術の既往があったことを配慮した計画がなされていたか否かを確認する。 調査結果及び委員会の判断 【調査結果】 〇 書面調査では、事実が確認できるような書類はなかったが、目撃したという情報があることから、引き続き調査を行う。 ○ また、当時、医療機関から園診療所に送られた診療情報提供書では、腹を蹴られた等の外傷があった所見は得られていない。 【委員会の判断】 〇 調査を進め、見解を示す必要がある。