(1ページ) 重度障がい者でも社会参加できる〜ALS療養者の在宅生活の事例〜 2022.2.21共生社会アドバイザー野元 (2ページ) 自己紹介:野元(たかのはじめ) 川崎市麻生区在住 56歳、5人家族→3人家族 ITエンジニア→経営者→独立→ALS 要介護5、障害支援区分6 創発計画株式会社・代表 HeartyPresenterの企画開発 そうはつ介護ステーションの運営 日本ALS協会神奈川県支部・副会長 川崎つながろ会・会長 神奈川県・共生社会アドバイザー 重度障害者が社会参加できる仕組みを作る (3ページ) ALS療養の経緯 2013.1身体の異常に気づく(ALSを発症) 2014.9ALSの告知を受ける 絶望 2016.4胃ろう造設 理解 2017.5誤嚥防止・気管切開手術を受ける 受容 2018.2講演活動を開始 2019.11神奈川県「共生社会 アドバイザー」委嘱 現在の体の状態 頭脳◎ 顔○ 首△ 会話? 口・嚥下△ 肺・呼吸△ 腕・手× 腰・腹△ 脚△ 足先× (4ページ) ALS進行と療養の経緯が絵で示される。 (5ページ) 本日の構成 1.筋萎縮性側索硬化症(ALS)と公的支援 2.療養の工夫 3.私の一日 4.私の社会参加 5.重度訪問介護の意義 今日のお話のスコープ 難病患者、在宅 (6ページ) 1. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)と公的支援 (7ページ) 1-1. ALSはどんな病気か?(1) 運動神経が変性し、筋肉が硬くなり 痩せていく。 運動機能(運動、会話、嚥下、呼吸) が失われていく。 原因は不明で、根治の治療法はまだない。 発症から3-5年で、食べられなくなり、呼吸筋が侵され死に至る。 胃ろうや人工呼吸器の使用で、本来の生を全うできる。 厚生労働省指定の難病(特定疾患) 国内に1万人弱の患者がいる。 (8ページ) 発症 四肢麻痺 看護・介護体制の構築・維持 嚥下・発声の障害 胃ろう造設・栄養管理 コミュニケーション手段の確保 最小限のコミュニケーション・閉じ込め状態 呼吸筋障害・麻痺 呼吸器装着・呼吸管理 http://alsjapan.org/how_to_cure-thesisの図をもとに加筆修正。 (9ページ) 1-2. 公的支援を活用して社会参加もできる ステップ1 生命を支える 訪問医・訪問看護・専門医・病院看護(難病法) ステップ2 日常生活を支える 生活を支える・ヘルパー・機器の活用(介護保険法) ステップ3 自己実現を支える 重度訪問介護・ヘルパーの活用(障害者総合支援法) 『難病看護の普遍性の重層構造』中山優季先生、東京都医学総合研究所 多職種の連携と全体像の把握が療養生活の質を上げる (10ページ) 1-3. 在宅療養を支える多職種 命に関わる医療、日常を支える医療、日常を支える介護について絵で図示されている。 (11ページ) 1-4. 重度訪問介護とは? 常時の介護を必要とする重度の肢体不自由者に対して、比較的長時間にわたりサービスを総合的・継続的に提供します。 ・居宅におけるサービス内容 身体介護 / 家事援助 / 生活等に関する介助 見守り(必要な時に介助)※生活の質を上げられます その他の生活全般にわたる援助 喀痰吸引や胃ろうなどの医療的ケアも可能(要資格)※家族が離れられます ・外出時におけるサービス内容 移動中・目的地での援助※外出=社会参加できます ・その他 複数人介助もできる 入院時も利用できる 就労時には使えない ・対象者 身体障害 知的障害 精神障害 難病患者等で、障害支援区分4以上 二肢以上に麻痺等がある 「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも何らかの支援が必要 ・資格 重度訪問介護従事者養成研修(約20時間) 訪問介護資格 介護福祉士/ 実務者研修 / 初任者研修 看護師 (12ページ) 1-5. 医療的ケアを伴う長期療養で起きること 人工呼吸器を付けると、いつ痰が詰まるかわからないので、24hの見守りが必要 ・医療ケアは医師・看護師しかできない 短時間しか見られない 例外は家族 家族が見るしかない →平成24年4月「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正施行 「喀痰吸引等研修」を修了することで、介護職員もたんの吸引や経管栄養などの特定行為を実施できることになった。 ・家族が見るのが当然という社会の圧力 家族が心身ともに疲弊 子供もケアを分担(ヤングケアラー問題) →高齢の両親に負担をかけたくない パートナーや子供の人生を奪いたくない 呼吸器をつける選択ができない ・家族まるごと社会から孤立 →2004年の相模原事件 ALSで呼吸器を付けた息子の繰り返しの懇願で、母親が呼吸器を止めてしまい、死に至らしめた事件。 (13ページ) 2. 療養の工夫 (14ページ) 2-1. 声門閉鎖術と気管切開 ・口から食べ続けるために、誤嚥防止手術をしています。 ・左右の声帯を縫合する、声門閉鎖術を 選択しました。 他に、咽頭分離術、咽頭摘出術があります。 ・口から気管への通路をふさぐので、 気管切開が必要で、同時に手術しました。 (15ページ) 2-2. 気管カニューレとたん吸引問題 ・呼吸器をつけるために、気管カニューレを挿入しています。 ・カニューレに痰が詰まると窒息するので、24時間の見守りが必要。 ・詰まったら、すぐに痰吸引をしなければならず、1-2時間ごとに必要になります(夜間も)。 ・介護する家族やヘルパーの重い負担となる。 (16ページ) 2-3. 人工呼吸器ほかの支援機器 写真による説明 (17ページ) 2-4. コミュニケーション手段〜透明文字盤 写真による説明 (18ページ) 2-5. 視線入力装置でパソコンを操作(1) 写真による説明 (19ページ) 2-5. 視線入力装置でパソコンを操作(2) PPSスイッチ+ピエゾ素子で「決定」 PPSスイッチ:アナログ信号をスイッチ操作に変換 ピエゾ素子:わずかな歪みから電流を発生 (20ページ) 2-6. 医療用HALを用いたリハビリ ・CYBERDYNE社開発のサイボーグ型ロボットHAL 筑波大学の山海嘉之教授が研究開発してきた、サイバニクス技術を応用した製品 ・医療用HAL 国立病院機構新潟病院の中島孝院長が、HALの神経難病 患者へのリハビリ効果の可能性に着目。 医師主導治験を経て、医療機器として認可(2015)、保険適用(2016)。 ・利用の感想 立位を取ることにより、全身の血行と呼吸機能が改善する。 股関節の筋肉の緊張が緩み、可動域が改善する。 (21ページ) 3. 私の一日 (22ページ) 6:00 起床(重訪ヘルパー) 写真による図示 (23ページ) 7:30 経管栄養(妻) 写真による図示 (24ページ) 8:30 食事・歯磨き(訪問介護ヘルパー・重訪ヘルパー) 写真による図示 (25ページ) 9:30 トイレ(訪問看護・重訪ヘルパー) 写真による図示 (26ページ) 10:00 洗髪・清拭(訪問看護・重訪ヘルパー) 写真による図示 (27ページ) 10:30 ストレッチ(訪問看護・重訪ヘルパー) 写真による図示 (28ページ) 11:30 立位と呼吸リハビリ(訪問看護・訪問リハ・重訪ヘルパー) 写真による図示 (29ページ) 12:30 経管栄養・食事・歯磨き(重訪ヘルパー) 写真による図示 (30ページ) 14:00 パソコン(重訪ヘルパー) ・視線入力を使って、ほぼすべてのWindows操作が可能 写真による図示 (31ページ) 17:00 訪問入浴(介護) 写真による図示 (32ページ) 18:30 経管栄養・食事・歯磨き(妻・重訪ヘルパー) 写真による図示 (33ページ) 22:30 就寝・体位交換(重訪ヘルパー) 写真による図示 (34ページ) 4.私の社会参加 (35ページ) 4-1. 患者会活動 ○日本ALS協会神奈川県支部 ・副支部長をしています。 ・患者家族相談会を、毎月開催しています。 ・喀痰吸引等3号研修を開催しています。 ○川崎つながろ会 ・4年前に患者仲間と始めました。 ・川崎市の神経難病コミュニティです。 ・毎月1回定例会を開催しています。 ・みんなで遊ぶイベントを開催しています。 2019.11.3@東京ドイツ村障害者の交通に関する助成「福祉バス」を利用について写真による図示 (36ページ) 4-2. 神経難病患者と一緒に鎌倉に行こうPJ 鎌倉での集合写真による図示 (37ページ) 4-3. 講演活動(1) 〜 プレゼンソフトHeartyPresenterを開発 動けない・喋れない重度障害者でもプレゼンできる。 パワポのノート欄に読上げ文章を書くだけ。 プレゼンの進行に必要な機能も追加可能。 ・読み上げ音声の設定 ・読み上げ文 ・一時停止 ・一時停止 ・クリック・ シミュレーション ・強調読み上げ (38ページ) 4-3. 講演活動(2)〜 学校・専門職向け 写真による図示 (39ページ) 4-3. 講演活動(3)〜 一般向け 写真による図示 (40ページ) 4-4. オリィ研究所〜分身ロボットカフェ 写真による図示 (41ページ) 4-5. 神奈川県共生社会アドバイザー 写真による図示 (42ページ) 5. 重度訪問介護の意義 (43ページ) 5-1. 重度訪問介護ヘルパーを活用するには Step1:過ごしたい生活を具体的にイメージする ・時間単位でスケジュールを書いて、要望を明確にする。 Step2:自治体の障がい福祉課で時間支給を交渉する ・自治体により支給の方針が異なるので、その傾向を知る。 ・支援者を見つける(ケアマネ、保健師、介護事業者など)。 Step3:ヘルパーさんを見つける ・(方法1)事業所を探して派遣してもらう ・(方法2)自分で見つける→事業所に登録する(自薦ヘルパー) Step4:育成する ・自分のありたい生活を理解してもらう。 ・そのために必要な生活の技術を覚えてもらう。 (44ページ) 5-2. 重度訪問介護の普及にむけて ○普及に向けての課題 ・重度訪問介護の意義が知られていない ・必要十分な支給時間が認められるとは限らない(市町村ごとに異なる) ・事業所やヘルパーが足りない ○普及に向けてできること ・関係各所に対して啓蒙する 市町村の障害福祉課  ケアマネージャーや障害計画相談員 介護事業所 ・繰り返し粘り強く交渉する ありたい日常生活を明確に思い描く ・強いニーズがあることを訴える 当事者・支援者が自ら探す 当事者とその周りの支援者の尽力が社会を変えていく (45ページ) 5-3. イノベーター理論で考えてみる 新しい概念の商品を市場に投入したときに、どのようなユーザーに広まっていくかを示すもの。 イノベーター2.5%「革新者」新しい事を始める人 アーリーアダプター13.5%「初期採用者」イノベーターに賛同する新しいことが好きな人たち キャズム:ここに谷があり、ここからなかなか先に進まない。キャズムを超えるために、重度訪問介護をもっと簡単に利用できるようにしたい。 アーリーマジョリティー34%「前期追随者」かなり慎重ではあるが、アーリーアダプターの状況を見て追随する人たち レイトマジョリティー34%「後期追随者」なかなか新しいことはしないが、それが大多数になってきたら追随し始める人たち ラガード16%「抵抗勢力」最後まで追随しない人たち 2040年にALSによる重度障害者が当たり前に社会参加する道のりについて図示 (https://note.com/ideaarts/n/n720f8943e603から引用) (46ページ) 5-4. 重度訪問介護の意義 ○重度障害者に対する世間の思い込み ・施設や病院でひっそり暮らすもの ・在宅で過ごすなら、介護は家族がするもの ・動けなくて喋れないなら、生きる意味はない ・重度障害者支援は、不毛な仕事 ↓ ○重度障害者も社会の一員 ・住みたい場所で暮らす。 ・家族を介護から開放する ・生きる意味を再構築する ・重度障害者の支援は、包摂社会の構築に必要な仕事 こうした社会の価値観の転換を促す仕事が重度訪問介護 (47ページ) 最後まで聞いていただき、ありがとうございます。 ご感想・ご質問はこちらまでお願いします。 info@souhatsu-keikaku.jp 下記で発信しています。 http://blog.gentak.info/ https://www.facebook.com/hajime.takano https://twitter.com/gen_tak