資料2-6 当事者目線の徹底と権利擁護に取り組むべきではないか(論点案〜大事項) 意思決定支援の推進についてどう考えるか(論点案〜中事項) (1)現状・課題 〇「障害者の権利に関する条約」の批准に向けて国内法を整備(※)する中で、 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)においては、基本理念として、障がい者本人が、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保される旨が規定され、併せて、障害福祉サービス提供事業者の責務として、障がい者の意思決定の支援に配慮するよう努める旨が盛り込まれた。 ※ 我が国は、障害者の権利に関する条約を平成26年1月に批准している ○厚生労働省は、平成29年3月に 「障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドライン」を策定し、意思決定支援について、「自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるよう、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、本人の意思の確認や意思及び選好を推定し、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、最後の手段として本人の最善の利益を検討するために事業者の職員が行う支援の行為及び仕組み」と定義し、事業者が、障がい者の意思を尊重した質の高いサービス提供に資するための意思決定支援の枠組みを示した。 ○このガイドラインによると、日頃から本人の生活に関わる事業所等の職員が場面に応じて即応的に行う直接支援の全てに意思決定支援の要素が含まれているとしている。また、意思決定支援が必要な場面は、大きく、日常生活における場面と社会生活における場面に分けられるとしている。 意思決定支援の枠組みとしては、意思決定支援責任者を配置の上、意思決定支援会議を開催し、意思決定の結果を反映した意思決定支援計画、すなわち、サービス等利用計画及び個別支援計画を策定して実際にサービス提供を行い、モニタリング、評価・見直しを行っていく。こうして、日頃から本人の生活に関わる事業所等の職員が、全ての生活場面の中で意思決定に配慮しながらサービス提供を行うこととしている。 ○なお、厚生労働省によりガイドラインが示されるより以前に、一部地域では、意思決定支援の具体的な手法について議論が進められた例もある。例えば、福島県知的福祉協会では、意思決定支援の定義・概念が不明確な状態であっても、入所施設等で実質的に日常の生活や活動の中で「意思決定支援」を既に実践している実態があることから、失敗実例も含めて92件の意思決定支援の実例をまとめ、特徴や共通点を分析している。それによると、本人主体の意思決定支援がなされている所に人権侵害つまり虐待はないという結果だった。すなわち、意思決定支援=人権擁護である、としている。 ○「障がい者の意思決定支援」と問うと、障害福祉サービス提供事業所の関係者であれば、「以前からやっています。毎日実践しています」と大半が答えるのではないか。重い知的障がいの人であれば、ほぼ日常的に意思決定の配慮が行われているが、意思決定支援を明文化して表現するのは、当たり前すぎて意外と難しい。優れた実践を行っているとされる事業所等においては、恐らく、それぞれの考え方や手法により、適切な意思決定支援を行いながら、全体の支援を組み立てているであろう。このように考えると、津久井やまゆり園で取り組んでいる意思決定支援は、適切に意思決定支援が行われているか、支援内容を「可視化」する取組みであるともいえる。 ○県では、津久井やまゆり園事件の翌年(平成29年)に策定した「津久井やまゆり園再生基本構想」に基づき、「津久井やまゆり園利用者一人ひとりには、それぞれ尊重されるべき意思がある」ことを前提に、厚生労働省のガイドラインを踏まえつつ、意思決定支援に取り組んでいる。その特色は、@利用者ごとに、相談支援専門員、支援員、市町村及び県の職員などで構成するチームを置く、A支援の客観性、専門性を確保するため、弁護士、有識者等の助言を得る、B全ての利用者のアセスメントを実施するとともに、本人・家族が加わり、チームで情報を共有し、定期的に意思決定支援計画(サービス等利用計画・個別支援計画)のモニタリングを行う、こととなっている。この取組みにより、本人の願いや希望に沿ったサービス等利用計画と個別支援計画を策定し、本人の望む暮らしの実現を目指したサービス提供を行っている。 ○一方で、津久井やまゆり園の取組みについては、@再整備する新たな二つの園舎が完成するまでに、住む場所を決める必要があるという特別な事情から、「居住の場」の選択についての意思決定支援が優先されたこと、Aコロナ禍で、十分な体験や見学ができなかったこと、などの課題があったことから、引き続き、事件当時入所されていた利用者の意思決定支援を実施していくこととしている。 ○令和3年3月の「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」報告書では、「今後、県下の障害者支援施設等において、既に入所している人はもとより、新たに入所する人についても、意思決定支援を実践していくことが重要」とされたことも踏まえ、県としては、津久井やまゆり園において取り組んできた意思決定支援を県下の事業所等に展開する予定としている。 ○今年度(令和3年度)、県は、津久井やまゆり園での取組みを基に、県内の4事業所でモデル事業を実施しており、県所管域の入所施設を対象にした実態調査を実施するとともに、事業所等の職員を対象とした意思決定支援に関する研修を行い、さらには、各事業所等において、意思決定支援の取組みが進められるよう、「かながわ版意思決定支援ガイドライン(試行版)」を作成することとしている。 (2)検討の方向性 (意思決定支援の普及) ○障がい者の自己選択、自己決定の尊重は、当事者目線の障がい福祉の基本となるものであり、県は、引き続き、意思決定支援の重要性について、事業所等に普及・啓発を行うとともに、どのようにすれば、適切な意思決定支援を行うことができるのか、懇切丁寧に助言・指導を行うことが重要ではないか。そうした取組みを重ね、行政及び事業所等は、20年後、必要な人すべてに意思決定支援が適切に行われることを目指すこととしてはどうか。 ○また、子どもの頃から自己決定が尊重された育ちができるよう、家族を含めた養育者を、社会全体で支えていくという視点から障がい福祉等の施策を展開していく必要である。その取組みの素地を作る観点から、行政及び事業所等は、障害のある人の自己決定(意思決定)の大切さを、全ての県民が共有できるよう、理念の普及啓発に努めることとしてはどうか。 (県立施設でのモデル実施と横展開) ○津久井やまゆり園で取り組んできた意思決定支援について、所期の目的が果たせたのか検証すべき、との本委員会でのこれまで意見を踏まえ、県下の事業所等に横展開する前に、県は、これまでの実践をしっかりと評価・検証することとしてはどうか。その上で、検証で確認された課題に対応し、改善された意思決定支援の取組みを、まずは、支援者目線の支援に陥りがちな障害者支援施設において実施することとしてはどうか。その場合、民間施設のモデルとなるよう、他の県立施設が率先して試行することとしてはどうか。 〇津久井やまゆり園の意思決定支援の取組みにおいて、利用者一人ひとりに応じて、個別の支援チームを設定することが、意思決定支援等の円滑な実施に有効であったことから、県が、今後、津久井やまゆり園での意思決定支援の取組みを各事業所等に横展開する際は、相談支援事業者や市町村などの協力を得て、多職種と連携しながら、チームで多様な視点から行うことを基本とすることとしてはどうか。また、その際、本人以外の障がい当事者もチームに加わることができないか検討することとしてはどうか。 ○意思決定支援の取組みを着実に県下に広げていくために、県は、しっかりとした推進体制を構築するとともに、県が事業所等に対して一定の財政支援を行うことを検討することとしてはどうか。また、県は、意思決定支援の質の向上を図るため、必要な実践的な研修を実施することとしてはどうか。 ○入所施設の利用者は、必ずしも本人の意思で入所した人ばかりではなく、入所時、入所施設以外の居住支援が選択できなかったという家族等の事情もあったと思われる。事業所等が意思決定支援に取組んでいく際には、このような事情も勘案しながら丁寧に進めていくことが重要なのではないか。 また、本人の願いや希望の実現には、生活の範囲を入所施設に限るのではなく、施設の外の地域での生活を様々体験することにより、地域へ目を向けてもらって生活の選択の幅を広げることが肝要である。そうした生活の広がりを基礎に、本人が地域生活を望むときには、地域社会全体が本人の暮らしを受け止めていくよう、事業所等は地域にアプローチしていくことも必要である。県は、こうした考えを事業所等と共有し、意思決定支援の取組みが進められるよう、連絡協議体を設け、情報共有と意見交換の機会を設けることとしてはどうか。 (適切な意思決定支援の実効性の確保) ○意思決定支援の取組みを広げていくに際し、本人の思いや願いに反するような意思決定支援が行われないよう、権利擁護の観点から、本人が異議を申し立てることのできるよう、県は、第三者的な立場で仲裁あっせんを行う機関を設定するとともに、各事業所等における意思決定支援の取組みについて、客観的に効果測定を行う仕組みを構築することとしてはどうか。 これまでの主なご意見(意思決定支援に関して) ○やまゆり園の仲間は、追悼集会に全員が参列できない。意思決定支援について、もう一度検証してほしい。 ○意思決定支援は、非常に危うくて危ないもの。意思決定支援が成功していれば、ほとんどの人は地域に行ったはず。結果が伴わない意志決定支援をやったとしても意味ないので、もう一度検証して、何のためにやって、それがどうなったのか、意思決定支援は評価をきちんとやっていかなければならない。 ○今の意思決定支援は、支援者や親、学校の先生からという、高見からの意思決定支援。これは、本人たちにとってウザいこと。こんなものはいらない。友だち関係だとかそういうところの意思決定をこれからは本格的にやっていく必要がある。専門家にリードされた意思決定というのは、非常によくないもの。 ○入所施設に入りたいと思って、本人がみずから希望して入っている人はほとんどいない。神奈川県全体の他の地域、他の事業者、それがどこまで試みを受け入れてくれるか。施設だけではないところでの意思決定支援の取り組みというものを、ぜひとも。これは時間がかかる、半年や1年で済むという話ではない。今まで意思決定というものを試みたことがない人たちに対して、意思決定をしてもらおうということなので、これは時間と、それから、施設だけを見ていても駄目。時間がかかる、全県下で展開しないといけない。 ○子どものときから選ばせてもらえれば、今になって意思決定支援とは言わない。 ○意思はあると言っているが、その時の意思がどんな意思なのかは、実はよくわからない。決定というのも非常に危ない言葉。実は私たちは、決定というのはしてない。迷う。決定する前にも相談するし、決定した後も相談する。意思決定支援とはそういうこと。常に相談相手がいないといけない。 ○本人が適応障がいにさせない、ならないような取り組みを、小さいうちから、していく。 ○ガイドラインに関係した者だが、私も意思決定支援はよくわからない。意思決定支援は大切な言葉だけど危ない言葉。どのようにも使われるかなあということをずっと考えている。発言することを経験した人は将来、大人になってもいろんなことがイヤだとか、あるいは良いとか言えるらしい。すべての方は思いがあるということと、周りの者がその思いというものをどれだけ尊重できるか。 ○やっぱり言えない人には、仲間同士のサポートが必要。 ○意思決定支援の中心は、自己決定の支援。弱い人間だから、迷うということがある。だから支援をする。失敗したら支援をまたやるぞという意味での意思決定支援。自己決定は自己責任を伴わない。 ○意思決定をしていて、違うと思った時には、そこは失敗ではなく学び。意思決定は、その場面々々でずっと続いていくもの。 ○なぜ障がいのある方の意思を酌み取る支援が必要なのかを、もう一度検証していくことを併せてやっていかないと、意思決定支援が一つ間違うと形骸化してしまう。ある程度の年齢でも、体験や経験の機会を提供していくことを、我々が持ち合わせていかないと、意思決定支援というものが広がっていかない。 ○幼児期の療育相談によって、親が本当に子どもに関わって、その子どもとつながっていく、それで親が子どもを育てる苦しさよりも、一緒にやっていこうという気持ちになれるのかどうか。親の教育と言ったら変だが、共感が得られるような、意思決定支援の周知、そういうことが本当に必要。 ○できることや居場所、関わる人が増えているのか、本人が楽になっているのか、また意欲的になっているのかという視点でアセスメントをする必要がある。 ○施設の怖いところは、やはり福祉サービス。福祉サービスは支援するという一方的な構図が存在し、その中で、虐待が生まれたりとか、無理な意思決定支援が生まれたりとか、そういった構図が生まれている。それを打開するには、やはり居場所や役割を増やしていくこと。福祉サービスの中の話ではなく、もっと幅広い話。入所施設は、地域を作らなければ利用者の幸せは作れない。 関係団体ヒアリングでの主なご意見(意思決定支援に関して) ・勝手に決めつけないで、ちゃんと私たちの話を聞いてほしい。短期入所したときに、本当は、食器を洗えるけど、職員が全部手伝っていた。学校にいる時は生徒会長をやっていて、まとめたり、助け合ったりしていた。そういうことをしたかった。(にじいろでGO!) ・仲間と話をしていると、自分達のことを自分で決めたり、仕事も頑張らなきゃいけないという気持ちになるが、施設ではそれができない。(ピープルファースト横浜) ・本人の思いに添った暮らしができるためには、本人を中心として関係者が集まりサービス等利用計画に思いを落とし込んで、様々なサービスをつなげて地域で暮らしを支える仕組み作りが大切である。(神奈川県手をつなぐ育成会) ・本人の意思決定支援が大事と言われているが、施設の職員にその認識や取組みがなされているのか知る機会はない。県の取組みを聞きたい。(〃) ・津久井やまゆり園の意思決定支援の取組みで、市町村に働きかけて必要なサービスを認めてもらった経過があることから、他の方についてももっと柔軟に利用できるとよい。(神奈川県自閉症協会) ・選択肢を増やすためには自立生活ってこんなことだよと経験してもらう必要がある。(神奈川県障害者自立生活支援センター厚木事務所) ・職員にはストレングスを見て、利用者は「ありがとう」が言えなくても別の表現方法を持っているところを読み取れるようにしなければならない。(〃) ・施設で暮らすと生活の時間が決められ、画一的になる。結果、利用者は選択の余地も選択する必要もなくなり、自己決定、自己選択ができなくなる。 (〃) ・将来外に出るとき、どんな生活ができるか、思い描いて支援をすることが大切。 (〃) ・当事者の意思決定に当事者の相談支援専門員などが介入し、意思決定をしてきたのかを明らかにするべき。 (〃) ・新しい津久井やまゆり園の塀が鉄格子に見える。意思決定をやったというが社会との接点が少ない。施設では「これが好きなんだね」というが、それしかやることが無い。 (〃) ・入所施設は、本人の意思決定は重要視されず、家族等の意思による利用が主となっている。本人が望む施設を選択することはほとんど皆無となっている。(神奈川県知的障害施設団体連合会) ・意思決定支援を広めていこうということであれば、なおさら、県立又は指定管理施設でしっかりとその辺に取り組み、その結果こういう効果が出ているので、全県で取り組んでいきましょうということにつながるが、そのような改善を図ろうとしている姿が、現状の県立施設の中で見えないとしたら、やはり県立施設とともにということが描けないのではないかと、心配をしている。(〃) ・過齢児の方が成人の施設に移行するといったときに、意思決定支援がおそらくなされなくて、入れるところに入るということになってしまいがち。(〃) ・入所施設は、施設内で支援が完結しやすく、支援の中心が「施設内での生活の充実」に偏りがちであること。(神奈川県身体障害施設協会) ・県立の障害児者支援施設利用者の意思決定支援に基づく地域移行・定着が進んでいないのではないか。(〃) ・津久井やまゆり園で行っている意思決定支援や専門的支援の実践を、民間施設等により般化させる必要があるのではないか。(〃) ・施設に入っている当事者の方の意思にきちんと耳を傾けること。そもそも経験の乏しさをどのように克服していくことができるのかもう少し丁寧な対応をお願いしたい。(神奈川県障害者地域作業所連絡協議会) ・利用者の方が何十年も変わりなく生活し、その方にとって本当にその場での生活が適しているかの検証が成されないこと。その背景には、ご家族が入所施設に入れることが幸せと思って、変化を好まないこと。何十年も同じ所で集団生活をしていれば、経験が乏しく出来ることの範囲が非常に狭められる。(〃) ・意思決定支援のプロセスには時間がかかること、障がい名は同じでも性格行動特性は違うことなどをしっかり認識して、当事者にとって何がいいのかを洗い出すことが必要。 (〃) ・津久井やまゆり園の意思決定支援を全県展開するべき。(かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク) ・今は意思決定支援の評価の幅を高いレベルに収れんしていこうというフェーズにあり、一定の促進要因や条件整備の一環として条例化が必要。(〃) ・意思決定支援を実行するには労力を有する。相談支援専門員とサービス事業者と行政が一体となって取組み、事業実施に係る予算(報酬・加算等)を付ける必要がある。(〃) ・県の障がい福祉施策に関し、施設の在り方ありきではなく当事者が神奈川県でどのように生きていくか、その選択肢を保障していく議論の中で施設の役割を確認することが必要。そのためには意思決定支援を進める事が重要で、意思決定支援を実施してこそ、県立施設の役割も見えてくるのではないか。(〃) ・津久井やまゆり園の意思決定支援実践において、丁寧な意思決定支援に取り組み、経験体験を重ねた結果、本人が地域生活移行を希望し、当初反対していた家族も本人の楽しそうな活力ある姿に本人の希望を叶えたいと意向を変更して、地域移行をした方がいる。こうした丁寧な意思決定支援の実践が重要である。(〃) ・日常的にガイドヘルパーなどの施設外サービスを使った上でなければ、意思決定できない。(日本グループホーム学会) ・入所者が元の地域のサービスや人間関係を継続したり、近い将来に移り住みたい場所のサービスとつながったり人間関係をつくるためには、入所している段階から計画相談をはじめとして地域のサービスとつながって多機関のチームで支援できることが必要。(〃) ・津久井やまゆり園の入所者の意思決定支援チームが取り組んできたような柔軟なチーム支援を広く展開していけるようにするべき。(〃) (参考資料1) 津久井やまゆり園で実施している意思決定支援の流れ 意思決定支援の概要について本人や家族等への説明 趣旨、具体の手続き等について家族等への説明会の実施 津久井やまゆり園職員による状況整理※1 ○次の状況を記録:津久井やまゆり園での様子(生活上の希望、一時帰宅から戻った様子等)、これまでの生活史、本人の意思表示の状況 モニタリング 意思決定支援チームによる利用者の意思確認 ○メンバー:相談支援専門員、津久井やまゆり園支援担当職員、同園サービス管理責任者、市町村障害福祉主管課職員、県障害福祉主管課職員 ○ヒアリング:本人や家族等への説明や見学、体験の場の提供、津久井やまゆり園職員が作成した記録等を資料とし、利用者へのヒアリングを実施(メンバーに対する事前の研修を実施) 意思決定支援検討会議の開催 (サービス担当者会議・個別支援会議と兼ねて開催可) ○メンバー:相談支援専門員、津久井やまゆり園支援担当職員、同園サービス管理責任者、市町村障害福祉主管課職員、県障害福祉主管課職員、思決定支援専門アドバイザー(利用者、家族等の出席を基本とし、必要に応じて関係事業者等の参加) ○検討:利用者の意思確認の結果等を踏まえ、最善の利益を判断 意思決定支援の結果を反映したサービス等利用計画・個別支援計画の作成とサービスの提供、支援結果等の記録 支援から把握される表情や感情、行動等から読み取れる意思と選好等の記録 意思決定支援に関する記録のフィードバック ※1他の施設を利用されている方は、当該施設の職員が状況確認を行う ※2当該施設の支援担当職員及びサービス管理責任者がメンバーとなり、必要に応じて津久井やまゆり園担当職員等も加わる (参考資料2) サービス利用の意思決定支援について(イメージ) 一般的なサービス利用のスキーム 本人・家族(相談)相談支援事業所(作成)サービス等利用計画(提案)市町村(支給決定)本人・家族(入所)障害者支援施設(個別支援計画)サービス管理責任者・支援員 ※本人がどういう生活をしたいか、インフォーマルサービスも含めて支援の組み立てを行う、自治体が支給決定を行う上で極めて重要な計画だが、形骸化しているとの批判 ※サービス提供事業者が利用者に対して必要な支援をオーダーメードで組み立てる極めて重要な計画だが、形骸化しているとの批判 チームによるサービス利用のスキーム 本人・家族(相談)相談支援事業所【相談支援専門員・本人・家族・県職員・サビ管・支援員・医療職・栄養士・市町村職員(県から派遣されたアドバイザーが助言)】(意思決定支援会議)サービス等利用計画(提案)市町村(支給決定)本人・家族(入所)障害者支援施設(個別支援計画)サービス管理責任者・支援員 (参考資料3) サービス等利用計画について 〇サービス等利用計画は、ケアマネジメント手法を活用し、障害者のニーズや置かれている状況を勘案して、福祉、保健、医療、教育、就労、住宅等の総合的な視点から、地域での自立した生活を支えるために作成するもの 〇制度創設時、同計画は、作成対象者が一部の者に限られていたが、平成 24年度からの3年間の経過措置を経て、平成27年度からは障害福祉サービスを利用する全ての障害者に策定することが義務付けられ、自治体がサービスの支給決定を行う上での根拠とされている 〇同計画は、本人の希望にそって、相談支援専門員等が本人とともに立案する生活設計であり、多くの領域を含んだ総合的な計画であることから、各事業所が個別ケア計画を作成する際の方向性を決める骨子となる資料である また、利用者が実現したいと考える生活やそのために関係者が果たすべき役割について、複数の関係者の間で情報共有するための手段でもある 〇同計画では、利用者に関わる事業所が複数にわたる場合や、担当者の交代・途中からの合流に備えて、本人がなぜサービス利用を望むのか、サービスを提供することで生活がどのように変わるのか、どのような未来を実現したいと考えているのかが伝わることが必要 そのためには、同計画には、抽象的で個別性のない内容が端的に記載されるのではなく、本人の願いや思いが具体的に記されている必要があり、アセスメント・作成手法の確立・標準化(質の向上)に向け、「どの程度(量・内容)の記載をするべきなのか」といった記載基準の検討などが関係者により進められている 【サービス等利用計画の記載の良くない例】 ・曖昧な表現で記載されている場合に、支給決定の根拠となる情報が少ない 例)「安心した生活を送りたい」とだけ書かれている場合に、本人にとっての安心の到達点を判断できない ・端的に「○○がしたい」とだけ書かれている場合に、どのような目的で意図しているのかがわからない 例)「PCを覚えたい」というニーズがあっても、「余暇として」「就労のため」「家族に格好いいところをみせるため」等、背景・目的が異なる ・支給決定ありきの計画作成になっている 例1)「家事援助を利用して部屋の掃除をしたい」等、どのサービスを使うかを始めから固定した計画となっている 例2)「引き続き就労支援○○に通いたい」等、サービスの利用を前提とした(サービスを利用することだけを意図した)計画となっている 【日本相談支援専門協会によるサービス等利用計画の記載基準の提案】 1.本人の思い・希望 本人にはどのような願いや思いがあるのか 2.本人のニーズ 実現したいことや解決したいことなど、現時点での本人のニーズや課題は何か 3.幅広いサービス・インフォーマル支援 活用しうる資源にはどのようなものがあるか 4.支援の方向性 支援における方針・目標は何か 5.目指す生活の全体像 将来的にどのような生活が実現することを想定しているか (参考資料4) 障害福祉サービスの利用等にあたっての意思決定支援ガイドラインについて(抄)平成29年3月31日、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長通知 〇ガイドラインの趣旨 障がい者の自己決定の尊重に基づいて支援することの重要性は誰もが認識するところだが、自己決定が困難な障害者に対する支援の枠組みや方法等については必ずしも標準的なプロセスが示されていない このため、事業者がサービス等利用計画や個別支援計画を作成してサービスを提供する際の意思決定支援についての考え方を整理し、相談支援や、施設入所支援等の障害福祉サービスの現場において意思決定支援がより具体的に行われるための基本的考え方や姿勢、方法、配慮されるべき事項等、事業者がサービスを提供する際に必要とされる意思決定支援の枠組みを示したもの 〇ガイドラインでの意思決定支援の定義 自ら意思を決定することに困難を抱える障害者が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り本人が自ら意思決定できるよう支援し、本人の意思の確認や意思及び選好を推定し、支援を尽くしても本人の意思及び選好の推定が困難な場合には、最後の手段として本人の最善の利益を検討するために事業者の職員が行う支援の行為及び仕組みをいう 〇意思決定支援の基本的原則 (1)自己決定の尊重 ・本人への支援は、自己決定の尊重に基づき行うことが原則 ・本人の自己決定にとって必要な情報の説明は、本人が理解できるよう工夫して行うことが重要 ・幅広い選択肢から選ぶことが難しい場合は、選択肢を絞った中から選べるようにしたり、絵カードや具体物を手がかりに選べるようにしたりするなど、本人の意思確認ができるようなあらゆる工夫を行い、本人が安心して自信を持ち自由に意思表示できるよう支援することが必要 (2)不合理な決定も尊重すること ・職員等の価値観においては不合理と思われる決定でも、他者への権利を侵害しないのであれば、その選択を尊重するよう努める姿勢が必要 ・本人が意思決定した結果、本人に不利益が及ぶことが考えられる場合は、意思決定した結果については最大限尊重しつつも、それに対して生ずるリスクについて、どのようなことが予測できるか考え、対応について検討しておくことが必要(例えば、疾病による食事制限があるのに制限されている物が食べたい、生活費がなくなるのも構わず大きな買い物がしたい、一人で外出することは困難と思われるが、一人で外出がしたい等の場合が考えられる。それらに対しては、食事制限されている食べ物は、どれぐらいなら食べても疾病に影響がないのか、あるいは疾病に影響がない同種の食べ物が用意できないか、お金を積み立ててから大きな買い物をすることができないか、外出の練習をしてから出かけ、さらに危険が予測される場合は後ろから離れて見守ることで対応することができないか等、様々な工夫が考えられる) ・リスク管理のためには、事業所全体で取り組む体制を構築することが重要。また、リスク管理を強調するあまり、本人の意思決定に対して制約的になり過ぎないよう注意することが必要 (3)自己決定や意思確認が困難な場合の意思及び選好の推定 ・本人の自己決定や意思確認がどうしても困難な場合は、本人をよく知る関係者が集まって、本人の日常生活の場面や事業者のサービス提供場面における表情や感情、行動に関する記録などの情報に加え、これまでの生活史、人間関係等様々な情報を把握し、根拠を明確にしながら障害者の意思及び選好を推定 ・本人のこれまでの生活史を家族関係も含めて理解することは、職員が本人の意思を推定するための手がかりとなること 〇最善の利益の判断 本人の意思を推定することが困難な場合は、関係者が協議し、本人にとっての最善の利益を判断せざるを得ない場合があり、次の点に留意する必要 (1)メリット・デメリットの検討 最善の利益は、複数の選択肢について、本人の立場に立って考えられるメリットとデメリットを可能な限り挙げた上で、比較検討することにより導く (2)相反する選択肢の両立 二者択一の選択が求められる場合においても、一見相反する選択肢を両立させることができないか考え、本人の最善の利益を追求(例えば、健康上の理由で食事制限が課せられている人も、運動や食材、調理方法、盛り付け等の工夫や見直しにより、可能な限り本人の好みの食事をすることができ、健康上リスクの少ない生活を送ることができないか考える場合など) (3)自由の制限の最小化 住まいの場を選択する場合、選択可能な中から、障害者にとって自由の制限がより少ない方を選択 また、本人の生命または身体の安全を守るために、本人の最善の利益の観点からやむを得ず行動の自由を制限しなくてはならない場合は、行動の自由を制限するより他に選択肢がないか、制限せざるを得ない場合でも、その程度がより少なくてすむような方法が他にないか慎重に検討し、自由の制限を最小化 (その場合、本人が理解できるように説明し、本人の納得と同意が得られるように、最大限の努力をすることが求められる) 〇事業者以外の視点からの検討 ・意思決定支援を進める上で必要となる本人に関する多くの情報は、本人にサービス提供している事業者が蓄積 ・しかし、事業者はサービスを提供する上で、制度や組織体制による制約もあるため、それらが意思決定支援に影響を与える場合も考えられ、そのような制約を受けない事業者以外の関係者も交えて意思決定支援を進めることが望ましい ・本人の家族や知人、成年後見人等の他、ピアサポーターや基幹相談支援センターの相談員等が、本人に直接サービスを提供する立場とは別の第三者として意見を述べることにより、様々な関係者が本人の立場に立ち、多様な視点から本人の意思決定支援を進めることが可能 〇成年後見人等の権限との関係 ・法的な権限を持つ成年後見人等には、法令により財産管理権とともに身上配慮義務が課されている ・一方、事業者が行う意思決定支援においても、自宅からグループホームや入所施設等への住まいの場の選択や、入所施設からの地域移行等、成年後見人等が担う身上配慮義務と重複する場面が含まれている ・このため、意思決定支援の結果と成年後見人等の身上配慮義務に基づく方針が齟齬をきたさないよう、意思決定支援のプロセスに成年後見人等の参画を促し、検討を進めることが望ましい。なお、保佐人及び補助人並びに任意後見人についても、基本的な考え方としては、成年後見人についてと同様に考えることが望まれること (参考資料5) ◎障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)(抄) (地域社会における共生等) 第三条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 一 全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 二 全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 三 (略) (相談等) 第二十三条 国及び地方公共団体は、障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、障害者及びその家族その他の関係者に対する相談業務、成年後見制度その他の障害者の権利利益の保護等のための施策又は制度が、適切に行われ又は広く利用されるようにしなければならない。 2 国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの各種の相談に総合的に応ずることができるようにするため、関係機関相互の有機的連携の下に必要な相談体制の整備を図るとともに、障害者の家族に対し、障害者の家族が互いに支え合うための活動の支援その他の支援を適切に行うものとする。 ◎ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号) (抄) (指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等の設置者の責務) 第四十二条 指定障害福祉サービス事業者及び指定障害者支援施設等の設置者(以下「指定事業者等」という。)は、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者等の意思決定の支援に配慮するとともに、市町村、公共職業安定所その他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関、教育機関その他の関係機関との緊密な連携を図りつつ、障害福祉サービスを当該障害者等の意向、適性、障害の特性その他の事情に応じ、常に障害者等の立場に立って効果的に行うように努めなければならない。 2 指定事業者等は、その提供する障害福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、障害福祉サービスの質の向上に努めなければならない。 3 指定事業者等は、障害者等の人格を尊重するとともに、この法律又はこの法律に基づく命令を遵守し、障害者等のため忠実にその職務を遂行しなければならない。