資料2-3 障害者支援施設(県立施設を含む)の必要性を含めたあり方をどう考えるか 【我が国の公的な居住支援の方向性】 ・障がい者の住まいをめぐる諸施策に関しては、障害者基本法において、「全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現する」ため、実施する国や自治体等の関係施策の基本原則を定めており(第1条関係)、その施策は、「全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられない」(第3条関係)こと等を旨として図られることとされている。これは、長年の当事者運動の成果等により、ノーマライゼーションの理念が実体化されてきたものである ・このため、今日、障がい者の居住の場は、旧来の入所施設(障害者支援施設)やグループホームだけではなく、一般住宅において、重度の障がいがあっても地域で生活することが当たり前であることが、障がい福祉施策の計画目標の射程に入っていると言え、とりわけ、地域との関わりが希薄になりやすい障害者支援施設については、国が定める障害福祉基本計画において、グループホーム等の地域の受け皿を整備しながら、段階的・計画的にその入所者数を減少させていく方針としている ・このような我が国の障がい福祉施策の大きな方向を踏まえると、各自治体は、今後新たに障害者支援施設を整備することを障がい福祉計画に盛り込むことは考えにくく、したがって、現在の障害者支援施設は、入所者の地域生活移行や高齢化に伴う介護施設や病院へ移行等に伴って、その入所者数は漸減していくことが予想される ・実際、各自治体の障がい福祉計画の下、地域生活の受け皿としてのグループホーム等の整備が進められ、各地の障害者支援施設は、入所者数が減少傾向にあり、神奈川県においては、平成22年度において、グループホームの利用者数が障害者支援施設の入所者数を逆転している 左から、区分、平成22年度(実績)、令和元年度(実績)、令和5年度(計画) 障害者支援施設入所者数(全国)、140,512人(2,587か所)、128,442人(2,561か所)、120,763人(−か所) <うち神奈川県>、3,915人(86か所)、4,803人(96か所)、(検討中) グループホーム入居者数(全国)、51,100人(6,167か所)、123,118人(8,643か所)、152,985人(−か所) <うち神奈川県>、5,136人(362か所)、9,442人(654か所)、(検討中) 【障害者支援施設の将来展望の議論の視点】 ・一方で、「親なき後」の恒久的な居住の場として、入所施設に「安心感」を持つ親もおり、障害福祉制度改革推進会議総合福祉部会(H22)での議論のように、当事者と意見がぶつかる場面もあった 〇本当に、グループホーム等で看取りまで対応できるのか 〇行動に課題のある人や医療的なケアが必要な人など、入所施設の重厚な設備や職員配置でなければ対応が困難なのではないか 〇「施設解体」と唱えたところで、高齢の障がい者など、地域生活移行できない人、できたとしても戻ってくる人がいるではないか とする意見は根強く存在する ・今日、高齢化や重度化、医療的ケアの必要な障がい者の増加など、障がい福祉を取り巻く新たな課題も生じており、こうした課題を踏まえ、その願いや希望に応じて、障がい当事者が地域で当たり前に生活するために必要な支援をどう組み立てていくのか、入所施設はその役割を担うことができるのか、あるいは、その役割を担うべきなのか、具体的に考えていく必要がある  ・また、障害者支援施設の成り立ちとして、戦後間もない時期、地域に障がい福祉の社会資源が殆どなかったときに、在宅の障がい児・者を受け止めてきたのが、先駆的な実践家らによる障害福祉施設であったという歴史も踏まえておくことが重要である ・その上で、障害者支援施設の20年後の姿を展望するに際しては、 @障害者支援施設でしか担えない役割は本当にないのか(入所施設を解消して不都合はないか)【施設機能の代替可能性】 A障害者支援施設の「待機者」にみられる新たな入所需要をどう考えるのか【ニーズの緊急性】 B現在の入所者の生活の質をどう確保していくのか【現入所者の保護】 といった論点を十分に検討した上で、「20年後、障害者支援施設はどうなっているか」について考えていく必要があるのではないか 【検討の方向性】 〇障がい当事者の施設での暮らし、地域での暮らしに関する考えは、立場によっても異なり、さまざまな意見があるが、地域で障がい者が安心していきいきと生活できるための条件が整い、家族だけに過重な負担が課せられることがなければ、ノーマライゼーションの理念に基づき、地域における本人中心の当たり前の暮らしを可能とすべき 〇障害者支援施設は、構造的に、24時間完結型で管理的な運営に陥りやすい上、入所者が地域と関わる機会に乏しいという課題があることから、当事者ができる限り地域で生活できるように、今後、神奈川全体で、必要な支援の組み立てを議論した上で見直し、20年後には、障害者支援施設の役割の転換が図られることを目指すこととしてはどうか (参考資料1) 障害者支援施設(入所施設)の将来を展望する際の論点 左から区分,障害者支援施設(入所施設),これまで県立施設固有とされてきた点 @入所施設でしか担えない役割は本当にないのか(入所施設を解消して不都合はないか)【施設機能の代替可能性】,・緊急時には、医療職も含めて、常時一定数の人員が配置されている入所施設は頼りやすいこと(入所施設は、短期入所事業を併設することが容易)・入所施設の設置主体は、民間の場合は原則として社会福祉法人に限られ、経営基盤も強固であることから、地域へのサービス展開に安心感があること(24時間の対応が可能),(左に加え)・民間では受け入れることが困難な重度の障がい者の受入れの役割が期待されてきた・7か所の県立施設の存在により、県下のニーズを一定程度カバーしており、それが、安心感につながっていた A入所施設の「待機者」にみられる新たな入所需要をどう考えるのか【ニーズの緊急性】,・地域において居住支援や訪問系サービスが十分に整備されていない場合、入所施設に頼らざるを得ないこと・長きにわたる開設(歴史がある)ゆえに、高齢化や医療的ケアなど困難性の高い支援課題に関するノウハウが蓄積されており、入所施設への信頼が厚いこと,(左に加え)・民間では受け入れることが困難な重度の障がい者の受入れの役割が期待されてきた・7か所の県立施設の存在により、県下のニーズを一定程度カバーしており、それが、安心感につながっていた B 現在の入所者の生活の質をどう確保していくのか【現入所者の保護】,・障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス提供事業者は、利用者の意思及び人格を尊重し、常に利用者の立場に立ったサービス提供に努める必要があるとされ、常にその運営の向上に努めなければならないこととされていること(指定基準等) ,(左に加え)・民間事業者の取組みをけん引するべく、人員、設備及び運営について、先駆的、モデル的な役割を果たすことが期待されてきた 今日、民間施設は県立施設以上の専門性・支援力を有する所も多く、県立施設の優位性は低くなっているのではないかとの意見がある (参考資料2) 2040年頃の障害者支援施設のあるべき姿に向けた課題について 今後神奈川全体で、必要な支援の組み立てを行っていく 障害者支援施設の機能の分散化を図っていく ・働きたい人が働ける、豊かな「日中活動」の場を用意する ・安心して生活できる「住まい」を用意する ・外出することを容易にする「移動」の手段を用意する ・重度訪問介護、行動援護等の「居宅支援」を充実する ・いつでも「相談」できる窓口を用意する ・仲間とのつながりを作る、「集いの場(カフェ)」を充実する ・公的なサービスだけではない、「地域のつながり力」を強化する 県がしっかりと関与し、(自立支援)協議会の場で議論を重ね、神奈川県の各事業者の理解、合意の下で、社会福祉連携推進法人の仕組なども活用しながら取組みを進める 地域生活支援拠点の整備を活用 施設機能の分散化を図りながら ※県立施設については、機能(市町村支援、基幹相談支援、研修機能)の移転を進め、規模を縮小の上、民間移譲を目指すこととしてはどうか(県として求められる臨床研究的役割、人材育成は別途検討) ※旧来の保護収容型の障害者支援施設は解消を目指す。新規入所は、緊急時対応等を除き、原則として有期の自立訓練のみとし、併せて、実質的な「昼夜分離」を進め、施設の機能は、居住支援(夜間の支援)に特化させることとしてはどうか(地域に対する日中活動サービス等の提供は妨げない) 夜間部分(施設入所支援)の報酬だけで運営を維持できるかが課題 2040年頃障害者支援施設の役割の縮小と転換 〜緊急時対応と通過型のサービスに焦点〜 (参考資料3) 障害者支援施設から地域生活移行の住まい 障害者支援施設(入所施設) 行動に課題のある障害者 高齢の障がい者 医療的なケアが必要な障がい者 ・・・ 地域生活移行が比較的容易と思われる状態像の人 適切な意思決定支援により本人の願いや希望に耳を傾ける 希望に応じた地域生活への移行 地域での住まい グループホーム+日中活動、相談支援等 介護サービス包括型 ・食事や入浴、排せつなどの生活支援をグループホームの職員が提供 ・障がい支援区分が「4/5/6」などの障がいが重い人が利用することを想定 県内指定数(R3.3月利用者数)731か所(10,028人) サテライト型(ひとり暮らし) ・グループホームの近くにあるワンルームマンションなどで障がいのある人が一人暮らしをするタイプのグループホーム ・グループホームを「本体」として、ワンルームマンションなどを「出先」と位置付け ・外見上は一人暮らしだが、必要に応じてグループホームの世話人や支援員からの支援を受けることができる 県内指定数(R3.3月利用者数)介護サービス包括型の指定数に含まれる 外部サービス利用型 ・食事や入浴、排せつの介助などの生活支援をグループホームの職員だけで行うのではなく、外部のヘルパー事業所などから派遣された職員も交えて対応 ・障がい支援区分が「1 / 2 / 3」などの障がいが軽い人が利用することを想定 県内指定数(R3.3月利用者数)3か所(38人) 日中サービス支援型 ・平成30年に制度化された日中の時間帯もグループホームで過ごすことができる新たなタイプのグループホーム ・重度の障がいのある人や高齢になった障がいのある人の利用を想定 ・利用者の障がい状況や体調などにあわせた支援を行うため、グループホームに配置される世話人や支援員の人数が手厚くなっている 県内指定数(R3.3月利用者数)22か所(268人) 公営住宅、民間賃貸住宅、自宅等+日中活動、相談支援等 (参考資料4) 社会福祉連携推進法人について ・令和2年の社会福祉法等の改正により、地域における良質かつ適切な福祉サービスの提供及び社会福祉法人の経営基盤の強化を図るため、社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組を行う新たな法人制度として創設された。令和4年度から施行されることとされており、連携推進法人は、一般社団法人のうち、法に定める基準に適合するものにつき、国又は都道府県若しくは市(特別区を含む)が認定することとされている ・下図は展開イメージであるが、施設種別を問わず、できる限り広範囲に参加法人を増やし、例えば圏域全体で連携推進法人を構成することで、規模の最大化が図られ、連携推進法人が実施することが可能な各事業について、効率化を図ることができるものと考えられる ・一方で、規模のメリットが大きい反面、参加法人それぞれ成立過程が異なることから、共通の理念・目標の下で集まることが可能であるにしても、各論の部分でベクトルを同じくすることができるか、連携推進法人としてのガバナンスの確保に難点があるとの指摘もある 【展開イメージ】 社会福祉法人障害者支援施設、社会福祉法人特別養護老人ホーム、社会福祉法人養護施設、社会福祉法人保育所、社会福祉法人障害者支援施設、社会福祉法人救護施設、NPO法人居宅系サービス・・・ から社会福祉連携推進法人に参加の矢印 社会福祉連携推進法人 ○地域共生に向けた連携 ○資金融通 ○災害時の応援 ○経営ノウハウ共有 ○共同購入 ○人材確保 ○共同研修 (連携)研究機関・ICT企業 (求職活動)転職・・・再就職 (募集活動)福祉従事者の養成施設 (事業展開)連携法人としての様々なイベントや事業の展開※社会福祉事業は行えない (連携)自治体・相談支援機関 (参考資料5) 「地域生活支援拠点」について 趣旨 〇地域生活支援拠点は、障がい者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、居住支援のための機能(相談、緊急時の受け入れ・対応、体験の機会・場、専門的人材の確保・養成、地域の体制づくり)を、地域の実情に応じた創意工夫により整備し、障がい者の生活を地域全体で支えるサービス提供体制を構築するものとして構想された、障害福祉サービス提供事業所の類型の一つ 〇その全国の整備状況については、平成31年4月1日時点で、332市町村(うち、圏域整備:42圏域188市町村)において整備されている(全国の自治体数:1741市町村)が、今後の予定を含む整備類型は、「面的整備型」が約55%を占めており、「多機能拠点整備型」は約7%と少ない(約35%が類型未定) 〇地域生活支援拠点は、医療的ケアが必要な重症心身障害、遷延性意識障害等や強度行動障害、高次脳機能障害等の支援が難しい障がい者等への対応が十分に図られるよう、多職種連携の強化を図り、緊急時の対応や備えについて、医療機関との連携も含め、各機能を有機的に組み合わせ、地域全体で支援する協力体制を構築することが期待されている @相談・訪問支援 ○基幹相談支援センター、委託相談支援事業、特定相談支援事業とともに地域定着支援を活用してコーディネーターを配置し、緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握・登録した上で、常時の連絡体制を確保し、障害の特性に起因して生じた緊急の事態等に必要なサービスのコーディネートや相談その他必要な支援を行う機能 A緊急時の受け入れ・対応 ○短期入所を活用した常時の緊急受入体制等を確保した上で、介護者の急病や障害者の状態変化等の緊急時の受け入れや医療機関への連絡等の必要な対応を行う機能 B体験の機会・場の提供 ○地域移行支援や親元からの自立等に当たって、共同生活援助等の障害福祉サービスの利用や一人暮らしの体験の機会・場を提供する機能 C専門的人材の確保・養成 ○医療的ケアが必要な者や行動障害を有する者、高齢化に伴い重度化した障害者に対して、専門的な対応を行うことができる体制の確保や、専門的な対応ができる人材の養成を行う機能 D地域の体制づくり ○基幹相談支援センター、委託相談支援事業、特定相談支援、一般相談支援等を活用してコーディネーターを配置し、地域の様々なニーズに対応できるサービス提供体制の確保や、地域の社会資源の連携体制の構築等を行う機能 ※医療的ケアが必要な障害者等への対応が十分に図られるよう、多職種連携の強化、緊急時の対応等について、医療機関との連携も含め、各機能を有機的に組み合わせる。 ※5つの機能以外に、地域の実情に応じた機能を創意工夫し、付加することも可能。(例:「障害の有無に関わらない相互交流を図る機能」、「障害者等の生活の維持を図る機能」等) (参考資料6) 入所施設の今日的課題と、今後も必要であるとされる事由 ※NHK福祉情報サイト「ハートネット」の木下真のレポート等を基に事務局において構成 ○入所施設の課題として指摘されること 地域社会から隔離された人里離れたエリアに立地している場合が多い →地域住民との関わりが乏しく、社会経験の範囲が狭くなりがち →施設は社会が障がい者を必要としていないというメッセージを暗黙のうちに発してしまう →社会が障がい者を理解する機会を失う →地域に目が向かいづらく、地域生活移行できる人も、施設に囲い込んでしまいがち 施設最低基準に依拠して建設されるため、個室が少ない(4人部屋、2人部屋が多い) →プライバシーが守られない →居住空間を自分好みにデザインすることができない 建替え、再整備には多額の資金が必要であるため、老朽化した施設が多い →居住環境が悪い 定員100名を超えるような大規模な施設が多く、管理的、閉鎖的な運営に陥りやすい →集団行動を強いられ、好きな時に好きなことができにくい(食事、入浴など) →施設の生活は、障害者の自立する力を奪っている ローテーション勤務する職員数が多くなり、なじみの関係が作りにくい 外部の目が届きにくいため、不適切な支援が、当たり前の支援として定着してしまう恐れ →虐待が起きやすい 立地の課題※多くの場合、建設地の選定の困難性が理由であることに留意 建物の課題 運営の課題 入所施設であることに由来する構造的な課題 一定の改善は可能であるが、抜本的な課題解決は困難※開設者の手腕によるレベル差があることに留意 ○入所施設が必要とされる理由として挙げられること (そもそも)多くの施設は地域に開かれていて、職員との関係も家庭的で、一昔前のような隔離施設という実態にない 軽中度の障害者のほとんどは地域生活に移行し、いま施設にいる多くは高齢の重度障害者で、施設がなければ居場所を失う 現在の施設は地域生活の支援を行うところも多く、地域で暮らす障害者にとっても施設は一定の役割を果たしている 周りとトラブルになりやすい強度行動障がいのある知的障害者の中には、施設だからこそ安定した生活が送れるケースもある 重心の人などが地域生活を行うための医療的資源は十分ではなく、地域に戻ってきても、家族に過剰な介護負担が増すだけである もともと地域で生活してきたが、親も高齢になり、支えきれなくなってきたので、今後はむしろ施設の必要性は高まるのではないか 重度でも自立生活はできると言っても、意思を示すことが難しく、体を動かすこともできない最重度の障害者は、本当に自立した生活が可能なのか 当事者にしてみれば、施設入所は「避難」であり、施設が「安住の地」である場合もある。障害者がどのような形で自立するかは、もっとたくさんの選択肢があっても良いのではないか 【検討の方向感】 〇障がい当事者の施設での暮らし、地域での暮らしに関する考えは、立場によっても異なり、さまざまな意見がある。しかし、地域で障がい者が安心していきいきと生活できるための条件が整い、家族だけに過重な負担が課せられることがなければ、地域で当たり前に暮らすことを目指すべきという考えは、今日、障がい福祉の基底をなす普遍的な思想になっていると考えられるところ 〇1980年代から広がってきた障がい当事者による自立生活運動の影響や、ノーマライゼーションの理念の浸透により、近年は、施設が地域社会との交流を深めたり、地域生活移行を希望する本人やその家族が増えてきており、その流れは弱まることはない 〇今日、高齢化や重度化、医療的ケアの必要な障がい者の増加など、障がい福祉を取り巻く新たな課題も生じており、こうした課題を踏まえ、その願いや希望に応じて、障がい当事者が地域で当たり前に生活するために必要な支援をどう組み立てていくのか、入所施設はその役割を担うことができるのか、あるいは、その役割を担うべきなのか、具体的に考えていく必要がある (参考資料7) 入所施設の成り立ちと、これまで経緯 【戦前】 1891年石井亮一が我が国初の知的障害者に対する保護教育を行う聖三一孤女学院(現、滝乃川学園)を開設、その後、他の先駆者たちも知的障害者施設を開設、知的障がい者を社会から保護するという観点で、入所施設が最も安全な居場所として選択された 【戦後】 1947年児童福祉法成立、知的障害児施設が児童福祉施設の一環として創設される(「保護」と「独立生活に必要な知識技能を与える」二つの機能) 1955年頃衣食住に欠ける要保護児童だけでなく、一般家庭から知的障害児施設への入所が始まり、施設数も増加 1957年知的障害児通園施設が制度化、当時の「養護学校」や「特殊学級」が比較的軽度の知的障害児を対象としていたことから、要望があった、重度の児童が家庭から施設に通って訓練を受けることができるようにし、これにより、在宅ケア、在宅サービスの考え方が広がった 1958年国立秩父学園が創設され、盲・ろう・虚弱児などの重複障害児への対応を図る 1959年知的障害児施設に「重度棟」が設けられ、重度の障害児・者の機能訓練や感覚訓練を基調とした「治療教育」が行われ始める 1960年重症心身障害児施設である「島田療育園」と「秋津療育園」が設置、同年、精神薄弱者福祉法が成立し、知的障害者援護施設が制度化 1967年知的障害者援護施設が更生施設と授産施設に類別化、1968年 知的障害者の重度棟が制度化 1960年代後半コロニー施策が打ち出され、施設の総合化・大型化が進み、「通過施設」的な性格から「終身保護施設」としての性格へと変化 1970年心身障害者福祉協会法に基づき、国立コロニー設置(「独立自活の困難な心身障害者が必要な保護及び指導の元における社会生活を営むことができる総合的な福祉施設」と規定) 1970年心身障害者対策基本法成立、「すべての障害者は個人の尊厳が重んじられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と規定 1974年中央児童福祉審議会が「今後推進すべき児童福祉対策について」を答申、施設から地域福祉の推進へ、ノーマライゼーションの考えが広がる 1980年国際障害者年、1983年から1992年 「国連・障害者の十年」、施設福祉から在宅福祉サービスを中心とした施策への転換 1980年心身障害児(者)施設地域療育事業(いわゆる施設オープン化事業)開始、その後、心身障害児通園事業、精神薄弱者通所援護事業、心身障害児総合通園センターなどの在宅サービス系の各種事業が創設、障がい者についても、知的障害者福祉ホーム(1979年)、知的障害者福祉工場(1985年)、グループホーム(1989年)が制度化 1990年社会福祉関係八法改正、障害施策は施設福祉から地域福祉へ視点を転換、知的障害者居宅支援事業や日常生活用具等給付事業などを法定化 1997年国が「今後の障害保健福祉施策のあり方について」中間報告を取りまとめ、知的障害者援護施設については有期限・有目的とし、在宅福祉支援機能を兼ね備えた施設として役割を担うべき旨が盛り込まれた 2002年国が、これまでの障害者プランに代わる「障害者基本計画」を策定、新たに、5年間の重点施策実施計画「新障害者プラン」がまとめられ、「ノーマライゼーション」の理念の実現に向けて、入所施設は真に必要なものに限定すること、入所施設を小規模化・個室化するとともに、在宅生活支援の施策を講じることとした 2003年支援費制度がスタートし、行政処分である措置制度から、障がい者自らが契約によりサービスを利用する仕組みに移行、障がい者の自己決定を尊重するための権利擁護の仕組みが整えられた (参考資料8) 「当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会」中間報告-抜粋-(令和3年10月16日) むすびに代えて〜当事者目線の障がい福祉の今後の議論に向けて (1)県立障害者支援施設の改革 ・検討部会においては、県立施設における過去の支援内容の検証が行われ、身体拘束などの不適切な支援が長きにわたり行われていた例が複数あることが指摘された。その要因分析の詳細については、検討部会報告書に譲るが、大規模入所施設であることが、運営の閉鎖性や管理性を高め、とりわけ、集団生活になじめない行動に課題のある人にとって、極めて過酷な生活環境となっていたことが明らかにされ、県としても、その改革に取り組む契機となっている。 ・県立施設の支援の質の向上については、県において、実践的な改善プログラムを策定するなど、できることは速やかに着手されているが、大規模入所施設としての施設運営の基本構造(インフラを含む)については、事件直後の、今から5年前に再生基本構想が策定されてから、新たな検討は行われていなかった。 ・過去、県は、平成15年度に「県立社会福祉施設の将来展望検討会議」を、平成25年度に「県立障害福祉施設等のあり方検討委員会」を設置し、県立施設と民間施設の役割分担、県立施設が担うべき役割と機能について検討しているが、国の制度が、支援費制度から障害者自立支援法に基づく新たなサービス体系に移行し(平成18(2006)年)、「施設から地域生活へ」という障がい福祉施策の方向性がより明確になる一方で、県立施設のあり方の検討は、財政規律の視点からのそれに近く、支援内容に大きな変更は見られなかった。 ・将来展望委員会は、障がい当事者が自らの意思で、日中活動や住まいの場を選択し、その人らしい暮らしを実現できる地域共生社会、いのち輝く「ともに生きる社会かながわ」を目指して、重要な社会資源である県立施設のあり方について検討を進めた。県立施設のあるべき姿と現実のギャップは大きく、県は、今後、本気で改革に取り組んでいくべきである。 ・今回、5回にわたる議論を通じて、将来展望委員会として、20年後の県立施設のあるべき姿を念頭に置きながら、定員規模の縮小、通過型の入所施設への転換、環境整備(ユニット化、個室化)などの大きな方向性を打ち出した。県には、この「中間報告」における各般の意見を踏まえ、次期指定管理者選定の募集要項の検討、さらには、中長期的な視点からの県立施設のあり方のさらなる検討を進めていただきたい。 ・なお、袖ケ浦福祉センターの事例では、5年から10年をかけて議論が行われたという経緯もあり、県立施設の改革については、今回の将来展望委員会での議論の後も、継続的に議論を行っていく必要があるのではないかとの意見が出されており、県には、時間がかかるので諦めるということなく、検討を続けていただきたい。 ・将来展望委員会において、将来の県立施設のあり方についての議論が進む中、県立中井やまゆり園において、利用者の支援を行う上で、長時間の身体拘束が行われている実態があること、及び、過去に発生した利用者の骨折事故について、支援職員による虐待が疑われる旨の報道がなされた。県は、速やかに「中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム」を設置し、支援内容の改善に向けた取組みと、骨折事案の再調査を行うことを表明した。本委員会としても、県には、適切な対応を要請するとともに、今後、神奈川の障がい福祉のあるべき姿に向けた議論が、真に、障がい当事者を含む神奈川県民にとって意義のあるものとなるよう、各委員への適時の情報提供を求めたい。 (参考資料9) 将来展望検討委員会中間報告に盛り込まれた現時点での障害者支援施設の将来展望 (当事者目線の支援がなされていること) 〇当事者目線に立って、職員の独りよがりではなくて、障がい当事者と一緒に施設運営を行い、その先に、施設が不要になるような実践を展開していく入所施設を目指すべきである。 〇入所施設は、どんなに障がいが重くても、その人の願いや希望といった意思があるという「能力存在推定」を示すべきである。 〇障がいが重いからといって外に出さないで一日中施設の中にいるようなことのない入所施設を目指すべきである。 〇行動障がいが起きる理由を、その環境が要因で、自分たちが引き起こしているという理解がしっかりとなされている入所施設を目指すべきである。 〇「できることが増えているのか」、「居場所が増えているのか」、「関わる人が増えているのか」、何よりも、「本人が楽になっているのか」、また、「意欲的になっているのか」という視点で、問題行動のみに注意を傾けるのではなく、本人の可能性を広げていく視点からの適切なアセスメントとモニタリングを受けることができる入所施設であるべきである。 〇地域共生社会の実現に向けて、どんなに障がいの重い人も地域生活が可能であるということを証明する取組みを進める入所施設を目指すべきである。 (障がい当事者と支援者が対等な関係であること) 〇障がい当事者と支援職員が対等な関係であって、何故入所施設に入るのかを約束し合うことができる入所施設であるべきである。 〇利用者に福祉サービスを提供して支援するという一方的な構図により、虐待や無理な意思決定支援が行われやすい状況を解消するため、福祉サービスの視点だけではなく、居場所を増やすことや、ピアカウンセラーなどの障がい当事者の役割を増やす入所施設を目指すべきである。 (尊厳が守られた支援であること) 〇障がい当事者はもちろん、障がい福祉の支援者も、しっかり尊重され、誰もが意欲を高めて生き生きと活動できる入所施設であるべきである。 〇福祉サービスの提供にとどまらず、友達、活躍の場所、心地いい居場所など、福祉サービスの枠を越えて、支援を組み立てていく入所施設を目指すべきである。 〇同じ法人内の事業所にとどまらず、他の法人の事業所も活用し、日中の働く場所(日中活動)と住む場所を分ける、いわゆる「職住分離」を進める入所施設を目指すべきある。 〇地域の様々な場所で、いろいろな日中活動、仕事が行えるよう取り組み、それらの日中活動を選ぶ際には、利用者が必ず体験をして、自分に合うかどうかを確かめることのできる入所施設を目指すべきである。 〇利用者同士が協力して日々の納期を守り、職場の目標を達成することや、取引先から信頼されることなどを通して、利用者の自己肯定感を高めることのできる入所施設であるべきである。 (自律的な支援の改善がなされること) 〇万一、不適切な支援が行われたときにも、その支援が一体どういう状態だったのか、なぜそういう事態になったのか、施設ぐるみで再検証し改善していく取組みができるよう、運営体制の構築を図っていくことが可能な入所施設を目指すべきである。 (地域と関わり、地域を変えていくこと) 〇入所施設が「内向き」の考えに陥らず、地域を作っていくという視点で地域生活移行を進めていく運営を行う入所施設を目指すべきである。 〇入所施設を終の棲家にしないよう、入所施設だけで障がい福祉の課題を解決するのではなく、地域の社会資源の中で、他の事業所等と連携して、地域全体で障がい当事者の生活をどう支援していくかを考えていく入所施設を目指すべきである。 〇入所施設の中で完結する支援でなく、施設から外に出て行く場所を作り、地域との関わりの中で、利用者の可能性が広がって、本人の自己肯定感が得られるような日中活動を保障することのできる入所施設を目指すべきである。 (参考資料10) 障害者の権利に関する条約(抄)(平成26年1月30日) 第十四条 身体の自由及び安全 1締約国は、障害者に対し、他の者との平等を基礎として、次のことを確保する。 (a)身体の自由及び安全についての権利を享有すること。 (b)不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の?奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の?奪が障害の存在によって正当化されないこと。 第十九条 自立した生活及び地域社会への包容 この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。 (a)障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。 (b)地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。 (c)一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。 (参考資料11) 障害者基本法(抄)(昭和45年5月21日法律第84号) (目的) 第一条 この法律は、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本原則を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。 (地域社会における共生等) 第三条 第一条に規定する社会の実現は、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを前提としつつ、次に掲げる事項を旨として図られなければならない。 一全て障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。 二全て障害者は、可能な限り、どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。 三全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。 (国及び地方公共団体の責務) 第六条 国及び地方公共団体は、第一条に規定する社会の実現を図るため、前三条に定める基本原則(以下「基本原則」という。)にのつとり、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に実施する責務を有する。 (参考資料12) 第6期障害福祉計画(令和3年度〜5年度)について 障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針(抜粋)(平成18年厚生労働省告示第395号) 【最終改正 令和2年厚生労働省告示第213号】 第一障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の提供体制の確保に関する基本的事項 一基本的理念 市町村及び都道府県は、障害者総合支援法や児童福祉法の基本理念を踏まえつつ、次に掲げる 点に配慮して、総合的な障害福祉計画等を作成することが必要である。 3入所等から地域生活への移行、地域生活の継続の支援、就労支援等の課題に対応したサービス提供体制の整備 障害者等の自立支援の観点から、入所等(福祉施設への入所又は病院への入院)から地域生活への移行、地域生活の継続の支援、就労支援といった課題に対応したサービス提供体制を整え、障害者等の生活を地域全体で支えるシステムを実現するため、地域生活支援の拠点づくり、NPO等によるインフォーマルサービス(法律や制度に基づかない形で提供されるサービス)の提供等、地域の社会資源を最大限に活用し、提供体制の整備を進める。 特に、入所等から地域生活への移行については、地域生活を希望する者が地域での暮らしを継続することができるよう、必要な障害福祉サービス等が提供される体制を整備する必要があり、例えば、重度化・高齢化した障害者で地域生活を希望する者に対しては、日中サービス支援型指定共同生活援助により常時の支援体制を確保すること等により、地域生活への移行が可能となるようサービス提供体制を確保する。 また、地域生活支援の拠点等の整備に当たっては、地域生活に対する安心感を担保し、自立した生活希望する者に対する支援等を進めるために、地域生活への移行、親元からの自立等に係る相談、一人暮らし、グループホームへの入居等の体験の機会及び場の提供、短期入所の利便性・対応力の向上等による緊急時の受入対応体制の確保、人材の確保・養成・連携等による専門性の確保並びにサービス拠点の整備及びコーディネーターの配置等による地域の体制づくりを行う機能が求められており、今後、障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据えて、これらの機能をさらに強化する必要がある。こうした拠点等の整備にあわせて、相談支援を中心として、学校からの卒業、就職、親元からの自立等の生活環境が変化する節目を見据えて、中長期的視点に立った継続した支援を行う必要がある。 第二障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の提供体制の確保に係る目標 障害者等の自立支援の観点から、地域生活への移行や就労支援といった課題に対応するため、令和5年度を目標年度とする障害福祉計画等において必要な障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の提供体制の確保に係る目標として、次に掲げる事項に係る目標(成果目標)を設定することが適当である。また、これらの成果目標を達成するため、活動指標(成果目標を達成するために必要な量等)を計画に見込むことが適当である。なお、市町村及び都道府県においては、成果目標及び活動指標に加えて、独自に目標及び指標を設定することができるものとする。 一福祉施設の入所者の地域生活への移行 地域生活への移行を進める観点から、令和元年度末時点の福祉施設に入所している障害者(施設入所者)のうち、今後、自立訓練事業等を利用し、グループホーム、一般住宅等に移行する者の数を見込み、その上で、令和五年度末における地域生活に移行する者の目標値を設定する。その際、福祉施設においては、必要な意思決定支援が行われ、施設入所者の地域生活への移行等に関し、本人の意思が確認されていることが重要である。当該目標値の設定に当たっては、令和元年度末時点の施設入所者数の6パーセント以上が地域生活へ移行することとするとともに、これに合わせて令和5年度末の施設入所者数を令和元年度末時点の施設入所者数から1.6パーセント以上削減することを基本とする。 当該目標値の設定に当たっては、令和2年度末において、障害福祉計画で定めた令和2年度までの数値目標が達成されないと見込まれる場合は、未達成割合を令和5年度末における地域生活に移行する者及び施設入所者の削減割合の目標値に加えた割合以上を目標値とする。 なお、施設入所者数の設定のうち、新たに施設へ入所する者を見込むに当たっては、グループホーム等での対応が困難な者等、真に施設入所支援が必要な場合の検討等を市町村、関係者により協議の上、その結果を踏まえて設定すべきものであることに留意する必要がある。 加えて、障害者支援施設においては、施設入所者の個々の状況に応じた意思決定支援の実施や地域における関係機関との連携により、施設入所者の地域生活への移行に取り組むことと併せて、施設入所者等の生活の質の向上を図る観点から、一層の小規模化等を進めること、障害者の重度化・高齢化に対応した専門的なケアを行う体制を確保することが求められる。さらに、障害への理解を促進するため、地域交流の機会を確保するとともに地域で生活する障害者等に対する支援を行う等、地域に開かれていることが望ましい。