資料2-2 障がい福祉施策の充実強化が必要ではないか(論点案〜大事項) 障がい者の高齢化に伴う支援のあり方についてどう考えるか (1)現状・課題 ○内閣府「令和3年版高齢社会白書」によると、令和2年10月1日現在、日本の総人口約1億2,571万人に対し、高齢者は3,619万人となり、総人口に占める65歳以上の人の割合(高齢化率)は28.8%となっている。神奈川県では、令和2年1月1日現在、総人口約920万人に対し、65歳以上人口は約231万人で、高齢化率は25.4%となっている。 ○国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」における出生中位・死亡中位推計では、2040年には、総人口1憶1,092万人に対し、高齢者は3,920万人と見込まれており、その時の日本の高齢化率は35.3%に上ると推計されている。人口構造は短期間で大きく変化することはないため、今後も高齢化が進むものと考えられる。 ○65歳以上の高齢の障がい者数については、平成28年の国立のぞみの園の調査(※)によると、全国で高齢障がい者は487万人、そのうち2.9万人が障害者支援施設等に入所しており、1.4万人がグループホームを利用しているとされている。 ※「発達障害者支援における高齢期支援に関する実態調査報告書」(平成28年、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園) 〇また、厚生労働省「平成28年生活のしづらさ等に関する調査」によると、在宅の高齢障がい者数は341.8万人であり、同時点の高齢者数3,459万人に対する割合が約10%であった。これを将来推計人口に当てはめると、2040年の在宅の高齢者数が  3,920万人と見込まれることから、2040年の在宅の高齢障がい者数は、その10%、すなわち約390万人と推察される。 〇公的な障害福祉サービスにおいては、障がい福祉と介護サービスの円滑なつながりを確保するため、平成30年に「共生型サービス」が創設されている。本県では、令和3年6月現在、介護保険サービスの訪問介護16事業所、通所介護2事業所、障害福祉サービスの居宅介護6事業所、重度訪問介護6事業所、生活介護14事業所、自立訓練(機能訓練・生活訓練)3事業所、児童発達支援2事業所、放課後等デイサービス3事業所、短期入所3事業所が共生型サービスの指定を受けている。 〇また、平成30年から、現在65歳以上で65歳になるまでに5年以上、特定の障害福祉サービスの支給決定を受けていた人で、障害支援区分が区分2以上であることなど一定の要件を満たす場合、申請により障害福祉相当介護保険サービスの利用者負担額が償還される制度(新高額障害福祉サービス等給付費)も始まった。 ○障がいがあるがゆえに、ターミナルケアが必要となった場面で住み慣れた場所での支援を受けることが困難となる高齢の障がい者もいるという報告もある。歳を重ねて、終末期ケアの場所や、医療処置の必要がなくなったあとの看取りなどの課題は、障がいにかかわらないこととして捉えていく必要がある。? (2)検討の方向性 (医療、看護体制の整備) ○高齢障がい者が住み慣れた場所で最期まで生活を継続できることが可能となるよう、一義的には市町村が、訪問看護や訪問医療等のサービスを受けやすい体制を整備するよう努めることとし、県はその実現のための支援を行うこととしてはどうか。 ○在宅で常時医療的ケアが必要な高齢障がい者に対し、グループホームや障害者支援施設において、夜間の緊急時の対応が可能となるよう、県は、夜間の看護師配置のための財政支援措置など、必要な体制を構築する取組みについて検討してはどうか。 (居住支援の基盤整備) ○県は、高齢障がい者の受け入れを念頭に置いた、既存のグループホームや障害者支援施設等のバリアフリー化を図るために必要な財政的措置を引き続き講じるとともに、建物の設計やそのノウハウの共有を通して、高齢障がい者も住みやすい居住支援の基盤整備を進めることとしてはどうか。 (人材育成) ○事業所等は、支援員等が高齢障がい者の支援スキルや知識、身体的介護の方法等について、適切に学び、支援に生かすことができるよう、必要な研修等の機会を設けることとし、県は、市町村と連携し、事業所等が研修等を適切に受講できるよう支援を行うこととしてはどうか。 (共生型サービス等のより一層の推進) 〇行政は、障がいを持った方が、年齢を理由にサービスが断続化されることなく、住み慣れた場所での生活や、受け慣れたサービスを継続して受けることが可能となるよう、共生型サービスが過不足なく整備されるよう事業所等に対し制度の周知を図るとともに、自立支援協議会などの場を活用し、地域における共生型サービスの必要度について関係者の議論を促す取組みを進めてはどうか。 〇県は、介護サービス事業者が、障がいのある人を受け入れやすくするため、高齢障がい者に対する支援のノウハウに乏しい介護サービス事業者に対して、障害者支援施設等の専門職員を派遣し、当該施設等に障がい者支援に関する技術指導や助言を行う仕組みを創設することとしてはどうか。 (障がい分野と介護分野の連携強化) ○当事者が受けたいサービス等の意思を十分に反映し、障がい福祉と介護保険のそれぞれのサービスを組み合わせた総合的なサービス提供が実現できるよう、県は、自立支援協議会などの場を活用し、当事者や家族と相談支援専門員、ケアマネージャー、市町村の障がい福祉主管課、地域包括支援センター、共生型サービス提供事業所、医療機関、訪問看護事業所等の関係者が集まる機会を設けることとしてはどうか。 これまでの主なご意見(高齢の障がい者に関して) 〇高齢になってもやはり“くに”に帰って、親御さんあるいは兄弟姉妹、そういう方の元に帰りたいという希望にも沿う必要があるのではないか 〇障がいのある方の高齢化に対応する点から、障がいの分野においても、特養的な24時間365日型の居住支援の場が必要ではないか 〇入所者の高齢化は、入所施設やグループホーム共通の課題であり、その方たちの受け皿としての入所施設の役割も今後ますます必要になってくるのではないか 関係団体ヒアリングでの主なご意見(高齢の障がい者に関して) 〇地域の障がい者の高齢化・重度化に対応できる機能を持ってほしい。(神奈川県知的障害施設団体連合会) 〇障がいの特性に合わせた受入れを行っているが、高齢化は避けて通れず、介助色より介護色が色濃くなっていることは、どの事業者も同じ悩みである。(神奈川県知的障害施設団体連合会) 〇障害者支援施設を生活の場所として暮らしてきた方にとって、高齢になったからといって、すぐに介護保険の施設に移行するというのは、当事者目線から考えても、そんなに簡単な話ではない。(神奈川県知的障害施設団体連合会) 〇施設入所者は介護保険適用外となっているため、施設在籍のままではサービスが受けられない。(神奈川県知的障害施設団体連合会) 〇県立施設には、医療的ケアの対象者や高齢の障がい者の介護保険への移行支援のモデルづくり等を担ってもらいたいと思う。(神奈川県知的障害施設団体連合会) 〇障がい者の入所施設が終末期をどう担うのか、看取りの法的整備も必要ではないか。(神奈川県知的障害施設団体連合会) (参考資料1)我が国の高齢化の現状(令和3年版高齢社会白書から抜粋) 〇我が国は高齢化が進んでおり、令和2年10月時点で、高齢化率は約29%となっている(神奈川県は25.4%)  図表。単位:万人(人口)、%(構成比) 左から、総数、男、性比、女(令和2年10月1日) 人口総人口、12571、6116、94.7、6455 人口65歳以上人口、3619、1574、77.0、2045 人口65〜74歳人口、1747、835、91.6、912 人口75歳以上人口、1872、739、65.2、1134 人口15〜64歳人口、7449、3772、102.6、3677 人口15歳未満人口、1503、770、105.0、733 図表。単位:% 左から、総数、男、女 構成比総人口、100.0、100.0、100.0 構成比65歳以上人口(高齢化率)28.8、25.7、31.7 構成比65〜74歳人口、13.9、13.7、14.1 構成比75歳以上人口、14.9、12.1、17.6 構成比15〜64歳人口、59.3、61.7、57.0 構成比15歳未満人口、12.0、12.6、11.4 資料:総務省「人口推計」令和2年10月11日(平成27年国勢調査を基準とする推計値) (注1)「性比」は女性人口100人に対する男性人口 (注2)四捨五入の関係で、足し合わせても100%にならない場合がある (参考資料2)神奈川県内の共生型サービス事業所数(指定か所数) 〇共生型サービスの制度は平成30年から始まったばかりであるため、神奈川県内の共生型サービス実施事業者の指定数は少ない 図表。左から、区分、介護保険サービス、か所数 ホームヘルプサービス、訪問介護、16 デイサービス、通所介護、2 ショートステイ、短期入所生活介護、0 図表。左から、区分、障害福祉サービス、か所数 ホームヘルプサービス、居宅介護、5 ホームヘルプサービス、重度訪問介護、6 デイサービス、生活介護、14 デイサービス、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、3 デイサービス、児童発達支援、2 デイサービス、放課後等デイサービス、3 ショートステイ、短期入所、3 (参考資料3) 高齢の知的障がい者の支援についての課題整理 〇国立のぞみの園の調査では、65歳以上の療育手帳保持者は約5万人、その1/3相当が在宅であり、親の介護や死別といった意思決定すべき重大な案件が多く存在。このため、支援者は、広範囲の知識や多職種の専門家との日頃からの連携が必要と指摘している 壮年期(45〜54歳):居住・日中活動の障害福祉サービス利用、障害認定を受けている人、顕在化していない人、親世代が後期高齢の年代に 中年期(55〜64歳):居住。日中活動の障害福祉サービス利用、障害認定を受けている人、兄弟・親族が保護者機能引き継ぎ 高齢期(65歳〜):居住・日中か都度の障害福祉サービス利用、居住・日中活動の介護保険サービス利用、障害認定を受けている人 課題@心身の高齢化が早い 課題A高齢化対応が求められる障がい者支援 課題B高齢福祉サービスへの移行 課題C新たに登場する知的障がい 課題D様々な意思決定の仕組み 出典:独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園ニュースレター第39号(平成26年1月) (参考資料4) 高齢の知的障がいの人の疾病罹患率 〇知的障がいの人とそうでない人の疾病罹患率を比べると、知的障がいの人が疾病罹患率が高いとする調査結果がある。とりわけ、白内障に罹患する人の割合が高く、視力低下に注意を払う必要があるとの指摘をしている。  出典:「高齢知的障害者の視力低下への支援」(社会福祉法人侑愛会侑愛荘施設長祐川暢生(国立のぞみの園ニュースレター vol.69) 図表。単位は%。左から、区分、高齢知的障害者群40〜49歳、高齢知的障害者群50〜59歳、高齢知的障害者群60〜69歳、一般高齢者群40〜49歳、一般高齢者群50〜59歳、一般高齢者群60〜69歳 脳血管疾患、0.2、2.3、3.6、1.1、2.6、1.5 虚血性心疾患、2.2、4.0、7.7、0.2、0.5、2.5 高血圧症、1.5、5.3、13.3、0.1、0.4、0.3 糖尿病、2.2、2.7、6.0、0.6、0.8、2.1 貧血、5.6、3.3、2.4、0.1、0.1、0.2 慢性胃炎・潰瘍等、9.5、10.0、10.1、0.5、0.5、1.1 肝炎・肝機能不全、5.6、6.3、6.0、0.8、1.0、1.3 関節痛・腰痛等、1.7、2.7、2.4、0.2、0.4、1.3 白内障、3.6、8.7、16.7、0.1、0.1、0.6 水虫・白癬菌等、26.5、18.3、14.9、0.1、0.1、0.2 出典:日本知的障害者福祉協会「高齢知的障害者の援助・介護マニュアル」平成11年初版