当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会第4回(令和3年9月22日)資料3−1 第3回委員会における主な意見 1障がい福祉の将来像について (1)津久井やまゆり園事件を契機に、地域共生社会の実現を図っていくべきではないか。 ○子どもの頃から、地域のいろいろな人の中で生活することが大事である。また、それは家族支援にもつながる。そういう視点も是非持ってほしい。 ○地域で暮らすには、地域の方との会話は大事。常に会話を大事にして、そうすると、だんだんいのち輝くようになるのではないか。 ○「ともに生きる社会かながわ憲章」はそのまま読むと難しい。知事が分かりやすく説明してくれてイメージができた。知事の言葉でもっと発信してほしい。 ○憲章はできたが、虐待はなくなっていない。新しい憲章やルールが必要で、そのときは僕たちの気持ちを聞いてほしい。 (2)障がい福祉において、家族目線・支援者目線ではなく、当事者目線の考えを徹底するべきではないか。 ○これまでは体験の場が少なく、選択肢が限られていたが、意思決定支援の中で、当事者が生活の場や暮らしの場を選択できるようになればいい。 ○地域生活移行を進めていく上で、長く入所している利用者の方たちには、丁寧に意思決定支援を進めていく必要がある。 ○オール神奈川で、意思決定支援の取組みを推進することが必要である。津久井モデルで、当事者が検討の場に参加することで話合いの形式が変わり、サービスを使う主人公であるとより意識されるとのことだった。県立施設全体、中期的には神奈川県内の民間施設でも、この神奈川県モデルというものを構築できるとよい。 (3)強度行動障がい、高齢障がい者、医療的ケア児など困難性の高い支援課題に対し、県として果敢に取り組むべきではないか。 ○強度行動障がいに関して、本当にシステム論だけで解決するのかということは、一度考えた方がよい。施設における構造化により刺激を排除していくという形での暮らしにも、行動障がいが生まれる原因がある。仕組みだけではなく、発達という部分に関して、どのように保障していくのか。 ○それには、様々な活動をするしかない。多様な活動を用意することと、そこに挑戦していくことが、一人ひとりの可能性を導いていくことになる。地域移行の鍵は、日中活動である。 ○他県の取組事例で、強度行動障がいの方の地域生活への移行が進まないとの話があった。是非、そういう方の地域生活移行に取り組むべきである。 ○障がいのある方の高齢化に対応する点から、特養が現存しているが、障がいの分野においても、特養的な24時間365日型の居住支援の場が必要なのではないか。 (4)障がい者は地域社会を構成する一員であり、本人が希望する場所で、尊厳をもって、その人らしく暮らすことが当たり前であるべきではないか。 ○地域移行を目指すという考えはよい。しかし、地域で暮らすというのは不安だと思う。入所施設の仲間が本当に地域で不安なことがいっぱいあるのに、地域移行と言ってよいのか不思議である。 ○障がいのあるなしにかかわらず、地域で安心安全な生活というのは難しい。困 った事態になったときに、それを支えていくというのが地域社会の本来の姿ではないかと思う。 ○入所施設に知的障がいのガイドヘルパーをつけてほしい。当事者同士のガイドヘルパーを利用して外に出て、「地域ってこんなだよね」ということが分かるとよい。 ○本人のやれないことに対して、仲間同士でも協力してあげると、だんだんと「いのち輝く」のではないか。 ○法人や事業者が、自分たちだけで何とかしようとすると、どうしても自分たちの中でやった瞬間から、本人たちの目線から外れてしまう。自分たちでできないところを、他の法人に応援してもらうことは大事である。 ○当事者の方が、地域でその人らしい生活を送るためには、サービス基盤の整備が必要である。 ○グループホームや入所施設をサービス提供の選択肢と位置付け、多様なニーズを持つ当事者が、限られた資源を有効に活用し、当事者主体の地域生活を実現できるよう、サービスの質、仕組みづくりが必要である。 ○グループホームの入居者が、日中活動と移動の保障が必ず行えるような相談支援体制の取組みが必要である。県全体でピアカウンセリング、ピアサポートが実施できる研修体制と企業等への啓発等を実施すること、一人暮らしの方の支援を行う場として、現行の自立支援生活援助事業に加えて、居住支援協議会を設置する必要がある。 ○人口規模に応じた就労援助センターの設置と障がいのある方が長期間働けるように、企業等と障がいのある方をつなぐ役割として、ジョブヘルパーの創出を提案したい。 (5)障がい者故の価値の創造や、SDGsの「誰一人取り残さない」持続可能な多様性と包摂性のある社会の実現を目指すという理念を生かすべきではないか ○障がい者と家族だけではなく、子どもや高齢者など、もっといろいろな人が一緒に生きているという社会像を描くのが将来展望としてよいのではないか。 ○福祉の分野だけでなく、医療あるいは教育の分野との横の連携が、地域社会の中では必要である。 2県立障害者支援施設のあり方について (1)地域生活支援拠点の役割を持たせ、緊急時に対応できる短期入所の整備を必須とし てはどうか。 ○県立施設は、民間で実施できない専門的な機能を有する貴重な社会資源である。今後は、地域生活支援拠点事業の神奈川版として、多機能地域生活拠点の機能を持つことが重要ではないか。 ○入所施設は、地域とのつながりが少ない。地域に出てつながりを持つことも大事だし、一方で、地域の方々にどう施設に来てもらうかという視点も大事である。 ○地域の中で、緊急受け入れの場が必要である。地域生活支援拠点として、短期入所の定員枠を広げて、さらなる緊急の受け入れの場を作ってほしい。 ○地域での生活支援拠点としてのセーフティーネット的な役割もある。 (2)相談支援の機能と人材育成の機能を充実させることとしてはどうか 〇障がい保健福祉圏域全般の基幹的な相談機能として、中井やまゆり園の「かながわA(エース)」のような機能を他の県立施設に導入していく必要がある。 ○県立施設に配置された専門職、心理職、PT等が民間のコンサルテーション機能を持ち、一定期間、民間施設と協働して、継続的伴奏型支援を行うことが必要。そのための人材養成で民間施設との研修、職員交流の場が必要。 〇神奈川には行政の枠を超えた神奈川らしいストレングスというものがある。オール神奈川、官民協働で取り組む障がい福祉の関係組織、団体が多数存在する。神奈川は、団体間の協力体制というものが、他の県よりもスムーズではないかというのが実感である。これからの将来展望をしっかりと構想していくことを可能とするためにも、官民協働で、オール神奈川で、行政を超えた多くの人材を生かしていく必要がある。 (3)長期の入所者の地域移行を加速させるとともに、通過施設(有期限の入所期間)と して位置づけることとしてはどうか。 ○人手やハードの問題を含めて、民間では難しい利用者を県立施設で受けてもらい、3年くらいで民間施設に移行するという取組みが行われてきた経過がある。一定期間の専門的なトレーニングを実施して、地域に移行する通過型の機能を持つことが必要だと思う。 ○地域の中心となる施設には、多くの当事の皆さんが使えるようにする必要がある。地域の中で通過型施設として位置付け、地域移行のステップとしての役割を担い、施設の構造は小規模、ユニット化し、地域の暮らしに近づける必要がある。 ○地域生活移行を進める上で、市町村や地域のニーズを第一線で感じている相談支援事業所との連携が欠かせない。 (4)長期入所の定員は漸減させることとし、終の棲家を念頭に置いた新規の入所につい  て、原則として、行わないこととしてはどうか。 ○定員減を進めることと、定員を減らした分の人たちが地域で暮らす際の受け皿の問題は並行して議論すべきである。 ○入所施設の定員減や地域移行は、本人の意思やいろいろな体験の中で地域移行に目覚めたときに初めて可能になるものである。行政が最初から、施設の定員を減らして地域移行させるということは、本人に対して失礼だと思う。 ○県立施設の定員を減らすプロセスとして、グループホームという選択肢の他に、入所施設がバックアップして段階的に地域移行できるような入所施設のサテライト型居住事業を提案したい。 ○県立施設の定員減を行い、地域移行を進めるに当たっては、民間施設の協働が必要である。グループホーム、在宅支援等、地域で支える場の整備に向けて、一定の検討期間を設けて、神奈川県が政令指定都市、中核市と連携し、県単独の予算化、地域資源の整備を進めるということが、神奈川県の一つの特徴ではないか。 ○現在入所している方の地域移行も含めて、生活の質(QOL)を高めていく必要がある。老朽化した施設を、小規模化、個室化、ユニット化というような形で見直すことも必要である。 (5)民間では担えない理由を明確にし、目的を達成するために必要な実施態勢についても検討してはどうか。 ○指定管理者が、地域のアセスメントを行い、地域性等に応じて、日中支援の場や グループホームを新たに実施できるよう、一定の権限、裁量権を持たせることも検討すべきである。 ○長野県西駒郷の事例は、長野県が県全体の障がい福祉の水準をアップさせたとい う非常に全国にまれな例だと思う。一施設、あるいは県立施設や事業団をどうするでなく、そのことを考えるには全県のことを考えないとやっぱり無理ということ。これは今後の神奈川県の方向性でも一致している。それぞれの県立施設をどうするかだけではなく、全県のことを考えなければ、県立施設のあり方も決まらない。 ○横浜市、川崎市、相模原市の3政令指定都市と、横須賀市という中核市があり、それぞれで障がい福祉に関する補助金体系がある。4市を除く神奈川県域では、地域生活サポート事業があるものの、3政令指定都市との補助金体系に大きな格差があるが、オール神奈川の機運を作っていくためには、そういう壁をどう乗り越えていくかが大きな課題である。 3その他 〇三浦しらとり園もさがみ緑風園も、医療的ケアが必要な人を受入れることを前提に作られている施設であるため、医療施設を併設しており、あまり外に出ないという前提で運営をされている。医療的ケアが必要な人も外出のチャンスを作っていくことが重要であり、外部の医療機関を活用して、時々外へ出て行くということは可能ではないか。将来的な方向としては、日中活動は外に出て行き、医療機関も外へ出ていく、そういう方向で今後のあり方をさらに検討すべきである。 〇三浦しらとり園及びさがみ緑風園に併設される診療所については、医療的ケアも含めて障がいのある人に専門特化をした医療提供機関であり、診療所の機能を仮に残すのであれば、一般病院で対応が難しい地域の障がいのある人たちにも使えるようにし、地域の安心につながる仕組みが設けられないか検討すべきである。 〇三浦しらとり園は障がいのある子どもを受け入れており、障がいのある子どもの今後の支援の在り方を含めて整理しておく必要がある。 〇三浦しらとり園及びさがみ緑風園については、県立施設全体の検討とは別に、それぞれの施設の個別事情がある。先の検討部会における、両園の身体拘束ゼロなどの取組実績をどう評価するのか、また、併設診療所の役割をどう評価するのか、地域における貢献や利用者に対する貢献など、費用対効果も含めて、時間をかけて、さらなる検証が必要である。