資料6−1  当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会「かながわモデルの創設に向けた諸課題・論点整理」(社福)星谷会理事長河原雄一 1.県立施設と民間障害者支援施設の在り方を含む将来構想について (オールかながわでの意思決定支援の推進) 〇津久井やまゆり園で実施した意思決定支援の取り組みを全県立施設で実施することを提案したい。(利用者はサービスを使う主人公であることを意識する。) ⇒中期的には全県下の民間施設の全施設でも実施できるよう「かながわモデル」の構築を図る。 ⇒千葉県で実施予定の「意思決定支援コーディネーター」の配置の検討。 〇終の棲家論については、利用者の意思決定支援に基づいて、利用者がどこに住み続けたいか?をしっかり検証する。 (これからの入所施設の機能について) 〇高齢化への対応⇒わが国では特別養護老人ホームが現存する。障害のある方の高齢化に対応する点から、障害の分野においても特養的な24時間・365日型の居住支援の場が必要である。 〇現在の入所施設は、報酬上昼夜分離の利用が出来る仕組みである。出来るだけ施設内にとどまるのでは無く、地域の日中活動の場を活かせようにシステムを構築する必要がある。 〇県立を含む民間の入所施設は、40名前後定員の小規模化を図る。ハード面では個室化・ユニット化を図り、地域で利用者が選択できる居住支援の場として位置付ける。 〇定員減にあたっては、居住の規模を津久井モデル、もしくは横浜市が老朽改築に伴う建て替えで予算化し実施した「個室化・ユニット化」を推進する。 〇県立施設等の定員減を行い、地域移行を進めるにあたっては、「民間施設と協働し、グループホーム・在宅支援等地域で支える場の整備に向け一定の検討期間を設けて、県が、政令指定都市・中核市と連携し県単独の予算措置を行い地域資源の整備を進めること」が重要と考える。 2.県立施設の将来構想〜地域の拠点、社会資源としての再編成〜 ・県立施設の長期ビジョンについては、千葉県の袖ケ浦の事業団の検討と同様5年〜10年位のスパーンを掛けて議論する必要がある。 ・県立施設は、民間施設で実施できない専門的な機能を有するなど貴重な社会資源である。今後の県立施設は、国が示している「地域生活支援事業」のかながわ版として、多機能地域生活支援拠点の機能を持つことが重要と考える。 ・県立施設は、利用者の意思決定支援を行った上で、出来るだけ定員減して、居住支援の場として位置づけ機能の再編成を行う必要がある。 ・意思決定支援を行った結果、現行の県立施設に留まりたい利用者には、第三者の目が入るよう必ず相談支援専門員が担当。(居住の場) ・一定期間の専門的なトレーニングを実施し、地域に戻る通過型の機能を持つ。(トレーニング・体験の場) ・地域生活支援拠点事業・虐待等の緊急受け入れの機能の強化⇒短期の定員枠を広げる。(緊急受け入れの場) ・県立施設に配置された専門職(心理職・PTなど)が民間施設にコンサルテーションを行う機能を持つ。コンサルは単発の派遣型でなく、一定期間、民間施設と協働し継続的・伴走型の派遣を行う。そのため県立施設の福祉専門職の人材育成の充実を図る。併せて、民間施設との職員交流など研修の機会の充実を図る。(人材育成・人材派遣) ・障害福祉圏域全般の専門的・基幹的な相談支援機能の強化として、かながわエースの機能を全県立施設に持たせ、地域拠点の施設として再編成を検討する。(専門相談の場) ・利用者本目線の支援が構築できるよう、日中支援の場、グループホームの設立など県立施設も柔軟な対応ができるよう、一定の権限・自由裁量を持たせる必要があるのでは。そのためには、現状の県立施設の地域性と周辺地域に日中活動等を利用できるかどうか、地域アセスメントが必要と考える。 ・現行の県立施設は県内の障害福祉圏域ごとの設置になっていない。今後、仮に県立施設が地域の拠点機能を持つのであれば、障害福祉圏域を意識した再整備が必要と思われる。特に、湘南東福祉圏域への整備が必要と思われる。(地域の体制つくり) ・現行の県立施設は、障害者自立支援法施行以前に再整備され、昼夜分離を意識した機能・設備を要して居ない。その点では、老朽化も含め、現行の県立施設の建て替え等再整備に向け、一定期間をおいて将来構想を考えることが重要だと考える。 ・県立施設の定員を減らすプロセスとして、GHの設置だけでなく、入所施設がバックアップし段階的に地域移行を実施できるよう「入所施設のサテライト型居住事業」を地域展開することを検討。⇒一定の期間を経て、GHの事業に移行する。 県立施設の将来構想:地域の体制つくり (障害福祉圏域に一か所配置し関係機関等と連携を図る) 利用者を中心に、居住支援の場(小規模・ユニット化、日中支援も実施可)、体験・トレーニングの場(通過型支援)、人材育成(専門職による伴走型コンサルティング支援)、専門的相談支援(発達障害・行動障害)、緊急入れの場(短期入所の拡充)が連携する。 障害者支援施設のサテライト型施設 2013年5月新たな制度設計に向けた障害者サポート体系(日本知的障害者福祉協会政策委員会案) サテライト型施設は、障害者支援施設の分園として、定員10人以下の小グループで生活する居住の場と日常生活の支援、また利用者の状態像に応じた日中活動を一体的に提供する24時間ケアを行うことを目的とする。ただし、利用者が希望すれば外部の日中活動サービスを利用できるものとする。在宅支援や地域移行支援、相談支援は、本体施設がその機能を有していれば可とするが、サテライト型施設にその機能を持たせることもできる。  障害者支援施設がサテライト型施設を設置する場合は、サテライト型施設の定員は本体施設の定員に含むものとし、これにより障害者支援施設の小規模化を誘導し、入所者の生活の質の向上を図る。  原則として、本体施設の敷地外に設置するものとするが、敷地内設置の可否については検討が必要である。 サテライト型のイメージ 障害者支援施設定員50名(主たる施設定員30名、サテライト定員8名、サテライト定員7名、サテライト定員5名) 3.地域での暮らしを支える機能の強化 @グループホーム ・グループホーム機能の強化⇒世話人ではなく、生活支援員が中心となる場に再構築する。それなりの人的配置を検討する。 ・グループホーム利用者が、日中活動と移動支援の保障が必ず行えるよう、相談支援体制の充実が必要がある。 A地域で共に生きる取りくみ ・県全体でピアカウンセリング・ピアサポートが実施される研修体制の構築。 ・障害のある方を理解するため、教育・企業等への啓発研修を実施する。 B一人暮らしの支援 ・一人暮らしの方の支援を行う機関の設置⇒自立生活援助事業・居住支援法人・居住支援協議会の設置。 (働く場への支援) ・障害のある方の働く場の支援⇒福祉圏域の人口規模に応じた就労援助センター等の設置。 ・ジョブコーチの他、障害のある方が長期間働けるよう企業等と障害のある方繋ぐ役割として「ジョブヘルパー(仮称)」の創設。 ジョブヘルパー:イメージ図 2013年5月新たな制度設計に向けた障害者サポート体系(日本知的障害者福祉協会政策委員会案)  障害者雇用型(A型事業所)(雇用契約=社会保険・労働保険(原則)、補助金=職業支援員(10:1&7.5:1)○最賃減額特例(有り)○賃金補填(有り)(労働3法適用範囲)や一般雇用(企業等)(一般採用試験等による○最低賃金、職場の合理的配慮【ハード・ソフト面】を行った場合に補助金ありに対し、社福・NPOによる人的支援(ジョブヘルパー(個別給付)○移動支援○身体介護○コミュニケーション支援等) 4.指定管理の要件について・指定管理にあたっては、県職員の退職後の行き場について、県が認識しコントロールすることが重要である。 ・指定管理の法人採用職員が次世代を担えるようプロパーが育つ仕組みを有する法人であることが望ましい。 ・身体拘束、虐待防止の事例検討・研修の機会が頻回に実施されていることも重要である。 ・民間施設と県立施設の職員間の交流の機会の積極的な実施も望ましい。 オールかながわでの利用者目線の支援に向けた取り組みについて 〇「オールかながわ」で取り組むのに難しい点 ・横浜市、川崎市、相模原市の三政令指定都市、横須賀市の中核市があり、それぞれの市で障害福祉に関する補助金体系がある。 ・4市を除く市町村が神奈川県が所管。県独自の地域生活サポート事業はあるが、三政令指定都市との補助金体系に大きな格差がある。 ・第一回の委員会でも述べたが、神奈川県ならではの行政の取り組みの差をどのように乗り越えて「オールかながわ」の体制を作るかは、予算面・制度設計を行うには大きな壁があると思う。 〇「かながわ」らしさ・かながわの障害福祉のストレングス ・「オールかながわ」で官民協働で取り組む障害福祉関係の組織・団体は複数ある。 ・NPO法人かながわ障がいケアマネジメント従事者ネットワーク(KCN)は、2007年9月以降、次の理念の基づき、県のサビ児管研修、相談支援従事者研修等人材育成に取り組んでいる。 (KCNが目指す方向) ・障がいのある方々が地域で安心して、自分らしく暮らしていくために、有効なケアマネジメントの手法を、相談支援に従事する者等が広く地域に提供できることを目指しています。 官民が協働し相互のノウハウ等を提供しあうことを基本とし、相談支援に従事する者、サービス管理責任者等の専門性の向上を図り、神奈川県の地域力を高めるため活動を積極的に行っていくことを目的として事業を運営しています。 〇県内では、官民協働で多くの人材が「オールかながわ」として、法定研修の企画・運営・人材育成に取り組み、地域力の向上に努めている。利用者目線の支援を実践しようとする多くの人材がいることが「かながわ」の強みだと思う。こうした人材を活用することがかながわの障がい福祉の将来を作ると思う。