資料5 県立障害者支援施設のあり方についての検討の視点など 令和3年9月3日神奈川県福祉子どもみらい局 ご議論いただく際の視点について(案) 2040年頃の本県の障がい福祉の将来像を展望し、その実現に向けて、中長期的な視点から、行政、事業者、県民がどのように取組んでいくべきか議論をお願いしたい。 ※本県が目指す障がい福祉の将来像「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念が浸透し、本人の意思決定を踏まえた、その人らしい生活を支える当事者目線のサービス基盤の整備が進んだ地域共生社会(詳細は別紙)     ・近年の政策動向及び国の社会保障に関する先行研究等を踏まえると、次のような視点(案)が考えられるのではないか @津久井やまゆり事件を契機に、地域共生社会の実現を図っていくべきではないか A障がい福祉において、家族目線・支援者目線ではなく、当事者目線の考えを徹底するべきではないか(意思決定支援など) B強度行動障がい、高齢障がい者、医療的ケア児など困難性の高い支援課題に対し、県として果敢に取り組むべきではないか(地域の担い手の確保、人材育成など) C障がい者は地域社会を構成する一員であり、本人が希望する場所で、尊厳をもって、その人らしく暮らすことが当たり前であるべきではないか(社会資源の充実、サービス基盤の整備 D障がい者故の価値の創造や、SDG´sの「誰一人取り残さない」持続可能な多様性と包摂性のある社会の実現を目指すという理念を生かすべきではないかなど) ・なお、先の「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」報告書において、「県立施設のあり方について、民間施設の状況も踏まえ、さらなる検討を行うべき」旨提言されていること、また、神奈川発の当事者目線の新しい障がい福祉のスタートを、令和5年度(次期指定管理開始期)からと考えていることから、障がい福祉の将来像を議論する中で、まずは、障害者支援施設のあり方について論点整理を行っていただきたい 本県が目指す障がい福祉の将来像(長期的なビジョン)の具体的なイメージ (障がい者差別解消) B障がい者が、意思決定支援により、本人の意思に沿った当事者目線の障害福祉サービス等の必要な支援を受けることができ、また、どこで誰と生活するかを選択する機会が確保されていること C障害者支援施設における虐待ゼロを目指して、権利擁護がなされ、絶えず支援の検証と見直しが行われていること (生活水準、労働) D障がい者及び家族に、十分な生活水準が確保され、必要に応じ、困窮対策や住宅施策の活用ができること E障がい者が、それぞれ役割、希望に沿って働くことができること (文化的生活、社会参加、活躍支援 F障がい者が、レクリエーション、余暇及びスポーツに参加する機会を確保できていること G障がい者が、文化芸術やスポーツなどの分野で能力を生かして活躍できること (情報アクセス、地域共生その他) H障がい者が、表現及び意見の自由並びに情報へのアクセスを確保できていること I障がい者が、地域の担い手となり、その地域で支え合いながら、安心して暮らせること 当事者目線の福祉により、いのち輝く地域共生社会を実現する仕組みづくり 〇今般の将来展望検討委員会の提言を踏まえ、当事者目線の福祉を推進し、誰もが安心していきいきと暮らすことのできる、いのち輝く地域共生社会の実現を目指すため、継続して、各般の施策を着実に実施していくための仕組みを作ることが必要 「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念の普及に引き続き努めるとともに、将来展望検討委員会の報告書の提言を踏まえた各般の施策を、計画的、段階的に実施 支援者の目線ではなく、本人を中心に据えた当事者目線の支援に転換 (理念)神奈川県(市町村、事業者、団体等を含むオール神奈川で) 「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念の浸透により、当事者の社会参加の障壁を除去し、本人の意思決定を踏まえた、必要な障害福祉サービス等を円滑に提供できる体制を構築 VALUE(施策による課題解決)VISION(実現すべき未来) 誰もが安心していきいきと暮らすことのできる、いのち輝く地域共生社会 施策の効果を検証し、実施計画を改善していくPDCAサイクルをしっかり回す 「県立障害者支援施設のあり方」について議論を進める上での視点(案) ・県立の障害者支援施設は、昭和36年以降、時代の要請に対応し、直営施設として順次整備が行われ、その後、民間移譲や指定管理者制度への移行が進められてきた経過があるが、今日、民間では対応できない重度重複の障がい者や、強度行動障がいのある者、医療的ケアが必要な障がい者の受入といった役割を担っている。 ・しかしながら、先の「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」では、県立障害者支援施設6施設の検証を行ったが、取りまとめられた報告書において、虐待防止の観点から、これまで、利用者目線ではない、不適切な支援が行われている事例があったとの指摘を受けたことから、管理監督する立場にある県の指導態勢も併せて改善を進めている。 ・同検討部会報告書において、「県立施設のあり方について、民間施設の状況も踏まえ、さらなる検討を行うべき」旨提言されていること、また、神奈川発の当事者目線の新しい障がい福祉のスタートを、令和5年度(次期指定管理開始期)からと考えていることから、障がい福祉の将来像を議論する中で、まずは、障害者支援施設のあり方について論点整理を行ってはどうか。 【議論を進める上で考えられる視点(案)】 @地域生活支援拠点の役割を持たせ、緊急時に対応できる短期入所の整備を必須としてはどうか A相談支援の機能と人材育成の機能を充実させることとしてはどうか B長期の入所者の地域移行を加速させるとともに、通過施設(有期限の入所期間)として位置づけることとしてはどうか C長期入所の定員は漸減させることとし、終の棲家を念頭に置いた新規の入所については、原則として、行わないこととしてはどうか D民間では担えない理由を明確にし、目的を達成するために必要な実施態勢についても検討してはどうか 民間事業者の提供サービスの実態を踏まえ、中長期的な視点から、県立障がい者支援施設の果たす役割をどう再定義するのか、オール神奈川での議論につなげる (ご参考)県立障害者支援施設の現状を踏まえた、あり方に関する議論の視点 〇県立障害者支援施設に係る各種データや、過去のあり方の議論を踏まえ、以下の点についてご議論いただいてはどうか @県立障害者支援施設は、定員規模及び実入所者数が、全国平均の2倍程度であることをどう考えるか A県立障害者支援施設は、障害支援区分の重度な人の割合が、全国平均と比べ多いことをどう考えるか B県立障害者支援施設は、人員配置が全国平均と比べ手厚い(支援員一人当たりの入所者数が小さい)ことをどう考えるか C県立障害者支援施設は、新規入所者数及び退所者数が少ないように見受けられるが、これをどう考えるか D県立障害者支援施設の日中活動や余暇活動の状況をどう考えるか E県立障害者支援施設の入所希望者が一定数あることをどう考えるか F県立障害者支援施設が、入所者以外の障がい者に対して提供するサービスの状況について、どう考えるか G県立障害者支援施設に係る過去のあり方等の検討で語られている「目指す姿」と現状をどう考えるか H県立障害者支援施設に対し、指定管理者制度を順次導入してきたことをどう考えるか I県立障害者支援施設でしか担えないこととは何か 第2回委員会での大塚委員からのご報告の概要(国立のぞみの園関係) 〇殊法人国立コロニーのぞみの園(当時)は、昭和46年、心身障害者福祉協会法に基づいて群馬県高崎市に開設された、入所定員550人の大規模施設(コロニー)として開設された 〇平成14年の独立行政法人化をきっかけに、新規入所の停止と地域移行の推進を図り、規模の縮小を図る方針に転換した 【経緯】 ・特殊法人等整理合理化計画により、平成14年12月、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法が成立 ・平成14年8月、「国立コロニー独立行政化検討委員会」が設置され、国として提示すべき施策目標の内容等について検討が行われ、報告書(同15年8月)で、のぞみの園は、今後、新たな入所者を受け入れないことを基本とし、現入所者には、効果的かつモデル的な支援を行い、地域移行を進め、結果的に定員規模を縮小させていくこととした ・平成15年10月、新のぞみの園がスタートし、地域移行等の取組みより、昭和47年7月時点で入所者数が541人であったところ、令和2年9月時点の入所者数は205人まで縮小している (参考)平成15年から24年までの地域移行等実績(合計 150人) 〇グループホーム・ケアホーム 59人 〇宿泊型自立訓練事業所(旧通勤寮) 3人 〇在宅  11人 〇他の障害者支援施設(ケアホーム等への移行を前提)75人                   ・独立行政法人への移行(平成15年)後、その機能が、地域生活支援、自立や社会参加の促進などに大きく転換するなか、高齢化等で地域移行が困難な利用者の支援、施設老朽化、財政問題などに直面 ・平成29年に「在り方検討会」を設置し、中長期的な運営方針を検討、報告書(平成30年2月)では、@地域移行を引き続き推進、Aターミナルケア等質の高いサービス提供、B全国のセイフティネット機能(行動障がい・触法など)と調査研究・研修との一体的実施、などが盛り込まれた 【課題等】 ・のぞみの園入所者は、地域から切り離されて全国から集まっている。神奈川の県立施設も県内各地から施設に集まったということで、地域から切り離されたことには変わりない。こういう人たちを地域にまた戻すというのは非常に大変なこと ・公立施設は、やはり官僚性が強い。官僚制は合理的な判断をする仕組みであるが、組織が大きくなると、ヒエラルキーが厳然と存在して、ボトムアップでの意見が認められないという官僚性の逆機能が働く。周りのものが見えなくなり、自分たちの組織を守るという、内へ内へという力が働くこととなる ・これからの県の役割は人材の養成だ。県立施設と大学・研究所と協働しながら人材を育成するということが非常に重要 ・共生社会を目指していくには、県立施設も積極的に貢献する必要があるが、民間に比べ、予算、人材、組織等で優位に立つ公立施設はモデルにはなり得ず、県内の地域生活のシステムの構築、特に市町村の自立を阻み、依存体質を強化することにならないよう留意が必要 ・県立施設の役割が未だはっきりしないという状態においては、新規の入所者は取るべきではない ・県立施設の今後としては、地域共生社会の実現に向けて、どんなに障がいの重い人も地域生活が可能であるということを証明してほしいし、是非、地域移行及び地域生活支援に全力を尽くしていただきたい 第2回委員会での佐藤委員からのご報告の概要(千葉県立袖ケ浦福祉センター関係) 〇千葉県袖ケ浦福祉センターは、社会福祉法人千葉県社会福祉事業団が指定管理制度に基づき管理を行う県立施設で、障害者支援施設の「更生園」(定員280人)及び障害児施設である「養育園」(定員150人)で構成されている ※ 令和2年8月時点で、実員は更生園53人、養育園14人 〇同センターは、当時、優良な施設との評価を受けていたが、平成25年11月に利用者が支援職員からの虐待により死亡したことをきっかけに、第三者検証委員会による検証、「千葉県袖ケ浦福祉センター見直し進捗管理委員会」及び「袖ケ浦福祉センター検討会議」での検討を経て、今後、利用者全員の他施設等への移行を行った上で、令和4年度末までに廃止することとされている 【経緯】 ・平成25年11月、19歳の利用者A君が入院先で死亡。病院が施設での虐待を疑い、警察へ通報 ・警察の強制捜査、千葉県の立ち入り調査が実施され、23名の利用者が15名の職員から虐待を受けていたことが判明、新規受入の停止措置が講じられる ・平成26年1月に第三者検証委員会が設置され、外部の目を入れる「パーソナルサポーター」の設置などの緊急提言を行う ・同委員会の検証報告(平成23年8月)で、@閉鎖性、A孤立性、 B県の監査が形式的で虐待防止法が機能していないこと、を指摘 ・併せて、C少人数ケアへの転換、D定員規模の縮小(半分程度に)、E県全体での受入先確保、F民間による強度行動障がい支援体制の構築、G閉鎖性解消に向けた取組、H目標達成をチェックする進捗管理委員会の設置、を提言 ・平成30年8月の進捗管理委員会の最終報告において、改善された点はあるものの目標は未達と認定、令和2年度末までに、県立施設としての存続の可否について判断する旨を提言 ・千葉県としては、「袖ケ浦福祉センター検討会議」を設置し、検討した結果、同施設の廃止を決定(令和2年8月) 【課題等】 ・不適切な支援が起きたときに、なぜそういう事態になったのかを施設全体で再検証し、改善していくことが必要。これを改善せずに不適切な支援を繰り返していると、職員も管理職も、もう一歩先に進んでしまい、利用者が人間ではないと思ってしまう(視野狭窄型) ・どんなに重い障がいのある人でも、その人なりの考え、思いというのがあり、それを引き出す支援が重要。適切な支援をすればその人の思いが理解でき、その人が思っている状態で支援ができればパニックを起こしたり怒ったりすることが少なくなる(能力存在推定)。この立場に立たないと意思決定支援というのはありえない ・障がいの重い人を受け入れると、障がいが重いんだという前提で支援をし、「能力不存在推定」が働き、何もできない人、他では受け入れられない人を受け入れて、他に移行できない、となり、終の棲家になる。また、重いので外に出せないということで一日中施設の中にいる生活をして人生を終えることとなる ・強度行動障がいの人は特に集団生活が難しい。集団生活を求める大規模入所施設は構造的に無理だ。そこで働く考え方は、事故が起きないことを大前提にする。事故が起きるような状態を避けるために閉じ込めるとか、拘束するとかいうことを平気でやる(功利的安全第一主義) ・県立施設が他では受入れられない人を受入れるという役割を担うのではなくて、他の民間施設でも十分担えるのだということを前提に置くべき 「津久井やまゆり園再生基本構想」のポイント(維持・強化すべき機能) 〇全ての津久井やまゆり園利用者が安心して安全に生活できるよう、新たに、千木良地域、芹が谷地域に小規模化した入所施設を再整備するとともに、既存の県立障害者支援施設も一部の利用者の受け皿とし、意思決定支援を行う中で、グループホーム等での暮らし方を希望する利用者の地域生活移行を支援する方針が取りまとめられた 〇加えて、将来的な施設のあり方として、空室を利用・転用しての短期入所サービス、家族や地域住民との交流の場、日中活動の場の提供などを打ち出すとともに、引き続き、専門性の高い多様なサービスの提供を行う等の構想が盛り込まれた 〇「維持」・「充実強化」することとされた機能】 【入所施設としての専門性の高い支援】 ◎民間施設では対応困難な重度重複等の知的障がい者の受入  ◎医療的ケアが必要な利用者への対応 ◎強度行動障がいのある利用者等への専門性の高い支援(外部講師による研修やコンサルテーションの実施により、より質の高い支援方法を蓄積) 【生活環境の改善】 ◎強度行動障がい、自閉症スペクトラム、高齢者等、障がい特性に応じた住環境の配慮 ◎居住棟は、可能な限り一般住宅に近い構造や外観とし、原則個室化、ユニット化する(11名、うち1名は短期入所) 【日中活動の充実】 ◎日中活動の場と生活(居住)の場を明確に区分、外部の日中活動の場に通うことも可能に 【地域生活移行の促進】 ◎地域生活を体験できる設備の整備と、これを活用した地域生活移行プログラムの実施 【地域との交流促進】 ◎地域との交流が自然に生まれる空間づくり ◎施設内外における地域と連携推進 【外出・余暇支援の充実】 ◎医療的ケアの必要な利用者や強度行動障がいのある利用者に対する余暇活動の機会の提供に、積極的に取組む 【地域生活支援拠点としての専門性の高い支援】 ◎短期入所サービスの充実 ◎入所施設からグループホーム等へ地域生活移行した人のサービス提供事業所に対する支援(コンサルテーション) ◎家族や同居人からの相談を受けたり、アドバイスを行う家族支援機能の整備 ◎相談支援機能の充実、近隣事業所との連携の推進