令和3年3月30日 記者発表資料 県立障害者支援施設の運営指導に外部評価を導入 〜津久井やまゆり園に係る「県の関与」の検証の調査報告を取りまとめました〜 県立障害者支援施設「津久井やまゆり園」(指定管理者 社会福祉法人かながわ共同会)の支援内容に係る「県の関与」について検証してきたところですが、このたび県立障害者支援施設の運営指導に対する外部評価の導入など、改善策を含めた調査報告を取りまとめましたので、お知らせします。 1「県の関与」の検証 (1)検証体制 福祉子どもみらい局長をトップとする検証チームを編成 (2)調査方法 県職員からのヒアリング及び関係資料の確認 (3)調査対象業務 津久井やまゆり園に係る監査、モニタリング、日頃の運営指導、意思決定支援の各業務(平成25年度から令和2年度まで) (4)調査時期 令和2年8月から令和3年1月まで (5)ヒアリング人数 34名 (6)検証結果(令和2年12月24日に記者発表済み) 運営指導にあたる県職員の身体拘束実施の3要件の解釈が非常に甘く、「身体拘束はやむを得ず仕方がない」ということが職員共通の認識だった。 運営指導の担当課は、かながわ共同会の資産の内部留保問題に最重点課題として取り組んでおり、不適切な身体拘束を改善していく認識に至らなかった。 2改善策 県立障害者支援施設において、二度と不適切な支援が見逃されることがないよう、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の御意見を踏まえ、次の改善策を速やかに実行していく。 (1)県の運営指導について外部評価を導入 県が県直営施設を含めた県立障害者支援施設に対して行う運営指導、モニタリングについて、持続的かつ適切に行われているか確認するため、神奈川県障害者施策審議会(会長:小川喜道神奈川工科大学名誉教授)に報告し、評価を受ける仕組みを導入する。 (2)施設横断的に多職種で検討、研究する場の設置(施設利用者支援研究会) 利用者の支援の方法や改善などについては、これまで各施設に委ねていたが、身体拘束の廃止等、日々の支援を行っている中で課題となっているケースの支援方法等について、施設横断的に多職種が参加して検討、研究する場を設置する。また、研究成果については、事例報告会を開催し、施設での共有を図っていく。 (3)定期モニタリングの充実強化 令和2年度から県立障害者支援施設に対して、利用者の居室や支援の場面に入り支援内容を直接確認する等、モニタリングの改善を図ったが、さらに、各施設による自己点検や、「(仮称)利用者目線の支援サポートチーム※」によるモニタリングを実施する。また、県立直営施設に対する運営指導も同様に充実強化を図る。 ※障害サービス課の職員に他の県立施設の職員も加わったチーム (4)組織執行体制の充実強化 利用者目線に立った新しい障がい福祉の実現のため、福祉子どもみらい局参事監(共生担当)を令和3年1月に配置したが、今後も効果的で効率的な組織執行体制を構築していく。 また、意思決定支援、利用者支援検証、施設の運営指導、障がい福祉施策の検討などの各部門が担当者レベル、幹部レベル、それぞれに定期的に情報交換を行う機会を設定する。 (5)現行の取組みの継続的な実施等 ア身体拘束の「見える化」 県立障害者支援施設における「身体拘束ゼロ」に向けた取組みを推進するため、令和2年12月から、各施設の身体拘束の状況を県のホームページで公表しているが、今後は各施設における身体拘束廃止の好事例を紹介するなど、更なる「見える化」を図っていく。 イ研修の充実 県職員の身体拘束に関する認識が非常に甘かったことが、県として不適切な身体拘束を未然に防止できなかった最大の原因であることから、関係部署の職員や全ての福祉職職員に対して、虐待防止や利用者目線の支援などに向けた研修を充実させる。 3調査報告書 別紙のとおり 問合せ先 神奈川県福祉子どもみらい局総務室 室長 山田 電話045-210-3610 管理担当課長 田村 電話045-210-3611 津久井やまゆり園の支援内容に係る「県の関与」の検証 調査報告書 令和3年3月 目次 調査報告、1 <添付資料> 調査結果の詳細 1職員へのヒアリングの実施状況、8 2監査に係る調査、10 3モニタリングに係る調査、14 4日頃の運営指導に係る調査、16 5意思決定支援に係る調査、18 (1ページ) 1経緯 令和2年1月に津久井やまゆり園利用者支援検証委員会(以下「検証委員会」という。)が設置され、津久井やまゆり園(指定管理者 社会福祉法人かながわ共同会)の利用者支援の内容などの検証が行われた。 検証委員会からは、県に対しても「県立の障害者支援施設の設置者としての役割意識が不十分」「県のモニタリングは、利用者の状況や支援の質などを積極的に把握し、改善しようとする姿勢が乏しかった」などと指摘があった。 県は、この指摘を厳しく受け止め、県の関与の実態を自ら検証することとした。 2検証方法 (1)検証体制 津久井やまゆり園を所管する福祉子どもみらい局が自ら検証するため、同局長をトップとする検証チームを編成(構成員:同局総務室長、管理担当課長、総務室員) (2)調査方法 津久井やまゆり園の支援内容に係る監査や指導業務に携わった担当者及び監督者からのヒアリング並びに関係資料の確認 (3)調査時期 令和2年8月〜令和3年1月 (4)調査対象の業務(担当課、調査対象年次) 津久井やまゆり園に係る次の業務 ア監査(障害福祉課※1、平成25年度〜令和2年度) イモニタリング(障害福祉課※1、平成28年度〜令和2年度) ウ日頃の運営指導(障害福祉課※1、平成28年度〜令和2年度) エ意思決定支援(共生社会推進課※2、平成29年度〜令和2年度) ※1令和元年度以降は障害サービス課、※2令和元年度は障害サービス課 (5)ヒアリング人数 34名 (2ページ) 3判明した事実 (1)監査 県は、津久井やまゆり園に対して平成25年度と同29年度に社会福祉法に基づく施設監査を実施したが、施設監査については、国の指導監査基準により、職員の雇用状況、給食施設の衛生管理、虐待防止委員会の活動状況など、調査項目が多岐に渡っていた。 一方で、国は施設監査を頻回に実施するよう自治体を指導して効率化を求めており、施設監査を短時間で実施せざるを得ないなど、支援内容に係る監査の比重は大変低く、不適切な支援を発見することには限界があった。 (2)モニタリング 県は指定管理業務の実施状況を確認するため、基本協定書に基づき指定管理施設に対するモニタリングを実施してきたが、定期モニタリングについては、施設の利用状況や、利用者の満足度、収支状況などを書面で確認するだけで、支援内容の確認は行われず、不適切な支援を把握できる体制になっていなかった。 また、随時モニタリングは支援上の問題などが指摘された際に実施しており、平成30年度には虐待疑義のあった利用者に関する随時モニタリングが実施されたが、特定の利用者に限った調査で終わり、他の利用者への広い調査には至らなかった。なお、当該案件については、県と津久井やまゆり園とで調査検討会を設けて検討が行われたが、今回の調査を進める中で、県が津久井やまゆり園に代わって主体的に検討を進めていたことが判明した。 (3)日頃の運営指導 日頃の運営指導については、随時モニタリングの対象となった利用者以外に不適切支援が疑われる事案があるとの認識が職員になく、不適切な支援を把握しチェックするという観点がなかった。 令和元年度に外部の検証委員会で利用者支援の検証が開始され県の関与が指摘されるまで、指定管理施設に対する県の運営指導の考え方が変わらなかった。 常に疑いの目を持って指導にあたることは必要ではないが,障害者支援施設では不適切な支援がありうるという認識は必要であり、県と施設が協働して支援の質を高めるためには、不適切な支援を把握しチェックすることが不可欠の要素であった。 (4)意思決定支援 一方、県は津久井やまゆり園再生基本構想を踏まえ、利用者ごとに相談支援専門員などの関係者による意思決定支援チームを設置し、第三者の専門家から助言をいただきながら、利用者が望む暮らしや生活の場の方向性を検討してきた。 意思決定支援を進める過程の中で、利用者に対する長時間の身体拘束など、不適切と思われる支援を平成29年度末に把握し、身体拘束のリストを作成していた。そのリストを平成30年度に運営指導を行う障害福祉課や意思決定支援を行う共生社会推進課の上司に情報提供していたが、障害福祉課では不適切な支援ではないかとの認識に至らず、支援の検証などの深掘りはされなかった。 4考察 こうしたヒアリングにより判明した事実からは、運営指導にあたる県職員の身体拘束実施の3要件の解釈が非常に甘く、「身体拘束はやむを得ず仕方がない」ということが職員共通の認識だったことが判明した。これが、身体拘束に関する認識と課題の掘り下げに繋がらなかった最大の原因と考えられる。 なお、平成30年度当時、運営指導を担当していた障害福祉課は、かながわ共同会の資産の内部留保問題に最重点課題として取り組んでおり、不適切な身体拘束を改善していく認識に至らなかった。 (3ページ) 5改善策 県は、県立障害者支援施設において、二度と不適切な支援が見逃されることがないよう、しっかりとした組織執行体制を作るとともに、支援の改善を着実に実行しなければならない。 そのため、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の御意見を踏まえ、次に掲げる改善策の具体的な検討を進め、速やかに実行していく。 「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」からの主な御意見 ○県自らが、こうした検証を行うことは必要である。 ○今後、県立障害者支援施設において不適切な支援をなくしていくためには、こうした実態を厳粛に受け止め、県職員の資質向上や、県立障害者支援施設の指導のあり方を抜本的に見直していく必要がある。 ○意思決定支援は外部が入ったというだけではなく、外部のプロが入ったことにより、その法人が変わっていくということに意味がある。 ○指導、監査体制について、指導、監査を受ける法人と、指導、監査をする県が一体化しているから今回のようなことになる。対応策として外部を入れるということもある。 ○これまで県が通常行ってきた監査や定期モニタリングなども、書類上の確認で済まされてしまっており、個々の利用者の生活に立ち入ったものでなかったことが判明した。現場を確認することもなければ、個別支援計画や支援記録などに目を通すこともなく、利用者への支援内容や生活実態に踏み込み、支援を改善していこうという視点が、県職員に大きく欠けていた。 ○身体拘束リストが作成されても、他の部門に伝わらない、あるいはそれに他の職員が反応しないということは、組織として意思疎通が欠けているということ。どうやって意思疎通を図っていくのかが大事。 ○改善策として研修の充実があげられているが、研修会を開催し、知識を伝授するだけでは行動変容にはつながらない。現場と一緒に考えていくプロセスが重要である。 ○研修は座学だけではなく、現場に出てやるようなこともぜひ考えて欲しい。 (4ページ) <改善策> (1)県の運営指導について外部評価を導入 県(障害サービス課)が県直営施設を含めた県立障害者支援施設に対して行う運営指導、モニタリングについて、持続的かつ適切に行われているか確認するため、神奈川県障害者施策審議会(会長:小川喜道 神奈川工科大学名誉教授)に報告し、評価を受ける仕組みを導入する。 (2)施設横断的に多職種で検討、研究する場の設置(施設利用者支援研究会) 利用者の支援の方法や改善などについては、これまで各施設に委ねられており、客観的な支援の実態の把握や外部から支援の評価を得る機会がなかった。 これを踏まえ、身体拘束の廃止等、日々の支援を行っている中で課題となっているケースの支援方法等について、施設横断的に多職種が参加して検討、研究する場を設置する。 また、研究成果については、事例報告会を開催し、施設での共有を図っていく。 (構成員イメージ) 生活支援職員、看護職員、管理栄養士、心理担当職員、理学療法士、作業療法士等が各施設から参加 (3)定期モニタリングの充実強化 これまで指定管理施設に対しては、基本協定に基づく定期モニタリングとして、施設の利用状況や利用者の満足度、収支状況を書面で確認するにとどまっていた。 県は、検証委員会からの指摘を踏まえ、令和2年度から県立指定管理施設に対して、利用者の居室や支援の場面に入り支援内容を直接確認する等、モニタリングの改善を図ったが、さらに次の視点、方法によりモニタリングの充実強化を図る。 また、県立直営施設は、モニタリングではなく、日頃からの運営指導により対応していたが、今後は指定管理施設と同様に、次のモニタリング制度を導入し、運営指導の充実強化を図る。 ア各県立施設による自己点検 利用者の個別支援計画の見直しや身体拘束の判定会議等に合わせて、各施設が身体拘束実施状況、施設運営の取組状況、研修実施状況等について、自己点検を実施し、支援現場における継続的な改善への取組を図る。 イ県(障害サービス課)による利用者支援の検証 各県立施設に対して、年に一度、1施設あたり5日間程度のモニタリングを次のとおり実施する。 なお、モニタリングは、障害サービス課の職員に他の県立施設の職員も加わった「(仮称)利用者目線の支援サポートチーム」により実施し、利用者目線の支援についての理解や実践につなげていく。 (ア)施設内のラウンド 寮内のすべての居室、公共スペース等場面を変えて複数回ラウンドし、利用者への支援内容を目視で確認し、気になる支援場面や利用者をピックアップする。 (イ)関係書類の審査 ピックアップした利用者の支援記録や個別支援計画、身体拘束に係る書類等の調査を実施する。 (ウ)職員ヒアリング ピックアップした利用者の担当職員等に支援内容のヒアリングを行う。また、幹部職員に対してもヒアリングを行い、運営方針、身体拘束廃止の取組みの認識等、組織としての取組状況等ガバナンスについて確認する。 (エ)利用者ヒアリング 利用者目線の支援を実現するため、利用者からのヒアリングを実施する。また、県立施設における利用者ヒアリングを進めながら、全県的に展開できるようガイドラインを作成していく。 (5ページ) (4)組織執行体制の充実強化 アポスト新設 県では、利用者目線に立った新しい障がい福祉の実現のため、新たに、福祉子どもみらい局参事監(共生担当)を令和3年1月に配置した。 イ組織執行体制の構築 今後も、利用者目線の福祉の推進に向けて、組織間の意思疎通を活性化させることとあわせて、効果的で効率的な組織執行体制を構築していく。 ウ組織横断的な連携 また、今回の調査結果から、津久井やまゆり園における身体拘束に関するリストが作成されていたにもかかわらず、それが個々の身体拘束の解除に向けて有効に活用されていなかった原因は、「身体拘束はやむを得ず仕方がない」といった県職員の認識とともに、担当部門相互の意思疎通が不足していたことが挙げられる。 そこで、意思決定支援部門、利用者支援検証部門、施設の運営指導部門、障がい福祉施策の検討部門など各組織が意思疎通を活発かつ円滑に行えるよう、日頃から各部門が担当者レベル、幹部レベル、それぞれに定期的に情報交換を行う機会を設定し、施策の立案と実行に取り組んでいく。 (5)現行の取組みの継続的な実施等 下記については、本検証による改善策の取りまとめを待たず既に取り組んでおり、今後も継続的に実施するとともに、利用者支援の見直しが、各施設で組織的に行われているか、確認していく。 また、津久井やまゆり園における意思決定支援に携わった職員は、「まず、利用者中心に考える」という意識に変わるなど、着実に成果が表れていることから、今後、津久井やまゆり園での利用者の意思決定支援の現場に、他の県立施設の支援のリーダーとなる職員も参加させ、実践例を学ぶ機会として、取組みを広げていく。 ア身体拘束の「見える化」 県立障害者支援施設における「身体拘束ゼロ」に向けた取組みを推進するため、各施設で行われている身体拘束の状況を事例ごとに県のホームページで、令和2年12月から公表を始めた。 日頃の運営指導の一環として、各施設が、身体拘束を廃止していくという意識を常に持ってもらうとともに、県(障害サービス課)としてもその取組み状況を共有するために行っている。 また、今後は、各施設における身体拘束廃止の好事例を紹介するなど、更なる「見える化」の推進を図り、身体拘束の件数を減らすとともに、「なぜ、行動障がいを起こすのか」、「身体拘束によらない方法はないのか」といった分析や検討を通じて、職員の気づきや行動変容につなげていく。 ・令和2年12月〜 県立6施設の身体拘束実施状況を県ホームページに掲載 ・身体拘束の実施状況令和2年12月時点98件、令和3年1月時点93件、令和3年2月時点84件、※1カ月の内、身体拘束を実施している件数。 (6ページ) イ研修の充実 (ア)拡充の方向性 県職員の身体拘束に関する認識が非常に甘かったことが、県として不適切な身体拘束を未然に防止できなかった最大の原因であることから、今後は、運営指導に当たる職員はもとより、関係部署の職員や全ての福祉職職員に対して、虐待防止や利用者目線の支援などに向けた研修を充実させる。 (イ)充実する研修のイメージ ・障害者虐待防止法(身体拘束3要件含む)の法令解釈 ・利用者目線の支援のあり方(理念、先行事例、職員ノウハウ) ・福祉施設のガバナンス・組織マネジメント ・先進的な取組を学ぶ実地・現場における体験研修、民間施設との交流研修 ・津久井やまゆり園の鎮魂のモニュメントを活用した「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念の浸透 (現在の取組み状況) 令和2年8月より、県立障害者支援施設の県職員及び指定管理者法人職員を対象として、ユニット長以上の職員(寮長等、課長)を対象とした管理職、採用6年目以降(管理職除く。)を対象とした中堅、採用後5年目までを対象とした若手といった階層別に虐待防止・人権擁護に関する研修を実施している。 〇目的 県立障害者支援施設職員の人権意識の向上や支援の質の向上を図り、県立施設における虐待ゼロの実現を目指す 〇研修内容 ・虐待事例をもとに、虐待の発生要因等についてグループ討議 ・研修後に自施設で取り組む支援改善目標(宣言シート)作成 ・改善目標に沿った取組みを定期的に自己評価及び上長評価 (7ページ) 〇実績 左から、区分、対象者、実施時期・回数、受講者数 管理職研修、寮長、課長等、8月・11月(計2回)、31名 中堅研修、採用6年目以降のリーダー候補者、9月〜11月(計3回)、52名 若手研修、採用後5年目までの職員、9月〜11月(計3回)、70名 (8ページ及び9ページ) 添付資料、調査結果の詳細 1職員へのヒアリングの実施状況(1ページ2(2)(3)(5)関係) 左から番号、ヒアリング対象者、ヒアリング日 1、平成24〜27年度 監査担当者、令和2年9月1日及び令和2年9月28日 2、平成29〜30年度 監査担当者、令和2年9月2日 3、平成28年度 監査担当者、令和2年9月2日 4、平成24〜29年度 監査担当者、令和2年9月2日及び令和2年9月28日 5、令和元年度〜現在 監査担当者、令和2年9月4日 6、平成23〜25年度 監査担当者、令和2年9月8日 7、平成22〜26年度 監査担当者、令和2年9月8日 8、平成28〜30年度 運営指導担当者、令和2年9月9日及び令和2年10月27日 9、平成28〜30年度 監査担当者、令和2年9月9日 10、平成27〜令和元年度 運営指導担当者、令和2年9月9日 11、平成27〜28年度 運営指導担当者、令和2年9月14日 12、平成30年度 運営指導担当者、令和2年9月14日 13、平成26〜28年度 運営指導担当者、令和2年9月14日 14、平成26〜28年度 運営指導担当者、令和2年9月14日 15、平成27〜28年度 監査担当者、令和2年9月15日 16、平成28〜令和元年度 意思決定支援担当者、令和2年9月15日 17、平成29〜30年度 運営指導担当者、令和2年9月25日 18、平成24〜26年度 監査担当者、令和2年9月28日 19、平成29〜30年度 監査担当者、令和2年9月28日 20、平成27年度〜現在 運営指導担当者、令和2年10月14日 21、平成27〜30年度 運営指導担当者、令和2年10月14日 22、平成29年度〜現在 意思決定支援者、令和2年10月15日及び令和2年11月24日 23、平成28〜29年度 監督者、令和2年10月15日及び令和2年10月27日 24、平成29〜30年度監督者、令和2年10月15日 25、平成25〜26年度 運営指導担当者、令和2年10月15日 26、平成30〜令和元年度 監督者、令和2年10月16日及び令和2年10月30日 27、平成29〜30年度 監督者、令和2年10月23日 28、平成29〜30年度 監督者、令和2年11月9日 29、平成29年度〜現在 意思決定支援担当者、令和2年11月26日及び令和2年12月17日 30、平成28〜29年度 監督者、令和元〜2年度 監督者及び令和2年12月8日 31、平成30年度 意思決定支援担当者、令和2年12月15日 32、平成29年度 監督者、令和2年12月16日 33、平成30年度 監督者、令和3年1月14日 34、平成29〜30年度 監督者、令和3年1月15日 (10ページ) 2監査に係る調査(1ページ3(1)) (1)調査内容 次のとおり平成25年度及び平成29年度に「施設監査」が実施されており、この2回の施設監査について、当時の監査結果報告の原本や残されている電子データを確認し、担当職員からのヒアリングを実施した。なお、施設監査は次の行程例及び実施手順のとおり実施されている。 ア施設監査の実施状況 (ア)平成25年度の施設監査の実施状況 ・日時:平成25年10月3日(木)9時30分〜16時00分 ・場所:津久井やまゆり園 (イ)平成29年度の施設監査の実施状況 ・日時:平成29年12月14日(木)9時30分〜12時30分 ・場所:津久井やまゆり園 イ「施設監査」の行程例 ・「施設監査」及び実地指導は、基本的には次の行程で実施される(調査項目によっては半日で終了することもある)。 左から、時間、主な内容 9:30〜10:00、あいさつ及び施設から施設概要の説明 10:00〜11:00、施設内ラウンド(食堂・給食施設、診療所、デイルーム等) 11:00〜12:00、書面調査(施設運営、給付費等請求事務、利用者関係記録) 12:00〜13:00、昼食(検食) 13:00〜15:00、書面調査(継続) 15:00〜16:00、職員へのヒアリング 16:00〜16:45、担当者打合せ 16:45〜17:30、講評・質疑応答 ウ「施設監査」の実施手順 (ア)事前通告 ・定期の「施設監査」では、遅くとも1か月前までに日程調整を行い、その後にあらかじめ書面による実施通知を送付する。 (イ)施設内ラウンド ・食堂・給食施設では、衛生管理、栄養管理、食材・検食の保管、調理員等の健康管理、食事の介助・提供方法などの状況を確認する。 ・診療所では、医師・看護師の配置、看護記録等の保管、服薬管理、急変時の対応などの状況を確認する。 ・防犯・防災の観点では、防犯・防災体制、緊急時対応マニュアルの配備、避難訓練の実施、災害時備蓄の保管などの状況を確認する。 ・居室・デイルーム等では、安全面の配慮、衛生管理、誤飲防止のための洗剤の管理などの状況を確認する(居室はプライバシー保護の観点から限られた箇所のみ確認)。 ・支援員室・休憩室では、緊急時の把握や対応、各種記録等の保管、与薬の管理などの状況を確認する。 (11ページ) (ウ)書面調査 ・「施設監査」では、運営面の調査を行うため、雇用関係、服務・健康管理、給与支払い、社会保険等の手続きのほか、利用者支援の関係としては、虐待防止委員会の設置・活動状況、利用契約の手続き、預かり金の管理状況などを確認する。 ・利用者一人一人の支援記録や介護給付費等請求書などの確認は、障害者総合支援法に基づく実地指導で行い、「施設監査」では行わないが、実際には、施設監査と実地指導の線引きがあいまいで、「施設監査」のみであっても担当者の判断で支援記録などを確認することはある。 (エ)職員へのヒアリング ・書面調査で確認すべき点がある場合など、必要に応じて、現場の職員へのヒアリングを行う。 (2)調査結果 今回の調査で、施設監査について次のとおり判明した。 ・「施設監査」は、施設の運営面に関する調査が主体であり、津久井やまゆり園の利用者の支援状況等の調査については、障害者総合支援法に基づく相模原市の実地指導に委ねられている※。 ・「施設監査」における調査項目は、職員の雇用状況、給食施設の衛生管理、緊急対応マニュアルの整備状況、災害時備蓄の保管状況、虐待防止委員会の活動状況、預り金の管理状況など、非常に多岐に渡っている。 ・今回の調査でヒアリングをした職員は、異口同音に「津久井やまゆり園の施設監査で不適切な支援を見つけたことはない」、「プライバシーの観点から利用者の部屋には勝手に入れるわけではない」と発言している。 ・「施設監査」は、短期間の日程と限られた人員で調査するため、利用者支援の状況は支援記録等を数例確認するだけで、不適切な支援を発見することはできていなかった。 ・一般的に、不適切な支援については、津久井やまゆり園に限らず、内部通報等の情報提供を契機として発覚することが多い。 ・一方、国は「施設監査」を頻回に実施するよう自治体へ指導しており、「施設監査」の効率化を求めている(利用者の支援内容の確認は3件までにするなど)。 ・不適切な支援を発見するためには、障害者総合支援法の指導権限を有する行政庁(津久井やまゆり園の場合は相模原市)と連携した調査を行うとともに、県立施設に対しては、基本協定に基づくモニタリングにより、利用者支援を重点的に調査する必要がある。 ※障害者総合支援法に基づく指導権限は、政令市に移譲されており、実地指導は平成24年度に相模原市が実施している。 (12ページ) なお、施設監査の実施状況は次のとおりだった。 ア平成25年度の施設監査 監査方法:国指針や県指導監査基準等に基づき、次の重点項目を審査 項目、審査状況 ○人権侵害等の防止について ・虐待防止の具体的取組、職員間の牽制体制、研修、指摘なし ・適切なサービスを提供するための組織的な支援体制の確立、指摘なし ・苦情解決体制の充実と徹底、指摘なし ・事故防止、事故への適切な対応、再発防止対策への取組、指摘なし ・透明性、牽制体制の図られた預り金の管理体制、指摘なし ○防災対策の取組 ・防災に関する取組状況、指摘なし ○公正・透明性のある法人運営に向けた取組 ・経理規則に則した契約行為及び適正な会計処理の徹底、指摘なし ・法人情報の積極的な公開及び個人情報の保護、指摘なし ○当時の監査記録の確認方法 ・監査結果報告の保管期間(3年間)が経過し、原本を確認できないため、障害サービス課の所属フォルダーに保管されている電子データを確認した。 ・電子データでは、監査結果や指摘事項の概要に関する記録は残されていたが、利用者の支援記録を調査したかどうかは記録として残っていなかった。 イ平成29年度の施設監査 監査方法:国の指針や県の指導監査基準等に基づき、次の重点項目を審査 項目 審査状況 ○人権侵害等の防止に向けた取組 ・虐待防止に係る具体的かつ効果的な取組、指摘なし ・苦情解決体制の充実と徹底、第三者委員会の積極的な活用、指摘なし ・事故防止、事故への適切な対応、再発防止対策への取組、指摘なし ○防災対策の取組 ・実態に応じた防災計画の見直し、災害発生時の地域との連携、指摘なし ○公正・透明性のある法人運営に向けた取組 ・経理規則に則した契約行為及び適正な会計処理の徹底等、口頭指導※ ・利用者預り金を含む現金の保管、内部牽制体制の確立、指摘なし ※月次試算表に関する理事長への報告の遅延について口頭指導あり ○当時の監査記録の確認方法 ・監査結果報告の保管期間(3年間)が経過していたが、公文書館に原本が保管されていたため、原本を取り寄せて監査記録を確認した。 ・監査結果報告(原本)では、監査実施結果や指摘事項の概要、施設から事前に提出された書類、当日提出させた書類等を確認できたが、利用者の支援記録を調査したかどうかは確認できなかった。 (13ページ) (3)ヒアリングにおける主な発言 ・「施設監査は、支援の内容というより、清潔の保持、給食の衛生基準、防災設備等、施設としての適正な運営を調査している。虐待についても、虐待防止委員会ができているかなど組織面を見ている。」 ・「施設監査は限られた人員で、国が基準で定める監査実施率を満たすようこなさなければならず、虐待を見つけるのは難しい。」 ・「施設監査は、指導監査基準を逸脱することはできない。事務と福祉職で役割分担があったが、互いにフォローする際も基準に沿っていた。」 ・「監査は人員不足で、施設は2年に1回の基準に基づき実地指導に入ったが、事業所は5年に1回もできていない。入所系は1日、通所や訪問は半日で見ている。このような中では、限界がある。」 ・「施設監査は行く日が事前に通知されており、相手側も構えて不適切なものは見せない。」 ・「大きい施設では1日がかりで施設監査や実施指導を行う。日中活動、食事、居室などを可能な範囲で見ていた。ただし、利用者のプライバシーに配慮しなければならないので、見る範囲には制約がある。」 ・「施設監査では、利用者の支援記録を見て不適切な支援を発見するという考えで行っていなかった。職員も限られている中で、支援記録を深く読み込む時間もなく、決められた実施件数をこなさざるを得ない状況だった。」 (14ページ) 3モニタリングに係る調査(2ページ3(2)) (1)調査内容 障害サービス課では、指定管理者であるかながわ共同会に対し、指定管理者制度に基づくモニタリングとして、定期(年次・月例)の調査のほか、これまで随時モニタリングを5回実施してきた。 県が不適切な支援を知る可能性があった、これら5回の随時モニタリングについて、書面及びヒアリングによる調査を行った。 ア津久井やまゆり園事件(H28.7.27〜R1.5.31) イ津久井やまゆり園におけるAさんの身体拘束(H30.3.12〜H30.11.28) ウ津久井やまゆり園におけるBさんのアザ等(H30.10.16〜H30.11.13) エ津久井やまゆり園における利用者支援(R1.11.14〜) オ津久井やまゆり園への随時モニタリングで確認した内容等への対応(R2.7.14〜) (2)調査結果 5回の随時モニタリングについて、確認した結果は次のとおりだった。 ア津久井やまゆり園事件 園の安全管理体制や加害者の雇用状況などに関する調査だったため、利用者支援の状況(不適切支援)を把握することはできなかった。 イ津久井やまゆり園におけるAさんの身体拘束 当時、Aさんについては、様々な場面で不適切な支援が行われていることが指摘されており、後述する意思決定支援担当が作成した「身体拘束リスト」にAさんの名前はなかったが、幹部職員は、Aさんの身体拘束について調査を行うよう強く指示した。 Aさんに関するモニタリングに基づき、県障害福祉課・中井やまゆり園職員と津久井やまゆり園職員及び同園のオンブズパーソンから構成される検討会が設置され、平成30年11月に検討会の報告書がまとめられた。担当した県職員は、「検討は、Aさん個人の身体拘束に端を発してはいるが、どうやったら共同会が過去の支援を振り返り、安易な身体拘束に頼らず、継続的に利用者支援の質を向上させられるかということを目的としていた」と述べている。一方で、別の職員からは、検討会の運営や報告書の実質的な取りまとめは県職員が主体的に行ったことから、園自らによる支援内容の見直しに向けた具体的な取組みにつながらなかったという指摘があった。この検討会は、Aさんに関する調査結果を取りまとめ、平成30年12月に知事まで調査結果の報告をしている。 なお、この調査ではAさんの支援状況のみに焦点を絞った調査となっており、他の利用者については調査していなかった。 ウ津久井やまゆり園におけるBさんのアザ等 Bさんの住所地である支給自治体の調査では、受傷原因は特定できず虐待の認定はなかった。また、障害福祉課のモニタリング調査でも受傷の原因を特定することはできなかった。 なお、この調査ではBさんの支援状況のみに焦点を絞った調査となっており、他の利用者については調査していなかった。 エ津久井やまゆり園における利用者支援 この随時モニタリングの一環として、令和2年1月から検証委員会での検証を行った。 オ津久井やまゆり園への随時モニタリングで確認した内容等への対応 令和3年3月現在もモニタリングを継続している。 (15ページ) (3)ヒアリングにおける主な発言 ・「Aさんについては、元々様々な場面で指摘されており、課題として認識していたため、身体拘束に関して調査を行うよう関係職員に強く指示した。」「Aさんの調査を担当に指示した。」 ・「Aさんの身体拘束をモニタリングしていた当時、3要件の捉え方や認識が弱かったかもしれない。」 ・「Aさんの身体拘束について、身体拘束3要件や同意書など身体拘束に必要な手続きは定着していると思っており、拘束の必要性の見直しもしていると思っていた。今思えば、改善に取り組んでいるという良いところだけを見ていたかもしれない。」 ・「Aさんの事案は、平成29年度末に意思決定支援担当から一報が入った。担当課長からすぐ確認するようにとの指示があり、本人にも会い、現場確認や書類を見ながら園長、部長などのヒアリングをした。今となっては、調査が不十分だったかもしれない。」 ・「共同会が過去の支援を振り返り、安易な身体拘束に頼らず、利用者支援の質を向上させることを目的に、Aさんの事案について共同会と県などが参加して調査検討することとした。」「法人の中に検討会を立ち上げ、県もアドバイザーとして参加した。法人全体での身体拘束の取扱いが進んでいないので直そう、Aさんの対応を整理しようというものだった。」「調査検討を主体的に取りまとめたのは県だった。」 (16ページ) 4日頃の運営指導に係る調査(2ページ3(3)) (1)調査内容 随時モニタリング以外に、日頃の運営指導として、指定管理者との会議・打合せ、法人理事会への陪席、政令指定都市が行う障害者総合支援法に基づく実地指導への陪席等のかかわりを調査した。 (2)調査結果 所管課としての日常の指導の実施状況について、施設内の支援状況の確認など利用者支援に関する特段の指導は行われていなかった。 意思決定支援担当が作成した「身体拘束リスト」に記載されていた利用者については、不適切な支援ではないかとの認識に至らず、障害福祉課に対し幹部職員から調査の指示はなかった。障害福祉課の担当者も、「身体拘束リスト」の重要性の認識がなく、Aさんの調査や、共同会の約40億円の内部留保に関する調査を優先していた。 県の身体拘束に関する認識が共同会と同様に非常に甘く、「身体拘束はやむを得ず仕方がない」ということが職員共通の認識だったことが課題の掘り下げに繋がらなかった原因である。 なお、当時の障害福祉課は他の業務に精一杯で、特に共同会の約40億円の内部留保問題に業務の比重が置かれており、不適切支援な身体拘束の指摘について深掘りするなどの対応に至らなかった遠因となっている。 (17ページ) (3)ヒアリングにおける主な発言 ・「身体拘束は支援の現場で避けることができず、存在しているという認識はあったが、虐待に値する事例があるとは認識していなかった。」 ・「過去には長時間、拘束せざるを得ない状況があった。手続きを踏んだやむを得ない拘束があると認識していた。」 ・「現場の職員の大変さ、苦労が分かるので、何となく現場の職員寄りだったかもしれない。」 ・「当時、かながわ共同会の指導は資産の内部留保が中心となっており、利用者支援は二の次だった。本来すべき運営指導ができていなかった。」「当時は、利用者支援以外でてんてこ舞いだった。」 ・「求められる支援の水準は変わってきており、今の時点に立って、過去の支援を見て直ちに不適切だと決めつけるのはどうか。」「どこまで大丈夫で、どこからダメか、虐待のラインは時代により変わる。」「県直営時代の支援を引き継ぎ、そこで止まっていたのだろう。」 ・「当時はAさんの話ばかりだった。その他に20数人の身体拘束リストがあればショッキングだし、記憶にない。」「リストは寝耳に水。緊急的に対応する案件なら、調査していたはず。」 ・「(検証委員会で津久井やまゆり園の不適切な支援が指摘されているが、)そのような認識はなかった。他の職員も同じ認識ではないか。上席も認識していなかっただろう。認識していれば、現地調査などの指示があったはず。」 ・「意思決定支援から、津久井ではよくない支援があるという話は聞いたことはあったが、具体の話ではなかったと思う。」 ・「身体拘束リストは記憶にない。仮にリストをもらっていたとしても、手続きを踏んだ拘束の一覧と認識していたのではないかと思う。意思決定支援担当と深い議論をしていなかったので、記憶にないのかもしれない。」 ・「当時の幹部職員から、Aさん以外の利用者の支援についての調査の指示はなかった。」 ・(現物のリストを見て)「このリストだけでは、身体拘束が適切か不適切か判断できない。不適切な支援であるということで情報提供を受けていれば、Aさん以外も調査したと思う。」 ・「リストは見たことない。意思決定支援担当からは、共同会の支援はいろいろ問題があると思うという会話はあったが、具体的な身体拘束リストは見た記憶がない。」 ・「利用者支援の面で共同会を信用していた。それなりに職員も配置され、長年運営を任せており、他の民間とは違うという固定概念があったかもしれない。」 ・「今は、指導する側の意識や体制が弱まった。現場に行って見る機会も減り、施設との関わりも薄くなり現場との接点が減った。運営指導は長い経験が必要。経験がないと言うべきことが分からない。昔はそういう職員がもっといた。」 ・「今までのやり方で虐待疑いを発見することは困難。例えば身体拘束について、その理由を報告させ、長期に継続するなら改善を指導するといったことも考えられる。」 ・「指定管理者との関係において、県がしっかりとした運営指導ができない理由が何かあるのではないか。」 (18ページ) 5意思決定支援に係る調査(2ページ3(4)) (1)調査内容 平成29年度に開始した津久井やまゆり園利用者を対象とする意思決定支援の取組について、意思決定支援の対象人数、支援会議の開催状況等について調査した。 (2)調査結果 共生社会推進課(意思決定支援担当)では、意思決定支援の作業の過程で良くない支援の実態が出てきたことから、平成29年度末頃から平成30年度にかけて、身体拘束が行われている20数人分の「身体拘束リスト」を作成し、障害福祉課(運営指導担当)に提供するとともに、当時の幹部職員に報告していた。 しかし、障害福祉課では、このリストに記載されているものが不適切な支援ではないかとの認識に至らず、改善に向けた支援の検証などの深掘りはされなかった。 また、意思決定支援担当が作成し当時の障害福祉課へ情報提供された身体拘束のリストを確認したところ、身体拘束が行われている個々の利用者の身体拘束の項目等は分かるものだったが、不適切な身体拘束が含まれるかどうか一見して分かるものとはなっていなかった。 意思決定支援担当は、障害福祉課にリストの取扱いについて何回か指摘していたが、結果的には言いっ放しで終わっており、個別の支援に関する議論を投げかけていなかった。 なお、当時の共生社会推進課は、障害福祉課と同様に他の業務に精一杯だったことも、不適切支援な身体拘束の指摘について深掘りするなどの対応に至らなかった遠因となっている。 (19ページ) (3)ヒアリングにおける主な発言 ・「平成29年度末から30年度初めにかけて身体拘束に係る20数人のリストを作成した。」「意思決定支援の作業の過程で、良くない支援の実態が出てきたので、平成29年度末頃に、身体拘束が行われている20数人のリストを作成し、運営指導を担当する障害福祉課に提供した。その後も随時更新していた。」 ・「このリストは、平成30年春から11月までの間に、紙で障害福祉課に提供し、不適切な支援が行われていることを伝えた。」「それでも動きがなかったので、幹部職員に相談に行き、リストを渡した。」 ・「平成29年度から身体拘束や不適切支援の状況について、意思決定支援を担当する共生社会推進課内と運営指導を担当する障害福祉課へ再三に渡り言い続け、幹部職員にも報告した。みんな状況を知っていたが、改善に向けて取り上げようとしなかった。」 ・「気になる支援があるという認識はあった。」 ・「リストをもらったかどうかは記憶にない。」 ・「Aさんの調査をすべきということについて、庁内の関係職員と議論したことはある。」「Aさん以外の方については、平成29年度末頃、印刷したリストを渡されたが、調査を行うまでの認識ではなく、調査の指示はしていなかった。」 ・「リストは1例であって、不適切な身体拘束等は上司に報告しており、障害福祉課にも報告していた。」「リストはそれほど重要ではなく、不適切な支援が行われているようなら、一人一人の利用者について常々、話していた。」 ・「意思決定支援で直面する利用者の不適切支援は、おかしい、止めるべきと言って、変えてきた。しかし、県全体で考えるよう訴えてきたが、取り上げられなかった。不適切支援があることは知っていたし、報告していた。身体拘束はそもそもなくしていくべきとの認識がないのでは、価値観の醸成が急務だと思っている。」 ・「担当者個人を責める気はない。組織のシステムエラーだったと思っている。津久井やまゆり園の不適切支援を問題視することについて、他の園への影響や関係性を大事にしているのではないかと感じた。」 ・「(千木良か芹が谷か)居住地を選んでもらうこと、地域移行が主たる関心だった。個々の利用者支援の質といったことへの関心は弱かったかもしれない。」 ・「事件後の混乱が続いている大変な状況で、現場の支援員に対して、その支援内容は改善しないといけないと言うと、支援員が意思決定担当とのやり取りを面倒に感じて、利用者の情報を話してくれなくなるのではないかという迷いはあった。」 ・「施設の現場は人が足りないなど、運営の大変さを、意思決定支援担当も分かっている。」 ・「意思決定支援がなかなか進まないという焦りがあった。」