(参考資料別冊)6 東京都建築物バリアフリー条例 改正内容 平成31年4月 東京都都市整備局 建築物バリアフリー条例の改正概要(平成31 年3月29 日改正) 1 対象 新築、増築、改築又は用途変更部分の床面積の合計が1,000u以上の建築物における一般客室 2 共用部の基準 各客室までの経路に階段又は段を設けない。 3 一般客室内の基準 (1)一般客室の出入口幅は80cm以上 (2)一般客室内の便所及び浴室等の出入口幅は70cm以上 (3)一般客室内に階段又は段を設けない。 4 努力義務規定  一般客室内の便所及び浴室等の出入口幅は75cm以上 施行日:平成31 年9月1日 (添付資料) 30 都市建企第1409 号 平成31年3月29日 都内各特定行政庁建築主務部長 殿 東京都都市整備局 市街地建築部長 青柳 一彦 高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例の一部を改正する条例の施行について(技術的助言) 高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例の一部を改正する条例(平成30年東京都条例第49号)(以下「条例」という。)が、平成31年3月29日に公布さ れ、規定の整備に係る改正を除き、同年9月1日より施行されることとなりました。 当該改正規定の運用について、地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として、下記の通り通知します。 なお、都内の指定確認検査機関に対しても、この旨通知していることを申し添えます。 記 1 条例改正の概要について これまで、ホテル又は旅館の客室については、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令(以下「令」という。)第15条に基づく、車椅子使用者が円滑に利用 できる客室(以下「車椅子使用者用客室」という。)のみの規制であった。 今回の条例改正により、規制の無かった車椅子使用者用客室以外の客室(以下「一般客室」という。)について、条例第11条の2を新設し、バリアフリーの義務基準を設けることで、 今後の超高齢社会を見据え、高齢者や障害者など、より多くの人が利用しやすい宿泊環境を整えることとしたものである。 2 条例の運用上の留意点について (1)客室の用語の定義について @ 車椅子使用者用客室 令第15条に基づく、車椅子使用者が円滑に利用できる客室で、令第18条に基づき、不特定多数のものが利用し、又は主として高齢者、障害者等が利用する居室、いわゆる「利用居室」に該当する。 A 一般客室 車椅子使用者用客室以外の客室をいい、不特定少数の者が利用する居室のため「利用居室」には該当しない。 (2)対象施設について(条例第11条の2第1項) 床面積の合計1,000u以上のホテル又は旅館について「新築」、「増築」、「改築」又は「用途変更」をする場合を対象とする。ただし、下記の施設は、対象から除外する。 ・ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第6項第四号に規定する営業の用に供する施設(俗称「ラブホテル」) ・ 旅館業法第2条第3項に規定する簡易宿所営業の施設床面積の合計1,000u以上の考え方は、増築、改築又は用途変更をする部分が1,000u以上とし、既存部分の面積は含まない。例えば、既存部分が1,500uのホテルに800uの増築を計画した場合は、増築部分が1,000u未満のため対象外となる。既存部分は、令第22条及び条例第12条に基づき遡及適用されない. (3)宿泊者特定経路について(条例第11条の2第1項) 車椅子使用者用客室は、「利用居室」であり、令第18条に基づき、道等、車椅子使用者用駐車場及び車椅子使用者用便房から車椅子使用者用客室までの経路を「移動 等円滑化経路」にしなければならない。「宿泊者特定経路」は、車椅子使用者用客室だけでなく、全ての一般客室に至るまで、階段又は段を設けないことを規定した。宿泊者特定経路に規定するのは、移動等円滑化経路の規定のうち、段差の禁止のみとしたが、図1のとおり、一般客室までの共用部分は、不特定多数の者が利用するため、令第11条から17条及び条例第6条から第9条の「一般基準」に該当させなければならない。 これは、高齢者、車椅子使用者、キャリーバッグを引いた旅行者及びベビーカーを使用する宿泊者等に対して、全ての客室まで、経路上の段差を禁止することで、円滑な移動が可能となるように定めるものである。 また、車椅子使用者やキャリーバッグを引いた旅行者は車での利用が多いことから駐車場からの経路も対象としている。これにより、道等及び車椅子使用者用駐車場から全ての客室まで段差が解消され、円滑な移動が可能となる。 [図1] (2)において、既存遡及について示したが、増築部分が既存建物を経由し、宿泊者特定経路を構成する場合は、条例第12条第二号及び第六号に基づき当該既存部分 も段差の解消が必要となるので留意されたい。移動等円滑化経路も同様である。また、建物の構造上の問題で段差が発生してしまう場合又は避難階以外の階に客室 を設ける場合は、条例第11条の共同住宅の特定経路の基準と同等の傾斜路やエレベーター、段差解消機を設置することで、階段又は段の解消が可能となる。 (4)一般客室内の基準について(条例第11条の2第2項)  一般客室内の基準の適用については、和室部分は除くものとする。和室部分とは、「畳を中心とした一体の室」のことをいい、考え方は、靴を脱ぎ、框をあがった部分から先 に畳がある場合で框から先を一体の室とする。ただし、図2のような和洋室では、客室入口から洋室部分へ行き来できる場合、当該洋室部分は、基準適用の対象となる。なお、 和室の奥にある縁側等、板張りの廊下は基準適用の対象外となる。 [図2] @ 出入口の幅について(条例第11条の2第2項第一号)  一般客室の出入口幅の寸法は、有効寸法をいう。つまり、次頁の図3のとおり枠から枠の幅ではなく、扉を開放したときの有効幅をいう。「開き戸」の場合は、扉厚を含めずに実際に扉を90度開けたときの建具の内法幅、「引き戸」の場合は引き残しを含めずに建具の内法幅で80p以上の確保が必要となる。  なお、参考として、車椅子使用者用客室は、条例第10条第一号イに基づき、移動等円滑化経路を構成する出入口に該当するため、出入口の扉の幅は85p以上としなければならない。 [図3] A 便所及び浴室等の扉幅について(条例第11条の2第2項第二号)  一般客室内の一の便所及び浴室等の扉幅70p以上を規定している。なお、扉の幅については@と同様に有効幅となる。ただし、両開き戸は、施錠の方法等により、車椅子使用者でも円滑に開閉できるものは、両側の扉を解放した状態で有効をとってもよい(例えば、フランス落し錠のような障害者が開錠に苦慮するものは対象外)。 一の便所及び浴室等とは、一の客室内に複数の便所又は浴室がある場合は一以上について、当該扉幅が必要となる。浴室等とは、ユニットバス、洗い場付き浴室及びシャワー室も含まれる。図4のように、ユニットバスではなく、便所及び浴室が独立しているものの、便所を介して浴室につながっている場合は、便所及び浴室の両扉とも有効幅として70p以上必要となる。 [図4] また、図5のように、便所を介して、洗い場付き浴室とシャワー室が備えられているなど、浴室の機能が2か所ある場合は、便所への扉は有効幅70p以上が必要であるが、浴室等については、一以上の規定なので、浴室かシャワー室のどちらかを有効幅70p以上確保すれば良い。 [図5] B 客室内の段差の禁止について(条例第11条の2第2項第三号)  客室までの経路と同様、一般客室内も階段又は段を設けてはならないとした。ただし、下記の部分は除くこととした。 イ 一の客室内がメゾネット型の場合、客室の出入口がある階から上階又は下階との間の上下の移動に係る部分を段差の禁止対象から除き階段を可とした。この部分を除いたことから、その先の上階又は下階も対象から除いている。 [図] ロ 一般客室内に階段又は段の部分があっても1/12以下の傾斜路を併設すれば良いとする規定である。なお、条例では、傾斜路の幅について、規定はしていないが、車椅子も円滑に利用できる幅を確保する必要がある。 ハ 浴室等は、防水上の観点から一般的に客室部分との間に2p程度の段差が必要となることから、それを許容する規定である。 (5)努力基準について(条例第11条の2第3項)    同条第2項第二号で浴室等の出入口幅は70p以上との義務基準を規定したが、広い客室で浴室等も広く幅の広い扉も設置できる場合は、75p以上の出入口幅を確保することが望ましいことを示した。現在、国の定める「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(以下「設計標準」という。)の見直しが行われ、新たな設計標準では、浴室等の出入口幅は、JIS 基準に基づく全幅70pの車椅子であっても通過可能な幅員とする主旨から、こぎ手等の必要な最小余裕幅を見込み望ましい基準として75p以上と記載された。そのため、都としても、浴室等の出入口幅70p以上の義務基準に上乗せして、より円滑な利用ができるよう設計標準と整合を図り努力義務として75p以上を規定した。 (6)その他  条例第11条の2第2項第一号で、客室の出入口幅を80p以上と規定したことにより、客室内の通路幅も一般的に一定程度の空間確保がなされると考えられることから、通路幅については規定しないこととした。ただし、一般客室をより円滑に利用するためには、客室内の空間確保が重要であり、客室の出入口扉からベッド等へ至る経路のうち、特に狭くなりがちな便所又は浴室等の前の部分も十分な幅を確保するこ とが望ましい。  なお、設計標準では、図6のように、便所又は浴室等の出入口に至る車椅子使用者の経路が直角路となる場合には、便所又は浴室等の出入口付近における通路の有効幅員は100p以上が望ましいとされており、客室内の通路の計画に当たっては、車椅子使用者の利用に支障のないよう配慮する必要がある。 <一般客室(ツインルーム)の例> [図6] (「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版))