(参考資料別冊)4 ホテル・旅館における建築設計標準(追補版)の公表について(H30.3.29記者発表資料) 国土交通省 平成31年3月29日 住宅局 建築指導課 「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)」の公表〜多様なニーズに対応した客室モデルのバリエーションの追加等〜 国土交通省は、ホテルや旅館の適切なバリアフリー化をより一層進めるため、本日、バリアフリー設計のガイドラインである「ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)」を作成・公表いたしました。 1.背景 国土交通省では、すべての建築物が利用者にとって使いやすいものとして整備されることを目的に、設計者をはじめ、利用者、建築主、審査者、施設管理者に対して、適切な設計情報提供するバリアフリー設計のガイドラインとして「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」を策定しています。2020 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催、我が国における急速な高齢化の進行、障害者差別解消法の施行、観光立国推進による訪日外国人旅行者の増加等を受け、ホテル又は旅館を含む建築物には、より一層のバリアフリー対応が求められています。 2.主な内容 全国の建築物、特にホテルや旅館の適切なバリアフリー化をより一層進めるため、ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)を作成・公表しました。本ガイドラインでは、主に以下の項目について、従来の建築設計標準から記載の充実等を図っております。 @ 車椅子使用者用客室設置数の基準見直しの反映 A 多様なニーズや宿泊施設の特徴に対応した客室モデルのバリエーションの追加 B 各客室に共通する整備及びソフト面の工夫、共用部分に関する配慮事項の追加 C 新築・改修、ホテル・旅館、水廻りの構成等の各特徴に応じた、多様な優良事例の追加 3.添付資料 ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)概要※ ※本文は、以下のURLに掲載しております。 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html 問い合わせ先 国土交通省住宅局建築指導課 企画専門官 木(内線 39-515) 課長補佐 飯田(内線 39-516) 代表:03−5253−8111 直通:03−5253−8513 FAX:03−5253−1630 (別紙) 【1ページ】 ホテル又は旅館における高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)の概要 ○ 「建築設計標準」は、国土交通省が設計者をはじめ、利用者、建築主、審査者、施設管理者に対して、適切な設計情報や配慮事項を提供するバリアフリー設計のガイドラインであり、また、バリアフリー法の具体的な運用を行う際、考慮すべき参考となるようなガイドラインである。 ○ 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を契機に、高齢者、障害者等がより円滑にホテル又は旅館を利用できる環境整備を推進するため、国土交通省は、学識経験者・障害者団体・施設管理者団体・設計関係団体・地方公共団体等から構成される検討会を設置して検討を行い、車椅子使用者用客室設置の基準見直しの反映、客室モデルのバリエーションの追加、ソフト面の工夫や共用部分の配慮事項の追加等を主な改正内容とする「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(追補版)」を2019年3月末にとりまとめました。 現状の課題 @ 複数の車椅子使用者用客室に対するニーズ A BF客室の稼働率が低い B BF客室の快適性・デザイン性等、設計上の配慮が必要 C 多様なニーズ(広さ、設備、価格等)に対応した客室が不足 D バリアフリーに配慮した一般客室が少ない E 段差解消などの共用部のバリアフリー化やソフト面での対応が必要 主な改正事項 1 車椅子使用者用客室設置数の基準見直し(2018.10.191 公布、2019.9.1施行)の反映 〇床面積2,000m2以上かつ客室総数50室以上のホテル又は旅館を建築する場合に必要な車椅子使用者用客室の設置数を「1室以上」から「建築する客室総数の1%以上」に改正 2 多様なニーズや宿泊施設の特徴に対応した客室モデルのバリエーションの追加 〇ホテル・旅館のバリアフリー化に向けた建築計画の手順・要点の充実 〇車椅子使用者用客室と一般客室のバリアフリー対応の水準とモデル例の見直し 〇客室内又は共用廊下の段差解消による車椅子使用者用客室の改修モデルの追加 〇開き戸又は引き戸の有効幅員等の解説の追加 3 各客室に共通する整備及びソフト面の工夫、共用部分に関する配慮事項の追加 〇各客室に共通する整備及びソフト面の工夫に関する配慮事項の追加 〇ホテル・旅館における共用部分の配慮事項の追加 4 新築・改修、ホテル・旅館、水廻りの構成等の各特徴に応じた、多様な優良事例の追加 〇ホテル・旅館の優れた設計事例を選定し、幅広い設計情報等の提供(積極的なバリアフリー対応の取組方法、きめ細やかな設計上の配慮事項、魅力ある施設づくりにつながるバリアフリー改修、既存建物からの用途変更に伴うバリアフリー改修等) 〇ソフト面も含めたバリアフリー対応が充実されている事例紹介(情報伝達手段、貸し出し等) 【2ページ】 1 車椅子使用者用客室設置数の基準見直し(2018.10.19公布、2019.9.1施行)の反映 ○ 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催、急速な高齢化の進行、障害者差別解消法の施行、観光立国推進による訪日外国人旅行者の増加等を受け、ホテル又は旅館を含む建築物の一層のバリアフリー化が求められている。 ○ これらを踏まえ、床面積2,000u以上かつ客室総数50室以上のホテル又は旅館を建築にする場合に必要な車椅子使用者用客室の設置数を「1室以上」から「建築する客室総数の1%以上」に改正しており、この基準見直しを追補版に反映した。 現行 【車椅子使用者用客室の設置数(義務基準)】 ○ 床面積2,000u以上かつ客室総数50室以上のホテル又は旅館を建築※1する場合は、1室以上の車椅子使用者用客室を設ける。 ※1:建築とは新築、増築、改築又は用途変更をいう。 [図] 改正後 【車椅子使用者用客室の設置数(義務基準)】 ○ 床面積2,000u以上かつ客室総数50室以上のホテル又は旅館を建築※1する場合は、建築する客室総数の1%以上※2の車椅子使用者用客室を設ける。 ※1:建築とは新築、増築、改築又は用途変更をいう。 ※2:1未満の端数があるときは、その端数を切り上げた数 [図] ※車椅子使用者用客室の基準の主な内容 ・便所、浴室又はシャワー室(浴室等)を含む出入口幅を80cm以上とすること ・戸を設ける場合には、その前後に段差が無いこと ・車椅子使用者用浴室等及び車椅子使用者用便房については、手すり等を適切に配置し、車椅子使用者が円滑に利用することができるよう十分な空間が確保されていること 【3ページ】 2 多様なニーズや宿泊施設の特徴に対応した客室モデルのバリエーションの追加 建築計画の考慮すべきポイントの充実 施設全体 ○ 施設の種類(ホテル/旅館)、利用目的(観光/滞在/ビジネス等)、立地条件(都市/観光地)、規模、工事の内容(新築/改修)等の条件を考慮すること 車椅子使用者用客室 ○ バリアフリー対応に加え、快適性やデザイン性に配慮した設計上の工夫を行うこと ○ 便所、浴室等、水廻り空間のバリアフリー対応の充実(特に車椅子対応)を図ること 一般客室 ○ 車椅子使用者や視覚障害者、聴覚障害者等、多様な利用者に配慮した一般客室の整備を行うこと 共用部分 ○ 客室のバリアフリー化と同時に、これに伴い共用部分の適切なバリアフリー整備(段差解消等)を行うこと ソフト面での対応 ○ 多様な利用者が円滑に施設を利用できるよう、施設管理者側がバリアフリーに関する情報提供や人的対応・避難誘導等のソフト面での対応を行うことを考慮した計画とする 改善・改修 ○ 高齢者、障害者等が利用しやすい客室とするための段差解消の方法や運営しながらの改修実施の方法等を検討すること [車椅子使用者用客室のモデル例、一般客室のモデル例、車椅子使用者用客室の改修モデル例についてそれぞれ図示] 【4ページ】 3 各客室に共通する整備及びソフト面の工夫、共用部分に関する配慮事項の追加 主な改正内容:整備対象となる客室の明確化、施設管理者、設計者が知っておくべきソフト面の工夫や実例紹介の充実 @ 各客室に共通する整備整備対象:全ての客室 ・浮き彫り文字の室名表示等 [図] ・字幕表示が可能なテレビのリモコン [図] A ハード・ソフトの両面による情報伝達設備 貸し出し対象:全ての客室 客室ドアのノック又は呼出しや火災報知器、電話・携帯メール等の各箇所に発信機を設置し、感知した情報を受信機が受け取り、フラッシュ光・文字又は絵表示等の視覚情報や振動等の体感情報により情報伝達する。 [図] B‐1 ソフト面の工夫(情報提供とコミュニケーション) 対象者→必要な人的配置 情報提供とコミュニケーション方法の望ましい例 共通→・利用者特性やニーズを十分に理解する・積極的な声かけによりコミュニケーションを図る・ビュッフェ式(食事)の場合、食べ物の提供サポート等 高齢者、肢体不自由者等→・貸し出し車椅子の用意、貸し出し車椅子の全幅、客室の各出入口の有効幅員の把握等 視覚・聴覚障害者等共通→・停電・非常時の対応策、情報伝達手段及び避難誘導についての事前説明等 視覚障害者等→・点字による利用案内等 聴覚障害者等→・筆談ボード等でのコミュニケーション対応等 B‐2 ソフト面の工夫(備品の対応、貸し出し) ・段差解消のための据置きスロープ [図] ・入浴用椅子 [図] ・入浴台、滑り止めマット [図] C 情報提供の実施と利用者ニーズの蓄積 ・ホテル又は旅館のバリアフリー化には、施設等についてのハード面の整備のみならず、施設管理者が利用者に対して必要な情報を適切に提供することが必要である。 ●特に重点的に情報提供をすることが望ましい項目 ・予約時のサービス・情報提供(バリアフリーの施設情報、Web予約システム、複数の連絡手段等) ・車椅子使用者用客室・一般客室の部屋数、室面積、間取り図、出入口幅 ・貸し出し備品(車椅子、入浴備品、情報伝達設備等)、非常時の避難関連 ・従業員のコミュニケーション手段(外国語対応、筆談・手話対応、メール対応等) 【5ページ】 4 新築・改修、ホ4 テル・旅館、水廻りの構成等の各特徴に応じた、多様な優良事例の追加 ○ 建築主や設計者等が個々のプロジェクトの企画・設計・施設管理をまとめるにあたり、設計事例を参考に活用できるよう、様々な特徴あるホテル又は旅館について事例調査を行い、建築物全体としてバリアフリー対応の優れた事例を選定し、バリアフリー対応の取組方法、きめ細やかな設計上の配慮事項、魅力ある施設づくりにつながるバリアフリー改修等について「設計事例集」にとりまとめた。 ○ 建築物の一部分のバリアフリー対応がなされている設計事例は、設計標準の各項目において掲載している。 設計事例集 バリアフリー対応の共用空間や洗練され、落ち着きのあるデザインの アクセシブルルーム(車椅子使用者用客室)を提供するホテル 【ダイワロイネットホテル銀座(2015年新築)】 [写真] ハード面とソフト面(貸し出し、有資格者の配置等)を兼ね備えたユニ バーサルサービスの充実を図った、京都駅直結型シティホテル 【ホテルグランヴィア京都(1997年竣工・2007〜9年改修・2017年〜20年改修)】 [写真] 既存事務所ビルからの用途変更に伴い、車椅子使用者客室を整備 したホテル【RAKURO京都(1986年・1990年竣工→2018年改修) 】 [写真] 複数回にわたる改修により、客室及び共用部のバリアフリー化 を図った和風旅館【ホテルはつはな(1993年竣工→2005年等改修】 [写真]