(参考資料別冊)1 建築設計標準の改正について(H29.3.31記者発表資料) 国土交通省 平成29年3月31日住宅局建築指導課 「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」の改正 国土交通省は、全国の建築物におけるバリアフリー化を一層進めるため、本日、バリアフリー設計のガイドラインである「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」を改正いたしました。 1.改正の目的と主な内容 国土交通省では、すべての建築物が利用者にとって使いやすいものとして整備されることを目的に、設計者をはじめ、建築主、審査者、施設管理者、利用者に対して、適切な設計情報を提供するバリアフリー設計のガイドラインとして「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」(以下「建築設計標準」という。)を策定しています。前回の建築設計標準の改正から4年が経過し、その間、2020 年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会の開催決定や、障害者権利条約の批准、障害者差別解消法の施行、観光立国推進による訪日外国人旅行者の増加、高齢化の進行など、社会情勢は大きく変化しており、建築物の一層のバリアフリー化が求められています。このような背景から、全国の建築物におけるバリアフリー化を一層進めるため、建築設計標準の次の内容を中心に、改正を行いました。 @ 宿泊施設について、高齢者、障害者等の円滑な利用に配慮した「一般客室」の設計標準の追加、既存建築物における改修方法の提案、ソフト面での配慮等の記述の充実 A 車いす使用者用便房、オストメイト用設備を有する便房、乳幼児用設備等について、一層の機能分散を図るとともに、小規模施設・既存建築物における整備を進めるための記述の充実 B 建築物の用途別の計画・設計のポイントの記述の充実 C 設計者等にとってわかりやすい内容とするための構成等の整理 2.添付資料 (別紙)高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準の改正概要 ※ 改正した建築設計標準(本文)は、以下のURLに掲載しております。 http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutakukentiku_house_fr_000049.html 3.パブリックコメントの結果 建築設計標準の改正に係るパブリックコメントの結果、合計136 件の意見が寄せられました。 ※ パブリックコメントの結果については、電子政府の総合窓口(e-Gov)中「結果公示案件詳細」をご参照下さい。電子政府の総合窓口: http://www.e-gov.go.jp/ 問い合わせ先 国土交通省住宅局建築指導課 企画専門官 藤原(内線 39-520) 係長 中村(内線 39-542) 代表:03−5253−8111 直通:03−5253−8513 FAX:03−5253−1630 (別紙) 【1ページ】 高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(平成28年度版)の改正概要 ○ 「建築設計標準」は、バリアフリー設計のガイドラインとして、平成19年度に作成。新たな機器の普及や技術の進展、障害者団体等からの要望を反映させるため、これまで5年ごとに改正を実施。 ○ 2020年東京大会での国内外からの来訪者の増大を見据え、新築だけでなく既存施設のバリアフリー化にも取り組む必要があることから、改修の観点などを盛り込むため、1年前倒しして「建築設計標準」を改正(1/23〜2/28 パブリックコメント実施。)する。 [現状の課題] ○ ホテル客室(新築) ・車いす使用者用客室は一般客室に比べ約1.4倍の面積※である ・高齢者、障害者等の外出・旅行等の機会の増加から、より多くの利用可能なホテル客室が必要 ・一方で、インバウンド増加の対応のためには、より多くの客室数を確保することも必要→客室数を確保しながら、客室のバリアフリー化を促進する必要がある ○ ホテル客室(既存) ・客室の面積が小さいことや、浴室・便所の出入口の幅が狭く、段差があることから車いす使用者等が利用しにくい ・一方で、改修にあたって、面積や水回り配管の位置・スペースの確保に関する制約が多い(日本のホテルの特徴)→様々な制約を解決しながら改修を促進する必要がある ○ トイレ ・多機能トイレの普及により、多機能トイレへ利用者が集中し、本来必要とする車いす使用者等がトイレを使用しづらい状況→多機能トイレの利用集中を解消する必要がある ・高齢者、障害者等が使用できるトイレの数が少ない→既存トイレの改修を促進する必要がある [主要改正事項] @ ホテル客室のバリアフリー化の促進 ・バリアフリーに配慮した「一般客室」の設計標準の追加 ・既存ホテルの合理的・効果的なバリアフリー改修方法の提案 A トイレのバリアフリー化の促進 ・多機能トイレへの利用者の集中を避けるため、個別機能トイレの分散配置を促進 ・既存トイレの合理的・効果的なバリアフリー改修方法の提案 B その他改正事項 ・用途別の計画・設計のポイントの記述の充実 ・設計者等にとって分かりやすい内容とするための記述内容の充実 ※日本ホテル協会及びシティホテル連盟へのアンケート調査による結果(ツインタイプの客室) 【2ページ】 @ ホテル客室のバリアフリー化の促進 ○ 2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会を契機として、今後、国内外から多くの来訪者が見込まれるため、宿泊施設のバリアフリー化が求められている。このため、ホテル客室の記載を充実し、ホテル客室のバリアフリー化を促進する。 バリアフリーに配慮した「一般客室※1」の設計標準 一人でも多くの高齢者、障害者等が利用できるよう、「一般客室」のバリアフリーへの配慮について設計標準を新たに追加 ○一般客室(新築)におけるバリアフリーの問題点 ・ユニットバスの出入口の幅が狭い (参考)出入口の幅65cm未満が約6割※2 ・客室内が狭く車いすの転回スペースが確保できていない (参考)客室(ツイン)の平均面積約27.2u※2 ○一般客室の標準的な規模で実現可能なバリアフリー対応について規定 <バリアフリーに配慮した「一般客室」の事例(ツイン客室25u程度)> [図表示] ※1 車いす使用者用客室(通称:ユニバーサルルーム等)以外の客室 ※2 日本ホテル協会及びシティホテル連盟へのアンケート結果 車いす使用者用客室(ユニバーサルルーム等)への改修既存のホテルにおける車いす使用者用客室の整備が進むよう、効果的な改修方法を提案 <2室を1室に改修し、車いす使用者客室を整備する例> [図表示] 改修前 ・ユニットバスの出入口の幅及び 内部スペースが狭く、車いすが進入・回転できない ・ユニットバスの出入口に段差があり、車いすが進入できない ・客室内の通路幅が狭く、車いすが回転できない 改修後 ・出入口の幅を広げ、引き戸として内部スペースを確保することで、車いすが進入・回転が可能に ・スロープを設けることにより、段差を解消し、車いすで進入可能に ・客室内においてスペースを設けることにより、車いすが回転可能に 適切な情報提供 施設運営者はホームページ等での事前の情報提供(車いす使用者用客室の有無やその仕様、一般客室における障害者等への配慮の内容、備品の貸し出し等に関する基本的な情報)及び利用者からの情報入手に努めるよう要請 【3ページ】 A トイレのバリアフリー化の促進 ○ 多くの国内外からの来訪者を受け入れるにあたって、高齢者、障害者等が円滑に利用できるトイレの整備が求められる。このため、トイレの機能分散を図るとともに、バリアフリー改修を促進し、より多くの施設におけるトイレのバリアフリー化を促進する。 個別機能の分散配置を促進 ○ 多機能トイレへの利用者の集中を避けるため、個別機能の分散配置を促進 多機能トイレ 必要な設備等 ●車いす使用者… 回転スペース、大型ベッド等 ●オストメイト… 汚物流し等 ●乳幼児連れ… 乳幼児用いす、おむつ交換台等 施設の用途や利用状況を勘案し、障害者等に必要な各設備を個別機能トイレへ分散 車いす使用者用トイレ 回転スペース 大型ベッド等    + 設計上の工夫により対応 オストメイト用設備を有するトイレ 汚物流し等 乳幼児連れに配慮した設備を有するトイレ 乳幼児用いす おむつ交換台 ○ 小規模施設や、面積・構造の制約が多い改修の場合には、利用者ニーズ等を考慮した上で、「多機能トイレ」と「簡易型機能トイレ」の組み合わせにより、可能な限り機能分散を図る 既存トイレのバリアフリー改修方法の充実既存建築物におけるトイレのバリアフリー化が進むよう、便房の数や配置の工夫等、効果的な改修方法を提案 改修前 ・出入口の幅が狭いため、車いすで進入できない ・便房内のスペースが狭く、内開き戸のため、車いすで進入できない 改修後 ・出入口幅、回転スペースを確保することにより、車いすで進入可能に ・便房内においてスペースを設け、引き戸にすることにより、車いすで進入可能に [図表示] 【4ページ】 B その他の改正事項 ○ 建築物のバリアフリーについて、設計者をはじめ、建築主、施設管理者等の理解がより一層進むよう、建築物の用途別の計画・設計のポイントについて記載の充実を図り、また、設計者等の理解が深まるよう、建築設計標準全体の記述内容の充実を行う。 用途別の計画・設計のポイントの記述の充実 <追記した記述の例> 学校 災害時に避難所となる学校施設には、車いす使用者用トイレ等を設置することが望ましい 劇場・競技場 乳幼児連れ、知的障害者、発達障害者、精神障害者等に配慮して、「区画された観覧室」を設けることを検討する ホテル 聴覚障害者等への情報伝達が円滑に行えるよう、携帯端末の貸し出しを検討する 設計者等にとってわかりやすい内容とするための記述内容の充実 〇高齢者、障害者等のニーズを具体化し、バリアフリーの必要性に関する記述を充実 (例)・知的・発達・精神障害者等への異性介助等により、男女共用の便房設置に対するニーズが高まっている 〇図版をわかりやすく修正 (例) ・客室における浴室の断面図を追加し、高さに関する情報を充実 〇ハード面での対応だけでは困難な場合のソフト対応(案内、機器貸出し、情報伝達等)について記述を充実 (例) ・視覚障害者が一般客室に宿泊する際には、エレベーターから近く、見つけやすい位置の客室に案内することが望ましい。 ・便所、浴室等の備品(浴室用車いす、補高便座等)室内信号装置、電話機等を貸し出すことが望ましい。 ・非常時対応のため、従業員による障害者等の宿泊状況の把握 〇バリアフリー条例の一覧を追加し、地方公共団体の取り組みを紹介