バリアフリーフェスタかながわ2014結果報告書 平成27年3月 神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議 バリアフリーフェスタかながわ実行委員会 第1章「バリアフリーフェスタかながわ 2014」の趣旨 1 目的 ○神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議(以下「県民会議」という。)では、障害者、高齢者、妊産婦、乳幼児連れの方などが安心して生活し、自らの意思で自由に移動し、社会に参加できる街づくりを進めている。 ○その一環として、県内の障害者等の関係団体や事業者・NPO団体、県民からの公募委員、大学、行政の協働により、「バリアフリーフェスタかながわ2014」(以下「フェスタ」という。)を、相模原市内の商業施設において開催した。 ○このフェスタは、県民会議内に設置された実行委員会が企画・立案したもので、その目的は、平成24年9月に県民会議が取りまとめた提案書を広く県民に周知するとともに、バリアフリーの街を体感してもらうことで、バリアフリーの街づくりに対する理解を深めていただくことにある。 〔企画・立案に当たっての考え方〕 ・県民会議の理念に基づき、県民・事業者・行政が協働で実施する。 ・継続的にフェスタが開催できるよう、持続的かつ安定的な開催形態を意識して準備を進める。 ・県民から広く意見を募るよう、開催会場は誰もが自由に参加できるような場を設定する。 ・当事者団体・事業者団体からの参加を積極的に促す。 ・県民から多くの意見をもらえる形式とする。 ・来場者が気軽・身近に感じられる参加型・体験型の内容を中心としつつ、来場者が「大変だね」「かわいそう」では終わらない、バリアフリーの必要性、思いやりの心を自然と 身につけるものとする。 ・小学校の先生に対して、バリアフリー教育に取り組むためのきっかけや手段を提供する場とし、バリアフリー教育の拡大・充実を図る。 ・ユニバーサルデザインの考え方を踏まえ、来場者の誰もが安全・安心に参加できるように配慮したイベントとする。 2 概要 (1)日時 平成26年11月8日(土)11:30〜16:30 (2)場所 アリオ橋本(相模原市緑区大山町1番22号「橋本駅南口」徒歩5分) (3)主催 神奈川県バリアフリー街づくり推進県民会議 構成:学識経験者(4)、障害者団体(7)、関係団体(3)、事業者(8)、公募委員(2)計24名 (4)内容 ○県民会議構成団体を含む18団体が15コーナーを企画し、運営 ○スタンプを集めると景品がもらえるスタンプラリーの実施 〔スタンプラリーの達成条件〕 ・コーナー3か所以上のスタンプを、スタンプラリー台紙に集める。 ・フロントガーデンのコーナーの中で、必ず1つのスタンプは集めるものとする。 ・上記に加えて、アンケートへの回答を景品引換の達成条件とする。 ○小学校教諭を対象に、バリアフリー教育に役立つ情報を提供するバリアフリーフェスタツアー(以下「フェスタツアー」という。)の開催 (5)参加者数 ※カッコ内は昨年の数字 ・コーナー参加者数2,153名〔1,825名〕(各団体でカウントした参加者の合計人数) ・スタンプラリー達成者数299名〔341名〕 ・フェスタツアー参加者数3名〔未開催〕 3 広報 ○東洋大学デザインチームの協力を得て、実行委員会でイベント周知用の「ちらし」を作成した。 ○各団体においては、団体内の会員を始め、様々なツールを用いて広く参加を呼びかけた。具体的な広報としては次のとおりである。 1 団体内への広報用「ちらし」配付 2 広報用「ちらし」の一般配布 ・団体内展示室(カラーユニバーサルデザイン機構) ・アリオ橋本インフォメーション(イトーヨーカ堂) ・四ツ谷本部受付(イトーヨーカ堂) ・厚木市障害者総合相談室受付(神奈川県障害者自立生活支援センター) ・事務局カウンター(かながわ住まいまちづくり協会) ・麻布大学(聴導犬育成の会) ・チャリティーコンサート会場(聴導犬育成の会) ・手話サークル(聴導犬育成の会) ・地元の小・中・高校(聴導犬育成の会) ・長津田駅広報スタンド(佐藤光良氏) 3インターネットでの告知 ・ホームページ ・ Facebook・ブログ 4広報媒体への掲載 ・団体定期刊行物(神奈川県視覚障害者福祉協会) 5テレビやラジオなどマスコミを使った告知 ・FM横浜「 THE BREEZE」(イトーヨーカ堂) ・アール・エフ・ラジオ日本「夏木ゆたかのホッと歌謡曲」(神奈川県) ・タウンニュースさがみはら緑区版 10月30日号 6その他 ・県社協機関紙「福祉タイムス」に掲載(神奈川県障害者自立生活支援センター) ・アリオ橋本内のデジタルサイネージ・ポスター掲示(イトーヨーカ堂) ・アリオ橋本周辺小学校(神奈川県) ※後述の実行委員会構成団体向けアンケートや開催前に事務局に寄せられた情報提供を基に作成 第2章 評価 1アンケート結果 フェスタ及びフェスタツアーの参加者に対してアンケートを実施した。 また、今後における県民会議の取組みの検討資料とするため、実行委員会構成団体に対してもアンケートを実施した。その結果は次のとおりである。 (1)フェスタ参加者アンケート Q1 今回のフェスタで、どのコーナーがよかったですか?(複数回答可) ・「よかった」と思った参加者数は、「鉄道のバリアフリーを知ろう」(89名)が最も多く、次いで「車いすで坂道をのぼってみよう」(85名)が多かった。 ・また、コーナー参加者のうち何割が「よかった」と思ったか集計したところ、「『お年寄り』に変身してみよう!」(62.7%)、「カードゲームで学ぶカラーUD」(61.2%)、「鉄道のバリアフリーを知ろう」(60.3%)がそれぞれ6割を超えて多かった。 Q2またフェスタに参加してみたいと思いますか? ・次回フェスタに「参加したい」(90.3%)が9割に達し、昨年の86.8%を上回った。 Q3本日の体験を通して、バリアフリーの取組に興味をもちましたか? ・バリアフリーの取組みに、「興味をもった」(94.0%)が9割台に達し、昨年の85.9%を上回った。 Q4今回のフェスタを何で知りましたか? ・フェスタを知った理由としては、「会場ではじめて知った」(54.4%)が5割台で最も多く、次いで「学校のチラシ」(31.6%)が約3割であった。 Q5本日の体験を通して、驚いたことや新しく知ったことなど、感想をお聞かせください。 〔主な意見〕 ・いろいろな体験ができてよい(未就学児・男性) ・車いすで曲がるのがむずかしかった(未就学児・女性) ・車いすの坂道のむずかしさ(未就学児・男性) ・たのしかったです。バリアフリーという言葉は知っていましたが、くわしい事は知らないことも多く、勉強になりました。じっさい体験したことで、身近にかんじることができま した。(未就学児・男性) ・バリアフリーの大切さを学べた(未就学児・男性) ・バリアフリーは人事ではないと思いました。今度き会があったら、手話をもっと知ってみたいです。(未就学児・不明) ・アリオでも、バリアフリーの取り組みをしていることを知って、どんな人でも、安心して階だんなどが使えるようにしていると思った。(小学生・男性) ・いろいろくるまいすがあっておもろかった(小学生・女性) ・いろいろな取り組みがあるのを知り、おばあちゃんが右まひがあるので参考にしたいです。(小学生・男性) ・お年寄は、体中が重く大変なことをしり、お年寄を大切にしようと思った。(小学生・女性) ・同じ色なのにちがう色だったのが、おどろきました。(小学生・女性) ・介助犬(ちょうどう犬)のすごさがよく分かりました。そして、町中のバリアフリーを使っている人のことが、分かりました。(小学生・女性) ・からだのふじゆうな方のための工夫をしり自分でもできる事をしたいと思った(小学生・女性) ・車いすに乗ってみて下り坂がこわかった(小学生・女性) ・初めてバリアフリーを知ったので、また体験してもっと知りたい。すごくいい体験で、イイと思った。(小学生・女性) ・橋本のバリアフリーはすごいとおもいました。またやりたいです(小学生・女性) ・バリアフリーのとりくみをもっとさがしてみたい(小学生・女性) ・自分の知らない見方を、体験できて、よかったと思います。(中学生・女性) ・えきのバリアフリーをもっとよく見てみたい(高校生・女性) ・いつも見てる福祉車両の内部がみれて良かった。(大学生・男性) ・両親のために、いろいろと考えなくてはいけないと思った。(一般 20代・女性) ・UDタクシーがあることを知り、利用してみたいと思いました。(一般30代・女性) ・家の中をなるべくバリアフリーにしようと思った。(一般 30代・女性) ・色の見え方が体験できて勉強になった(一般 30代・男性) ・しんかんせんのバリアフリーは知らない事がたくさんあったのでとても良かったです。子供と一緒にラリーを回れるフェスタだったので子供にとって良い体験だったと思います! (一般 30代・女性) ・小さな配慮が多くの人の生活を豊かにすることがわかりました。物理的な整備も必要ですが、それを重要だととらえる"人"が大切だと思いました。(一般 30代・女性) ・トイレのことは小さい子どもがいる親にとっても便利だと思いました(一般 30代・女性) ・バリアフリーのトイレの場所がスマホで調べることができ便利だと思った。(一般 30代・女性) ・バリアフリーはとてもたいせつだと感じました。私も病気で体のいたみで苦しい思いをしたので、少しでしたが良い体験ができました(一般 30代・女性) ・見た目では、それ程急には見えない坂も、車イスを利用するとスピードが出たり、のぼるのが大変なことを、親子で体験できたので良かったです。(一般 30代・女性) ・アリオ橋本の階段に色が変わっていた事で見やすくなっているのを知り、そんな意味があったんだと知りました。(一般 40代・女性) ・色弱・色盲のお話をきき、もっと企業にはたらきかけたら、家電製品の電源等、便利になるだろうなと思いました。ちょうどう犬、もうどう犬、介助犬が増えたら、超高齢化社会で孤独死も減るかなぁ…?(一般 40代・不明) ・住まいにも危険な場所があることを知ることができた(一般 40代・女性) ・店舗案内が点字になっているのを知らなかった(一般 40代・女性) ・まだまだ知らないことが多いなと思いました。特に介助犬はまだ街で見たことがないのですが、全国で 50頭ぐらいしかいないってことを知って、もっと何かできることはないのかと考えさせられました。いい体験をさせていただきました。(一般 40代・女性) ・心のバリアフリーも進むといいですね(一般 50代・女性) ・車イスタクシーが相模原に1台は少ないですね(一般 60代・女性) ・高齢者は家の中での事故が多いことがわかった(一般 60代・女性) ・さまざまな取組によって弱者にやさしい社会が出来るといいね!!(一般 70代・男性) ・当たり前の事が当たり前でない事が大変だと思った(不明・不明) ・同じバリアフリーでも、ちょっとした差で困る人が増えたり減ったりすることが分かりました。(不明・不明) ・こんなにバリアフリーの車があるとは知りませんでした(不明・不明) Q6よろしければ、あなた(アンケート回答者)のことを教えてください ア参加者の性別 ・参加者の性別は、「女性」(61.2%)が約6割と多かった。 イ参加者の年代 ・参加者の年代は、「小学生」(29.1%)が約3割となり、次いで「一般30代」(20.7%)が約2割であった。 ウ参加者の居住地 ・参加者の居住地は、「相模原市」(69.6%)が7割に達した。 (参考1)コーナー参加数 ・スタンプの押印数から1人当たりのコーナー参加数を集計したところ、「8か所」(20.4%)が2割となり、次いで「4か所」(18.4%)、「5か所」(17.7%)、「6か所」(15.4%)が続いた。 (参考2)スタンプラリー未達成のスタンプ押印数について ・スタンプラリー未達成のスタンプ押印数は、「@各コーナーから申告のあったスタンプ押印合計数」から、「A受付に提出されたスタンプラリー台紙のスタンプ押印合計数」を引くことで、算出することができる。 ・今年のスタンプラリー未達成のスタンプ押印数は361回(@2,153回−A1,792回)となり、昨年のスタンプラリー未達成のスタンプ押印数178回(@1,686回−A1,508回)を上回っている。 (2)フェスタツアー参加者アンケート 問1本日の講演(鈴木治郎氏)の内容は理解できましたか。 ・「よく理解できた」が2名、無回答が1名であった。 問2またフェスタツアーに参加したいと思いますか ・「参加したい」が2名、「どちらでもない」が1名であった。 問3本日のご感想はいかがですか。 ・「満足」が2名、「やや満足」が1名であった。 問4本日の参加を通して、当ツアーに関するご意見・ご感想がありましたらご記入ください。 ・神奈川県内の他地域でも開催していただければ子どもたちに宣伝できると思いました。1つの場所で多くの事が学べる場だと思いました。 ・丁寧に説明していただけたので、分かりやすかったです。ありがとうございました。 ・とてもいい取り組みだと思いました。小学校の行事と重なり参加できずに残念がっている先生方を複数知っていますので、来年度はぜひ考慮していただくといいと思います。(土曜日より日曜の方が行事と重なりにくいです)また特別支援学校としても何かお手伝いできることがありましたらお声かけください。ありがとうございました。 (3)実行委員会構成団体アンケート 問1貴団体コーナーの参加人数(スタンプを押した人数)を教えてください。 ・第1章項番2「概要」に記載。 問2フェスタでは、参加者に伝えたいことを伝えることはできましたか。 ・「伝えることができた」が回答数14団体のうち13団体に達した。 問2−2伝えることができなかった理由は何ですか。 ・「当日の対応時間が足りなかった」という理由が挙げられた。 問3貴団体以外のコーナーで、よかったと思うコーナーはどれですか。(複数回答3つまで) ・ 「よかった」と思った団体は、「のってみよう車いす」が7団体と最も多く、「車いすで坂道をのぼってみよう!」と「気分楽々クイックマッサージ」が6団体で続いた。 問4貴団体において、今回のフェスタで行った広報を記載してください。 ・第1章項番3「広報」に記載。 問5次回フェスタが開催されるとしたら、また参加したいと思いますか。 ・ 次回フェスタに「参加したい」が回答数21団体のうち13団体と多かった。 問5−2参加したいと思えなかった理由は何ですか。(複数回答可) ・「団体の取組みとフェスタの趣旨が違った」「自団体や他団体によるイベントとの調整」「団体として参加するには会員からの発案が必要」「現時点では不明」といった回答があった。 ・そのほか、「自ら運営する団体での参加を検討したい」「マンネリ化しないよう、新たな団体の参加(団体の入替え)も多少必要」といった、参加団体の方向性に関する意見もあった。 問6次回フェスタが開催されるとして、何か課題がありましたら、ご自由にお書きください。 ・資料2−3別記に記載。 問7御意見や御感想などありましたら、ご自由にお書きください。 ・資料2−3別記に記載。 2 分析 ○ 項番1で記した「バリアフリーフェスタ参加者」、「フェスタツアー参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートなどを基に、フェスタの目的が達成できたかどうか検証する。 ○ 具体的には、第1章項番1で示した8つの「企画の考え方」、すなわち「(1)協働」「(2)継続性」「(3)不特定多数の参加」「(4)当事者団体・事業者団体の参加」「(5)多くの意見収」「(6)身につく参加型・体験型」「(7)バリアフリー教育の拡大・充実」「(8)ユニバーサルデザイン」の観点から主に評価する。 (1)協働 ○ 県民会議では、県民意見を基に、バリアフリーの街づくりに向けて、県民・事業者・行政が協働して取り組むべきことを、提案書としてまとめ、県民会議の構成団体を中心に、本提案に基づいた取組みを進めている。この取組みの一環として、県内の障害者等の関係団体や事業者・NPO団体、県民から公募委員、大学、行政の協働により、フェスタは開催された。 ○ 参加者から「いろいろな体験ができてよい」と意見があったように、各団体の取組みを一堂に会したことで、参加者の多様なニーズに対応することができた。また、今回、「乗ってみよう車いす」と「車いすで坂道をのぼってみよう」のコーナーが、車いすの体験について共同実施するといった団体同士の新たな連携も生まれた。 ○ その結果、スタンプラリーの達成条件よりも多くのコーナーに参加・体験した参加者が9割に達したことに加え、バリアフリーの取組みに「興味をもった」も9割台に達するなど、高い満足度につながる一因となった。 ○ 一方で、実行委員会構成団体アンケートでは、「『バリアフリー』なんだろうけど一体感がなかったように思えた」「ブース内容の共有など参加団体における意思疎通がなされていなかった」と、協働意識の不足が、意見として挙げられた。 (2)継続性 ○ バリアフリーの街づくりに向けたソフト的な取組みは、定期的に継続していくことが重要であり、フェスタについても継続性が求められる。 ○ 昨年のフェスタで手探りで実施したものを、根付かせていくために、今年のフェスタでは持続的かつ安定的な開催形態を意識して準備を進めていくことを目標とした。 ○ そこで、各種製作物の作成者については、県民会議構成団体・フェスタ参加団体から募ったが、立候補者はおらず、昨年度に引き続き、「ちらし」などのデザインについては東洋大学デザインチームに、ステージレイアウトについては佐藤氏に依頼することとなった。 ○ また、実行委員会構成団体アンケートでは、「各種配布物作成に関して、各団体の当事者意識が低いように感じた」とあるように、一部の団体から、作成や調整に必要な情報が定められた期限までに集まらなかったため、情報不足の中での見切り作業・調整や工程の手戻りなど、作成者・調整者に大きな負担が生じていた。 (3)不特定多数の参加 ○ これまでバリアフリー関連のイベントは、より広く様々な立場の方々に参加を呼びかけていたものの、結果的にバリアフリーに興味のある方のみの参加にとどまることが多かった。 ○ 今回のフェスタでは、バリアフリーに興味のない方々にバリアフリーの街づくりに向けた取組みを知ってもらうため、1日数万人単位で人が集まる商業施設「アリオ橋本」を開催会場とした。 ○ さらに、ステージの有効活用は、不特定多数の集客につながると考え、構成団体の協力でチアリーディンググループに参加してもらったり、各コーナーのデモンストレーションをステージ上で行ったりした。 ○ 結果、コーナー参加者数約 2,150名、スタンプラリー参加者数 300名と、昨年度以上に、バリアフリーのイベントとしては多くの人数を集客することができた。 ○ また、参加者アンケートによると、「会場で初めて知った」が半数以上を占めており、不特定多数の参加を促すという目的は十分に達成された。 ○ 一方、実行委員会構成団体アンケートでは、「昨年より動員数が少なかった」と意見があったように、屋内における1コーナー当たりの参加人数は昨年度よりも減っている。また、ステージ客席の空席が目立ち、会場全体が閑散とした印象を与えていたという意見もあった。 (4)当事者団体・事業者団体の参加 ○ 県民会議で取りまとめた提案書のテーマの1つとして、「多様な人が住まう「街」への気づき、障害者理解の促進」を挙げている。バリアフリーを推進するに当たっては、異なるニーズを持つ当事者同士が交流することにより他者への理解を深めるとともに、障害当事者の声を十分に聞くことが欠かせない。また、視覚障害の方にとって必要な視覚障害者用誘導ブロックは、高齢者や車いす利用者にとっては移動のバリアになることもあるなど、立場により考え方が相違していることから、障害当事者間の相互理解も必要である。こうした考え方を踏まえ、フェスタでは当事者団体や事業者団体の自主的な参加を促すことで、当事者同士が交流するきっかけを提供し、提案書のテーマを実践することとした。 ○ 参加者アンケートでは、バリアフリーの取組みに「興味をもった」が9割台に達するなど、障害当事者の参加により説得力の効果が十分に現れた。 ○また、実行委員会構成団体アンケートでは、「行政・NPO・学識関係者・企業が、それぞれの立場でバリアフリー・ユニバーサルデザインについて取り組んでおり、一堂に会して紹介する時機をもつことで、一体感を持ってすべてが繋がる・共有できることがわかる良い機会になった」「各団体ともバリアフリーの街づくりに非常に積極的に取り組んでおられ、老若男女問わず多くの方々にバリアフリーの重要性をお伝えしようと努めている様子は非常に感銘を受け、勉強になりました」と意見があったように、「当事者団体・事業者団体間」や「障害当事者間」における相互理解の促進に貢献することができた。 (5)多くの意見収集 ○ ユニバーサルデザインの考え方に基づく街づくりを進めていくに当たっては、様々な立場の方の意見を聴き、取組みに反映していくことが重要である。 そこで、フェスタでは、参加者に対してバリアフリーの街づくりに関する意見を聞けるよう、アンケートを実施し、スタンプラリーの達成条件の1つとした。 ○ スタンプラリー達成者 299名のうち 154名が自由意見を記載し、多くの意見を収集することができた。いただいた意見は、今後、必要に応じてバリアフリーの街づくりに向けた取組みに反映していくこととする。 (6)身につく参加型・体験型 ○ バリアフリー学習については、本人が実際に体験することが効果的と言われている。また、フェスタでは別の目的をもって来場した、不特定多数の方を呼び込む必要があったため、来場者が気軽・身近に感じられる内容とする必要があった。 ○ 各コーナーでは、車いす乗車・介助体験、手話教室、シニア体験など、不特定多数の方が参加しやすい参加型・体験型の内容が多くなり、コーナー参加者数約 2,150名、スタンプラリー参加者数 300名と、多くの参加者数を集客することができた。 ○ また、昨年のフェスタでは、「大変だった」「楽しかった」「かわいそうだった」という自由意見が多く、「心のバリアフリー」の理解促進という点では物足りないところもあったため、今年のフェスタでは、バリアフリーの必要性、思いやりの心を自然と身につけてもらうことを目標とした。 ○ これを受けて、各コーナーでは、クイズ形式など参加者がより考える内容が増え、参加者アンケートでも、「バリアフリーはひとごとではないと思いました」「バリアフリーでないところで、困っている人々をたすけたいと思った」と、昨年に比べて、参加者が問題に気付き、行動に移すような自由意見が見受けられるようになった。 ○ なお、映像を使った説明が分かりやすかったのか、昨年と比較して、アリオ橋本や電車関連のバリアフリーについての自由意見が多かった。 (7)バリアフリー教育の拡大・充実 ○ フェスタの成果をさらに根付かせるために、県内の小学校教諭を対象に、フェスタのコーナーを体験してもらい、バリアフリー教育に役立つ情報を提供するフェスタツアーを併せて開催した。 ○ 県内の小学校約 850校に「ちらし」を配布し、参加者を募ったが、応募は2校3名という状況であった。 ○ 参加者が集まらなかった理由としては、「フェスタの時期には、『総合的な学習の時間』のカリキュラム内容が決まっているため、フェスタツアーへの関心が低い」「小学校には同様のイベントチラシが大量に送られており、情報が埋もれてしまっている」「フェスタツアーとほかの行事の日程が重なり、参加できない」といったことが考えられる。 ○ なお、フェスタツアー参加者アンケートでは、「1つの場所で多くの事が学べる場だと思いました」「丁寧に説明していただけたので、分かりやすかったです」「とてもいい取り組みだと思いました」と好評な意見が寄せられている。 (8)ユニバーサルデザイン ○ 県民会議の議論を踏まえ、フェスタでは来場者又はスタッフの誰もが安全・安心に参加できるように配慮したイベントとすることとした。 ○具体的には、 ・開催会場は、バリアフリー設備が充実した、アリオ橋本(第3回バリアフリー街づくり賞表彰施設)を設定 ・ 250cm程度の通路幅を確保 ・手話通訳者を配置 ・「ちらし」にSPコードを貼付 ・配布物・掲示物はカラーバリアフリーに配慮するとともに、原則としてふりがなを記載 といったように、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえた運営を心がけた。 ○ 参加者からの苦情・不満は寄せられなかったが、参加団体から、車いすでのステージへの登り降りについて、人が担ぐのではなく、スロープをつけるべきであるとの意見が寄せられた。 (9)そのほか ○ 実行委員会構成団体アンケートでは、第1章項番1で示した8つの「企画の考え方」に含まれない意見がいくつかあった。 ○ 1つは、「防火シャッターの下は何も置いてはいけない」「F駐車場には停めてはいけない」など、事前に施設管理者から指示を受けていたことが、当日に警備員から注意されたことがあった。 ○ また、備品貸出し・入館証手続き・写真撮影などについて、実行委員会での注意事項が一部のスタッフに伝わっていなかったため、全体運営が管理しきれず、物品紛失やルール違反が発生してもおかしくない状態であった。 3 まとめ フェスタについて、以上9つの観点から検証してきたが、運営に関していくつか課題はあったものの、フェスタ参加者への成果についてはおおむね高い評価が与えられるものであった。バリアフリーの街づくりに対する理解を深めるに当たって、フェスタは有効な手段であったと思われる。 また、参加者アンケートでは、次回フェスタに「参加したい」が9割に達し、実行委員会構成団体アンケートでも、13団体が「参加したい」と回答している。 このように、フェスタの有効性・ニーズが高いことから、第1章項番1で示した「企画の考え方」の考え方を継承しつつ、継続的にフェスタを開催していくとよい。 第3章 今後の実施に当たっての課題 次回フェスタを開催するに当たり、検討すべき課題について、「実行委員会構成団体」に対するアンケートなどを基に、「概要」「運営面」の区分で記載する。 1概要 (1)企画の考え方 〔主な検討課題〕 ・負担の均等化による協働意識の強化 ・フェスタツアー実施方法の再検討 ○ バリアフリーの街づくりに向けたソフト的な取組みは、定期的に継続していくことが重要であり、フェスタについても継続性が求められる。 ○ 今回は「ちらし」などのデザイン作成者やレイアウト作成者の負担が昨年よりも大きくなっていた。一部の関係者の負担が大きくなるのは仕方ないことではあるが、一部の関係者の負担が大きくなりすぎることは、継続性の点からも好ましくはない。 ○ 「フェスタは各団体の協働によるイベントである」という原点を再認識し、期限内の回答、他団体への関心・誘導、全体運営や準備・製作への参加という点を強化し、実行委員会構成団体間でなるべく負担を均等化していく必要がある。 ○ また、フェスタツアーについても、少ない参加者ではあるが好評の声、参加団体の要望を考慮すると、今後も継続的に開催することが望まれる。 ○ しかしながら、効果的な周知を行えたとしても、フェスタの時期には、小学校教諭が参加する意欲が低いことが明らかになったため、小学校教諭のニーズを踏まえた適切な時期・内容を再検討し、必要に応じてフェスタとは別に開催することも考えた方がよい。 (2)日程 ○ 天気は曇りがちであったが、例年どおりの気温で、参加者及びスタッフから時期についての意見はなかった。開催会場の空き状況を踏まえながら、比較的過ごしやすい 10月又は 11月を念頭に検討するとよい。 ○ 昨年の「実行委員会構成団体」に対するアンケートにおいて、「スタッフの代休を取ることが難しいため、開催は土曜日のほうが、次の日に休めてありがたい。」といった意見があったため、今年は土曜日開催としたが、屋内における1コーナー当たりの参加人数は昨年度よりも減っていた。 ○ アリオ橋本の来客数についても、土曜日よりも日曜日の方が 8,000名程度多いとのことである。 ○ これらの経過を踏まえて、土曜日開催とするか日曜日開催とするか、検討する必要がある。 (3)開催会場 ○ 「参加者」に対するアンケートでは、「またやりたいです」「また体験してもっと知りたい」など、同じ会場での開催を前提とする意見が寄せられた一方で、「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「毎年、場所を変えて開催は難しいでしょうか」、「横浜市内での開催の方が有難い」など、別会場での開催を望む意見もあった。 ○ 同会場で開催するメリットとしては、参加者に対して定期的かつ継続的に働きかけることにより、バリアフリーの街づくりに向けた取組みを効果的に普及できることや、参加団体が会場・参加者の特性を把握できているため、コーナー内容の充実を図りやすいことが挙げられる。 ○ 効果面を考慮すると、3年程度は同じ会場で開催した後に、地域を変えるなど、バリアフリーの街づくりに関する意識の高まりを県内全域に普及させていくとよい。 2運営面 (1)運営体制 〔主な検討課題〕 ・全体運営の体制強化に向けた検討 ・フェスタ出展団体に対する実行委員会への参加義務 ○ 「統括」3名、「統括補助」3名、「その他スタッフ」14名から構成される、「全体運営スタッフ」と、「各コーナースタッフ」94名の計 108名の体制となった。全体運営と各コーナーとの調整は、「統括補助」と「コーナーリーダー」が行うこととした。昨年の経験を踏まえ、「全体運営スタッフ」は、実行委員会構成団体から出してもらうなど、全体運営の体制強化を図ったが、必要人数を確保できず、昨年に引き続き学生ボランティアの協力を得ることとした。 ○ 学生ボランティアは大きな戦力となったが、ボランティアという特性上、個人の資質に頼るところが大きく、また継続的に来てもらえる見込みがないため、趣旨を踏まえた臨機応変な対応や、経験知による安定性を求めることは難しい。 ○ 今後も、実行委員会委員が「全体運営スタッフ」になるなど、全体運営の体制強化を図る必要がある。これにより「実行委員会構成団体」の主体性を促進することも期待できる。 ○ なお、「景品交換担当は固定で6名いればお昼込みでまわせる」と、昼食を考慮した体制になっていなかったことが推察される意見もあった。 ○ また、今年のフェスタでは、コミュニケーション不足による行き違いや事故につながりかねない事例が見受けられた。例えば、車いすでのステージへの登り降りについては、車いすごと担がれるのを不安に思う度合いが、人によって異なるようである。当事者及び介助者への事前確認を行う必要がある。 ○ こうしたことから、「実行委員会構成団体」に対するアンケートで、「すべての参加団体が実行委員会に参加し、意思疎通を行う」と意見があったように、フェスタ出展団体は実行委員会への参加を必須にするなどの対応を検討するとよい。 (2)スケジュール ○ 昨年の経験を踏まえ、昨年より設営準備の時間を 30分延長し、設営準備スタッフは8時 55分、その他スタッフは 10時 30分集合とし、11時 30分からの開催に向けて準備を進めた。 ○ 設営準備の時間は不足感はなく、フェスタ開催時間についても問題はなかったが、「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「コーナー区割りには、30分は必要。」という意見もあった。 (3)会場レイアウト・備品 〔主な検討課題〕 ・ステージ利用の有無 ○ 「実行委員会構成団体」に対するアンケートでは、「ステージ客席の空席が目立ち、会場内が閑散としているイメージを受けた。」と意見があったように、会場全体の雰囲気はステージの状況に影響するところが大きい。 ○ 会場外で呼び込みを行ったが、アリオ橋本の来客者をステージの客席まで誘導することは簡単ではなかった。 ○ 今回のフェスタでは、元々ステージ利用希望団体が1団体であったところを4団体まで増やしたが、必要ないならばステージは使わないなど、ステージ利用の有無について検討する必要がある。 ○ また、今回はグランドガーデン・フロントガーデンの2会場で開催したが、昨年の経験を踏まえ、スタンプラリーの達成条件を両ガーデンのコーナーを回る仕掛けとしたため、昨年よりフロントガーデンも賑やかになった。また、運営側も、両ガーデンの行き来がスムーズとなった。 ○ 結果、フロントガーデンの2つのコーナーには多くの参加者が訪れ、2会場の一体感は高まったと思われる。 (4)集客手段(スタンプラリー・補助犬・乗り物・ゆるキャラ) 〔主な検討課題〕 ・主たる対象者に対して、効果的な集客手段の検討 ○ 参加者の約半数が未就学児・小学生であったこともあり、スタンプラリー・福引きのワクワク感、動物のかわいさ、乗り物への好奇心などを利用した、分かりやすい集客手段は有効であったと思われる。 ○ 今回のように子どもが主な対象となる場合は、普段から馴染みのある分かりやすい集客手段を検討し、さらなる充実を図るとよい。これらの集客手段は、実際に子育て中の方からの助言をきっかけに立案されたものである。集客手段の検討に当たっては、主な対象をよく知る方の意見が大切となる。 ○ また、昨年の経験を踏まえて、スタンプラリーの達成条件については、コーナー3か所以上のスタンプを、スタンプラリー台紙に集めることとしたが、スタンプラリー未達成のスタンプ押印数は 361回と、昨年のスタンプラリー未達成のスタンプ押印数 178回を大きく上回った。スタンプラリーの達成条件を高くした結果、達成前にあきらめ、会場を後にした参加者が多いと思われ、スタンプラリー達成者の減少、景品交換コーナーの盛り下がりにつながった。 ○ 会場全体の盛況感を高め、より多くの不特定多数の参加者を呼び込みやすい環境づくりを重視するのか、より多くのコーナーへの参加を促すことを重視するのか、2回の経験を踏まえて、スタンプラリーの達成条件を検討する必要がある。 ○ なお、ゆるキャラの効果については、小さな子どもを連れた家族が足を止め、ゆるキャラと触れ合っていた。フェスタの盛り上がりに一定の効果はあったが、「参加者」及び「実行委員会構成団体」に対するアンケートに記載はなく、集客効果にどれだけ貢献していたかは不明である。ゆるキャラに触れ合っている人は多かったことから、その方々を会場に誘導する仕組みを検討する必要がある。 (5)事前広報 〔主な検討課題〕 ・「実行委員会構成団体」による主体的なちらしの作成・広報 ○イベント周知用の「ちらし」は、東洋大学デザインチームで案を作成し、実行委員会で決定した。特徴的な点として、アリオ橋本周辺の小学校 16校・約 11,000名に「ちらし」を配布した。 ○昨年の経験を踏まえて、今回はフェスタを知ったきっかけを参加者アンケートで確認したところ、小学校に配布した「ちらし」を見て来場した人は93名と、参加者の3分の1を占めていたことが判明した。小学校配布による集客効果が高かったことがうかがえることから、今後も小学校への広報は継続したい。 ○なお、各団体からのお知らせで来場した人は 17名にとどまったことから、「実行委員会構成団体」の積極的な広報について期待したい。 ○また、「ちらし」のデザインは、個人の資質に頼るところが大きいため、フェスタの根付きを見据えて、「実行委員会構成団体」が主体的に作成できる仕組みを検討したい。 (6)当日広報 〔主な検討課題〕 ・効果的な誘導方法の検討 ○ アリオ橋本における当日の広報としては、各種掲示板への「ちらし」掲載と、来客者へのスタンプラリー台紙の配布を行った。 ○ また、昨年の経験を踏まえ、アリオ橋本の協力を得て、一番目立つインフォメーションパネルでの掲載を行った。 ○ 引き続き、施設内における主たる看板等に、イベント情報の掲載してもらえるよう調整していく。 (7)そのほか 〔主な検討課題〕 ・開催会場における施設管理者との情報共有 ・動画撮影の有無 ○ 開催当日の警備員等からの指示や、巨大クリスマスツリーなどの設置によるレイアウト調整など、予定どおりに実施できないことが一部あった。会場となる施設自体のイベント等にも注意を払うなど、開催会場における施設管理者との情報共有を強化していきたい。 ○ フェスタの1か月前に、フェスタ当日の様子について、動画撮影してもよいとの申し出があったが、動画データをどのように活用できるか把握しておらず、また、実行委員会の総意を確認することができなかったため、今回の動画撮影は見送ることとした。 ○動画撮影の活用方法を踏まえて、動画撮影の有無を検討するとよい。 ○なお、撮影した動画を公表する際は、動画データにモザイク処理等、参加者が特定できないよう、慎重に取り扱う必要がある。