災害時における 要配慮者支援マニュアル作成指針 (平成8年3月) 改定 平成15年5月 改定 平成19年3月 改定 平成31年3月 令和5年3月 神奈川県 目次(項目とページ) はじめに 1 1 基本的な考え方 2 1−1 作成指針の目的 2 1−2 要配慮者の定義と特徴 2 1−3 自助、共助、公助 9 1−4 国・県の関連指針と要配慮者支援の流れ 10 1−5 情報伝達 12 1−6 啓発・訓練、受援力 14 1−7 ボランティアとの連携 21 2 避難行動支援 24 2−1 避難行動要支援者 24 2−2 施設入所者 32 2−3 外国人 34 3 避難生活支援 37 3−1 避難所等 37 3−2 社会福祉施設 47 3−3 在宅 49 3−4 応急仮設住宅 51 3−5 医療的ケア 52 3−6 メンタルケア 56 3−7 外国人 58 4 広域支援 61 4−1 広域支援体制の確立 61 4−2 外国人 65 おわりに 68 はじめに  近年の大規模災害では、高齢者や障がい者といった災害時要配慮者が多数犠牲となっており、これらの方々への支援は大変重要である。  本県においては、平成7年の阪神・淡路大震災で、高齢者や障がい者、外国人といった方々に対して、災害発生直後の安否確認や迅速な救出、被災後の生活等での十分なケアなどができなかったことを教訓に、平成8年に「災害時における災害弱者支援マニュアル作成指針」を策定した。その後、平成15年には、ボランティア団体等との連携強化や介護保険制度などの新たな制度への対応のための改定を行うとともに、名称を「災害時における要援護者支援マニュアル作成指針」に改め、平成19年には、個人情報保護法や市町村の個人情報保護条例の趣旨を踏まえた要配慮者の情報把握についての改定を行うなど、災害時における要配慮者の支援に取り組む際に留意する事項や参考となる事項を取りまとめ、市町村に示してきた。  一方、国は、平成18年に「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を作成し、避難支援体制の整備に向けた取組を進めてきたが、平成23年の東日本大震災において高齢者・障がい者の被害が顕著であった事を教訓に、平成25年に災害対策基本法が改正され、市町村長に「避難行動要支援者名簿」の作成が義務付けられ、国の避難支援ガイドラインは「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」として全面改定された。  その後、甚大な被害をもたらした令和元年台風第 19 号等による災害において高齢者等要配慮者の避難のあり方について議論が行われ、避難行動要支援者名簿及び個別避難計画等の制度面における改善の方向性が示された。  これを受け、令和3年5月に災害対策基本法が改正され、避難行動要支援者ごとの個別避難計画作成を市町村の努力義務とするなどの規定等が創設された。また「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」の改定により、個別避難計画は、地域の実情に応じて、改正法施行後、概ね5年程度で作成に取り組むことや「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」の改定により、指定福祉避難所の指定の促進と、指定福祉避難所へ直接避難できる体制の整備について示された。  本県では、こうした法改正や国の動き、東日本大震災をはじめ、近年頻発している自然災害の教訓を踏まえつつ、市町村における要配慮者支援の取組を更に促進するため、作成指針を改定することとした。  市町村においては、本指針を参考に、地域の実情に合わせた適切な対応を取られるようお願いしたい。 1 基本的な考え方 1−1 作成指針の目的  本指針は、災害発生時における要配慮者への支援を適切かつ円滑に実施するため、県の基本的な考え方を取りまとめたものであり、市町村の取組を支援することを目的としている。 1−2 要配慮者の定義と特徴  要配慮者とは、災害対策基本法の規定により「高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」と定義されている(災害対策基本法第8条第2項第15号)。「その他の特に配慮を要する者」とは、妊産婦、傷病者、難病患者等が想定される。日本語を十分理解できない外国人も情報受伝達に配慮が必要な場合が多い。  一方、人生100歳時代を迎え、健康な高齢者も増えているので、高齢者の中には支援を必要としない方もいる。  このように、要配慮者とは、災害時の避難行動や情報受伝達、避難生活等に「特に配慮を要する者」であり、「高齢者、障がい者、乳幼児」は例示にすぎない。そのため、高齢者や障がい者といった属性で一律に要配慮者として捉えるのではなく、災害時に必要な配慮の内容に着目することが必要である。  なお、平成25年に災害対策基本法の改正により「要配慮者」という用語が規定されたため、本指針では「要配慮者」という用語を使用する。     災害対策基本法 (施策における防災上の配慮等) 第八条 (略) 2 国及び地方公共団体は、災害の発生を予防し、又は災害の拡大を防止するため、特に次に掲げる事項の実施に努めなければならない。  一〜十四 (略) 十五 高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者(以下「要配慮者」という。)に対する防災上必要な措置に関する事項  十六〜十九 (略)   福祉避難所の確保・運営ガイドライン 令和3年5月 内閣府(防災担当) 1.1.2 要配慮者とは  福祉避難所の受入対象者として想定されているのは、法律上「要配慮者」ということになる。要配慮者は、「災害時において、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者」(災害対策基本法第8条第2項第15号)と定義されている。よって、福祉避難所の事前指定やその準備は、これらの人々を対象として備えておく必要がある。「その他特に配慮を要する者」として、妊産婦、傷病者、内部障害者、難病患者、医療的ケア(※)を必要とする者等が想定される。(以下、略) ※医療的ケア:人工呼吸器や酸素供給装置、胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な者をいう。 要配慮者の概念 1 自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知する能力がない、又は困難な人 2 自分の身に危険が差し迫った場合、それを察知しても適切な行動をとることができない、又は困難な人 3 危険を知らせる情報を受け取ることができない、または困難な人 4 危険を知らせる情報を受け取っても、それに対して適切な行動をとることができない、または困難な人 (平成3年版防災白書(国土庁)の「災害弱者」の定義)  また、「避難行動要支援者」とは、「要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの」をいう(災害対策基本法第49条の10)。   図1.要配慮者と避難行動要支援者との関係   要配慮者は避難行動要支援者を包括している図 災害対策基本法 (避難行動要支援者名簿の作成) 第四十九条の十 市町村長は、当該市町村に居住する要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であつて、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するもの(以下「避難行動要支援者」という。)の把握に努めるとともに、地域防災計画の定めるところにより、避難行動要支援者について避難の支援、安否の確認その他の避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために必要な措置(以下「避難支援等」という。)を実施するための基礎とする名簿(以下この条及び次条第一項において「避難行動要支援者名簿」という。)を作成しておかなければならない。 第四十九条の十四 市町村長は、地域防災計画の定めるところにより、名簿情報に係る避難行動要支援者ごとに、当該避難行動要支援者について避難支援等を実施するための計画(以下「個別避難計画」という。)を作成するよう努めなければならない。ただし、個別避難計画を作成することについて当該避難行動要支援者の同意が得られない場合は、この限りではない。 表【要配慮者の一般的な特徴と主な留意事項】 区分・一般的な特徴・主な留意事項を示す  高齢者  個人差が大きくあるが、加齢による身体的能力の低下がみられる。  ・運動器機能(骨・関節・筋肉)の低下 ・体温調整能力の低下(脱水症状を起こしやすい)  ・視力・聴力の低下  ・認知機能(判断力、理解力等)の低下  複数の病気や症状を持っている人が多い。  情報伝達や避難行動に支援を要する場合がある。  避難所生活において体調の変化に留意する必要がある。 一人暮らし  災害情報の覚知が遅れる場合がある。特に、介護を必要としている場合は、力が衰え行動が遅くなる場合がある。  迅速な情報伝達や支援者、介助者等による避難誘導等が必要である。 寝たきり  自力で避難できず、また、自分の状況を伝達することや自分で判断し、行動することが困難な場合がある。  医療的ケアが必要な場合もある。  安否確認や状況把握が不可欠であり、避難誘導時には支援者、介助者等の支援が必要である。  生命維持のために医療的ケアが受けられるよう支援が必要な場合がある。 認知症  自分の状況を伝達することや自分で判断し行動することが困難な場合がある。  環境の変化(人や場所)により不穏になる。  大きな空間での生活はストレスになる。  理解できないと思い込まず状況を説明する必要がある。また、支援者、介助者等による避難誘導が必要である。  避難所では、特性に配慮した対応が必要である。 身体障がい者 視覚障がい者  視覚による災害情報の覚知が不可能又は困難な場合が多い。  音声による情報伝達や状況説明が必要である。家族、支援者、介助者等による避難誘導が必要な場合が多い。 聴覚障がい者  音声による避難・誘導指示の認識や、通常の会話によるコミュニケーションが不可能又は困難な場合が多い。  聴力損失の時期・程度や発語訓練の有無などにより、発話が困難な場合も多い。  外見から障害が分かりにくい。  文字をボードに記入するなど、視覚情報(文字、絵図等)を活用した情報伝達や状況説明が必要であり、場合によっては手話通訳者による手話、要約筆記者による要約筆記による情報伝達、説明を行う必要がある。 盲ろう者  視覚障がいと聴覚障がいの2つの障がいを併せ持っている。  障がいの状況により、触手話、接近手話、指文字、指点字、手のひら書きなど、コミュニケーション手段がまちまちである。  「手のひら書き」等で情報伝達や状況説明が必要であり、場合によっては触手話、指文字等の支援を行う盲ろう者通訳・介助員による情報伝達、説明を行う必要がある。家族、支援者、介助者よる避難誘導が必要な場合が多い。 言語障がい者  通常の会話によるコミュニケーションが困難な場合が多い。全身性障がい者のように、他の重い障がいを伴う人も多い。  本人や家族等からの十分な聞き取りや、聞き取った内容を繰り返すことによる確認、さらに可能であれば、筆談、手話等による状況把握が必要である。 肢体不自由者  自力歩行や素早い避難行動が困難な場合が多い。特に、重度の全身性障がい者の場合、自宅内の移動も困難な場合がある。  避難誘導には、一般的には、車椅子等の補助器具とともに、家族、支援者、介助者等による介助が必要である。(重度の障がい者の場合には不可欠) 内部障がい者  内臓の機能障がいにより日常生活が著しい制限を受ける場合が多い。  血液透析患者は、2〜3日ごとに人工透析を受ける必要がある。  オストメイト(人工肛門・人工膀胱造設者)はストマ用装具とパウチ洗浄設備のあるトイレが必要。  障がいの内容に応じて、ストマ用装具等日常生活用具や医療機器等の確保、人工透析・人工呼吸療法等の医療対応が必要であり、災害時に緊急対応が必要な場合もある。  オストメイト用トイレがない場合は、代替できる設備の配慮が必要である。 精神障がい者  環境の変化により精神的な動揺が激しくなる場合がある。常時服薬が必要となる人が多い。  継続的な服薬が確保されるよう、医療機関などと連携した支援が必要である。 知的障がい者  情報や状況を正確に把握、理解、判断することや、自らの状況を人に伝えることが困難な場合が多い。人によっては、環境の変化による精神的な動揺が見られる場合や、その他の障がいが重複している場合もある。  避難誘導には、一般的には、家族、支援者、介助者等による介助が必要であり、重複障がいの場合には、車椅子等の補助器具が必要な場合もある。 発達障がい者  危険予測ができない、コミュニケーションが困難、感覚が過敏であるなど、状態が多様で個人差が大きい。  対応は個別の状況に応じた配慮が必要。指示や予定を明確にする。興奮した時はその場から離し、気持ちを静める等の対応が有効である。 難病患者・小児慢性特定疾病児  災害時の避難行動に介助が必要となることが多い。  継続的な医療の確保が必要である。 乳幼児・児童  自力で災害情報の把握や避難が難しく、全面的に家族や大人の支援が必要である。急激な環境の変化で、思わぬ事態が起きる場合がある。  保護者等による適切な誘導が必要である。  避難所では、乳幼児・児童の特性や育児等に配慮した対応が必要である。 妊産婦  災害時に避難行動が遅くなる傾向がある。  身体に配慮した適切な誘導等が必要である。  避難所では、妊産婦の体調の変化に留意し、配慮した対応が必要である。 外国人  日本語を十分理解できない場合がある。また、地震を知らないなど、日本の災害事情や災害時の対応に関する知識が不足している場合がある。  多言語に翻訳したり、やさしく平易な日本語を用いた情報提供が必要である。 観光客 ※外国人観光客は「外国人」も参照  被災地の地理に土地勘がなく、避難場所等に関する知識が不足している場合がある。  避難場所等の情報を分かりやすく提供する必要がある。  交通情報等の情報を迅速に提供する必要がある。 ※ 障がい者には18歳未満の障がい児を含む。 ※ 外国人には、在住外国人だけでなく外国人観光客も含む。 ※ 全般的な留意事項として、情報を伝える際には、やさしい言葉、わかりやすい言葉で、また、文字は大きく、読みやすく、必要に応じて簡単な図や写真等一目でわかるものを利用するなど、要配慮者の特性に合わせた情報の伝達が必要である。 1−3 自助、共助、公助  災害発生時に最も重要となるのは、自らの身を守る「自助」であり、要配慮者にあっても、自らの積極的な取組が不可欠である。  大規模災害時には、行政が全ての被災者を迅速に支援することが難しく、行政の庁舎や職員が被災して機能が麻痺する可能性もある。  実効性のある要配慮者支援を行うためには、要配慮者とその家族による「自助」、身近な地域等による「共助」を基本としながら、県、市町村等の公的機関が担う「公助」は、自助・共助の取組を推進するとともに、自助・共助では解決しない課題に取り組むことが大切である。 【自助】自ら日頃から災害に備え、命・安全・財産を守ること。  災害から身を守るためには、要配慮者であっても、自分の身は自分で守るのが基本である。要配慮者は、その特性等により「自助」が困難である場合も想定されるが、可能な範囲で防災対策を実践することが重要である。  また、「共助」を進めるためにも、市町村が作成する避難行動要支援者名簿や個別避難計画、防災訓練等への積極的な協力、要配慮者であることを自ら発信すること、支援の受入準備などへの積極的な取組が必要である。 【共助】地域住民同士や地域団体が連携し、地域の安全を自分たちで守ること。  要配慮者は、災害時の避難行動や情報受伝達等ができない、又は困難であるため、周囲の支援や配慮が欠かせない。自治会などの地縁組織、隣近所や友人との助け合い、ボランティアや職能団体、障がい者団体の支援などによる地域の連携が必要である。  発災後しばらくの間は、行政の支援が届かないことが想定され、地域住民が自発的に避難行動や救助活動、避難所運営等を行うことが重要である。 【公助】県や市町村等公的機関による支援のこと。  高齢化や人口減少、在宅の要介護者の増加、地域への帰属意識の低下が進む中にあっては、自助・共助の取組を支援し、普及啓発を行うなど、「公助」が支援の仕組みづくりを積極的に促進することが必要である。そのためにも、自助・共助の大切さや共生の視点について、広報や訓練、研修等を通じて平時から住民に分かりやすく説明して意識付けを行うことが重要である。 図2.自助・共助・公助の関連 自助・共助・公助は互いに関連し合っている図 1−4 国・県の関連指針と要配慮者支援の流れの図 避難指示、避難行動、避難所生活(在宅避難)の各場面で、要配慮者(避難行動要支援者(自力では避難困難で支援が必要な者)、自立で避難できる者)に関連する国・県の指針・ガイドラインを示す。 避難指示 (国)避難情報に関するガイドライン 避難行動 (国)避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針 避難所生活(在宅避難) (国) ・避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針 ・避難所運営ガイドライン ・避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン ・福祉避難所の確保・運営ガイドライン (県) ・避難所マニュアル策定指針 ・新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営ガイドライン ※上記のほか、国や被災自治体、関係団体等が様々な報告書、記録集等を取りまとめているので、適宜、参照されたい。 基本的な流れと要配慮者に必要な対応の図 T発災 災害発生 ・要配慮者の特性に応じた手段で情報提供 ・要配慮者利用施設への情報伝達 ・要配慮者利用施設については、避難確保 U避難指示 市町村長による避難指示等 V避難行動支援 安否確認・避難支援者による避難誘導 ・避難行動要支援者については名簿・個別避難計画により安否確認・避難誘導 ・避難行動要支援者名簿に登載されていなくても支援が必要な要配慮者へ地域や関係団体が安否確認や避難誘導を行う。 W避難生活支援 避難所受入れ・安否確認(直接各施設へ移送の場合もあり) 医療機関への搬送(症状の急変により医療処置や治療が必要となった場合) 社会福祉施設等への緊急入所(対象者:在宅生活の継続が困難な要配慮者、一般の避難所・福祉避難所での避難生活が困難な要配慮者) 福祉避難所受入れ(対象者:高齢者、障がい者、妊産婦、乳幼児、病弱者等避難所での生活に支障をきたすため、避難生活において何らかの特別な配慮を必要とする者とその家族) 在宅での避難生活 収束 ※T〜Vは、災害の種類により前後することがある  国「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(令和3年5月)においては、指定福祉避難所の指定の促進と、指定福祉避難所へ直接避難できる体制の整備が追記された。 1−5 情報伝達  市町村は、要配慮者が情報から孤立しないように、要配慮者やその家族、避難支援等関係者(関係団体)に対して、避難情報や災害状況・避難所での支援情報、地域情報について速やかに提供するため、情報伝達網を整備する。  市町村は、あらかじめ要配慮者の特性に応じた情報伝達方法を検討しておき、対象者の日常生活を支援する機器等の防災情報伝達への活用を進め、音声情報や文字情報、電話・訪問による直接的な伝達など、多様な情報提供手段を組み合わせて活用することが必要である。  あわせて、要配慮者にとって必要な支援を確認するため、要配慮者が自ら発信できる情報伝達ツールを可能な限り準備しておくことが望ましい。  視覚・聴覚障がい者に対しては、特に情報支援・意思疎通支援が重要になるため、日頃から支援に携わっている関係者間で連携し、点字や音声、文字等による被害状況等の提供や、手話通訳者等の派遣等の情報支援・意思疎通支援について対応する必要がある。神奈川県聴覚障がい者福祉センターや神奈川県ライトセンター、視聴覚障がい者団体と連携した対応も想定される。   【情報伝達手段の例】 聴覚障がい者 ・FAX、緊急速報メール、聴覚障がい者用情報受信装置1、防災行政無線戸別受信機(文字表示機能付)、各自治体が発信するメール、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、テレビのデータ放送(Lアラート)が有効である。 ・避難所では、フラッシュランプ等により情報発信そのものがすぐにわかるような工夫、文字や絵を組み合わせた筆談での伝達、掲示板への掲示などが必要である。また、手話通訳者や要約筆記者の依頼、手話や要約筆記でコミュニケーションができる指導員等の配置などの対応が必要である。 視覚障がい者 ・防災行政無線、防災行政無線の戸別受信機、広報車、コミュニティFM局の活用、受信メールを読み上げる携帯電話が有効である。 ・避難所では、わかりやすく伝達することを第一とし、音声や点字による情報伝達などを実施することが重要である。 肢体不自由者 ・フリーハンド用機器を備えた携帯電話、トーキングエイド等情報伝達ツールが有効である。 認知症の人 ・「トイレ」あるいは「便所」、「入口」「出口」など、避難所の生活に必要な掲示をすることが有効である。 知的障がい者や発達障がい者 ・写真、絵カード、具体物などを使って視覚的支援による情報伝達が有効である。 外国人 ・音声翻訳アプリ等による情報伝達が有効である。 避難誘導旗の製作 鎌倉市(好事例の紹介)  津波発生時等、安全な場所への迅速な避難が必要となる場合、地理のわからない外国人を含む観光客や来訪者等の安全な避難誘導が課題となっています。  鎌倉市では、地域にお住まいの皆さんや事業者の方々に、津波発生時の率先避難者として、避難誘導に活用していただくことを目的に、平成29年度より誘導旗(オレンジフラッグ)を製作し、配布しています。  この誘導旗は、法改正等による令和2年6月の津波フラッグ導入に伴いデザインを変更し、令和3年度には新たに250本を製作、海水浴場事業者等に配布しました。今後も統一した避難誘導の目印として、津波浸水エリアをはじめ、市内沿岸部で、安全な避難誘導に役立てていただきたいと考えています。   1−6 啓発・訓練、受援力 1−6−1 要配慮者自らの事前準備  家具の固定や食料品・生活用品等の備蓄、安否確認の方法や避難場所、避難経路の確認など、一般的に災害対策として必要と言われている準備は、要配慮者にとっても極めて重要である。例えば食物アレルギーやえんげ困難等の食事に配慮が必要な場合に対応できる食料、オストメイト(人工肛門・人工膀胱造設者)はストマ用装具など、要配慮者それぞれにとって必要な物品は異なることから、要配慮者は各自確実な備蓄を行い、災害時に携行することが必要である。視聴覚障がい者等は、避難情報や災害状況、避難所での支援情報などが入手できるよう、防災行政無線戸別受信機や聴覚障がい者用情報受信装置を設置するなど、自ら情報収集できるよう準備することも重要である。  薬を服用している要配慮者は、避難する際に速やかに携行できるように、自宅のわかりやすい場所にバッグ等にまとめて保管しておき、家族も保管場所を認識しておくことが重要である。家族同士の安否確認の方法、避難場所や避難経路の確認も欠かせない。避難行動要支援者は、避難行動要支援者名簿への積極的な登録や個別避難計画の作成に協力することが必要である。  また、要配慮者は、防災訓練への参加等を通じて、平時から地域住民や避難支援等関係者と積極的に関わりを持って顔の見える関係を作り、災害時に支援をしてもらえる相手を事前に確認しておくことや、近所の同様の立場の方々と情報交換するなど、自ら積極的に情報収集するとともに、情報発信することが必要である。  外出時には近隣住民等による支援が受けられないので、要配慮者は、母子健康手帳やお薬手帳、当事者団体が作成している診療記録や緊急連絡先を記載することのできる手帳を常に携行することや、外出先で被災した場合の情報収集手段や避難支援等関係者の確保、家族等に安否情報を伝達する手順等を検討して準備しておくことも重要である。  市町村は、要配慮者自らが災害に備え、こうした準備を進められるよう、積極的な取組を促す必要がある。   1−6−2 啓発・訓練  要配慮者の安否確認、避難誘導等を災害時に有効に行うためには、市町村を中心に、地域において防災関連の知識について学び、共通理解を深めることが重要である。また、市町村は、要配慮者自身やその家族が避難や備蓄について考え、発災時又は発災のおそれが生じた場合、自らの身を守るための主体的な行動をとることができるよう、研修、訓練等を通じて促すことが重要である。 1 住民への啓発  住民向けの防災パンフレット等に要配慮者の安否確認、避難誘導等に必要な情報を盛り込むとともに、広報誌、研修会や講演会、インターネット等あらゆる媒体を利用して、要配慮者への配慮を呼び掛けることが有効である。   2 地域における訓練  市町村は、防災や福祉、保健、医療等の関係機関、地域住民、自主防災組織や自治会、避難所となる学校、社会福祉施設等と連携して、研修や情報伝達訓練・避難訓練を定期的に実施することで、要配慮者の訓練参加機会を確保することが必要である。 (1)避難所(福祉避難所を含む。)の開設・運営訓練では、手順の確認や運営マニュアルの検証、要配慮者の特性に応じた訓練をする。 (2)防災ゲームを行う場合は、模範または模範に近い回答を提示・指導することが重要である。 3 社会福祉施設等における訓練  社会福祉施設等は、災害時でも業務を中断することはできず、入所者のケアに加え、避難者の受入れなど、通常の業務以上の対応が必要になる。  そのため、社会福祉施設等においては、既に施設・設備の安全確保対策等を定める災害対応のマニュアルや、水害・土砂災害を含む地域の実情に応じた非常災害対策計画等を作成しているが、周到な備えによる被害軽減や早期の復旧といった考え方を含む業務継続計画(BCP)を作成することも有効である。  また、施設の状況に応じて作成した避難計画に基づき、風水・土砂災害や地震、津波等様々な災害を想定した避難訓練を定期的に実施することが重要である。  訓練の実施に当たっては、各施設で実施するだけでなく、被災状況の報告等の情報伝達や相互応援なども合わせて、地域の関係施設や関係団体と市町村が共同で行うことも有効である。 4 外国人向け啓発・訓練 (1)市町村は、防災パンフレット等の作成に当たって、災害時の外国人への支援の呼びかけ等を内容に盛り込むとともに、ふりがなをつけたり、わかりやすい言葉を選んでやさしく平易な日本語(以下「やさしい日本語2」という。)や多言語で表記するよう努める。また、外国人にとって避難場所や避難所の利用方法が分かりにくいことから、避難ルートや避難所で受けることのできるサービス、生活をともにする上でのマナー、備蓄品のリスト(ハラール食などの有無)などを記すことで、あらかじめ理解を深められるよう努める。  パンフレットの配布に当たっては、外国人の利用が多い住民基本台帳等登録窓口などの行政窓口や図書館、教会や食材店・飲食店、宿泊・集客施設、交通機関、外国人を多く雇っている事業者、自主防災組織を通じた配布など、きめ細かい対応をすることで、外国人に防災の情報が効果的に伝わるよう努める3。 (2)市町村は、在住外国人の雇用又は外国人との交流の機会が多い企業、事業所等に対する防災教育の指導、支援に努める。 (3)市町村は、外国人、自主防災組織、NGO、日頃外国人が利用する施設(宿泊・集客施設含む)、交通機関、商店等を交えた防災訓練や研修をくり返し行い、外国人の避難、誘導や安否確認方法などの普及、習熟に努める。その際、災害時に外国人が陥りかねない困難な状況や、やさしい日本語を使った情報伝達など、外国人が安全に避難できるようにするための具体的な方策についても理解を深めることができるよう、訓練や研修の内容を工夫するよう努める。 (4)市町村は、災害時に避難所で外国人と日本人がともに生活していけるようにするため、日頃から体験的な訓練を行うなど、避難所に関する研修に努める。特に、避難所の運営に当たる者は、災害時多言語情報作成ツール4の使用に習熟するよう努める。 外国人住民も産科する訓練 大和市(好事例の紹介)  大和市には、7,223人(令和4年4月現在)の外国人が住んでおり、大和市と(公財)大和市国際化協会が主体となって、ボランティアや近隣自治会の協力の下、災害時の外国人支援につなげるための訓練を実施しています。令和元年度から3年度にかけては新型コロナウイルス感染症の影響により、訓練は中止となっていましたが、令和4年度より再開となりました。 【参加者】  外国人住民、ボランティア、会場の近隣自治会の方、NPO団体、大和市職員、大和市国際化協会職員等   【訓練内容】(平成29年度実施例) (支援者向け訓練)災害時に外国人が直面する課題とボランティアの役割に関する講義・非常食体験など (外国人向け訓練)防災に関する講義・救命処置訓練・非常持ち出し袋・担架づくり体験・非常食体験など (合同訓練)災害時の外国人への情報提供や外国人と日本人の参加者同士の協力を目的とした、ピクトグラムを使った情報提供について考えるワークショップなど 【実施方法】  市関連部署のほか、(一財)自治体国際化協会の地域国際化推進アドバイザーやNPO法人多文化共生マネージャー全国協議会等に講師派遣を依頼しています。通訳などは特に手配せず、訓練中はすべて日本語を使用します。講義で「やさしい日本語」を取り上げ、参加者同士のコミュニケーションに役立てています。 【工夫点】  外国人に多く参加してもらうため、市・国際化協会職員が日常的に関わりのある外国人に直接参加を呼びかけたり、その友人との参加を促したり、地域の外国人支援団体等へも周知依頼の協力を行っています。 1−6−3 受援力の強化  「受援力」(支援を受ける力)を高めることは、地域防災力を高めることにつながると言われており、要配慮者支援においても、受援力を高めることが重要である。 1 要配慮者やその家族の受援力  東日本大震災においても、必要なときに必要な支援を受けられるよう、平時から隣近所や関係者とのコミュニケーションを強化しておく大切さが再認識された。要配慮者やその家族が「困っていること、支援してほしいことをまとめ、関係者へ伝える」「助けてほしいことに優先順位を付け、他の人でも実施可能な内容を考えておく」などの「受援力」をつけることが大切であり、いざというときに「助けられ上手」になっておくことが必要である。 ヘルプマーク(紹介)  義足や人工関節を利用している方、内部障がいや難病の方、または妊娠初期の方など、外見からわからなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を受けやすくなるよう、東京都が作成したマークである。神奈川県でも平成29年3月からこのマークを導入し、東京都と連携して普及に取り組んでいる。 2 社会福祉施設等の受援力  社会福祉施設等においても、職員の被災や、福祉避難所・緊急受入等による人員の不足によって、応援職員やボランティアを受け入れるなど、支援を受けることが想定される。  支援を受ける側の施設では、応援職員やボランティア等外部支援者に適切に役割を振り、業務を指示するなど、コーディネートする職員が求められる。  各施設において受援力を強化するためには、災害時に必要な対応について理解し、外部支援者をコーディネートできる人材の育成が重要であり、被災施設への派遣経験のある職員を講師として研修を行うなど、各施設において取り組むほか、市町村が地域内での研修実施を支援することも有効である。 1−6−4 職能団体等との連携  要配慮者支援の担い手として、職能団体、民間の企業、障がい者団体、ボランティア団体等の力を借りることも有効な方策の一つである。災害が発生し、又は発生するおそれが生じた場合においては、名簿情報を避難支援等関係者に提供することを同意していない避難行動要支援者の名簿情報を、避難支援等関係者その他の者に提供できることとされている(災害対策基本法第49条の11第2項)。  このような場合においては、市町村は、あらかじめ避難行動要支援者の名簿情報の提供について関係団体等と協定を結ぶなど、必要な連携を図ることが必要である。とりわけ安否確認については、日頃から要配慮者の特性に応じたきめ細かい支援活動を実施している職能団体や、介護支援専門員、訪問介護員等の協力を得る体制を確立しておく必要がある。また、自ら災害時の会員の安否確認等に取組む障がい者団体については、その取組内容を把握し、協力を得る団体の一つとし連携していくことも考えられる。   1−7 ボランティアとの連携  大規模な災害時には、市町村は、被害認定、罹災証明書の交付、インフラの復旧など様々な業務を抱え、行政や関係機関等だけでは十分な対応ができないことが予想される。被災者への救援物資の配布、避難所の運営や炊き出し、要配慮者の安否確認等、災害時においてボランティアが果たす役割は極めて大きいことから、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの積極的な連携に努める。  内閣府「防災教育・周知啓発WG災害ボランティアチーム」(令和3年5月25日)の提言では、高い支援スキルを有するボランティアは、避難者同士の自主的な避難所運営をうまく促すとともに、適切な避難所運営に大いに貢献しているとして、そのようなボランティアの育成研修に加え、ボランティアのデータベースと人材マッチングを一連の流れとして循環させ、「避難生活支援・防災人材育成エコシステム」の構築を目指すよう求めている。   ボランティアとの連携にあたっては、こうした動きも踏まえることが望ましい。 避難生活支援・防災人材エコシステムの図 (出典)内閣府 多様な主体間における連携・協働による「避難生活支援・防災人材育成エコシステム」の具体化に向けた検討会 1 平時においては、市町村は、ボランティアの登録や研修等を通じ、災害時に迅速かつ円滑に、ボランティアと連携したな活動を実施するための環境整備を進める。 2 災害発生時、市町村は、ボランティアを迅速かつ円滑に受け入れることができるよう、市町村社会福祉協議会や災害ボランティア団体等と緊密な協働・連携のもと、速やかに災害ボランティアセンターを開設する。 3 災害ボランティアセンターは、刻々と変化する被災地・被災者のボランティアニーズの把握に努めるとともに、収集した情報を発信するなど、ボランティアの受入れとコーディネート等の業務を担う。 4 災害ボランティアセンターは、ボランティアへの資機材等の提供等の活動支援を行うとともに、市町村域内外の災害救援ボランティア団体・行政機関と、地域住民等との連絡調整を行うなど、ボランティアが活動しやすい環境整備に努める。 5 要配慮者へのボランティア活動は、他の被災者と同様に被災に起因する一般的な支援と、要配慮者のそれぞれの事情に起因する個別的な支援が想定されるが、後者の場合は、専門的な知識・技能を有する者の指示の下に活動を行うなど、十分な配慮が必要となる。 6 内閣府が平成30年4月に作成した「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック」に、災害発生後からの経過に合わせ、想定されるボランティア活動が、次表のとおり示されているので、参考にされたい。 【災害発生からの経過に合わせたボランティア活動の特徴と内容】 初動期 活動の特徴 ・ 人命救助や避難者の安全確保を最優先する ・ 災害救助法による活動、行政・自主防災組織の活動が中心となる ・ ボランティア活動は安全面に注意、無理をしない ・ 情報不足や混乱が予想される ・ 要配慮者の安否確認、安全管理、避難所への誘導 ・ ボランティア活動本部の立ち上げとボランティアの受入開始 想定される活動 ・ 被災者の安否確認 ・ 被災者の避難誘導 ・ 物資の調達、運搬、仕分け ・ 避難所の手伝い(炊き出し・洗濯・水運び等) ・ 要配慮者等への配食、買い物 ・ 屋内外の片付け 応急期 活動の特徴 ・ 被災者の心身の疲労やストレスを考慮し、避難所や地域での被災者の生活支援活動 ・ 避難所から応急仮設住宅や自宅への移動 ・ 地域外からのボランティア受入がピークになる ・ 被災者の心理や生活ニーズに基づいたコーディネートが重要 想定される活動 ・ 物資の調達、運搬、仕分け ・ 避難所の手伝い(炊き出し・洗濯・水運び等) ・ 屋内外の片付け、引越し手伝い ・ 移送、入浴、買い物、付き添い等のサービス 復旧・復興期 活動の特徴 ・ 応急仮設住宅や地域での支援活動を展開 ・ 緊急・一時的な活動から地域に根ざした継続的な活動へ ・ 要配慮者等の個別ニーズへの対応 ・ ボランティア活動の縮小と域内ボランティアによる活動の継続 想定される活動 ・ 日常的生活支援 ・ 話し相手、引越し手伝い ・ 要配慮者の買い物、通院付き添い 出典:「防災における行政のNPO・ボランティア等との連携・協働ガイドブック」(平成30年内閣府防災担当)一部改変 2 避難行動支援 2−1 避難行動要支援者 参考「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」平成25年8月 (令和3年5月改定) 内閣府(防災担当)  令和3年5月に災害対策基本法が改正され、市町村において避難行動要支援者ごとに個別避難計画の作成が努力義務化されるなど、市町村の役割が強化された。次の「2−1−1」から「2−1−6」までは、避難行動要支援者名簿と個別避難計画の平時及び災害時の活用方法を示したものである。   2−1−1 避難行動要支援者名簿 (1) 避難行動要支援者名簿に係る全体的な考え方の整理等 市町村は、個人情報の取扱いやマイナンバーの活用、名簿情報の外部提供の条例への対応方針も含め、避難行動要支援者名簿の作成・活用方針等(従前の全体計画)を整理する。そのうち、重要事項を地域防災計画に定め、必要な条例の定めを検討する。 (2)条例の定めを検討すべき事項  名簿情報の外部提供の同意に関する特例措置,個人番号の独自利用を行う事務、個人番号の独自利用を行う事務の処理のための庁内連携、番号法に定められた個人番号利用事務の処理のための庁内連携、同一市町村内の機関間の特定個人情報の授受。 (3)地域防災計画において定める必須事項  避難支援等関係者となる者、避難行動要支援者名簿に掲載する者の範囲、名簿作成に必要な個人情報及びその入手方法、名簿の更新に関する事項、名簿情報の提供に際し情報漏えいを防止するために市町村が求める措置及び市町村が講ずる措置、要配慮者が円滑に避難のための立退きを行うことができるための通知又は警告の配慮、避難支援等関係者の安全確保。 2―1−2 平時における避難行動要支援者名簿の作成・活用 2−1 要配慮者の把握  市町村においては、関係部局等が把握している要介護高齢者や障害者等の要配慮者の情報を把握する。 2−2 避難行動要支援者名簿の作成  市町村は、要介護状態区分、障害支援区分、家族の状況等を考慮し、避難行動要支援者の要件を設定し、名簿を作成する。 2−3 避難行動要支援者名簿の更新  市町村は、避難支援に必要となる情報を適宜更新する。 2−4 避難支援等関係者への事前の名簿情報の提供  市町村は、名簿情報の提供について条例による特別の定めがある場合、又は、平常時から名簿情報を提供することに避難行動要支援者の同意を得られた場合に、消防機関、都道府県警察、民生委員、地域医師会、介護関係団体、障害者団体、居宅介護支援事業者や相談支援事業者等の福祉事業者、市町村社会福祉協議会、自主防災組織等の避難支援等関係者に名簿情報を提供する。 個別避難計画の作成  市町村が主体となり、関係者と連携して地域におけるハザードの状況や当事者本人の状況を踏まえ、優先度の高い者から個別避難計画の作成に取り組む。 2−1−3 発災時における避難行動要支援者名簿の活用 3−1 避難のための情報伝達  市町村は、防災無線や広報車、携帯端末の緊急速報メール等により広く周知するとともに、避難行動要支援者が円滑に避難できるよう情報伝達について配慮する。 3−2 避難行動要支援者の避難支援  市町村は、発災又は発災のおそれが生じた場合は、2−4における同意の有無に関わらず、名簿情報を避難支援等関係者等に提供する。 ○ 2−4において名簿情報の提供されている避難行動要支援者については、避難支援等関係者が中心となって名簿情報等に基づき、避難行動の支援を実施。 ○ 2−4において名簿情報の提供されていない避難行動要支援者であっても、避難行動の支援を実施。 3−3 避難行動要支援者の安否確認の実施  市町村や避難支援等関係者等は、避難支援が及ばなかった避難行動要支援者(2−4において名簿提供に不同意であった者を含む。)も含め、安否確認を行う。 3−4 避難先に到着して以降の避難行動要支援者への対応  地域防災計画又は避難行動要支援者名簿の作成・活用方針等に定めた計画に基づき、避難行動要支援者等の引継ぎや他の避難所等への移送を行う。 2−1−4 個別避難計画 (1)個別避難計画に係る全体的な考え方の整理等  市町村は、個人情報の取扱いやマイナンバーの活用、名簿情報の外部提供の条例への対応方針も含め、個別避難計画の作成・活用方針等を整理する。そのうち、重要事項を地域防災計画に定め、必要な条例の定めを検討する。 (2)条例の定めを検討すべき事項    名簿情報の外部提供の同意に関する特例措置、マイナンバーの独自利用を行う事務、個人番号の独自利用を行う事務の処理のための庁内連携、番号法に定められた個人番号利用事務の処理のための庁内連携、同一市町村内の機関間の特定個人情報の授受。 (3)地域防災計画において定める必須事項    避難支援等関係者となる者、避難行動要支援者名簿に掲載する者の範囲、名簿作成に必要な個人情報及びその入手方法、名簿の更新に関する事項、名簿情報の提供に際し情報漏えいを防止するために市町村が求める措置及び市町村が講ずる措置、要配慮者が円滑に避難のための立退きを行うことができるための通知又は警告の配慮、避難支援等関係者の安全確保。 2−1−5 平時における個別避難計画の作成・活用 5−1 個別避難計画の作成に必要な情報の把握  市町村においては、避難行動要支援者名簿に記載されている情報に加え、市町村等の関係部局で把握している個別避難計画作成の対象者に関する情報を集約する 5−2 個別避難計画の作成 ・市町村は、地域におけるハザードの状況や当事者本人の状況を踏まえ、優先度の高い者から個別避難計画の作成に取り組む。作成においては、市町村が主体となり、関係者と連携して行う。 ・令和3年法改正を踏まえて、優先度が高い避難行動要支援者について、地域の実情を踏まえながら、改正法施行後からおおむね5年程度で作成に取り組む。 ・【市町村支援による個別避難計画】と並行して、【本人・地域記入の個別避難計画】について作成の方法例を本人や地域に示し、取組を促す。 5−3 個別避難計画の更新 市町村は、避難支援に必要となる情報を適宜更新する。 5−4 避難支援等関係者への事前の個別避難計画の提供  市町村は、個別避難計画情報の提供について条例による特別の定めがある場合、又は、平常時から個別避難計画情報を提供することに避難行動要支援者の同意を得られた場合に、消防機関、都道府県警察、民生委員、地域医師会、介護関係団体、障害者団体、居宅介護支援事業者や相談支援事業者等の福祉事業者、社会福祉協議会、自主防災組織、地域の支え合いのネットワーク等の避難支援等関係者に個別避難計画情報を提供する。 2−1−6 発災時における個別避難計画の活用 6−1 避難のための情報伝達  市町村は、防災無線や広報車、携帯端末の緊急速報メール等により広く周知するとともに、避難行動要支援者が円滑に避難できるよう情報伝達について配慮する。 6−2 避難行動要支援者の避難支援  避難支援等実施者は、発災又は発災のおそれが生じた場合は、作成した個別避難計画に基づき、自らの安全確保に配慮しつつ、避難行動要支援者の避難支援を実施する。  市町村は、発災又は発災のおそれが生じた場合は、2−4における同意の有無に関わらず、避難支援等の実施に必要な限度で個別避難計画情報を避難支援等関係者等に提供し、個別避難計画等に基づき避難支援等を実施する。 6−3 避難先に到着して以降の避難行動要支援者への対応  地域防災計画又は避難行動要支援者名簿の作成・活用方針等に定めた計画に基づき、避難行動要支援者等の引継ぎや他の避難所等への移送を行う。   個別避難計画に基づいた訓練 愛川町(好事例の紹介)   愛川町では、ハザードマップを活用した、水害に対する避難訓練を平成20年度から実施しています。その訓練の中でも、個別避難計画に基づいた訓練は、平成28年度以降、5回行いました。 【令和元年度避難訓練内容】  土砂災害警戒区域の指定がある原臼地区で、町に大雨・洪水警報、土砂災害警戒情報が発表され、浸水被害・土砂災害が発生する危険性が高まったという想定で訓練を実施しました。  避難者や自主防災組織役員、町職員、消防職員など総勢88名の参加があり、防災行政無線や消防車両による広報、自主防災組織と町や消防などの機関との情報伝達訓練、警戒区域内やその周辺住民の避難及び誘導訓練を行ったものです。  その中で、要配慮者の避難訓練については、個別避難計画の中から、4名の方に協力をいただき、個々の状態に合わせて、福祉車両、車椅子、徒歩の3パターンで、計画に記した支援者や民生委員の協力により避難訓練を行いました。要配慮者への参加の声かけは、自主防災組織及び民生委員で行い、福祉車両については、社会福祉協議会の協力により準備しました。  現在、この訓練については、毎年1地区での実施となっておりますが、今後、各自主防災組織が自主的に訓練を実施できるような仕組みや環境作りをしていく必要があると考えています。  なお訓練は、令和2年度はコロナ禍のため中止となりましたが、令和3年度、4年度は図上訓練を実施しました。    【避難行動要支援者名簿で把握していない方への避難支援】    災害時における要配慮者には、平時より保健師の巡回や介護保険サービス等の提供を受けている者に加え、災害により家族や近隣の援護を失い、自宅に取り残されたりするなどにより、新たに要配慮者になるケースが考えられるので、これらの要配慮者の対策を、発災直後から、時間の経過にあわせて、それぞれのニーズに即して、的確に対応していくことが重要である。  また、介護保険制度における地域包括支援センター、障がい者支援に関する相談支援事業所などの相談支援スタッフ、障がい者団体等との連携による安否確認の方策についても検討することが必要である。  観光客についても事前に名簿で把握することができないが、駅や観光施設に近い避難所は、多くの観光客が避難されることが考えられるため、状況やニーズに即して、的確に対応していくことが必要になる。   2−2 施設入所者 参考 「避難情報等に関するガイドライン」令和3年5月(令和4年6月更新) 内閣府(防災担当)    近年、極端な集中豪雨等の自然災害の激甚化により、要配慮者が多く利用する施設等の被害も発生していることを受け、水防法・土砂災害防止法が改正され、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の市町村地域防災計画にその名称や所在地が定められた要配慮者利用施設(※)における避難確保計画の作成や避難訓練の実施、それらの市町村長(防災部局)への報告5が義務付けられた。  ※要配慮者利用施設                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を要する者が利用する施設。(入所施設だけでなく通所サービス事業所等も対象となる。) 1 要配慮者利用施設における避難確保計画の作成  市町村は、要配慮者利用施設の管理者から避難確保計画作成の報告があったときは、関係部局が連携して内容を確認し、必要に応じて助言等を行う。 また、防災関連情報の入手手段や活用方法等については、平時から要配慮者利用施設に対して周知する必要がある。  新たな施設の建設計画がある場合、土砂災害のおそれのある箇所に関する情報を提供するとともに、許認可担当部局等と連携して土砂災害に対する安全確保の観点も加味した建設計画の検討を促す必要がある。  なお、災害に関する計画の実行性を確保するため、避難情報等の発令を担う市町村の防災担当部局と要配慮者利用施設の指導監査等を実施する県又は市町村の担当部局と連携して、助言・指導することが望ましい。   2 要配慮者利用施設等への情報伝達体制の整備  市町村は、要配慮者利用施設に、避難に関する情報が確実に伝達されるよう、福祉部局等と連携を図って情報伝達体制を整備しておく必要がある。具体的には、避難情報等の伝達であれば、実際に避難情報等の発令を担う防災担当部局からの情報を、指定河川洪水予報または氾濫警戒情報等や土砂災害警戒情報等であれば、それを受け取る部局(防災担当部局や土木部局)からの情報を、施設と関係が深い市町村の担当部局(社会福祉施設であれば福祉部局)が要配慮者利用施設に情報提供することが望ましい。 3 要配慮者利用施設における避難訓練実施への支援  市町村は、要配慮者利用施設において浸水想定区域や土砂災害警戒区域等の実情に応じた避難訓練が実施されるよう支援することが重要である。支援の方法として、各施設が行う避難訓練への助言・指導の他、情報伝達訓練も合わせて、地域の関係施設や関係団体と市町村の関係部局が共同で訓練を行うことも有効である。   2−3 外国人 2−3−1 平時の取組 1 体制整備  市町村は、外国人の生活支援を行うNGO等の団体、交通機関、宿泊事業者等の観光事業者と連携することにより、災害時における情報伝達が、迅速かつ円滑に行える体制整備に努める。また、ウェブサイト、スマートフォン向けアプリ、防災無線、電子メールまたはSNSなどの多様な情報伝達手段を活用し、外国人へも災害時における情報伝達が迅速かつ円滑に行える体制整備に努める6 7 8。   ・ 災害が起こった場合に提供する注意や避難に関する情報、外国人相談窓口情報等をあらかじめ定型化し、ふりがなをつけたり、やさしい日本語や多言語で用意しておく。 ・ 罹災証明書など各種証明書の発行等、発災に伴い、必要と思われる諸手続きを円滑に進めるために、ふりがなをつけたり、やさしい日本語や多言語で作成した案内書等をあらかじめ整備しておく。    また、コミュニティFM局等地域情報提供機関と連携することにより、災害時における情報伝達を迅速かつ円滑に行えるようにするため、当該市町村に居住している外国人の用いる言語に応じた適切な多言語放送を行うアナウンサーの確保、定型文のテープ録音等の準備、コミュニティFM局等との協定締結など事前の協議や体制整備を図り9、発災時にはあらかじめ締結しておいた協定などに基づき緊急放送実施を依頼し、通訳・翻訳ボランティアの派遣等を行う。   2 情報マップの作成  市町村は、災害時に外国人に対して、必要な情報を迅速かつ効率的に提供し、避難所等への避難誘導や救援活動を円滑に進めるための基礎情報を整備しておく必要がある。そのための方策として、外国人が比較的多い地域や日頃外国人が利用する施設等を記載した情報マップの整備が有効であると考えられ、あわせて災害時に有効に活用される方法を検討しておくことが必要である。  市町村は、災害時における外国人の避難所等の利用状況を予測し、多言語による情報提供、相談活動、災害時の安否確認や避難支援に役立てるため、次のような項目を記載した情報マップを作成する。 [記載項目(例)]  ・避難所及び避難場所(広域避難場所)  ・使用言語別外国人居住者数  ・多言語で受診可能な医療機関10  ・日本語教室や外国人生活支援NGOの活動拠点  ・日頃外国人が利用する施設(宿泊・集客施設含む)  ・交通機関、商店、旅行会社等 2−3−2 災害時の取組 1 発災時には事前準備した定型情報に加え、被災情報、二次被害情報、注意事項、道路・鉄道等の交通情報、医療(病院)情報、避難所情報、相談窓口開設情報、罹災証明書発行情報等を多言語化して提供する。通訳・翻訳ボランティアのいない場合はふりがなをつけたり、やさしい日本語により情報提供する。 2 市町村は、情報マップ等を活用し、避難所や自主防災組織、学校、企業、NGO、関係団体等の協力を得て、安否確認と救援、避難誘導を行う。避難場所の情報が届いていない外国人には、多言語ややさしい日本語などを用いて避難所情報を提供し、未避難者の避難場所への誘導を行う。  また、外国人を対象にした新聞などを発行しているエスニックメディア、民族団体、日本語教室、NGO等へ情報提供を行う。 3 被災地で外国人に関する根拠のない情報やうわさが出回った場合、現地の正確な情報を提供し、拡散や混乱を防ぐ。 3 避難生活支援 3−1 避難所等 3−1−1 一般の避難所11における支援  平成 28 年4月以降、避難所をめぐっては、新型コロナウイルス感染症への対策、生活環境等の改善、防災機能設備等の確保、立地状況を踏まえた適切な開設、女性の視点を踏まえた避難所運営など、様々な対応が必要となっていることから、令和4年4月取組指針等が改定された。  要配慮者の避難先としては、まず、一般の避難所が考えられるが、市町村は、改定された内容も踏まえ、避難所でも要配慮者が安心して生活できるよう、環境や体制の整備をすることが必要である。 参考「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」平成25年8月(令和4年4月改定) 内閣府(防災担当) 参考「避難所運営ガイドライン」平成28年4月(令和4年4月改定) 内閣府(防災担当) 参考「避難所におけるトイレの確保・運営ガイドライン」平成28年4月(令和4年4月改定) 内閣府(防災担当) 参考「避難所マニュアル策定指針」令和2年6月版 神奈川県 参考「新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営ガイドライン」令和4年8月(第2版) 神奈川県 参考「アレルギー疾患対策の推進に関する基本的な指針」平成29年 厚生労働省告示第76号(令和4年3月14日改正) 1 要配慮者に配慮した環境整備  避難所の環境整備に関して、市町村が留意すべき事項は次のとおりである。 (1)避難所の出入口などの段差の解消、広い通路の確保、バリアフリートイレの設置、畳を敷くなどの配慮が必要である。 (2)要配慮者に対しては、一般の避難者と居住空間を区別するなどの工夫が必要である。避難所の容量等を踏まえ、できれば事前に要配慮者のための配置等を決めておく。避難所生活という集団生活でのストレスから病気になることがあること、避難所生活の長期化が寝たきりを作る一因になること、トイレの使用がままならず衛生状態が悪いと二次的な疾病の発生が想定されることなどを踏まえ、配置を決めるに当たっては、次のことに留意する。 @ 車椅子使用者や視覚障がい者は、奥まったところでは動きが取れなくなるので、トイレ等生活に必要な設備が配慮された場所を確保する必要がある。 A 認知症の人や知的・精神障がい者は、避難所の集団生活になじめない場合も多いため、福祉避難スペース(室)や個室を利用できるようパーテーションで区切るなど配慮した支援が必要である。 B 乳幼児には、授乳室の確保、防音、衛生面での配慮が必要となる。妊産婦・乳幼児を持つ家族専用のスペースの確保が必要である。 (3)アレルギー疾患患者については、ぜん息発作の原因となるほこりやダニ等を避けることや、アトピー性皮膚炎を悪化させないよう、皮膚を清潔に保つことが重要なため、避難所における生活環境の管理や改善に配慮が必要である。 (4)情報伝達のための機器等の配備 フラッシュランプによるお知らせ、避難所のテレビに聴覚障害者用情報受信装置を設置、ホワイトボード、筆談ボード、コミュニケーションボードの用意など、情報伝達のための機器等の配備も必要である。 (5)身体障害者補助犬法に基づき、避難所での盲導犬、介助犬や聴導犬の受入体制の整備が必要である。  @ 身体障害者補助犬は、目や耳、手足に障がいのある方をサポートする「盲導犬」、「聴導犬」、「介助犬」のことで、ペットとは異なり、避難所等においても身体障害者補助犬法に基づいた対応が求められている。災害時に身体障がい者が避難所等へ補助犬を同伴して避難した場合、身体障がい者と補助犬を分離せず、補助犬の同伴を受け入れなければならない。  A 避難所等にいる方々に対しては、補助犬に対する理解を求める必要がある。補助犬は、身体障害者補助犬法に基づき、訓練・認定されており、補助犬使用者は、補助犬の衛生・行動管理に責任を持って社会参加している。避難者等の中には、犬が苦手な方や犬アレルギーを持っている方もいるため、そのような方と補助犬使用者の双方が可能な範囲で距離をとれるよう配慮する。 ※ 避難所のスペース等の関係から、要配慮者全員に十分な配慮ができない場合には、高齢者、障がい者等の枠組みにとらわれず「一番困っている人」から柔軟かつ機敏に対応することが必要であり、この点について、地域住民の理解を得る取組が重要である。また、避難生活の長期化等を踏まえた対策をあらかじめ講じておくことが必要である。 ※ 一般の避難所において、要配慮者の状況に応じて適切に対応できるよう、福祉避難スペース(室)を整備するなど段階的・重層的な避難場所の設定も考えられる。 ※ 観光客等の短期滞在者に対しても、災害時の対応において不当な差別とならないよう配慮する。 2 相談体制 (1) 相談窓口の設置   市町村は、要配慮者を含め様々な避難者の意見を吸い上げるため、避難所に相談窓口を設置することが必要である。相談窓口担当者の役割は概ね次のとおりである @ 確実な情報伝達、支援物資の提供 A 避難者の要望・意見等や、健康状態を把握 B 把握したニーズに対応できるよう関係機関との調整 (2)巡回チーム   市町村は、要配慮者の生活の不安や悩みを軽減するため、相談員の巡回体制を早急に整え、次のとおり実施する。 @ 発災直後は、相談員がまず避難所を巡回する。医療、福祉に関する相談を受けた場合には、必ずその分野の専門職と情報交換を行い、次の相談時に適切な対応が図れるようにすることが重要である。次にいつ巡回するのかを相談者に知らせておく。 A その後、医療、相談、ケア等を行う専門の巡回チーム等(保健師チーム等)を組織して避難所を巡回する。 B 日中避難所にいない被災者にも対応できる相談時間帯を設定するなどの配慮が必要である。 医療や福祉サービス等様々な相談が想定され、医療、福祉関係者の果たす役割は特に大きいため、市町村は、状況に応じて、速やかに県、国等への支援を要請することが必要である。 (3)相談における意思疎通支援の対応 上記(1)(2)の実施にあたり、意思疎通支援の必要がある場合は、手話通訳者、要約筆記者、盲ろう者通訳・介助員の依頼、コミュニケーションボードの活用や資料のわかりやすい版の作成などの対応が必要である。 手話通訳者、要約筆記者については、各市町村が実施している派遣事業の登録手話通訳者、要約筆記者での対応が困難な場合は、神奈川県聴覚障害者福祉センターへ広域調整の依頼を行う。 盲ろう者通訳・介助員の派遣依頼については、神奈川県聴覚障害者福祉センターに依頼する。 3 新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営  避難所における新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、自宅療養者を避難所で円滑に受け入れる体制を整備する必要がある。 (1)避難所のレイアウト   次の優先順位により、一般避難者と自宅療養者を分ける。 @ 建物を分ける。 A 同じ建物にせざるを得ない場合、フロアーを分ける。 B 同じフロアーにせざるを得ない場合、部屋を分ける。 C 同じ部屋にせざるを得ない場合、距離を確保し、パーテーション等で区分する。 (2)避難所の受付  原則、受付で健康状態を確認した後に入所する。ただし、避難者が滞留する等、避難所運営に支障が出る場合は、症状のある方の待機スペースを設けるなどの対応を図る。 (3)避難者の健康管理  避難者自身による健康確認に加えて、医療従事者による避難所の巡回と健康管理の指導や状況に応じて医療機関等への入所措置ができる体制を確保する。また、避難者の心のケアやエコノミークラス症候群の予防、夏場の熱中症予防にも配慮する。 3−1−2 福祉避難所12における支援 参考「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」平成28年4月(令和3年5月改定) 内閣府(防災担当) 1 福祉避難所の指定及び公示等  市町村は、一般の避難所では生活することが困難な要配慮者の状態に応じて、必要な支援が受けられるなど安心して生活できる体制を整備した社会福祉施設等と協定を締結するなどにより、要配慮者の避難場所を確保する必要がある。その上で、市町村は、要配慮者が避難する施設等をあらかじめ指定福祉避難所として指定し、公示しておくことが望ましく、一般避難所や協定等による福祉避難所、一般避難所の要配慮者スペースの整備状況等を勘案し、指定福祉避難所の指定目標を設定し、確保に向け取り組む必要がある。          令和3年5月の災害対策基本法施行規則改正により、福祉避難所を指定したときに、あらかじめ受入対象者を特定し本人とその家族のみが避難する施設であることを公示する制度が創設されており、これを活用して、指定を一層進めることが重要である。受入対象者を特定することは、避難者数、受入対象者への支援内容の検討や必要な物資の内容や数量の検討、さらに必要な物資の備蓄、非常用発電機等の設備の準備等を一層進めるとともに、一般の避難所で過ごすことに困難を伴う障害者等の指定福祉避難所への直接の避難を促進していくことにもつながると考えられる。  市町村は、指定福祉避難所のみでは、量的に不足すると見込まれる場合には、社会福祉施設等との協定等により福祉避難所として確保する他、公的な宿泊施設、民間の旅館、ホテル等と協定を締結し、借り上げる等事前に対応を検討することも重要である。  なお、市町村は、福祉避難所の指定・整備数を検討するための基礎資料として、福祉避難所の対象となる者の概数を把握するとともに、災害時において、福祉避難所の対象となる者を速やかに福祉避難所に避難させることができるよう、平時から対象者の現況等(身体の状況、介助者の状況や緊急時の連絡先など)を把握することが重要である。   2 指定福祉避難所、受入対象者の調整及び直接避難の促進  市町村は、指定福祉避難所の名称、受入対象者等に関する情報を広く住民に周知し、特に要配慮者やその家族、自主防災組織、支援団体等に対して、周知徹底を図る必要がある。  また、市町村は、広報活動(指定福祉避難所の受入対象者や避難可能人数等の情報について、ウェブサイトやSNS等も活用して広く周知)や訓練を通じて、指定福祉避難所が、より専門的な支援や援護の必要性の高い避難者のために確保されるものであり、指定一般避難所等で生活可能な避難者を受入対象としない旨の周知を図り、広く住民に理解と協力を求めることも重要である。 市町村は、指定福祉避難所に直接避難する者について、地区防災計画や個別避難計画等の作成プロセスを通じて、事前に指定福祉避難所ごとに受入対象者の調整等を行う。 市町村が希望する要配慮者全員を指定福祉避難所に直接避難をさせることができない場合などには、まず一般の避難所に要配慮者スペースを設置して一時的に避難し、その後、指定福祉避難所に移送する方法も個別避難計画等の策定時に検討する。 3 指定福祉避難所の整備等   市町村は、施設管理者と連携し、当該施設が指定福祉避難所として機能し、要配慮者が避難生活を送る上で良好な生活環境を確保するために必要な施設整備を行うとともに、必要な物資・機材の備蓄を図る。   市町村は、災害時に人的支援を得られるよう、平時から関係団体や事業所等と協定を締結するなど連携を図るとともに、災害時に自宅や一般の避難所から福祉避難所への移送、あるいは福祉避難所から緊急入所施設等への移送に当たって、要配慮者の状態に応じた移送手段を確保できるよう、平時から福祉車両等の調達先リストを整備しておく必要がある。   市町村は、専門的人材の確保や機材等の調達、車両等の移送手段の確保や緊急入所等に関して、社会福祉施設、医療機関等との連携を強化するため、平時から情報共有の場を設けるとともに、団体・事業者同士で協定を締結するなど事業者間での協力体制の整備を促進することが重要である。 4 指定福祉避難所の運営体制の整備  市町村は、平時から防災担当部局と福祉部局を中心とした横断的な組織として、災害時要配慮者支援班を設置するとともに、必要に応じて、自主防災組織、支援団体、福祉・医療関係者、民生委員等をメンバーとする協議会等を設置する。  市町村は、災害時において指定福祉避難所を速やかに開設・運営できるよう、あらかじめ指定福祉避難所担当職員や指定福祉避難所担当課・係を定めておくなど、体制を整備しておくことが必要である。   また、市町村は、支援人材の受入れ等の受援体制について、受援のとりまとめ担当の設置等を盛り込んだ受援計画の策定を目指すとともに、関係者等に対して、計画を十分に周知しておく必要がある。 5 指定福祉避難所の開設等  指定福祉避難所の設置及び管理に関しては、市町村と施設管理者が連携して実施する。市町村は、指定福祉避難所を開設したときは、必要に応じて担当職員を派遣するが、大規模災害発生当初には派遣職員を確保できないことも想定されるので、その場合は、施設管理者等の協力を得て対応を図る。  市町村は、福祉避難所(協定締結施設含む)に避難している避難者の名簿を作成、随時更新するとともに、福祉避難所の対象者は固定的ではないので、被災直後の混乱期から一定期間を経過した後、避難所に対象者が避難しているか調査することも重要である。  また、要配慮者の状況、福祉サービスの利用や応急仮設住宅への入居、住宅の再建等の意向について継続的に把握、調整する。   なお、災害により、要配慮者の症状・状態が悪化する可能性もあることから、福祉避難所に避難している要配慮者の状態には十分に注意し、福祉サービス事業者や保健師等の支援関係者間の情報共有を図る必要がある。  さらに、在宅や一般避難所から指定福祉避難所への要配慮者の移送については、本人、家族の意向を重視し、関係する介護支援専門員や保健師等と情報共有しておく。 6 指定福祉避難所の解消等  市町村は、目的達成後、福祉避難所を解消する際は、福祉避難所からの早期退所を促す方法として、応急仮設住宅等への入居のほか、社会福祉施設への入所等を積極的に活用する。   3−1−3 施設への緊急入所  市町村は、在宅生活の継続が困難な要配慮者や一般の避難所あるいは、指定福祉避難所での避難生活が困難な要配慮者について、施設への緊急入所、緊急ショートステイ等により適切に対応する。こうした緊急入所を受け入れる施設の確保が困難な場合は、県と連携し調整することとし、平時より県との連絡体制を確保する。   1 経緯  横浜市では、大規模災害が発生した時に、地域防災拠点や自宅での被災生活が困難な方のために、市内の社会福祉施設等と協定を締結しており、災害が起こった後の連絡手段の確保や、必要物資の整備を行うことで、必要な時に福祉避難所が開設できるような体制を目指しています。  また、現在、国から示された指定福祉避難所についての考え方や運用方法含めて検討を進めています。   2 主な取組 (1)災害時優先携帯電話の配備   区役所と福祉避難所との通信手段を強化するため、18区役所及び全福祉避難所に災害時優先携帯電話を配備しています。 (2)福祉避難所情報共有システムの運用  災害が発生した時に、福祉施設と区役所が必要とする情報を共有するための仕組みとして福祉避難所情報共有システムを運用しています。 (3)福祉避難所への応急備蓄物資の整備  災害が発生した時に、福祉避難所として受け入れる要援護者が使用するご飯、水、毛布等の応急備蓄物資を整備しています。 3−1−4 避難所等における備蓄と供給 参考「避難所における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」平成25年8月 内閣府(防災担当)(令和4年4月改定) 参考「避難所マニュアル策定指針」令和2年6月版 神奈川県 参考「新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営ガイドライン」令和4年8月(第2版) 神奈川県 1 避難後数日間に必要不可欠となる物資については、要配慮者自身が、日頃から個々の事情に応じて確保しておくことが必要である。また、市町村は、個人での備蓄が困難な物資等を中心に、避難所に要配慮者特有の生活必需品や消耗品を備蓄するとともに、関係業界、医療機関等との協定の締結を含め、供給体制の整備に努める。市町村は、防災訓練等において要配慮者と共に備蓄物資の供給体制等を検証・見直しをすること、避難所開設後はニーズ調査を迅速に行い、必要な物資を確保することが重要である。  要配慮者には、車椅子、簡易ベッド、障がい者用簡易トイレ等、オストメイトのストーマ装具などその特性に応じた装具、毛布、タオル、赤ちゃん用を含めた下着類、紙オムツ、生理用ナプキン、歯ブラシ等の衛生用品の備蓄が必要である。特に、乳幼児を含め、食物アレルギー患者に対しては、アレルギー用ミルク、離乳食、食品を優先的に確保するよう努め、一般の食料物資と区分して管理し、優先的に配布する必要がある。  市町村は、物資を避難所以外の場所に備蓄した場合は、避難所ごとの配分を事前に決めておくなどして、迅速な供給ができる体制を整えておくことが必要である。 2 市町村は、避難所内での物資の供給の際、要配慮者にももれることなく分配がなされるよう必要な調整を行うことが必要である。食料の供給の際は、要配慮者一人ひとりの健康状態や障がいの程度等に配慮し、ニーズに応じた食事を配食することが重要である。食物アレルギーなど要配慮者の状態に応じた対応をするため、専門職員の配置や確保も必要である。 3 福祉避難所や要配慮者の緊急入所の受入を行う施設等は、入所者や職員用の備蓄に加えて、受入人数に応じた食料や簡易ベッドなどの備蓄も求められる。このため、市町村は、あらかじめ確保策について当該施設と取り決め等をしておくことが必要である。 4 従来の備蓄品に加えて、新型コロナウイルス感染症を踏まえた避難所運営に必要な物資を備蓄する必要がある。 備蓄品と用 途 1不織布マスク 避難所運営スタッフの感染防止、マスクを持っていない避難者への配布等 2フェイスシールド(またはゴーグル) 避難所運営スタッフの感染防止等 3アルコール消毒液(手指用) 避難者等の手指消毒(各入口等に設置) 4ハンドソープ 避難者等の手指消毒(トイレ、手洗い場等に設置) 5次亜塩素酸溶液 共用部分等の消毒 6体温計(非接触型) 避難者の受付時の検温(定時検温用の体温計は原則避難者が持参) 7使い捨て手袋 手指衛生の確保 8ビニールシート 受付時等の感染防止 9ブルーシート 避難所内のゾーニング等に使用 10間仕切り用パーティション 避難者の感染防止、プライバシーの確保 11段ボールベッド 避難者の感染防止 12養生テープ 避難所の各スペースの区画分け等に使用 13パルスオキシメーター 避難者(特に自宅療養者等)の健康管理 14抗原検査キット 状況により避難者及び避難所運営スタッフに使用 3−2 社会福祉施設 3−2−1 社会福祉施設等への支援  高齢者施設や障がい児者施設などの社会福祉施設等は、災害発生時に福祉避難所としての役割を担う前に、まずは自施設の入所者や職員の安全を確保し、入所者・利用者の生命や生活を維持しなければならない。  災害時にあっても最低限のサービス提供が維持できるよう、各施設等において、非常用自家発電機の設置、必要な物資の備蓄(食料、飲料水、生活必需品、医薬品、燃料等)、職員の招集方法などの対策を事前に講じることが重要である。  市町村は、各施設等が事前に必要な対策を講じるよう助言を行うとともに、災害発生時には、各施設の被災状況を把握し、ライフラインの確保、物資の供給、応援職員の派遣、被災した入所者の他施設への緊急入所等の必要な支援の実施について、想定する必要がある。  入所施設だけでなく、通所事業所についても同様の対応が必要となる場合も想定される。また、高齢者が多く入居する有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅についても、要配慮者が入居する住居として認識し、その入居者への支援も想定する必要がある。   3−2−2 社会福祉施設等の被災状況の情報収集  市町村は、入所者・利用者の安否確認、施設・設備の被害状況、施設への応援の要否など、地域の高齢者施設や障がい児者施設等の社会福祉施設等の被災状況について情報を収集できる体制を整備しておくことが必要である。 1 情報の収集方法としては、まずは各施設から被災状況報告を求めることが考えられる。 ・ 各施設の災害時対応マニュアルにおいて、入所者や利用者、通所者の安否確認、職員の安否確認、施設の被害状況、安全等の確認を行い、その後、市町村担当部局に被災状況を報告することを、報告方法もあわせて記載し明確にしておくよう指導する。 ・ 報告方法としては、電話、FAX、メール、SNS等を利用するなど、複数の方法を想定し、その方法を施設に周知する。 ・ 各関係団体において会員施設の情報を収集する仕組みを持っている場合は、団体から情報を収集する方法も考えられる。 ・ 地域において定期的に被災状況報告訓練を行い、各施設において被災状況報告の方法等を認識してもらうことも有効と考えられる。 2 市町村においては、状況によって職員が直接電話や巡回等により聞き取るなど、あらゆる情報収集の方法を想定しておく。 3 市町村は、収集した情報を県に報告し、県においては、県内施設の被災情報を集約し、広域的な支援に備える。 4 各施設の被災状況の情報は、市町村が把握するだけでなく、地域の関係施設間で共有するシステムを持つことで、地域の施設間での応援体制の整備に繋がる。 3−2−3 施設間・団体間等の相互支援、連携 1 災害時は、行政機関による支援は時間を要することが想定されることから、まずは地域内の施設間・団体間で相互支援することが重要である。 (1)高齢者施設については、施設種別ごとに設立された団体において会員施設の被災状況の把握や応援体制を整備する取組はされているが、同じ地域内の施設種別を超えた施設間でも相互に支援できる体制が構築されると、災害時の対応の強化につながる。 (2)市町村は、地域の施設団体等と連携し、相互支援体制を構築していくことが有効であり、施設間の日頃の業務における調整や、地域イベント・研修会の共同実施などにより、平時から地域内で顔の見える関係を構築していくことが重要である。 (3)市町村においては、相互支援体制の構築を促進するよう、連絡会を企画するなど、仕組みづくりの支援を行うことが有効である。 2 施設を運営する法人においても、施設団体のネットワークや他の地域の法人との職員派遣や利用者の受入れ等相互支援に関する協定など、自施設が被災した際の施設間での相互支援体制について準備しておくことが望ましい。 3−3 在宅  3−3−1 在宅避難の要配慮者への支援  避難せず自宅にいる要配慮者や、避難所から自宅に戻った要配慮者等の在宅避難者については、食料、生活用品の配給やその他の必要な支援の情報が届かず、また支援を求めることも難しい状況になる可能性があり、日常的な生活が困難になることが予想される。在宅避難の要配慮者の把握に努め、必要な支援や情報伝達を行う必要がある。   1 必要な物資の供給  避難所等に支援物資を取りに行くことが困難な要配慮者には、支援物資を届けることが必要になることが予想される。   2 保健福祉サービスの継続的な提供  被災した要配慮者の在宅生活を支えるためには、適切な保健福祉サービスの継続的な提供が欠かせないことから、民間のサービス事業者とも連携し、必要に応じて介護職員の広域的な応援を得るなど、できる限り早期のサービス提供体制を確保する必要がある。   3−3−2 在宅避難の要配慮者の把握及び在宅サービスの提供 1 市町村は、保健師等の巡回相談や地域包括支援センターにおける相談等により、在宅サービスの提供等支援が必要な在宅避難の要配慮者を把握する。 2 災害発生前より介護保険サービスや障害福祉サービスの利用者であった要配慮者については、担当の介護支援専門員や相談支援専門員が対応にあたることが考えられる。  支援が必要な在宅避難の要配慮者の把握については、居宅介護支援事業所や相談支援事業所とも連携し、要配慮者の必要なサービスについて、居宅介護支援事業所や相談支援事業所、地域包括支援センター、市町村や関係機関が情報共有し、当該要配慮者が必要なサービスが受けられるよう手配する。 3−3−3 要介護・要支援高齢者に係る地域包括支援センターを中心とした支援 1 地域包括支援センターにおける支援  地域包括支援センターでは、居宅介護支援事業所と連携して在宅の要介護・要支援の高齢者の状況確認やアセスメント調査を行うことや、支援が必要だが避難行動要支援者名簿から外れている高齢者について把握していることも考えられ、こうした高齢者への対応も行うことが想定される。  施設への緊急入所、必要なサービスの手配などに対応するために、施設の受入状況や介護サービス事業所等の情報の入手も必要である。  在宅避難の要配慮の高齢者への物資供給についても、自治会と連携しての対応、把握した情報を物資供給拠点に伝達、場合によっては地域包括支援センターから応援スタッフにより配達配給、などの対応を行うことが考えられる。  地域包括支援センターでは、居宅介護支援事業所、介護サービス事業所との連携、自治会との連携、応援要請による介護支援専門員や社会福祉士の受入れなども想定し、災害時対応マニュアルを作成する等の準備を行っておくことが有効である。   2 居宅介護支援事業所における対応  居宅介護支援事業所では、介護支援専門員が、担当する利用者の安否や居住環境等を確認し、ケアプランの変更、緊急入所等の対応、利用しているサービスの継続の可否の確認などを行い、当該利用者に必要な支援を行うことを想定している。  介護支援専門員が作成するケアプランに、災害時にその利用者に対して必要な配慮・対応を入れて作成することも有効な方策である。  また、居宅介護支援事業所の介護支援専門員が把握している要配慮者について、個々では対応しきれなくなることも予想されることから、市町村においては、災害発生時に地域で関係機関が連携して対応できる体制を平時から整備していくことが重要である。 3 介護サービス事業所  市町村は、介護サービス事業所の被災状況、サービス提供の可否等の情報を収集し、市町村、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所、サービス事業所で共有することが必要である。  継続してサービス提供が可能な事業所に対し、人的支援やサービス提供に必要な物資の支援が必要になることから、地域内の事業所間での相互支援が行われるような取組も有効と考えられる。  また、市町村は、各サービス事業所において災害時対応マニュアルの作成や訓練を行うなど、自ら災害に対して備えるよう支援することも重要である。   3−3−4 障がい者に係る地域の関係機関との連携による支援  要介護・要支援高齢者への支援と同様に、要配慮者の把握や必要な障害福祉サービスが提供できるよう、市町村は、相談支援事業所等や障がい者団体等の関係機関が連携して安否確認をするような仕組みも検討していくことが必要である。  視覚・聴覚障がい者に対しては、特に情報支援・意思疎通支援が重要になるため、日頃から支援に携わっている関係者間で連携し、点字や音声、文字等による被害状況等の提供や手話通訳者等の派遣等の情報支援・意思疎通支援について対応する必要がある。神奈川県聴覚障害者福祉センターや神奈川県ライトセンター、視聴覚障がい者団体と連携した対応も想定される。 3−4 応急仮設住宅 3−4−1 優先的な入居の配慮 参考「災害救助事務取扱要領」令和4年7月 内閣府政策統括官(防災担当)  避難所生活では、要配慮者の負担は非常に大きなものと考えられるので、応急仮設住宅や公営住宅が用意された場合は、要配慮者を優先し、可能な限り従前の生活圏域で入所できるようにする必要がある。ただし、応急仮設住宅での生活が長期化することも想定し、高齢者・障がい者等が集中しないような配慮も必要である。  応急仮設住宅建設の際には、要配慮者に配慮した設備、例えば、浴室やトイレの手すりの設置、入り口の段差解消等のバリアフリー化、基本設備として冷暖房機器、情報機器としてラジオ、テレビ、電話等が必要であり、聴覚障がい者にはFAXが不可欠である。   3−4−2 応急仮設住宅に入居する要配慮者に対する地域での支援体制整備 1 応急仮設住宅への巡回相談等 (1)市町村は、保健師等の巡回相談や地域包括支援センターにおける相談等により、応急仮設住宅に入居する、支援が必要な要配慮者を把握する。 (2)把握に当たっては、居宅介護支援事業所や相談支援事業所とも連携し、要配慮者に必要なサービスについて、居宅介護支援事業所や相談支援事業所と市町村が情報共有する。 2 応急仮設住宅での在宅サービス提供 (1)平時から介護保険サービスや障害福祉サービスの利用者であった要配慮者については、被災前の担当介護支援専門員や相談支援専門員が引き続き対応するほか、応急仮設住宅の所在する地域の居宅介護支援事業所の介護支援専門員や相談支援事業所の相談支援専門員に情報を引き継ぎ、対応にあたることが考えられる。 (2)その他、市町村は、巡回相談等で把握した在宅サービス等支援を必要とする要配慮者については、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所や相談支援事業所に情報提供を行い、地域包括支援センター、居宅介護支援事業所や相談支援事業所は、当該要配慮者が必要なサービスや支援が受けられるよう手配する。 3 応急仮設住宅入居者への物資提供  日常的な生活を送るための福祉用具や生活物資、食料品の供給に配慮する必要がある。 3−5 医療的ケア 3−5−1 平時からの準備  要配慮者の中には、日常の生活を維持するために継続的な服薬、治療を必要とする者(以下「医療的ケア要配慮者」という。)が多くおり、災害時にも継続的な医療の確保、医療的ケアが必要不可欠である。医療的ケアについては、保健所、市町村、医療機関、県など関係機関の連携が重要である。  災害発生直後は、医療的ケアが得られないこと、あるいは、十分な情報を伝達することができないので、日頃から医療的ケア要配慮者自らとその家族が非常時における対策を行うよう啓発することが必要であり、通院先・病名・服薬内容等を記載した個別のカード等の所持促進、医療的ケア要配慮者とその家族が参画する災害訓練の実施、避難支援等関係者から該当する医療的ケア要配慮者とその家族等への継続的な呼びかけ等が重要である。 1 医療的ケア要配慮者の把握方法   医療的ケア要配慮者個人の状況により必要な支援が変わるため、「医療的ケアが必要」という視点での一律な把握方法はないが、次の方法等により把握に努める必要がある。 (1)制度利用時の確認や名簿による把握 ・指定難病医療費助成制度(県・横浜市・川崎市・相模原市) ・小児慢性特定疾病医療費助成制度(県・横浜市・川崎市・相模原市・横須賀市) ・自立支援医療(育成医療・更生医療・精神通院医療)、障害者手帳(じん臓機能障害、呼吸器機能障害等)(各市町村) (2)医療機関との連携 (3)県(保健福祉事務所)と市町村との連携 2 安否確認及び避難誘導  災害時の救援を円滑に進めるため、避難、搬送の際に誰がどういった方法(手段)で、どこに医療的ケア要配慮者を避難させる(搬送する)のか、事前に取り決めておく必要がある。それぞれの障がいに対応する医療機器を確保するため、あらかじめ緊急時における関係機関との協力体制を確立しておき、特に地域の医師会と連携して情報発信の中核となる医療機関を定め、周知することが有効な方法である。   3−5−2 災害発生後の対応  医療的ケア要配慮者の中には、長期に継続的な薬物療法、酸素療法、透析療法などの医療が必要な方がおり、避難先の居住環境(個別の仕切、トイレ、食事など)に配慮し、医療の確保対策のみならず、患者・家族の生活面でのQOL(生活の質)を高めることも必要である。また、公費負担医療については、給付が円滑に行われるよう、医療給付の受給者証の紛失等に的確に対応するなど、保健所、市町村、医療機関、県など関係機関の連携が必要である。 1 薬物療法  医療機関や関係団体と連絡調整を図り、疾患に応じた必要な医薬品の確保、配布など医療の確保を図ることが必要である。   2 在宅酸素療法や人工呼吸療法  在宅酸素療法や人工呼吸療法を行っている医療的ケア要配慮者に対しては、酸素を一日中あるいは時間を決めて吸入することが求められることから酸素ボンベや、人工呼吸器・吸入器等を稼働するための電力の供給に努める必要がある。 3 人工透析療法  腎不全患者の多くは、人工透析療法を継続して受けており、実施のためには大量の水、透析液などの医薬品、人工腎臓装置(ダイアライザー)を稼働させるための電力、透析従事職員(医師、看護師、臨床工学士(透析技術認定士)、臨床検査技師、栄養士など)の確保が必要である。また、災害時には対象者の把握、搬送手段や情報伝達手段の確保も必要となる。透析患者を支援する機関としては神奈川県透析危機対策協議会等がある。平時より支援機関と情報を共有し、後方の透析可能な医療機関や被災を免れた近隣都県の透析可能医療機関への搬送を依頼できる体制づくりが必要である。  【難病等の治療に必要な医療機器や医薬品等の例】  ・ALS等の人工呼吸器・吸引器等  ・在宅酸素療法者の酸素ボンベ等  ・在宅中心静脈栄養治療者の点滴剤等  ・クローン病〈炎症性腸疾患〉の成分栄養剤  ・クローン病〈炎症性腸疾患〉・潰瘍性大腸炎の炎症性腸疾患治療薬  ・膠原病のステロイド剤  ・血液系疾患の副腎皮質ホルモン剤  ・インスリン依存型糖尿病のインスリン注射  ・透析患者用の透析液  ・アナフィラキシー(アレルギー症状)に対するエピペン  ・血友病患者等の抗血液凝固因子製剤 医療的ケア児への発災時の電源確保事業(好事例の紹介)  川崎市では令和3年度から、大規模災害発災による停電時の緊急対応として人工呼吸器を装着している医療的ケア児者に対して、市が用意するプラグイン  ハイブリッド車から、医療機器の外部バッテリーへの充電ができる事業を始めました。 【事業対象】  人工呼吸器を装着している医療的ケア児者(事前の申し込みが必要) 【充電できる器材】  人工呼吸器から取り外した状態の外部バッテリー(人工呼吸器本体への直接の充電は不可) 【給電する車両】  三菱自動車製のプラグインハイブリッド車「アウトランダーPHEV」「エクリプスクロス(PHEVモデル)」 【給電できる電力量】  上記車両の車内コンセントのAC電源(100V)を使用し、最大で外部バッテリー16個の同時充電が可能です。また、ガソリン満タン、満充電の状態でエンジンでの発電も組合わせると、外部バッテリー約1,000個分の充電が可能となります。(外部バッテリー1個の定格電力90W、容量100Whの場合。また、変換効率は含まない計算上の個数) 【車両の設置場所】   市内3か所の二次避難所に設置を予定しています。 3−6 メンタルケア 3−6−1 平時からの準備 1 要配慮者に対するメンタルケア体制の整備  要配慮者が一般の避難所や応急仮設住宅で長期にわたる避難生活を送ることは、様々な環境の変化に適応できない、日頃服用している薬剤等の供給がない、プライバシーの確保がない環境で精神的不安定になりやすいなど、一般の被災者以上に様々な困難を伴う。こうしたことから、要配慮者の災害や避難生活による精神的なストレスを軽減し、精神的な不調を予防するため、次のような対策を事前に検討しておくことが必要である。 (1)一般の避難所における要配慮者について、それぞれの障がいの内容や程度等、状況に応じた優先的な配慮 (2)できるだけ速やかな福祉避難所や社会福祉施設などへの移動 (3)災害派遣精神医療チーム(DPAT)など専門的な支援チームとの連携 2 児童に対するメンタルケア体制の整備  メンタルケアの問題は、精神機能が未発達な児童にとって、特に重要な問題であり、多くの児童に精神的ダメージを与え、心的外傷を残すことになる。しかも、かなり長期にわたり影響が残る可能性があり、こうした問題に専門家の協力を得て取り組む必要があるため、対策を事前に検討しておく必要がある。 (1)災害発生後の体制整備  災害発生後のメンタルケア活動を行うための人的組織や活動拠点の整備について、児童相談所や保健福祉事務所等と連携を図り、検討する必要がある。 (2)リフレッシュプログラムの設定及びボランティア(レクリーダー)の確保  避難所における児童に対するリフレッシュプログラムを作成するとともに、レクリエーション活動を行う人材の確保や育成を行うことが必要である。 (3)医療機関との協力協定  医療機関(精神科医等)と発災時の協力協定の締結を行うなど、支援体制の強化を図る必要がある。 (4)災害時のメンタルケア  災害時のメンタルケアの重要性については、日頃から学校、地域などで講演会、研修会など様々な機会をとらえて啓発を図ることが必要である。  (5)社会体験活動プログラムの設定  環境の変化に対する耐性の向上を図る目的で、親子で参加できる野外活動等(野外炊飯・キャンプ)日常を離れた環境での社会教育活動の充実を図るとともに、その中に体験的な防災教育プログラムを組み入れるなど、工夫することが必要である。 (6)グループ活動の強化  災害発生後、避難所生活をしている児童同士が互いに癒しあう仲間づくりができるよう、平時より様々なグループ活動を支援し、強化を図ることが必要である。 (7)既存の社会資源の見直し及び拡充  児童にかかわる相談窓口を情報提供の場として位置づけ、関係者に周知する必要がある。  また、避難所に隣接する児童福祉施設(保育所等)、児童館、児童遊園の設備を整備・拡充し、支援活動の拠点として活用する。 (8)県関係機関(児童相談所や保健福祉事務所等)や各種福祉団体(市町村社会福祉協議会・保育会等)と連携  各機関のメンタルケアに関わる役割分担を明確にし、機能的な人員配置、スムーズな情報伝達を行うためのシステムを構築する。    3−6−2 災害発生後の対応 1 相談体制の整備  災害に遭遇した被災者(要配慮者に限定されない。)は、被災したショック等により急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病、アルコール関連障害など様々な症状を呈することがある。  これらの精神的に不安定な被災者に対して、被災地での活動経験や、被災者の心理に関する知識を持っている専門の医師、保健師、公認心理師、精神保健福祉士等や専門機関と連携して相談体制を整え、メンタルケアを実施する。  また、症状の深度などに応じて精神科等専門医療機関による医学的治療を要請する。 2 在宅の要配慮者に対するメンタルケアの実施  避難所、応急仮設住宅だけでなく、在宅の要配慮者の状況を的確に把握し、支援の必要な人をリストアップし、関係機関やボランティアとも連携して継続的なメンタルケアを実施する。  また、中長期的には、障がい者等が対等で共感できる立場から相談に乗り、支援を行うピアカウンセリング(障がい者同士の相談・援助)の活用も考慮する。 3 児童に対するメンタルケアの実施 (1)メンタルケアが必要な児童の把握  巡回支援要員等は、各避難所や被災地域を調査し、急性期では、急性ストレスのある児童、被災遺児などのメンタルケアを必要とする児童の把握を行い、その後の中長期的な活動に向けた体制を整備する。 (2)心的外傷後ストレス障害(PTSD)等についての評価と援助  精神の不調に対しての評価については専門職からなるDPAT等に依頼し、支援内容についても相談する。  また、症状の深度に応じて、専門の医療機関による医学的治療を要請する。 (3)レクリエーションプログラムの展開  避難所でのレクリエーションプログラムも含め、近隣施設(保育所、児童館などの児童福祉施設等)を利用した支援活動を行う。 (4)引き続き援助が必要な児童の対応  被災後、一定の期間の後、応急仮設住宅等に入居するなどにより、避難所を拠点とした援助活動が終了した場合であっても、引き続き援助が必要な児童に対しては、児童相談所等の機能を活用する。 3−7 外国人 3−7−1 平時からの準備 1 安否確認体制及び避難情報提供ルートの整備 (1)市町村は、情報マップ等の活用や関係機関・団体、NGO、宿泊事業者等の観光事業者等の団体の協力により、発災時に迅速かつ効果的に、安否確認や被災状況の把握を行う体制や、安否関連情報や避難情報が提供できるルート・方法等を検討、整備する。 (2)市町村は、多数の外国人が在学し、勤務、交流、利用する学校や施設(宿泊・集客施設を含む。)、企業等に対し、安否確認や避難、誘導等の行動マニュアルを整備するよう要請する13。 2 自主防災組織及び関係機関、団体、施設(宿泊・集客施設含む)管理者、旅行会社等との連携  市町村は、自治会などの自主防災組織や関係機関・団体、NGO、日頃外国人が利用する施設(宿泊・集客施設を含む。)の管理者、交通機関、旅行会社14等の団体との連携、協力を強化し、災害時に実際に機能するよう体制整備を図る。 3 災害に関する表示板の整備  市町村は、広域避難場所や避難標識等を誰でも理解できるようにするため、次のような対策を講じるように努める。 ・多言語及びやさしい日本語で表示する。 ・ローマ字又は絵文字(ピクトグラム15)で表示する。 ・多言語コミュニケーションツール(コミュニケーションボード16、音声データ17など)を活用する。 4 相談、通訳・翻訳ボランティアの確保及び円滑なボランティア活動への支援体制の整備  市町村は、平時から、通訳、翻訳等のボランティアを確保し、定期的に育成研修を行う等連携を強めることにより、災害時の機動性を確保する体制整備に努める。  市町村は、災害時のボランティア活動に関する保険や旅費等、必要諸経費への対応方法などについて検討し、円滑なボランティア活動への支援体制の整備に努める。 3−7−2 災害発生後の対応 1 市町村は、各地区の避難所の避難者リストから外国人を抽出し、国籍別に外国人のリストを作成する。その際には、事前対策として作成していた要配慮者に関する基礎情報を活用するとともに、要配慮者個人のコミュニケーション言語と言語支援の必要度、身体介助等移動支援の必要度の把握に努めるようにする。なお、通名を用いている外国人の場合など、個人情報の取扱いに十分留意する。 2 市町村は、外国人と日本人が文化や生活習慣、民族的背景が異なることを前提に、寝食の扱い等に配慮した避難所の運営を行う。特に、日本語によるコミュニケーションが不自由な場合には、誤解や情報不足による軋轢が起こりやすいので、多言語ややさしい日本語などを用いて、情報格差が起きないように配慮する。また、外国人が精神的・情緒的に追い込まれることも想定されるので、積極的に母国語による声かけ・呼びかけを行うよう配慮する。 3 市町村は、常設相談窓口を相談拠点として、早期に相談活動を再開するとともに、関係機関、NGO等の団体との協力により、必要に応じて、拠点となる避難所に臨時相談窓口を開設し、心身ケアを含む相談を、多言語により実施する。 4 市町村は、あらかじめ登録してある相談、通訳ボランティアに対して協力要請し、各行政窓口、医療機関等に派遣するとともに、文化や習慣の違う外国人が避難所で円滑に生活できるようにするため、必要に応じて避難所に相談、通訳ボランティアを派遣する。市町村は、相談、通訳ボランティアが必要とする被災情報、安否情報、医療情報、避難所情報、交通情報を収集し、提供する。市町村は、相談、通訳ボランティアである旨の身分証明カード交付、損害保険への加入、宿泊の希望、食事の希望など、ボランティア活動に必要な事務的事項について聞き取り、必要に応じて手配する。 5 市町村は、医療機関や関係機関、NGO等の団体との協力のもと、多言語による診療体制を確保する。 6 市町村は、超過滞在者等に対しても、災害時の対応において不当な差別とならないよう配慮する。 7 市町村は、NGO等との団体との連携により、ボランティアの受入れや活動の調整などを行い、効果的な救援活動を行う。 4 広域支援 4−1 広域支援体制の確立 4−1−1 厚生労働省及び近隣自治体との広域支援体制の確立  県は、大規模災害の発生により甚大な被害が広範囲に及んだ場合を想定して、厚生労働省や近隣自治体との間における広域支援体制を含む、被災市町村への広域的な支援体制の確立に努める。 1 県は、厚生労働省と災害時の支援体制の整備について調整を行う。 2 県は、被災した市町村において適切な要配慮者支援が行われるよう、必要な対策について検討し、支援活動が可能な市町村等と調整を行う。 3 県は、市町村と協力し、必要に応じて臨時の相談窓口を設置する。 4−1−2 県内市町村及び関係団体との支援体制の確立 1 県は、施設団体や職能団体等の関係団体と協働して、要配慮者を広域的に支援するため、かながわ災害福祉広域支援ネットワークを設置し、平時から連携強化を図る。 2 県は、避難所を設置する県内被災市町村から介護職員等の派遣要請があった場合、または県の判断により、かながわ災害福祉広域支援ネットワークの各団体と協働して神奈川県災害派遣福祉チーム(神奈川DWAT)の派遣調整を行う。さらに、より広域的な応援要請が必要な場合には、国または他都道府県に対し、DWATの派遣要請を行う。市町村は、神奈川DWAT派遣に関する県との連絡調整窓口をあらかじめ定めておくなど、県との連絡体制や連絡方法を整えておく必要がある。 3 県は、市町村や関係団体と協働して、社会福祉施設等の相互支援体制を整備する。 【かながわ災害福祉広域支援ネットワーク】  大規模災害の発生に備え、県が関係団体等と協働して、2016(平成28)年7月に構築した。大規模災害時における高齢者や障がい者など特に配慮を要する者(要配慮者)を支援することを目的とし、平時から情報共有等により連携を強化するとともに、派遣人材の育成等を行う。  ≪構成団体(令和4年11月1日時点)≫  一般社団法人 神奈川県介護支援専門員協会  公益社団法人 神奈川県介護福祉士会  一般社団法人 神奈川県高齢者福祉施設協議会  社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会  公益社団法人 神奈川県社会福祉士会  神奈川県身体障害施設協会  一般社団法人 神奈川県精神保健福祉士協会  神奈川県知的障害施設団体連合会  公益社団法人 神奈川県理学療法士会  一般社団法人 神奈川県老人保健施設協会  一般社団法人 相模原市高齢者福祉施設協議会  公益社団法人 横浜市福祉事業経営者会 【神奈川DWAT】  2021年(令和3年2月)に、大規模災害時に、一般の避難所等において要配慮者に対し、福祉支援を行う神奈川県災害派遣福祉チーム(神奈川DWAT)を設置した。 主な活動内容 <平時> ・研修及び訓練への参加 ・神奈川DWAT活動の周知、啓発への協力 <災害時> ・要配慮者のスクリーニング及び福祉避難所等への誘導 ・要配慮者の心身の状態の把握 ・日常生活上の支援 ・相談支援 ・一般避難所等内の環境整備 ・神奈川DWAT本部等への連絡調整 ・その他、必要な福祉的支援 チーム員の資格等 ※いずれも実務経験3年以上の者 <資格> 社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、精神保健福祉士、介護職員初任者研修修了者、介護福祉士実務者研修修了者、相談支援専門員、保育士、看護師、理学療法士、臨床心理士、認定心理士 等 <職種> 生活相談員、生活支援員、介護職員、児童指導員、地域包括支援センター職員、手話通訳者 等 その他、県知事が認めた者 4−1−3 市町村相互の支援体制の確立  災害発生時には、被災した市町村において応急活動を行うことは困難と考えられ、特に要配慮者については、生活全般において支えていかなければならないので、市町村相互の支援体制を確立することも重要である18。 4−2 外国人 4−2−1 海外、県外及び近隣自治体との広域支援体制の確立 1 県は、近隣都県や各国大使館、関係機関、NGO等の団体との情報連絡網を整備し、災害時には、県外、海外からの支援への対応に当たる。 2 県は、海外からの支援の申出に対して受入れが決定された場合には、その受入れと円滑な活動の支援に努める。 3 県は、海外からの支援活動に伴う通訳・翻訳業務等に関し協力するとともに、必要に応じて市町村等を支援する。 4 県は、必要に応じて通訳・翻訳の提供等、海外報道機関等への対応に当たる。 4−2−2 県内市町村及び関係団体との支援体制の確立 1 県は、平時から、災害時の外国人への支援の必要性について、県民や関係機関、NGO等の団体に対し、十分PRを行い、外国人自身に対しても、相互協力の必要性や防災体制への理解を深めるよう努めるとともに、被災した本県や市町村が機能マヒに陥る可能性も考慮して、日頃から広域的なネットワークを形成し、人的、物的両面における相互応援システムを確立する必要がある。 2 県は、市町村や関係機関、NGO等の団体と協力して災害時の外国人の支援体制の確立に努める。 [県が担う役割] ● 神奈川県災害多言語支援センター19の設置運営 ● 市町村を超えた情報収集とその提供 ● 防災意識の啓発 ● 災害時通訳翻訳ボランティアの確保 ● 情報連絡網の整備や市町村間のネットワークの構築 ● ボランティア活動の機動性の確保 ● 災害時外国人支援情報コーディネーターの配置20 4−2−3 市町村相互の支援体制の確立  市町村は、相談、通訳・翻訳ボランティアを相互に活用することなどについて事前に他の市町村と協議し、協定を結ぶなどして、災害時の具体的な相互支援体制を確立する21。 4−2−4 県の広域支援 1 情報収集・提供 (1)県は、関係機関、団体等の被災状況を把握して連絡方法を確認し、市町村の求めに応じて多言語化した情報等の提供を行う。 (2)県は、市町村が把握している外国人の被災状況を収集する。 [把握事項] 避難場所、人数、国籍、コミュニケーション言語、連絡方法等 (3)県は、応急対策や生活関連、支援活動、母国への退避手段等の情報収集に努めるとともに、市町村、報道機関、関係機関、NGO等の団体等に、多言語化して情報提供する。 2 神奈川県災害多言語支援センターにおける通訳・相談窓口の開設  県災害多言語支援センターは、かながわ県民センター内多言語支援センターかながわを災害時の外国人相談の拠点とし、多言語による通訳・相談を開始するとともに、関係機関、団体等との連携を図り、外国人支援活動が円滑に進むよう努める。 3 (公財)かながわ国際交流財団との連携によるボランティア活動への支援 (1)(公財)かながわ国際交流財団は、県と協力してボランティアの確保に努めるとともに、ボランティア活動の円滑な推進に関して必要な調整に当たる。 (2)(公財)かながわ国際交流財団は、民際協力基金を活用するなど、ボランティアの外国人支援活動に対する支援に努める。 おわりに  本指針の改定にあたり、県内市町村と関係団体に文書照会するとともに、一部の団体にはヒアリングを実施しました。御協力ありがとうございました。  また、改定素案に対するパブリック・コメントを行ったところ、数多くの御意見を頂きました。貴重なご意見を応募いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。   【改定経緯】 令和4年3月 市町村、関係団体への意見照会を実施     5月 関係課へ原稿作成依頼     9月 厚生常任委員会に改定骨子(案)を報告     12月 厚生常任委員会に改定素案を報告 令和5年12月〜1月 改定素案に対するパブリック・コメントの実施 令和5年3月 改定指針の公表