第3章 特殊建築物 第1節 特殊建築物の敷地と道路との関係 (敷地と道路の関係) 第5条 学校、体育館、病院、診療所(患者の収容施設のあるものに限る。)、物品販売業を営む店舗、マーケット、ホテル、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、政令第19条第1項に規定する児童福祉施設等(第15条において「児童福祉施設等」という。) 、自動車車庫又は自動車修理工場の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計(同一敷地内に2以上の建築物がある場合には、その用途に供する部分の床面積の合計をいう。以下、この条において同じ。)が100平方メートルを超え1,000平方メートル以内のものの敷地は、次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他建築物で知事が安全上支障がないと認めて許可したものについては、この限りではない。 その用途に供する部分の床面積の合計 敷地が道路に接する長さ 100平方メートルを超え200平方メートル以内のもの 3メートル 200平方メートルを超え500平方メートル以内のもの 4メートル 500平方メートルを超え1,000平方メートル以内のもの 5メートル  本条は、法第43条第3項及び法第68条の9による接道義務の強化であるが、第4条とは異なり「特殊建築物」に限り制限を強化している規定である。  本条中の「その用途に供する部分」とは、当該対象建築物に附属する建築物(例えば、共同住宅に附属する駐輪場など)も含むものである。また、複合用途の建築物の場合は、本条に掲げられた用途に供する部分の床面積の合計によって敷地が道路に接する長さが要求される。  なお、敷地が道路に接する長さの考え方は、第4条と同様である。  用途の主要なものは以下のとおりである。  (1) 学校  学校教育法に規定するものをいう。幼保連携型認定こども園は、教育基本法上の「学校」及び児童福祉法上の「児童福祉施設」に位置付けられていることから、本規定の学校には、幼保連携型認定こども園が含まれる。  なお、保育園は学校とはならないが、児童福祉施設等に含まれる。   〔学校教育法に規定するもの〕  幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校並びに専修学校及び各種学校  (2) 体育館  単独の「体育館」のことであり、学校に併設されるものは、用途上学校となる。また、体育館はその形態から観覧場となる場合も考えられる。 (3) 病院・診療所  医療法では20人以上の患者を入院させるための施設を有するものを病院、患者の入院させるための施設を有しないもの又は19人以下の患者を入院させるための施設を有するものを診療所と規定している。  本条の診療所については、かっこ書きで「患者の収容施設のあるものに限る。」と限定し、患者の入院させるための施設を有しない診療所は、本条の対象とはならない。   (4) 物品販売業を営む店舗  会社、工場等において従業員のために設けられた購買部等の物販類似施設はここでいう物品販売業を営む店舗には該当しない。 (5) ホテル又は旅館  企業の保養所であっても建築基準法上はホテル又は旅館として扱われる。(旅館業法上もホテル・旅館として扱われている。)  また、企業の「研修所」等についても、宿泊機能を有し、ホテル又は旅館の類似施設の形態の場合には上記の保養所と同様に建築基準法上ホテル又は旅館として扱われる場合がある。 (「旅館類似の寮又は保養所」昭和28年3月23日住指発第349号) (照会)  当県下箱根、湯河原等の温泉地に官公庁または会社等が寮または保養所と称して特定の人を対象とした旅館類似の用途の建築物が建築されているが、これらの建築物はその設備や利用度の点からも全く旅館と同一のもので、旅館業法からもその業として旅館と同様の取扱いをしている状態ですので、建築基準法からもこれらに対して旅館と解して、名称如何拘らず旅館の関係規定を適用したいが、如何。 (回答) 貴見のとおりである。 (6) 共同住宅・寄宿舎等  平成20年6月に県内で発生したグループホームの火災により死傷者が出たことを受け、建築基準法上の扱いを以下のとおり整理した。    ○グループホーム  ここでいうグループホームとは、高齢者や知的障害者が、専門のスタッフ等の援助を受けながら生活する次のものであり、政令第19条における「児童福祉施設等」に該当しない施設をいう。     【高齢者】 ・(認知症高齢者)グループホーム / 要介護者(介護保健法)であって認知症であるもの ・(高齢者)ケアハウス / 新しいタイプの軽費老人ホームであり、自分の身のまわりのことはできるが、自炊が出来ない程度に身体機能が低下しており、家庭環境・住宅事情などの理由で居宅に住むことの困難な者が入居し、各種相談、給食などのサービスが受けられる施設。 【知的障害者】 ・グループホーム(共同生活介護) / 障害程度区分(障害者自立支援法)が区分2以上 ・ケアホーム(共同生活援助) / 障害程度区分(同上)が区分1以下  上記の用途に該当する場合には、形態によって共同住宅又は寄宿舎等として扱う。 (7) 自動車車庫  独立に設置された自動車車庫のみではなく、附属自動車車庫も含まれるのものとして取扱う。 第2節 学校 (教室等の出口) 第11条 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校(前期課程に限る。)、特別支援学校又は幼保連携型認定こども園の用途に供する建築物の教室その他幼児、児童又は生徒が使用する居室で、床面積が50平方メートルを超えるものは、廊下、広間の類又は屋外に直接通ずる出口を2以上設けなければならない。  本条は、一部屋を多数の人が利用している時に火災等が発生した場合、当該居室から避難するに際して、一箇所の出入り口に人が集中することを避けるために、2以上の出口を設けることを求めた規定である。 1 廊下の突き当たり等の対象居室(教室等)の運用 (1) バルコニーを外壁面に設けたもの 〔考え方〕 建築物の外壁面に連続したバルコニーを設けることにより、対象居室(教室等)からバルコニーを経て廊下及び階段に通じることにより、円滑な避難を確保する。  なお、他の教室等(円滑な避難を確保することができない室(避難経路を常時明確に示すことができない倉庫等)は不可。)を経由する場合は、バルコニーからの扉は容易に進入できる構造とすること。 (2) 対象居室(教室等)専用の階段若しくはバルコニーを設けたもの  〔考え方〕 対象居室専用の階段を避難階まで直通させるか、または、バルコニー(避難階に通ずる避難ハッチ等の避難施設を設ける)を各階に設けることにより、2方向避難を確保する。   (3) 準備室を廊下・広間の類とみなす場合 〔考え方〕 対象居室(教室等)に隣接する準備室内に、避難上有効な通路が常に確保されおり、準備室を経由して廊下及び階段へ避難経路が確保できる場合においては、準備室を廊下・広間としてみなす。  (4) 避難階に掃き出し窓等を設けたもの 〔考え方〕 対象居室(教室等)が避難階にあり、かつ、直接屋外に避難できる掃き出し窓等を設けることにより、2方向避難を確保する。 第3節 共同住宅、寄宿舎、下宿、児童福祉施設等及び長屋 (設置の禁止) 第13条 共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるものは、次の各号のいずれかに掲げる建築物で、これらの用途に供する部分の主要構造部が政令第112条第1項に規定する1時間準耐火基準(以下「1時間準耐火基準」という。)に適合する準耐火構造でないものの上階に設けてはならない。 (1) 劇場、映画館、演芸場、観覧場、マーケット若しくは公衆浴場の用途に供する建築物又は法別表第2(と)項第4号に規定する建築物 (2) 公会堂、集会場、展示場、キャバレー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場又は倉庫(不燃性の物品を貯蔵するものを除く。)の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの (3) 物品販売業を営む店舗又は飲食店の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200平方メートルを超えるもの 1 劇場、映画館、演芸場、観覧場  近年、従来の映画館とは様相が異なったものも出てきていることから、これらの用途に該当するか否かは、本条の趣旨を踏まえ、名称によらず使用形態の実態に照らして判断する必要がある。 2 公会堂、集会場  「公会堂」は公民館、市民会館等の公の施設をいい、中には、公会堂であると同時に、劇場、映画館に該当する場合もある。  「集会場」とは、不特定かつ多数の人が集会を目的として利用する施設をいい、いわゆる地域の集会所や公民館と称するもので、原則として利用者が特定されており小規模(集会の用に供する部分の床面積の合計が概ね100平方メートル未満)なものは、ここでいうところの集会場にあたらない。 なお、用途規制に関しては以下の、法48条関連通達にならうものとする。    (「第一種住居専用地域内の公民館、集会所について」昭和53年8月11日東住街発第172号)   (照会)  町内会等一定の地区の住民を対象とし、当該地区外から一時に多数の人又は車の集散するおそれのないものであって、当該地区内住民の社会教育的な活動あるいは自治活動の目的の用に供するために設ける公民館、集会所その他これらに類する建築物は、建築基準法別表第2(い)項第4号に規定する「学校、図書館その他これらに類するもの」の「その他これらに類するもの」に該当するものと解してよろしいか御教示願いたい。   (回答)    貴見のとおりである。 3 飲食店  飲食店とは食堂、レストラン、そば屋、寿司屋等非常に多様な形態が含まれる。なお、利用者が特定の者に限られる社員食堂等の附属施設は、ここでいう飲食店に該当しない。 (寄宿舎等の廊下の幅) 第15条 寄宿舎、下宿又は児童福祉施設等(幼保連携型認定こども園を含む。以下この条において同じ。)の用途に供する木造建築物等の階で、その階における居室(寄宿舎又は児童福祉施設等にあっては寝室、下宿にあっては宿泊室をいう。以下この条及び次条において同じ。)の床面積の合計が100平方メートルを超えるものの共用の廊下の幅は、次に掲げる数値以上としなければならない。 (1) 両側の居室がある場合にあっては、1.6メートル (2) 前号に規定する場合以外の場合にあっては、1.2メートル  「廊下の幅」に関しては、政令第119条で規定されているが、本条はそれ以外の用途の建築物に対する強化規定である。 <例  示>  ■ 両側に居室がある場合として扱わない一例  ■ 両側に居室がある場合とそうでない場合が併存する一例 (共同住宅等の階段) 第16条 共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する木造建築物等で、その2階における居室の床面積の合計が50平方メートルを超える場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段又はこれに代わる施設を設けなければならない。 2 共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する建築物のうち、主要構造部が不燃材料で造られている建築物(主要構造部を耐火構造とした建築物又は準耐火建築物を除く。)でその2階における居室の床面積の合計が100平方メートルを超える場合においては、その階から避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段又はこれに代わる施設を設けなければならない。    本条は、政令第121条第1項第5号の強化規定であり、政令では100平方メートルを超えた場合に2方向避難が義務付けられるところを、木造建築物等(「木造建築物等」とは、第12条参照。)の場合にあっては2階の居室面積(「居室」とは、第15条参照。)の合計が50平方メートルから、また、主要構造部が不燃材料のものにあっては、2階の居室面積の合計が100平方メートルを超える場合に2方向避難を要求するものである。  直通階段に代わる施設についてはタラップ等が挙げられるが、この他、消防法施行令第25条で規定されている避難はしご(不燃材)等(設置を要する箇所から移動されないように固定されたものに限る。)も認められる。  なお、当該建築物の主な居住者が高齢者等であることが想定される場合には、居住者が容易に避難できる施設(滑り台や緩降機等)を設けることが望ましい。 1 第2項関係  準耐火建築物とすることを要しない鉄骨造等の共同住宅など、主要構造部が不燃材料で造られている建築物に関する規定であり、「主要構造部を耐火構造とした建築物又は準耐火建築物は除く。」とあるように、一定の耐火性能を有している場合はこの条の適用は受けない。 (共同住宅等の主要な出口) 第16条の2 共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する建築物の避難階においては、主要な出口(屋外階段又はこれに代わる施設からの出口を含む。以下この条及び第19条において同じ。)は、道(都市計画区域及び準都市計画区域内においては、法第42条に規定する道路に限る。第52条の6及び第52条の17の2を除き、以下同じ。)に面して設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、かつ、安全上支障がないと認められる場合は、この限りではない。 (1) 主要な出口から道に通ずる敷地内通路が共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する部分の床面積の合計の区分に応じて次の表に定める幅員以上である場合 共同住宅、寄宿舎又は下宿の用途に供する部分の床面積の合計 敷地内通路の幅員 100平方メートル以内のもの 1.5メートル 100平方メートルを超え300平方メートル以内のもの 2メートル 300平方メートルを超え500平方メートル以内のもの 3メートル 500平方メートルを超えるもの 4メートル (2) 周囲に公園、広場その他の空地がある場合 2 前項の建築物が開口部のない耐火構造の床又は壁で区画されている場合においては、その区画された部分(以下この項において「区画部分」という。)は、前項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。ただし、区画部分の主要な出口から道に通ずる敷地内通路のうち、それぞれの区画部分の共用の部分の幅員については、共用に係る区画部分を一の建築物とみなして前項第1号の規定を適用する。 1 第1項関係 (1) 主要な出口  本条の「主要な出口」とは、玄関・通用口などのほか、共同住宅等の最下階(避難階)の住戸(寝室)については、掃き出し窓(直接屋外に避難できるものに限る。)も、主要な出口とみなすことができる。  本文かっこ書きの「屋外階段又はこれに代わる施設」とは、建築基準法においては政令第120条(直通階段の設置)、政令第121条(2以上の直通階段の設置)の規定、条例においては第16条(共同住宅等の階段)により設置された階段又はこれに代わる施設をいう。    よって、消防の指導により設置された避難階段及び任意に設けられた施設は含まれない。 (2) 道に面する出口  「道に面する」とは、主要な出口が道に平行して位置し、かつ道との間に高低差(通行上支障が生じない程度の高低差は除く。)の無い場合のことである。  また、生け垣やフェンスなど通行上支障をきたすおそれがあるものが設置されている場合は該当しない。  なお、高低差に関しては、階段等を設けることにより、避難経路が確保できれば、支障ないものとして扱う。  また、道に面している場合とは、当該部分の奥行き(D)と間口(W)との関係において、原則、間口が奥行きよりも大きい場合を言うが、間口が敷地の外周の7分の1以上の場合は道に面しているものとして扱う。 (3) ただし書について  「安全上支障がない」とは、第1号にあっては主要な出口から道に通ずる敷地内通路が道路に至るまで安全上支障となるような高低差がなく、かつ、必要とされる敷地内通路の幅員が有効に確保されていることである。また、敷地内通路上に駐車スペースを設ける場合は、自動車が駐車されている状態で、人が通行可能な有効幅員が必要とする幅員が確保されていることが必要である。  第2号にあっては、周囲の公園、広場その他の空地が将来にわたり確保されることが確認でき、かつ、主要な出口が当該空地に面している、または、当該空地まで前号に準じた敷地内通路が確保されている等、当該空地まで円滑に通行できることが必要である。 2 第2項関係  第1項関係の出口について、その建築物が政令第117条第2項の区画により区画されている場合にあっては、当該区画単位に第1項の規定を適用する旨の規定である。 <例  示>     α=a+bの面積の合計による            α=aの面積による     β=bのみの面積による               β=bの面積による (長屋の出口) 第19条 長屋の各戸の主要な出口は、道に面して設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当し、かつ、安全上支障がないと認められる場合は、この限りでない。 (1) 主要な出口から道に通ずる敷地内通路の幅員が3メートル(2以下の住戸の専用の通路については、2メートル)以上である場合  (2) 周囲に公園、広場その他の空地がある場合  長屋の主要な出口は、道に面して設けなればならない旨の規定であり、「道に面している」ことについての判断基準は、第16条の2の解説を参照のこと。  第1号のかっこ書き「2以下の住戸の専用の通路」とは、3戸以上の長屋であっても、例示のように当該通路を利用する住戸が2戸以下である場合をいう。  また、ただし書の適用にあっては、第16条の2の解説を参照のこと。 <例  示> 通路幅員≧3m         通路幅員≧2m : 2戸専用の通路部分 (長屋の構造等) 第20条 3階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物又は1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物であつて知事が別に定める基準に適合するものとし、4階以上の階を長屋の用途に供する建築物は耐火建築物としなければならない。ただし、重ね建て長屋の用途に供する部分のない建築物にあつては、準耐火建築物又は政令第136条の2の技術的基準に適合する建築物とすることができる。 2 長屋の用途に供する部分の床面積の合計が600平方メートル以上の建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない。 3 長屋の各戸の界壁の長さは、4.5メートル以上としなければならない。ただし、当該建築物の構造若しくは形状又は周囲の状況によりやむを得ないと認められる場合は、その界壁の長さを2.7メートル以上とすることができる。 4 長屋の各戸は、直接外気に接する開口部を2面以上の外壁に設けなければならない。 「長    屋」:2以上の住戸を有する一の建築物で、隣接又は重ね合う住戸と内部で行き来ができない完全分離型の構造で、廊下・階段等の共用部分を有しない形式のものをいう。 「重ね建て長屋」:別称「重層長屋」ともいい、住戸の床が他の住戸若しくは別の用途の部分と接しているもの(いわゆる界床を持つもの。)をいう。 1 第1項関係  縦割り長屋(重ね建て長屋以外)は、一戸の住宅ユニットが他の住戸等と重なりがなく、かつ1階から3階もしくは4階までが同一住戸であり、火災時の避難等も容易であると考えられることから、緩和規定が設けられている。  「知事が別に定める基準」については、細則第12条の3に規定している。 <例  示>  ■ 3階を長屋の用途に供する建築物(重ね建て長屋の場合) 〔耐火建築物又は1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物であつて知事が別に定める基準に適合するものを要する例〕         ■ 3階以上を長屋の用途に供する建築物(重ね建て長屋以外の場合) 〔準耐火建築物又は政令第136条の2に適合する建築物を要する例〕 2 第3項関係  本項は、住戸間に接続幅の短い物置(押入等)を計画段階で設けているものの、建築中又は工事完了後に除却し、独立した住戸に変更するなどして、敷地と道路に関係する規定等に違反する事例が見受けられたため、必要最小限の界壁の長さを定めたものである。  なお、界壁の長さは、1階または2階のどちらかにあれば、適合しているものとする。  界壁の長さL ≧ 4.5m(やむを得ない場合2.7m) 第4節 ホテル及び旅館 (廊下及び階段) 第23条 ホテル又は旅館の用途に供する建築物の宿泊室の床面積の合計が100平方メートルを超える階における客用の廊下の幅は、次に掲げる数値以上としなければならない。ただし、床面積の合計が30平方メートル以下の室に通ずる専用のものについては、この限りでない。  (1) 両側に居室がある場合にあっては、1.6メートル  (2) 前号に規定する場合以外の場合にあっては、1.2メートル 2 前項の階における客用の廊下から避難階又は地上に通ずる客用の直通階段のうち1以上の直通階段の幅は、1.2メートル(屋外に設けるものにあっては、90センチメートル)以上としなければならない。 1 第1項関係 両側に居室がある場合及びそれ以外の取扱いについては、第15条の例示を参考のこと。  また、本条は宿泊室の床面積の合計が100平方メートルを超える場合に適用するが、第1号及び第2号の規定は、客用の宿泊室だけではなく「居室」としているので注意すること。 第5節 大規模店舗及びマーケット (大規模店舗及びマーケットの敷地と道路との関係) 第26条 大規模店舗(物品販売業を営む店舗であって、その用途に供する部分(展示場その他多人数の集まる居室を含む。)の床面積の合計が1,000平方メートルを超え1,500平方メートル以内のもののうち、当該部分の一部又は全部を3階以上の階に有するもの及び当該部分の床面積の合計が1,500平方メートルを超えるものをいう。以下この節において同じ。)又はマーケットの用途に供する建築物の敷地は、その用途に供する部分の床面積の合計の区分に応じて次の表に示す幅員の道路に敷地の外周の長さの7分の1以上接しなければならない。 大規模店舗及びマーケットの用途に供する部分の床面積の合計 道路の幅員 1,000平方メートルを超え2,000平方メートル以内のもの 6メートル以上 2,000平方メートルを超え3,000平方メートル以内のもの 8メートル以上 3,000平方メートルを超えるもの 11メートル以上 2 前項の規定にかかわらず、大規模店舗又はマーケットの用途に供する建築物の敷地の外周の長さの3分の1以上が2以上の道路に接し、かつ、その建築物の客用の出口がそれぞれの道路に面している場合における当該道路の幅員については、次の表によることができる。 大規模店舗及びマーケットの用途に供する部分の床面積の合計 道路の幅員 一の道路 他の道路 1,000平方メートルを超え 2,000平方メートル以内のもの 5.4メートル以上 4メートル以上 2,000平方メートルを超え 3,000平方メートル以内のもの 6メートル以上 5.4メートル以上 3,000平方メートルを超えるもの 8メートル以上 6メートル以上 3 前2項の規定は、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の建築物で知事が安全上支障がないと認めて許可したものについては、適用しない。  本節の対象となる大規模店舗については、次の(1)又は(2)に該当するものであるが、物品販売業を営む店舗の用途に供する部分に「展示場その他多人数の集まる居室を含む」とかっこ書で規定していることから、集会場又は展示場等を併設している場合にはその面積の算定には当該床面積を加える必要がある。 (1) 物品販売業を営む店舗の用途に供する部分で床面積の合計が1,000平方メートルを超え1,500平方メートル以内で、当該部分の一部又は全部を3階以上の階に有するもの (2) 物品販売業を営む店舗の用途に供する部分で床面積の合計が1,500平方メートルを超えるもの(階数は問わない。) 1 第1項関係  本項中の「道路に敷地の外周の長さの7分の1以上接しなければならない」とは、道路に接する部分の長さが最低でも2メートル以上は必要であり、かつ、第4条又は第5条における接する長さを満たしていなければならない。 なお、敷地が道路に接する長さの考え方は、第4条と同様である(以下、2についても同様)。 2 第2項関係  本項は、以下の(1)及び(2)両方の条件を満たした場合には第1項の規定によらず本項の規定とすることができることを定めたものである。 (1) 建築物の敷地の外周の長さの3分の1以上が2以上の道路に接していること。 ・「2以上の道路に接する」とは、道路に接する部分の長さが最低でも2メートル以上は必要であり、かつ、本項表中の「一の道路」に該当する道路について、第4条又は第5条に規定する敷地が道路に接する長さを満たしていなければならない。 (2) 建築物の客用の出口がそれぞれの道路に面していること。 ・「客用の出口がそれぞれの道路に面している場合」とは、客用の出口がそれぞれの道路に平行して位置し、かつ道路との間に高低差(通行上著しい支障が生じない程度の高低差は除く。)の無い場合のことである。ただし、生け垣やフェンスなど通行上著しく支障をきたすおそれがあるものが設置されている場合は該当しない。 なお、高低差に関しては、階段等を設けることにより、避難経路が確保できれば、支障ないものとして取扱う。 3 第3項関係 本項に基づき知事の許可を受ける場合の留意事項については、第4条の解説を参照されたい。 第6節 興行場等  本節で取扱う興行場等については、興行場法で対象としているような各種興行、観せ物を催すための建築物のほか舞台等を設けている公会堂や集会場を対象としている。(興行場等については第31条で定義しているが、第37条では、公会堂及び集会場を対象としていないので注意が必要である。)  なお、本節については、近年の興行場等の形態の多様化に伴い、平成5年に中小規模の興行場等にも対応するよう、避難時の人の流れを考慮しつつ、構造基準等を改正している。 (敷地と道路との関係) 第31条 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場(以下この節において「興行場等」という。)の用途に供する建築物の敷地は、客席の床面積(集会場にあっては、当該客席の床面積の2分の1に相当する床面積をいう。以下この節において同じ。)の合計の区分に応じて、次の表に示す幅員の道路に敷地の外周の長さの7分の1以上接しなければならない。 客席の床面積の合計 道路の幅員 200平方メートルを超え300平方メートル以内のもの 5.4メートル以上 300平方メートルを超え600平方メートル以内のもの 8メートル以上 600平方メートルを超えるもの 11メートル以上 2 前項の規定にかかわらず、興行場等の用途に供する建築物の敷地の外周の長さの3分の1以上が2以上の道路に接し、かつ、その建築物の客用の屋外への出口がそれぞれの道路に面している場合における当該道路の幅員については、次の表によることができる。 客席の床面積の合計 道路の幅員 一の道路 他の道路 200平方メートルを超え 300平方メートル以内のもの 5.4メートル以上 4メートル以上 300平方メートルを超え 600平方メートル以内のもの 6メートル以上 4メートル以上 600平方メートルを超えるもの 8メートル以上 6メートル以上 3 前2項の規定は、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の建築物で知事が安全上支障がないと認めて許可したものについては、適用しない。  本条は、興行場等は不特定多数の人が利用する建築物であるため、避難及び通行の安全を図る観点から、興行場等の客席の床面積の合計に基づいて敷地が道路に接する必要長さ及び接する道路の幅員を定めている。  なお、道路に接する長さについての考え方は、第4条と同様である。 1 第1項関係 (1) 集会場  集会場とは、不特定多数の人が集会を主目的として利用する施設をいう。従って例えば学校の講堂であっても舞台及び客席を有するオーディトリアムで一般の集会にも使用されるものは本条で規定している集会場として扱う。  なお、専ら会議・シンポジウム等の催しを行なう集会施設で舞台・客席を有するものについては、集会場ではなく公会堂として取扱うべきものであると考える。 (2) 集会場の客席の床面積の算定  集会場については、映画館等との利用形態の違いから同一基準を適用することは適切でないため、集会場の床面積の算定を当該客席の床面積の2分の1として規定している。  なお、結婚式場や葬祭場の用に供する集会場については、宴会用広間等の客席の範囲が必ずしも明確ではないが、本条における客席の床面積の算定については、宴会用広間等の面積を本条における対象床面積として扱うこととする。  本項中の「道路に敷地の外周の長さの7分の1以上接しなければならない」とは、道路に接する部分の長さが最低でも2メートル以上は必要であり、かつ、第4条における接する長さを満たしていなければならない。 なお、敷地が道路に接する長さの考え方は、第4条と同様である。 2 第2項関係  本項は、以下の(1)及び(2)両方の条件を満たした場合には第1項の規定によらず本項の規定とすることができることを定めたものである。 (1) 建築物の敷地の外周の長さの3分の1以上が2以上の道路に接していること。 ・「2以上の道路に接する」とは、道路に接する部分の長さが最低でも2メートル以上は必要であり、かつ、本項表中の「一の道路」に該当する道路について、第4条又は第5条に規定する敷地が道路に接する長さを満たしていなければならない。 (2) 建築物の客用の屋外への出口がそれぞれの道路に面していること。 ・「客用の屋外へ出口がそれぞれの道路に面している場合」とは、客用の屋外への出口がそれぞれの道路に平行して位置し、かつ道路との間に高低差(通行上著しい支障が生じない程度の高低差は除く。)の無い場合のことである。ただし、生け垣やフェンスなど通行上著しく支障をきたすおそれがあるものが設置されている場合は該当しない。 なお、高低差に関しては、階段等を設けることにより、避難経路が確保できれば、支障ないものとして取扱う。 3 第3項関係 本項に基づき知事の許可を受ける場合の留意事項については、第4条の解説を参照されたい。 (前面空地及び側面空地) 第32条 興行場等の客用の屋外への主要な出口と道の境界線との間には、次の表に示す間口(空地の幅をいう。以下同じ。)及び奥行き(道の境界線からの距離をいう。)を有する前面空地を設けなければならない。 客席の床面積の合計 出口が道に面している場合 出口が道に面していない場合 間口 奥行き 間口 奥行き 200平方メートルを超え300平方メートル以内のもの 次条第1項に規定する客用の屋外への出口の幅の合計以上 2メートル以上 5メートル以上 道から最も離れた客用の屋外への主要な出口の端までの長さ以上 300平方メートルを超え600平方メートル以内のもの 3メートル以上 6メートル以上 600平方メートルを超えるもの 4メートル以上 8メートル以上 2 興行場等の用途に供する建築物の主要構造部又は屋根を除く主要構造部が耐火構造の場合には、前項の前面空地に相当する部分に次の各号の定める構造の歩廊を設け、又はその部分を第1号及び第3号に定める構造のポーチ(これに類するものを含む。)とすることができる。 (1) 内法の高さは、3メートル以上とすること。 (2) 主要な構造部は、耐火構造とし、又は不燃材料で造ること。 (3) 通行上支障がある位置に柱、壁その他これらに類するものを設けないこと。 3 興行場等の客用の屋外への出口で、道に面して設けるものは、道の境界線から1メートル以上後退して設けなければならない。 4 興行場等の用途に供する木造建築物等の外壁は、その長さの5分の3以上が幅1.5メートル以上の空地に面していなければならない。  本条は、興行場等の主要な出口と道との間に空地を確保することにより、開場・閉場の際の混雑緩和を図るとともに、火災・地震等の災害時に短時間で利用者等が退出できる機能を確保するための規定である。 1 第1項関係  客席の床面積の合計の区分ごとに、客用の屋外への主要な出口に設ける前面空地の間口及び奥行きが定められている。  なお、客用の屋外への主要な出口の幅については、第33条との関係から客用の出口幅の合計の3分の1以上を確保する必要があり、独立した複数の主要な出口で第33条に適合させる場合は、それぞれ主要な出口ごとに本項に適合する前面空地を確保する必要がある。  また、本条でいう前面空地については非常時の避難スペース等として使用されることを期待されているので、植栽や駐車スペース(車路を除く)等により有効に使用できない場合は、本条に適合しないものとして取扱うのが相当である。    <例 示 (出口が道に面している場合)>    <例 示 (出口が道に面していない場合)> 2 第2項関係  本項は、前項の前面空地の規定の特例である。興行場等の用途に供する建築物について屋根を除く主要構造部が耐火構造の場合は、前面空地に第2項第1号から第3号までに適合する歩廊等を設けることができることを定めている。 (1) これに類するもの     ピロティ等で空地の機能が確保できる形態のものをいう。 (2) 歩廊等の取扱の注意点  本規定における歩廊等については、興行場等から独立した構造であることを前提としているので、興行場等の用途に供する建築物と一体で設ける場合は、ポーチ又はこれに類するものとして扱うのが適当である。 3 第3項関係  本項は、客用の屋外への出口が道に面する場合、道の境界線から1メートル以上後退しなければならないことを定めているものであるが、主要な出口については第1項及び第2項で後退距離が確保されるので、実質的には第1項で規定する「主要な出口」以外の出口について規定しているといえる。 (屋外への出口) 第33条 興行場等の客用の屋外への出口の幅は1.2メートル以上とし、その幅の合計はその出口を使用して避難する客席の床面積の合計10平方メートルにつき、主要構造部又は屋根を除く主要構造部が耐火構造の建築物にあつては17センチメートル以上、その他のものにあつては20センチメートル以上としなければならない。 2 前条第1項に定める前面空地に面する客用の屋外への主要な出口の幅の合計は、前項に定める幅の合計の3分の1以上としなければならない。  本条は、興行場等の客用の屋外への出口について規定したものである。   1 第1項関係  本項は客用の各出口の最低幅を規定するとともに、出口の合計幅をその出口を使用して避難する客の床面積に応じて一定以上とすることを規定したものである(集会場の場合、第31条の規定により客席の床面積の算定が2分の1になるので注意が必要である)。  <例  示>      W1,W2,W3 ≧1.2m      かつ  W1+W2+W3 ≧【S/10】*a(m)【S/10】:(S/10)を整数に切上げたもの a:屋根を除く主要構造部が耐火建築物の場合 a=0.17 上記以外の場合 a=0.20  ※ 本例は、客席は区画されてなく、かつ、いずれの客用の出口からも避難できるものとする。 2 第2項関係  本項は、第32条に規定する前面空地に面する客用の主要な出口の幅の合計について、客用の全出口の幅の合計(第1項で規定した長さ)の3分の1以上であることを規定している。    <算定例(上記の例示の場合)> W1の必要長さ ≧ (W1+W2+W3)/3 (階段) 第34条 興行場等の客用の階段には、回り段を設けてはならない。 2 前項の階段の幅の合計については、前条第1項の規定を準用する。  本条は、興行場等の客用の階段の構造を定めたものである。 1 第2項関係  第33条第1項では、客用の出口の幅の合計について規定しており、本項では客用の階段の幅の合計についても同等のものを求めたものである。 (敷地内通路) 第35条 興行場等の客用の屋外への出口が道、公園、広場又は第32条第1項に規定する前面空地に直接面しない場合には、その出口からこれらに通ずる敷地内通路を設けなければならない。 2 前項の敷地内通路の幅は、客席の床面積の合計が300平方メートル以内のときは1.5メートル以上とし、300平方メートルをこえるときは1.5メートルに300平方メートルをこえる客席の床面積60平方メートル又はその端数を増すごとに15センチメートルを加えた幅以上としなければならない。ただし、局部的な敷地内通路で避難上支障がないものについては、この限りでない。 3 第1項の敷地内通路には、3段以下の段を設けてはならない。 4 主要構造部又は屋根を除く主要構造部が耐火構造の興行場等にあっては、第1項の敷地内通路に相当する部分に、第32条第2項各号に定める構造の歩廊を設けることができる。  本条は、興行場等の客用の屋外への出口が道などに面していない場合の敷地内通路の構造を定めている。 1 第1項関係  本項は、出口が道などや前面空地に面していない場合に敷地内通路を設けなければならないことを規定している。なお、客用の屋外への出口については、主要な出口を含め、全てのものが対象になるので注意が必要である。 2 第2項関係 ・局部的な敷地内通路  本項では、敷地内通路について客室の床面積に応じた有効幅員を確保することを趣旨として規定しているため、避難動線計画上の支流部分として位置づけることのできる敷地内通路の端部等で避難上支障ないものについては、「局部的な敷地内通路」ととらえ、ただし書の対象になると考えられる。   <例  示> 3 第3項関係  本項は、敷地内通路上に認知しづらい段差が設けられた場合、緊急避難時に将棋倒し等の要因となるおそれがあるため、段差を設ける場合は3段以下としてはならないことを規定している。 4 第4項関係  本項は、第1項の敷地内通路の規定の特例である。歩廊等の構造の考え方については、第32条と同様である。 (廊下及び広間の類) 第36条 興行場等の用途に供する建築物の各階には、客席の両側及び後方に廊下又は広間の類を設けなければならない。ただし、客席からずい道を設け、廊下若しくは広間の類に通じている場合で、避難上支障がないとき又は客席が避難階にあり、かつ、客席の側面に設ける出口が直接道、公園、幅員3メートル以上の敷地内通路その他避難上安全な場所に面している場合は、この限りでない。 2 前項の規定にかかわらず、その階における客席の床面積の合計が150平方メートル(主要構造部又は屋根を除く主要構造部が耐火構造のものにあっては、300平方メートル)以内の場合には、同項に規定する客席の両側に設ける廊下又は広間の類は、片側とすることができる。 3 第1項の廊下又は広間の類は、客席と混用されないように壁で客席と区画しなければならない。 4 興行場等の客用の廊下、広間の類及びこれらに通ずる出口の戸の構造は、次に定めるところによらなければならない。 (1) 廊下を使用する客席の床面積の合計が200平方メートル以下の場合にあっては、当該廊下の幅を1.2メートル以上とすること。 (2) 廊下を使用する客席の床面積の合計が200平方メートルを超え300平方メートル以下の場合にあっては、当該廊下の幅を1.3メートル以上とすること。 (3) 廊下を使用する客席の床面積の合計が300平方メートルを超える場合にあっては、当該廊下の幅を、1.3メートルに300平方メートルを超える客席の床面積60平方メートル又はその端数を増すごとに10センチメートルを加えた数値以上とすること。  (4) 廊下及び広間の類には、3段以下の段を設けないこと。 (5) 客席から廊下又は広間の類に通ずる出口の戸は、開閉する場合において、当該廊下又は広間の類の幅の2分の1以上を有効に保持できるものとすること。  本条は、興行場等の廊下及び広間の類の構造について定めているものであるが、固定式の客席のない集会場についても、いす等(備品であるもの)を配置する部分を客席とみなして適用する。(床面積の算定については第32条と同様に客席の2分の1で算定する。) 1 第1項関係  本項は、客席の両側及び後方に廊下又は広間の類を設けなければならないことを定めている。これは、客席から避難する場合において、一定の人数を滞留できるスペースが必要となることを考慮して規定しているものである。  通常、興行場等には前面にスクリーンやステージなどがあり、前方から避難することがないので「客席の両側及び後方」という規定の仕方になっている。従って、集会場などでスクリーンや舞台がない場合や位置が特定できない場合は、客席の周囲に廊下又は広間の類を設けることが望ましい。  また、ただし書の規定に該当する場合は、客席の両側及び後方の全てに廊下又は広間を設けないことができることを規定しているものである。 <例  示> ・ただし書前段(客席からずい道を設け、廊下若しくは広間の類に通じている場合で、避難上支障がないとき)の例 <例  示> ・ただし書後段(客席が避難階にあり、かつ、客席の側面に設ける出口が直接道、公園、幅員3メートル以上の敷地内通路その他避難上安全な場所に面している場合)の例 2 第4項第5号関係   ・2分の1以上有効に保持できるもの  興行場等の避難計画においては、客席から廊下・広間等の避難経路へ通じる出口の戸は基本的に外開きに計画されるので、本規定では円滑な避難が確保されるよう、これらの戸が外開き(避難経路側)に開放された状態においても、最低でも廊下・広間の類の幅の2分の1以上を有効幅員として必要としたものである。   【参考事例】  ○ 廊下の必要幅が180センチメートルのとき l の長さは90センチメートル以上確保する。 <適合の例> → 客席の戸を廊下に対して垂直に開いた場合 有効幅 l= L−w = 120cm > 180cm/2=90cm なので「適合」 <不適合の例> → 客席の戸を廊下に対して垂直に開いた場合 有効幅 l= L−w = 80cm < 180cm/2=90cm なので「不適合」 (客席の構造) 第37条 劇場、映画館、演芸場又は観覧場の客席の構造は、次に定めるところによらなければならない。 (1) いす席の場合には、いすは床に定着し、1席の占有幅は42センチメートル以上、前席いすの最後部と後席いすの最前部との間で通行に使用できる部分の間隔(前席がない場合にあっては、当該いすの前の通行に使用できる部分の間隔をいう。以下「前後間隔」という。)は35センチメートル以上、各いすの背の間隔は80センチメートル以上とすること。 (2) 立見席の場合には、いす席の後方に設けることとし、縦通路(次条第3項第1号ただし書の規定により、その最前部及び最後部が横通路又は客席の出口に直通していない縦通路を除く。)に面すること。 (3) 立見席の奥行きは、2.4メートル以下とし、立見席といす席又は升席との間に高さ75センチメートル以上の手すりを設けること。  (4) 主階より上の階の客席の前面には、堅固な手すり壁の類を設けること。 (5) 客席の段床(段の高さが50センチメートル以上の段床に限る。)には、客席の前面に高さ75センチメートル以上の手すりを設けること。  劇場、映画館、演芸場又は観覧場については、一般に固定式の客席の設置を基本としているため、本条ではその構造について規定したものである。  なお、壁面等に収納され、引き出し式に席等が設置されるいす席については、利用時には固定席と同様の形態となることから、固定席としての規定を適用するので留意されたい。(第38条についても同様。)   1 第1号関係  固定席について、一定の席間隔、通行に使用するスペースの間隔を確保することにより、最低限の避難性能を確保しようとするものである。      <「前後間隔」の寸法Wの取り方>                なお、客席の座面が離席後に自動的にはね上がる(折りたたまれる)構造のものにあっては「前後間隔」ははね上げ後の寸法で取り扱うこととして支障ない。  (参考:消防庁通知(平成3年12月16日 消防予第248号)) 2 第2号及び第3号関係  立見席が適切な位置にない場合やその構造が適切でない場合、緊急時の避難行動に支障となるおそれがあることから、構造基準等を定め一定の避難性能を確保するための規定である。 3 第4号関係 ・堅固な手すり壁の類  堅固な手すり壁の類を設置したとしても、縦通路通行時の転落防止等の安全を考慮し、その部分に高さ1.1メートル以上の防護柵を設置することが望ましい。 (客席内の通路等の構造) 第38条 興行場等の客席がいす席の場合の通路の構造は、次に定めるところによらなければならない。 (1) 客席の横列8席以下ごとに両側に縦通路を設けること。ただし、客席の横列4席以下の場合には、両側に設ける縦通路を片側のみとすることができる。 (2) 前後間隔が35センチメートルを超える場合の前号の規定の適用については、同号中「横列8席」とあるのは「20席以下の範囲内において、前後間隔につき1センチメートルを増すごとに横列8席に1席を加えた席数」と、「横列4席」とあるのは「10席以下の範囲内において、前後間隔につき2センチメートルを増すごとに横列4席に1席を加えた席数」とする。 (3) 縦通路の幅は、当該縦通路に想定される通過人員に0.6センチメートルを乗じて得た数値(客席が両側にある縦通路についてはその数値が80センチメートルに満たない場合には80センチメートルとし、客席が片側のみにある縦通路についてはその数値が60センチメートルに満たない場合には60センチメートルとする。)以上とすること。 (4) 縦列20席を超えるごとに横通路を設け、その幅は、当該横通路に想定される通過人員に0.6センチメートルを乗じて得た数値(その数値が1メートルに満たない場合には、1メートルとする。)以上とすること。 (5) 前2号に定めるもののほか、客席の床面積が1,000平方メートル以下の場合には、縦通路の幅を、当該縦通路に面する客席の横列のいす席の数(当該客席の両側に縦通路がある場合には、当該客席の横列のいす席の数に2分の1を乗じて得た数値とする。)ごとに6センチメートルを乗じて得た数値の合計(客席が両側にある縦通路についてはその合計が80センチメートルに満たない場合には80センチメートルとし、客席が片側のみにある縦通路についてはその合計が60センチメートルに満たない場合には60センチメートルとする。)以上とし、かつ、横通路の幅を1.2メートル以上とすることができる。 2 興行場等の客席が升席の場合の升席及び通路の構造は、次に定めるところによらなければならない。  (1) 升席の幅及び奥行きは、1.5メートル以下とすること。  (2) 縦通路又は横通路は、升席に面することとし、その幅は、40センチメートル以上とすること。 3 興行場等の客席内の通路(前項の通路を除く。)は、次に定めるところによらなければならない。 (1) 縦通路の最前部及び最後部を、横通路又は客席の出口に直通させること。ただし、縦通路の最前部又は最後部について横通路又は客席の出口までの長さが10メートル以下の場合で避難上支障がないときは、この限りでない。 (2) 横通路の両端(第36条第2項の規定により客席の片側に廊下又は広間の類を設ける場合には、当該廊下又は広間の類を設ける側の端をいう。以下この号において同じ。)は、客席の出口に直通させること。ただし、最前部の横通路の両端から客席の出口までの長さが10メートル以下の通路がある場合で避難上支障がないときは、この限りでない。 4 前項の通路には、段を設けてはならない。ただし、段床を縦断する通路及び客席の構造上、段を設けることがやむを得ないと認められる通路(避難上支障がない部分に限る。)については、この限りでない。 5 前項ただし書の規定により段を設ける場合には、けあげは18センチメートル以下とし、踏面は26センチメートル以上としなければならない。 6 第4項ただし書に規定する通路で、高低の差が3メートルを超えるもの(階段のこう配が5分の1以下である通路を除く。)については、高さ3メートル以内ごとにこれに通ずる横通路又は幅1メートル以上のずい道を設け、これを廊下、広間の類又は階段に通じさせなければならない。 7 第3項の通路のこう配は、10分の1(滑り止めを設けたときは、8分の1)を超えてはならない。 1 可動席の扱い  壁面等に収納され、引き出し式に席等が設置されるいす席については、利用時には固定席と同様の形態となることから、固定席としての規定を適用する。 2 第1項第1号及び第2号関係 (1)第1号の場合    客席と縦通路の関係は次のとおり     (2)第2号の場合  第1号の緩和規定。客席の前後間隔が35センチメートルを超える場合、次式に従い、客席の横列は最大20席(片側通路の場合は10席)とまで緩和することができる。    ○客席の両側に縦通路がある場合     N1=[L1-35]cm × 1席/1cm +8席  (N1≦20) [L1-35]: L1-35を超えない最大の整数    ○客席の片側に縦通路がある場合     N2=[L2-35]cm × 1席/2cm +4席  (N1≦10)        [L2-35]: L2-35を超えない最大の整数 3 第1項第3号及び第4号関係  本号は客席に設ける縦通路及び縦列20席を超えるごとに設ける横通路の幅員に関する規定である。通路幅員については、その通過人員をもとに算定する(ただし、最低幅員以上であることが必要である)が、通過人員は通路の配置、出入口の位置等を踏まえて算定する必要があるので注意が必要である。 4 第1項第5号関係 ・客席内の通路幅の算定  本号は、客席の床面積が、1,000平方メートル以下の場合に、第3号、第4号の通路幅員算定方法に替えて、通過人員からの通路幅を算定するのではなく客席の配置から簡便に算定できる手法を講じたものである。 なお、この手法により算定した場合には第3号及び第4号との複合使用は認められない。 <例  示> W1=(20/2+8)×6cm=108cm(≧80cm) W2=(20/2+17/2)×6cm=111cm(≧80cm) W3=(17/2)×6cm=51cm<60cm ゆえに60cm     W4≧120cm 5 第3項関係 本項は、客席に設ける通路と客席の出口の関係を規定したものである。  第1号については縦通路と客席の出口の関係、第2号については横通路と客席の出口の関係を規定しており、原則として通路の端が客席の出口に直通で接続していることを義務付けているが、ただし書で、直通でない場合でも10メートル以下の短い通路であれば、袋路状の通路等として取扱うものとする。 なお、本規定で言う「直通」とは通路の延長線上に出口が配置されていることである。 <例  示> (第1号ただし書の適用例) <例  示> (第2号ただし書の適用例) (客席の出口) 第39条 興行場等の客席から廊下又は広間の類に通ずる出口には、段を設けてはならない。 2 前項の出口の幅は、当該出口に通ずる客席内の通路の幅(その幅が1メートルに満たない場合には、1メートルとする。)以上とし、同項の出口の幅の合計については、第33条第1項の規定を準用する。 3 第1項の出口を2以上設ける場合には、互いに近接した位置に設けてはならない。 4 興行場等の客席でいす席が床に定着していない場合の第1項の出口の数は、区画された客席の床面積の区分に応じて、次の表に示す数以上としなければならない。  区画された客席の床面積 出口の数 30平方メートル以内のもの 1 30平方メートルを超え200平方メートル以内のもの 2 200平方メートルを超え300平方メートル以内のもの 3 300平方メートルを超え600平方メートル以内のもの 4 600平方メートルを超えるもの 5 1 第2項関係  本項は、客席から廊下又は広間の類に通じる各出口の幅員について、その出口が接続する客席内の通路幅以上(ただし、最低幅員の規定あり)確保することを義務付けるとともに、各出口の幅員の合計について、第33条第1項の規定を準用し、客席の床面積に応じた長さ以上を確保することを義務付けたものである。 2 第3項関係  本項の規定に基づき2以上の出口が「互いに近接した位置」とならないようにするためには、客席の配置構成等を勘案し、避難動線が偏らないように出口を設ける必要がある。 3 第4項関係  「区画された客席」とは、可動間仕切りにより区画された場合も「区画された客席」とする。また、区画がされていなくても避難の区画が異なる場合は区画された客席として扱う。 <例  示>  1階席と2階席については、客席内の動線が一体なので一体の区画(A)としてとらえ、この区画(A)の客席の床面積の合計に応じて出口の数を決定する。一方、3階席については、内部での動線が区画(A)から独立しているため別の区画(B)としてとらえ、同様に出口の数を決定する。 (舞台部の構造) 第41条 興行場等の舞台と舞台部の各室との隔壁は、準不燃材料で造らなければならない。 2 興行場等の舞台の上部及び下部には、楽屋、控室、道具部屋その他これらに類するものを設けてはならない。ただし、舞台の下部を防火上安全な構造とした場合には、その部分については、この限りでない。 1 第1項関係  「舞台と舞台部の各室」とは、音響機械室、照明室など舞台に附属する各室のことをいう。 2 第2項関係  本項については、防火上の安全性を確保するため、舞台の上部及び下部に楽屋、控室、道具部屋等を設けることを原則として禁止しているが、「せり」部分に附属する道具部屋など、舞台の構造上その下部に室を設けなければならない場合があること鑑み、舞台の下部を「防火上安全な構造」とした場合は、これを免除できるただし書の規定を設けている。  なお、ただし書では、舞台の床が木造であるケースが多いこと等を踏まえ、「防火上安全な構造」の種類を限定していないが、例えばスプリンクラーその他の消火設備の設置等により、一定の防火性能を確保できる場合はこれに該当するものとして扱って支障ない。 (主階が避難階以外の階にある興行場等) 第43条 建築物の避難階以外の階に主階を設ける興行場等にあっては、第32条及び第33条第2項の規定は、適用しない。 2 避難階以外の階に主階がある興行場等の用途に供する建築物の構造は、次に定めるところによらなければならない。 (1) 建築物の2階から4階までの階又は地階に興行場等の主階を設ける場合には、直通階段の1以上を避難階段又は特別避難階段とすること。 (2) 建築物の地階に主階を設ける場合には、客席の床面積の合計は、200平方メートル以内とし、かつ、客席の床面は、地盤面下6メートル以内とすること。 (3) 建築物の5階以上の階に主階を設ける場合には、避難の用に供することができる屋上広場を設けること。 (4) 前号の場合には、主階のある階及び屋上広場に通ずる2以上の直通階段を設け、これを避難階段又は特別避難階段とすること。 3 前項第3号の屋上広場については、第28条の2の規定を準用する。 4 避難階以外の階に主階がある公会堂又は集会場の用途に供する建築物は、耐火建築物、法第27条第1項の規定に適合する建築物(その主要構造部の性能が政令第110条第2号に掲げる基準に適合するものに限る。)又は1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物としなければならない。  本条は、主階が避難階以外の階にある興行場等について構造の制限を付加しているものであり、「主階」とは興行場等の受付ロビーや券売所、ホワイエ等を持つ階を示している。なお、客席が2以上の階を使用する構造となっており、かつ、その出口がそれぞれの階にある場合においては、その主たる避難出口がある階を主階として扱う。  興行場等の主階が避難階以外の階にある場合、主階に避難階がある場合と比べて避難計画上不利になることや、他の用途部分がある場合、避難動線が重複・交錯するおそれがあることから、興行場等からの避難安全性を高めるため、避難施設の強化規定等を設けたものである。 1 第1項関係  興行場等の主階が避難階にない場合、客席からの出口は他の避難出口と重複することがあるため、客席の床面積を根拠に客席からの主たる出口と前面空地の関係を規定するのは不合理な場合があるため、第32条及び第33条第2項を適用除外としているものである。 2 第3項関係  大規模店舗の屋上広場については、第28条の2のにより避難上障害となる建築設備、工作物その他これらに類するものを設けてはならないと規定しており、本項により設ける避難の用に供することができる屋上広場についてもこれを準用している。 3 第4項関係  興行場等のうち劇場、映画館又は演芸場の用途に供する特殊建築物については、その主階が1階にない場合、法第27条1項第4号の規定により耐火建築物等としなければならないと規定していることから、本項では、公会堂、集会場についても主階が避難階にない場合、同様に耐火建築物等にしなければならないものとした規定である。 第8節 自動車車庫及び自動車修理工場 (自動車用の出口) 第48条 自動車車庫(その用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートル以内のものを除く。以下この節において同じ。)又は自動車修理工場の敷地の自動車用の出口は、次の各号のいずれかに面する場所に設けてはならない。ただし、知事が自動車車庫若しくは自動車修理工場の規模若しくは周囲の状況により通行上支障がないと認めて許可した場合又は消防用自動車の車庫については、この限りでない。  (1) 幅員6メートル未満の道路 (2) 道路(幅員が6メートル未満の道路を除く。)の交差点又は曲がり角(120度を超えるものを除く。)から5メートル以内の当該道路  (3) 踏切から10メートル以内の当該道路  (4) 縦断こう配が12パーセントを超える急坂 2 前項第1号の規定は、建築物に附属する自動車車庫(その用途に供する部分の床面積の合計が同一敷地内にある建築物の延べ面積の合計の2分の1以内のものに限る。)が次の各号のいずれかに該当する場合においては、適用しない。 (1) 自動車車庫の用途に供する部分の床面積の合計が150平方メートル以下の場合で、その敷地の自動車用の出口が幅員4メートル以上の道路(法第42条第2項の規定により指定された道と同項の規定により道路の境界線とみなされる線との間に存する敷地の部分を道路として築造しないものを除く。第3号において同じ。)に面するとき。 (2) 自動車車庫の用途に供する部分の床面積の合計が300平方メートル以下の場合で、その敷地の自動車用の出口が幅員5メートル以上の道路に面するとき。 (3) 自動車車庫の用途に供する部分の床面積の合計が150平方メートルを超える場合で、その敷地の自動車用の出口が幅員4メートル以上の道路に面し、かつ、敷地のうち当該道路に接した部分について、6メートル以上の間口及び当該道路を含む6メートル以上の奥行き(当該道路の反対側の境界線(当該道路が法第42条第2項の規定により指定された道である場合には、道の反対側の境界線をいう。)からの水平距離をいう。)を有する空地を道路状に築造するとき。ただし、その面する道路が同項の規定により指定された道である場合には、自動車車庫の用途に供する部分の床面積の合計が150平方メートルを超え300平方メートル以下のものに限るものとする。 3 建築物に附属する自動車車庫が2以上ある場合で、その敷地が2以上の道路に接し、かつ、それぞれの自動車用の出口がそれぞれの道路に面するときにおける当該自動車車庫に係る前項の規定の適用については、同項各号の規定中「自動車車庫」とあるのは「2以上の自動車車庫」と、「合計」とあるのは「それぞれの自動車車庫ごとの合計」と、「自動車用の出口」とあるのは「自動車車庫ごとの自動車用の出口」とする。 4 自動車車庫又は自動車修理工場の用途に供する建築物の自動車用の出口は、道の境界線から1メートル以上後退して設けなければならない。  本条は、自動車車庫及び自動車修理工場の自動車用の出口について、交通上の安全を確保するために定められた規定であり、原則として、交差点付近や急坂に設けることを制限している。 1 第1項関係 対象となる建築物は以下のものである。 ・単独の自動車車庫又は建築物に附属する自動車車庫(その用途に供する部分の床面積の合計が50平方メートル以内を除く。)   ・自動車修理工場  これらの敷地の自動車用の出口は以下の場所に設けることができない。  (1) 幅員6メートル未満の道路・・・敷地A (2) 道路(幅員が6メートル未満の道路を除く。)の交差点又は曲がり角(120度を超えるものを除く。)から5メートル以内の当該道路・・・敷地B (3) 踏切から10メートル以内の当該道路・・・敷地C  (4) 縦断こう配が12パーセントを超える急坂・・・敷地D ※ 法第42条に規定している道路及び細則第13条に規定している道路以外の一般の交通の用に供している道等についても、本条の趣旨から道路と同等として取扱われるものとする。 ※ 「交差点から5メートル以内」とは、十字路、丁字路その他2以上の道路が交わる場合における当該2以上の道路(幅員が6メートル以上)の交わる部分のすみ切りの端部から5メートル以内である。 <例  示T> 2 第2項関係  本項は前項1号の「幅員6メートル未満の道路」に自動車用の出口を設ける場合の緩和規定である。  対象となる建築物は以下のものである。 ・建築物に附属する自動車車庫(その用途に供する部分の床面積の合計が同一敷地内にある建築物の延べ面積の合計の2分の1以内のものに限る。) この場合に以下のいずれかに該当するときには6メートル未満の道路に自動車用の出口を設けることができる。 (1) 自動車車庫の床面積が150平方メートル以下で、自動車用の出口が幅員4メートル以上の道路(法第42条第2項の規定により指定された道と同項の規定により道路の境界線とみなされる線との間に存する部分(・・・A部分)を道路として築造しないものを除く。(3)においても同様とする。)に面するとき。・・・敷地A(敷地B) (2) 自動車車庫の床面積が300平方メートル以下で、自動車用の出口が幅員5メートル以上の道路に面するとき。・・・敷地C (3) 自動車車庫の床面積が150平方メートルを超えて、自動車用の出口が幅員4メートル以上の道路に面し、かつ、当該道路に接した部分に間口6メートル、当該道路を含む奥行き6メートル(当該道路の反対側の境界線(法第42条第2項の規定により指定された道の場合には、道の反対側の境界線とする。)の水平距離)の空地を道路状に築造するとき。・・・敷地D (敷地E)  ただし、面する道路が法第42条第2項の規定により指定された道の場合には、自動車車庫の床面積が150平方メートルを超え300平方メートル以下のものに限る。  なお、同号中に「道路状」とあるのは、前面道路と一体的な利用が可能な構造、「築造するとき」とあるのは、本建築物の工事完了時までに築造しなければならない。   自動車車庫の規模と前面道路幅員との関係 道路幅員 2項道路で道路 後退部分を築造 4m以上の道路 5m以上の道路 6m以上の道路 敷地の空地整備の有無 空地なし 空地あり 空地なし 空地あり 空地なし 空地あり − 附属車庫 150u 以下 A ○ D ○ @ ○ C ○ B ○ C ○ E ○ 150u 超え 300u 以下 × D ○ × C ○ B ○ C ○ 300u 超える × × × C ○ × C ○ 単独車庫 50u 超える × × × × × × ○ ○建築できる  ×建築できない <例  示U> 3 第3項関係  建築物に附属する自動車車庫が2以上ある場合で、敷地が2以上の道路に接し、かつ、それぞれの自動車用の出口がそれぞれの道路に面するときには、第2項の規定をそれぞれの自動車車庫ごとに適用する。 <例  示V> 4 第4項関係  道路の通過交通に対し安全な出口を確保することを目的としていることから、第2項第3号により築造した空地は、本項において道の境界とみなす。  具体的な例示Uのとおりである。 (建築物の一部に設ける自動車車庫等の構造) 第50条 自動車車庫又は自動車修理工場の用途に供する建築物で、自動車を収容する部分が1階以外の階にあるもの、その部分の上に2以上の階のあるもの又はその部分のある階の直上階の床面積が100平方メートル以上のものは、耐火建築物又は1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした準耐火建築物としなければならない。ただし、階数が2以下の独立した自走式の自動車車庫で、次の各号に掲げる基準のいずれにも適合するものについては、この限りでない。 (1) 主要構造部を準耐火構造又は政令第109条の3第2号の基準に適合する構造とすること。 (2) 外周部を隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物(以下この号において「隣地境界線等」という。)から1メートル以上離すことができない場合は、外周部を隣地境界線等から50センチメートル以上離し、かつ、各階の外周部に準不燃材料で造られた高さ1.5メートル以上の防火塀を設けること。 (3) 外周部は、各階の天井面(外周部に垂れ壁等がある場合はその下端)から下方50センチメートル以上を常時直接外気に開放し、かつ、当該常時直接外気に開放している部分の面積を各階の床面積の5パーセント以上とすること。 (4) 短辺の長さを55メートル以内とすること。 (5) 外壁の開口部について防火設備を設けない構造とすること。 2 自動車車庫又は自動車修理工場の自動車を収容する部分が1階にあり、その部分の床面積の合計が100平方メートル未満で、かつ、その部分の主要構造部(直上階の床を含む。)を1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とし、その他の部分と1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の壁、床又は特定防火設備で区画した自動車車庫又は自動車修理工場の用途に供する建築物には、前項の規定は、適用しない。  本条が適用される「建築物の一部に設ける自動車車庫等」とは、以下のとおりとする。   @ 建築物全部が自動車車庫   A 建築物全部が自動車修理工場   B 建築物の一部が自動車車庫   C 建築物の一部が自動車修理工場  なお、本条でいう「1階」とは、自動車が誘導車路等を経由せずに直接自動車車庫に出入りすることができる階を指す。  つまり、敷地が道路よりも高い場合に道路から直接出入りする地下車庫があったような場合であっても、この部分が1階にあるものとみなして支障ない。    また、第1項「ただし書」により、第1号から第5号全ての基準を満たす「独立した2階建以下の自走式の自動車車庫」に限り、適用を除外するものであるが、ここで条件としている基準第1〜5号は、平成14年11月14 日付け国土交通省事務連絡に準拠しているものであり、詳細は「建築物の防火避難規定の解説2016」(編集・発行 日本建築行政会議)P161に掲載されているので、参照のこと。  なお、3層4段以上の自走式の自動車車庫は適用除外の対象としていないので、注意すること。 1 第1項関係  <例  示:(適用範囲の考え方)>  「その部分の上」とは、自動車の収容部の直接の上部を指すだけではなく、例えば自動車を収容する部分と2階部分とが離れていても同一建築物であれば本項の対象となる。  ただし、次図の例示のように自動車車庫等の自動車を収容する部分が1階部分に存し、かつ、その上部に他の用途を有する部分がなく、自動車車庫等と他の部分との界壁が耐火構造又は準耐火構造(1時間)の壁若しくは防火設備により区画されている場合にあっては、これを適用しない。   (a) : :   (b)  <「ただし書き」の基準について>  ■ 第2号関係  建築物の外周部を隣地境界線もしくは同 一敷地内の他の建築物から、必ず50センチメートル以上は離すとともに、外周部に高さ1.5メートル以上の準不燃材料で造られた防火塀の設置を義務づけるものであるが、隣地境界線等から1.0メートル以上離した場合は、必ずしも防火塀の設置は求めないものである。  また、延焼のおそれのある部分以外の部分及び傾斜路の部分には防火塀を設けなくてもよい。  なお、1階の防火塀底部には、排水のために防火上支障のない程度の隙間(概ね高さ50センチメートル以下)を設けることができる。  ■ 第3号関係  「(外周部に垂れ壁、はりその他これらに類するものがある場合にあってはそれらの下端)」には、このほか防火塀やその取付材及びけたなどの横架材が含まれ、それぞれの下端から50センチメートル以上を常時開放させる構造とすること。  また、各階の床面積の5パーセント以上の算定にあたっては、あくまでも常時開放されている部分の見付け面積で算出するものとする。   <例  示>        A:50cm以上常時開放させる部分  B:常時開放部分面積算出高さ   ■ その他(ただし書きを適用する際の留意事項)  本条は、耐火建築物等の基準に係る規定であり、「政令第112条第1項(防火区画)」に関する規定は盛り込まれていないが、建築物の規模によっては必然的に求められることになる。  したがって、防火区画に係る規定については、平成14年5月27日付け国土交通省事務連絡を準用することとする。  <国土交通省事務連絡の基準の運用>  神奈川県建築基準条例第50条第1項第3号及び同第4号の基準に適合する開放性を確保した自動車車庫のうち、駐車スペースが、車路(幅3.5メートル以上)、外周部又は準不燃材料で造られた遮へい板(幅4メートル以上、高さ2メートル以上)により400平方メートル以内ごと(車路等の間隔は40メートル以内)に区画され、かつ階高が2.8メートル以下の場合には外周部に50センチメートル以上の準不燃材料で造られたスパンドレル、ひさし、垂れ壁等が設けられたものについては、政令第112条第1項第1号に該当するものとみなすとしている。 2 第2項関係   これは、第1項の緩和規定である。  当該自動車の収容部分が1階にあり、かつ100平方メートル未満の場合で、その他の部分と1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の壁、床、天井(上階の床)又は特定防火設備で区画すれば第1項を適用しないこととしたものである。 : : 第3章の2 昇降機  本章については、昇降機の構造を定めたものである。 (エレベーターの機械室) 第52条の2 エレベーターの機械室の構造は、次の各号に定めるところによらなければならない。 (1) 照明設備を設けること。 (2) 非常用エレベーターの機械室とその他のエレベーターの機械室とを耐火構造の壁で区画すること。  本条については、エレベーターの機械室の構造について、規定したものである。  ここでいうエレベーターにはいわゆるホームエレベーターも含まれるが、近年開発された機械室なしエレベーター、段差解消機及びいす式階段昇降機については、機械室がないので本規定の対象とはならない。  ただし、本規定の対象とならないエレベーターであっても巻上機、制御盤等がある部分については、保守点検が必要であることには変わりないので、照明設備の設置等について適宜検討することが望ましい。 (エレベーターのピット) 第52条の3 エレベーターのピットには、保守及び点検に必要な照明設備又は照明用コンセント設備を設け、かつ、その深さが1.5mを超える場合は、タラップその他これに類するものを設けなければならない。  本条については、エレベーターピットの保守点検のための照明設備・昇降用タラップ等の設置を義務付けたものである。  (1)タラップ  タラップについては、平成21年の条例改正により深さが1.5m以下のピットの場合、設置が免除されるようになったが、保守・点検計画上必要な場合は、設置されることが望ましいことには変わりがないので、留意されたい。  また、タラップその他これに類するものとは、ピットに設置された折りたたみ式梯子等の同等器具(運行上、耐震対策上支障がないものに限る)を示している。    (2)照明用コンセント  ピットの照明については、照明器具も含めて照明設備が設置されていることが基本であるが、照明用コンセント設備が設置されていれば、簡易な照明器具を持参することで十分に保守点検が可能であることから、代替規定を設けたものである。 (小荷物専用昇降機の機械室) 第52条の4 小荷物専用昇降機の機械室には、専用の点検口及び照明設備を設けなければならない。  本条については、小荷物専用昇降機の保守・点検が円滑に行なわれるよう、機械室への点検口及び照明設備の設置について規定したものである。 なお、小荷物専用昇降機の中には機械室のないものもあり、これらには本規定は適用されないが、機械室に相当する巻上機、制御盤等がある部分については、保守点検が必要であることには変わりがないので、適宜照明設備等の設置について検討することが望ましい。 神奈川県建築基準条例の解説                                          神奈川県県土整備局建築住宅部建築指導課 I-12