(33ページ) 11 性的マイノリティ  性的マイノリティ(性的少数者)とは、性的指向が同性(あるいは両性)に向いている、またはいずれの性別にも性的指向が向かない、からだの性と性自認が異なるなど、様々な性のあり方において少数の立場(マイノリティ)とされる方々のことを言います。  令和2年(2020年)に施行された改正労働施策総合推進法では、性的指向・性自認に関して侮辱的な言動を行うことや、本人の了解を得ずに暴露すること(アウティング)がパワーハラスメントにあたることが示されるなど、近年、性の多様性に関する理解は促進されつつありますが、依然として周囲の無理解や偏見により、性的マイノリティの方々は、様々な悩みや苦しみを抱えることがあります。  様々な性のあり方について理解を深めることで、職場や学校をはじめ、あらゆる場面において性の多様性が尊重され、誰もが自分らしく生きられる社会の実現をめざします。 (1)主な取組みの方向 【人権尊重の社会づくりに向けた環境整備】 ア 性の多様性を尊重する社会づくりに向けた連携体制の構築  性の多様性を尊重する社会づくりに向けて、市町村との連絡会議を開催し、パートナーシップ制度の導入状況など、性的マイノリティ関連施策について情報共有を行うとともに、関係団体等と連携し、施策のさらなる推進に必要な支援を行います。 【教育・啓発等の推進】 イ 性の多様性に関する啓発の推進  性的マイノリティであることを理由とした不当な差別的取扱いや差別的言動、アウティング等を未然に防ぐため、国・市町村・関係団体と連携し、性の多様性について正しい理解を深めるための啓発活動を推進します。 ウ 企業や支援機関等を対象とした研修の推進  職場や学校等において性的マイノリティの方々が適切な配慮を受けられるよう、企業の人事担当者や教職員、子ども・高齢者・障がい者などの支援機関の職員等を対象とした研修を実施します。 エ 性の多様性に関する教育の推進  児童・生徒の発達の段階に応じて、性の多様性について正しい理解を深めるための教育を推進します。 【当事者支援等の推進】 オ 相談・支援体制の充実  性的マイノリティの方が抱える悩みの解消に向けて、本人だけでなく周囲の方や支援者も利用可能な相談窓口を設けるなど、相談・支援体制を充実します。 (34ページ) (2)主な関係法令 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律 【コラム】セクシュアリティ(性)の多様性について セクシュアリティ(性)は多種多様な要素のグラデーションであるといわれていますが、おもな構成要素として、次の4つが挙げられます。 生物学的な性=「からだの性」  性染色体、内・外性器の形状など、客観的な事実を基に識別した性別(※) 性的指向  恋愛感情や性的欲求が主にどの性別に向いているかということ 性自認=「こころの性」(性同一性、性のアイデンティティ)  「自分は女/男である」、「自分はそのどちらにもあてはまらない」など、自分が自分の性をどのように認識しているかということ 表現する性  言葉遣いやしぐさ、服装など、個人が表現する性のこと  こうした多様な性のあり方のなかで、少数の立場にある方を示す言葉として、「性的指向」に関して少数であるレズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、「性自認」に関して少数であるトランスジェンダー(「からだの性」に違和感を持つ方)の頭文字をとって「LGBT」と表現することがありますが、この類型にあてはまらない方も多くいます。  そのため、性別にかかわらず恋愛・性愛の感情を抱かない方(アセクシュアル)、性自認を男性・女性のいずれかにあてはめない方(エックスジェンダー)や自分自身のセクシュアリティが分からない、決めない方(クエスチョニング)などを含め、「LGBTQ+」といった表現が用いられることもあります。  また、「性的指向(Sexual Orientation)」と「性自認(Gender Identity)」の頭文字をとった「SOGI」(ソジ・ソギ)という言葉も、性的マイノリティの方に限らず、すべての人の性の多様性を示す表現としてよく用いられています。  多彩なセクシュアリティの存在を知り、性のあり方が一人ひとり異なるものであると意識することは、誰もが自分らしく生きられる社会づくりのために、とても重要です。 ※ いわゆる「性分化疾患」(DSDs)は、性に関する体の発達等が典型的なものとは異なる女性・男性の体の状態を指す言葉であり、性的指向や性自認の問題とは異なるものです。