(15ページ) 2 女 性  夫、パートナー等からの暴力や性犯罪、ストーカー行為、セクシュアル・ハラスメントなど女性に対する暴力が社会問題となっており、被害は複雑化、多様化しています。また、就業の場における待遇の面での格差等の問題も存在しています。  職場や家庭、地域など、あらゆる場で男女が互いに人権を尊重し、一人ひとりが生き生きと個性や能力を発揮できる男女共同参画社会の実現をめざします。 (1)主な取組みの方向 【人権尊重の社会づくりに向けた環境整備】 ア 配偶者等からの暴力総合対策の推進  配偶者等からの暴力であるDV(ドメスティック・バイオレンス)の未然防止や被害者への支援を充実させるため、関係機関と連携し、啓発活動、相談・一時保護体制の整備及び自立支援の促進などを総合的に推進します。 イ あらゆる分野における男女共同参画の促進  男女共同参画を一層進めるため、市町村、NPO、民間企業等と連携・協働しながら、あらゆる分野における女性の参画を促進するとともに、女性の活躍を推進する社会的気運を醸成します。 また、男女ともに仕事と家庭の責任を分かち合える社会をめざして、家事・育児、地域活動への男性の参画を促進します。 ウ 職業生活における活躍支援  働きたい女性が「仕事か家庭か」といった二者択一を迫られることなく働き続け、個性と能力を十分に発揮することができるよう、育児・介護の基盤整備や、女性が働きやすい就業環境の整備を図ります。 【教育・啓発等の推進】 エ 女性に対するあらゆる暴力の根絶に向けた教育・啓発等の推進  「かながわ男女共同参画センター(かなテラス)」を拠点として、夫・パートナー等からの暴力は犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であることの周知・啓発を行います。外国籍女性の暴力被害についても、同様に取組みを促進します。近年では、いわゆるデートDV(交際相手からの暴力)の問題も顕在化しているため、若い世代への意識啓発・教育を行います。  また、性犯罪・性暴力、ストーカー行為にかかる相談やセクシュアル・ハラスメントの防止に向けた啓発などの取組みを一層推進します。 (16ページ) オ 男女共同参画社会の実現に向けた意識啓発  幅広い年齢層に対し、根強い固定的性別役割分担意識の解消に向けた意識改革を行い、男女共同参画についての理解を深めるため、市町村やNPO等と連携しながら、各種啓発講座の実施、啓発資料の配布等を行います。  また、男女共同参画の推進に資する教職員向けの研修や、学校におけるセクシュアル・ハラスメントの根絶等、学校現場における男女共同参画の基盤整備を促進します。 【当事者支援等の推進】 カ 配偶者等からの暴力(DV)被害者に対する相談・支援体制の充実  夫、パートナー等からの暴力の被害に悩んでいる方の相談を受け、一時保護、自立支援などの総合的な支援を行う「神奈川県配偶者暴力相談支援センター」を中心に、相談・支援体制の充実を図ります。 キ 性犯罪・性暴力の被害者に対する相談・支援体制の充実  警察への届出を躊躇することの多い性犯罪・性暴力の被害者が、いつでも安心して相談し、必要な支援がワンストップで受けられるかながわ性犯罪・性暴力被害者ワンストップ支援センター「かならいん」を運営し、相談・支援体制の充実を図ります。 ク 予期しない妊娠に対する相談・支援体制の充実  予期しない妊娠に悩んでいる方が気軽に相談できる「妊娠SOSかながわ」を運営し、相談・支援体制の充実を図ります。 ケ 女性の就業支援の推進  子どもを産み育てながら働き続けたい女性をはじめ、就職・再就職を希望する女性に対し、仕事と家庭の両立支援やキャリアカウンセリング、職業訓練等を実施するなど、様々なライフステージに応じた女性の就業を支援します。 (2)主な関係法令 売春防止法 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律 ストーカー行為等の規制等に関する法律 労働基準法 男女共同参画社会基本法 雇用の分野における男女の均等の機会及び待遇の確保等に関する法律 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 次世代育成支援対策推進法 県男女共同参画推進条例 県犯罪被害者等支援条例 (3)県の主な関係審議会等 県男女共同参画審議会 県DV対策推進会議 (17ページ) 【コラム】コロナ禍における女性の人権課題について  新型コロナウイルス感染症の拡大は、人々の命や暮らしに大きな影響を及ぼしていますが、女性への影響は、特に深刻です。  令和3年(2021年)2月に実施された調査では、全国で100万人以上の女性の非正規雇用労働者が「実質的失業者」となるなど、女性がコロナ禍において大きな経済的影響を受けていることが明らかになりました。(※1)  また、DVの相談件数の増加や女性の自殺者数の増加など、コロナ禍において、経済的影響のみならず、様々な負の影響が女性に生じていることも浮き彫りになっています。  有事の際は、社会的に脆弱な立場にある人に、より大きなしわ寄せが及ぶと言われていますが、コロナ禍では、社会構造として存在していたジェンダー格差が顕在化し、女性により深刻な影響がもたらされることとなりました。(※2)  女性の暮らしや命を守るためには、平時において格差を是正することが重要であり、今後、より一層強力に男女共同参画を推進することが必要です。 ※1 野村総合研究所「パート・アルバイト就業者の実態に関する調査(2021年2月)」による推計。なお、同調査では男性の「実質的失業者」は約43万人とされている。 ※2 世界経済フォーラムの発表によれば、日本の「ジェンダーギャップ指数」は156か国中120位。(令和3年(2021年)3月時点)この指数は、「経済」「政治」「教育」「健康」の4つの分野のデータから作成されるが、日本は、特に「経済」及び「政治」における順位が低くなっている。  経済分野では、管理職の女性の割合が低いこと、パートタイムの職に就いている女性の割合が多く、女性の平均所得は男性より低くなっていること、政治分野では、女性の参加割合が低く、国会議員の女性割合や大臣の女性割合が低いことなどが指摘されている。