(1ページ) T 人権施策の取組みの経緯  人権問題は、国を超えた人類共通の重要課題です。  わが国においては、昭和22年(1947年)に、国民主権、基本的人権の尊重及び平和主義を基本原理とする日本国憲法が施行されて以来、人権に関する諸制度の整備など、多くの取組みが進められています。  世界を見ると、昭和23年(1948年)に世界人権宣言が採択されて以来、国連を中心に人権に関する様々な宣言や条約が採択され、すべての国が達成すべき共通の基準として、「自由平等」、「生命、自由、身体の安全」など人権保障の基準が積み重ねられています。  平成6年(1994年)12月、国連総会において、人権教育を通じて人権という普遍的文化を世界中に築くことを目的として、翌平成7年(1995年)から平成16年(2004年)までの10年間を「人権教育のための国連10年」とする決議がなされ、わが国においても、平成9年(1997年)7月に「『人権教育のための国連10年』に関する国内行動計画」を策定し、これに基づく取組みが進められました。  神奈川県では、こうした時代の流れをいち早く捉え、平成6年(1994年)3月に「かながわ人権政策推進懇話会」からの提言を踏まえ、県としても人権問題に体系的に取り組む必要があるとの認識から、人権を尊重した行政を進めていく上での道しるべとして、全国に先駆けて「神奈川県人権施策推進指針」を策定しました。  さらに、平成12年(2000年)12月に「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が施行され、地方公共団体にも地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、実施する責務が規定されたほか、男女雇用機会均等法の改正(平成11年(1999年)4月施行)や児童虐待防止法(平成12年(2000年)11月施行)など多くの人権に関する法整備が行われたことを踏まえ、平成15年(2003年)6月、「かながわ人権施策推進指針」を策定しました。  その後、障害者基本法の改正(平成23年(2011年)8月施行)をはじめ、人権に関する法整備が進む一方で、平成23年(2011年)3月に起きた東日本大震災を契機に災害時における人権課題などが改めて認識されるようになったことを踏まえ、平成25年(2013年)3月に同指針を改定しました。  改定から約10年が経過した現在、人権を取り巻く社会情勢はさらに大きく変化しています。 平成28年(2016年)には、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律(ヘイトスピーチ解消法)」及び「部落差別の解消の推進に関する法律(部落差別解消法)」が施行されました。差別の解消を目的として制定されたこれらの法律は、「人権三法」、「差別解消三法」とも呼ばれています。  しかし、障害者差別解消法が施行された直後の平成28年(2016年)7月26日に、障害者支援施設である県立「津久井やまゆり園」において、障がい者の命と人権を踏みにじる大変痛ましい事件が発生しました。  このような事件が二度と繰り返されないよう、平成28年(2016年)10月14日、県と県議会が共同して「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定し、その理念の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組んでいくこととしました。 (2ページ)  今日、人権課題は、多様化・複雑化の一途をたどっています。  性的マイノリティの方々の人権課題や、特定の民族等に関する不当な差別的言動(ヘイトスピーチ)の問題などの新たな人権課題が顕在化するとともに、所得格差の拡大による貧困問題などの社会的要因を背景とした人権課題の深刻化や、インターネットによる人権侵害のような、様々な分野の人権課題と連動して生じる複合的な人権課題も多く生じており、喫緊の対応が必要な状況となっています。  さらに、令和2年(2020年)から急速に感染拡大した「新型コロナウイルス感染症」も、あらゆる人権課題に深刻な影響を与えています。感染者やその家族、医療従事者等への差別問題のほか、児童虐待やDV(ドメスティック・バイオレンス)の増加、非正規雇用労働者等の雇い止めなど、社会的に弱い立場にある人ほど、より大きな打撃を受けているという状況が浮き彫りとなりました。こうしたコロナ禍における人権課題の深刻化により、平時における人権課題への取組みの重要性が改めて認識されました。  このような人権を取り巻く社会情勢の大きな変化を踏まえ、「すべての人に人権が保障される地域社会」の実現をめざすため、かながわ人権施策推進指針を改定します。 ともに生きる社会かながわ憲章 〜この悲しみを力に、ともに生きる社会を実現します〜  平成28年7月26日、障害者支援施設である県立「津久井やまゆり園」において19人が死亡し、27人が負傷するという、大変痛ましい事件が発生しました。  この事件は、障がい者に対する偏見や差別的思考から引き起こされたと伝えられ、障がい者やそのご家族のみならず、多くの方々に、言いようもない衝撃と不安を与えました。 私たちは、これまでも「ともに生きる社会かながわ」の実現をめざしてきました。  そうした中でこのような事件が発生したことは、大きな悲しみであり、強い怒りを感じています。  このような事件が二度と繰り返されないよう、私たちはこの悲しみを力に、断固とした決意をもって、ともに生きる社会の実現をめざし、ここに「ともに生きる社会かながわ憲章」を定めます。 一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします 一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します 一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します 一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます 平成28年10月14日 神奈川県