資料7 厚木精華園のモニタリング結果の報告について  県は、県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)における利用者支援に対する県の関与について、その実態を自ら検証し、「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の意見を踏まえ、県立施設に対して行う運営指導やモニタリングについて改善を図っている。  令和5年8月に厚木精華園のモニタリングを実施したところであり、この取組が持続的かつ適切に行われているか、外部評価を受けるため、神奈川県障害者施策審議会に報告する。  また、令和5年4月に同園で発生した虐待事案について、その後の状況を報告する。 〇 定期モニタリングの充実強化 【概要】 ・ 県が県立施設に対して実施する定期モニタリングについて、令和2年度は利用者の居室や支援の場面に入り支援内容を直接確認する等の改善を図った。 ・ 令和3年度は、県立直営施設も含め、各県立施設による自己点検を実施した上で、集中的なモニタリングを実施する等、更なる充実強化を行う。 ・ また、モニタリングは、障害サービス課職員に他の県立施設の職員が加わった「当事者目線の支援サポートチーム」により実施し、現場職員の当事者目線の支援への理解や実践につなげ、県立施設全体の底上げを図る。 ・ さらに、令和5年度は、県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム(以下「改革PT」という。)等からの指摘を踏まえ、自己点検等の見直しを図った。 【実施スケジュール】 実施施設 実施時期 障害者施策審議会への報告 中井やまゆり園  令和3年7月   令和3年9月(報告済み) 津久井やまゆり園(かながわ共同会) 令和4年1月  令和4年9月(報告済み) 芹が谷やまゆり園(かながわ共同会) 令和4年8月  令和4年11月(報告済み) 愛名やまゆり園(かながわ共同会)  令和4年10月  令和5年3月(報告済み) 三浦しらとり園(清和会)      令和4年12月  令和5年3月(報告済み) 厚木精華園(かながわ共同会)    令和5年8月  今回の同審議会で報告 厚木精華園のモニタリング結果  当事者目線の支援サポートチームによるモニタリング実施要領に基づき、厚木精華園(以下「園」という。)のモニタリングを次のとおり実施した。 1 実施日   8月17日(木)、8月21日(月)、8月23日(水) 2 参加者(当事者目線の支援サポートチーム)  (1) 障害サービス課運営指導グループ  2名  (2) 当事者目線の支援推進マネージャー 10名  <参加施設>  さがみ緑風園、中井やまゆり園、津久井やまゆり園、芹が谷やまゆり園、三浦しらとり園、七沢学園 3 実施内容 (1)自己点検  これまでの外部からの指摘を踏まえ、今年度より施設支援自己評価表を見直し、当事者目線の障がい福祉の実践に向けた園運営について確認する園全体の点検項目と、生活環境や利用者支援を確認する課ごとの点検項目により、園が自己点検を実施した。  また、昨年度に引き続き、国の手引きに定める障害者虐待防止チェックリストにより、園が自己点検を実施した。   ア 施設支援自己評価表による自己点検   イ 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストによる自己点検 ※ 障害者虐待防止の手引き(社会福祉法人全国社会福祉協議会「障害者 の虐待防止に関する検討委員会」平成23年3月版)を使用 (2)現地調査  現地調査に当たっては、まず、他の県立施設の当事者目線の支援推進マネージャーとともに、県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プログラムの提言等を共有した。  その上で、現地調査は、自己点検の結果を踏まえ、施設内ラウンドを中心に生活環境や利用者支援の状況を確認し、利用者へのヒアリングや幹部職員へのヒアリングを実施した。  また、他の県立施設の当事者目線の支援推進マネージャーとともに、食事支援をテーマとして、誤嚥性肺炎を予防する取組等、園の取組の報告及び県立施設との意見交換を行った。   ア 当事者目線の支援サポートチームによるモニタリング(2日間)   (ア)施設内ラウンド  ・食事支援の場面を中心に寮内での利用者支援の状況の調査   (イ)園からの取組の報告等 ・食事支援をテーマとした誤嚥性肺炎の予防等の園からの取組報告 ・他の県立施設の取組の報告及び意見交換   イ 障害サービス課運営指導グループによるモニタリング(1日間)   (ア)施設内ラウンド及び職員ヒアリング  ・自己点検の内容を踏まえ、寮内の居室、浴室、トイレ等の生活環境、日中活動等の利用者支援の状況の調査   (イ)利用者ヒアリング     ・園での暮らしについて、利用者2名にヒアリングを実施   (ウ)幹部職員へのヒアリング ・通過型施設としての運営、園のマネジメント、当事者目線の施設運営について、園長、支援部長にヒアリングを実施 4 実施結果の総括  高齢の知的障がい者支援のモデル施設として、食事を最後まで口から食べたいという利用者の想いを大切にし、利用者の嚥下等の食事リスクや健康状態を意識しながら、日々の食事支援等の支援に当たっていることを確認した。  一方、利用者の暮らしといった観点では、従来型の大規模施設という建物の構造上の問題だけでなく、生活環境に課題が明らかとなったことから、「人生を支援する場」であることを認識し、生活環境を整えていく必要がある。  また、日中活動を外部事業所に通う等、活動の場を広げる取組を進めているが、多くの利用者の生活は寮内で一日が完結してしまっており、意思決定支援も本格化したばかりであることから、利用者の暮らしを作る、人生を支援するといった点では、まだまだ改善の余地が大きい。  高齢であっても、日々の暮らしや活動が充実していくことで、一人ひとりが地域でその人らしく望む暮らしが実現できるよう、当事者目線の障がい福祉の実践を進めていく必要がある。 (1)生活環境の整備 〇 施設は全体としてコンクリートの無機質な壁ではあるものの、1人部屋の居室は、利用者の私物が多く、本人の写真など、装飾が施されていた。 〇 2人部屋は、利用者のプライバシーの配慮のため、カーテンで区切り、極力利用者の個別空間を作ることに努めていたが、居室面積が狭く、車椅子の方向転換や、プライバシーの確保が難しいといった構造上の問題があった。 〇 居住棟は、廊下や居室等、全体的に床面や換気口に水滴が溜まり、タオルを敷く等、湿気がひどい状況だった。 〇 居室は戸棚の扉が外れたままになっていたり、立て付けが悪いままになっている箇所が散見された。 〇 トイレは、出入口、個室ともに、カーテンで隠されており、一部はプライバシーの配慮に欠けている状態だった。また、トイレットペーパー、ペーパーホルダーが取り外され、自由に使用できない状態だった。 〇 寮の出入口は、自動ドアにより日中は常時開錠していた。 【課題】 ・ 2人部屋の居室になると装飾が少なく、殺風景な居室も散見されたため、利用者の居心地の良い環境づくりに取り組んでいく必要がある。 ・ 居室の修繕個所や、とりわけトイレの空間は、一般的な地域生活とかけ離れたものとなっているため、早急に園内を点検し、修繕を迅速に進めていく必要がある。 ・ 寮の外から、施設外に出る扉は、外に出ると防犯上ロックがかかり、自由に出入りができない状態になっており、引き続き、単に開錠を実現するだけでなく、利用者が自由に移動できる環境を作っていく必要がある。 ・ 居住棟の湿気について、後日県で現地調査を行ったところ、経費削減を理由に24時間空調を稼働させていなかったことが一因であることを確認し、対策に当たって設備の向上よりも、まず施設の運用を変える必要がある。 ・ 施設は利用者にとって、「人生を支援する場」であることを認識し、生活環境を整えていく必要があり、職員の意識改革も図っていく必要がある。 (2)利用者支援や地域生活移行に向けた取組 〇 日中活動は、コロナ対策により活動室は通所と入所でエリアを区切られ、日に応じた課ごとの活動となっており、それ以外の活動は課内の食堂で行われていた。 〇 高齢の利用者が多く、家族等に生い立ちや育った環境等を詳細に聞き取ることができない方も多く、利用者の理解に課題があった。 〇 意思決定支援プロジェクトを立ち上げ、利用者のヒアリングシートの作成等、意思決定支援の取組が具体に開始された。 〇 全ての課で複数名の利用者が本人の希望により、外部事業所への通所や見学体験が進められていた。また、グループホームの体験や、グループホームの利用者との交流、地域資源を使った地域での活動も進めていた。 〇 ヒアリングでは、利用者から外出したいという、地域での活動を希望する声があった。  【課題】 ・ 多くの入所利用者は、日中活動が寮内で行われ、寮内で1日の生活が寮内で完結してしまっており、日常的に外に出て、地域の中で活動できる環境を作っていく必要がある。 ・ 園内の意思決定支援は本格化したばかりであり、全ての利用者が自分の暮らしを自ら決められるよう、対象の利用者を拡大していく等、園全体で展開させていく必要がある。 ・ また、言葉による意思疎通が可能な利用者も多く、個別支援計画の作成過程やモニタリング会議などの場で、これからどのように暮らしたいか、一人ひとりの望みや願いを丁寧に汲み取り、日中活動の充実を図る取組や外部事業所の活用など、利用者の可能性を広げる取組が必要である。 (3)食事支援に関する取組 〇 食事支援時は、職員が全ての利用者を見渡せる配置となるよう意識され、利用者ごとに時間をずらすなどして安全に食べられるよう工夫していた。 〇 食事支援に当たって、人手が足りない場面での幹部職員による応援等、体制整備も含め配慮されていた。 〇 各課それぞれで食事マニュアルが作成されており、利用者一人ひとりの食事に関する留意点が細かく記載されており、利用者の状況や食形態の変化に応じて即時にマニュアルを見直すなど、各課で柔軟に更新されていた。 〇 座席や机の高さは、理学療法士の助言を受けながら、個々の利用者ごとに調整されており、できるだけ自身で食べられるように工夫がされていた。 〇 また、必要に応じて外部の医療機関を受診し、嚥下造影検査を行う取組を実施しており、嚥下等のリスクを意識して、支援に反映されていた。 〇 食事を最後まで口から食べたいという利用者の想いを大切にし、口腔ケアや利用者の嚥下の状況等、丁寧に確認している状況が確認できた。  【課題】 ・ 時間をずらして支援していることにより、食事を自身の席で待っている 利用者が散見されたため、自席でお待ちになる以外の工夫が必要である。 ・ 食事介助が必要な方が多く、自身で摂食できる利用者に対しては、見守りの目が離れてしまう場面もみられたため、自立して食べられる方の嚥下リスクも意識し、安全に食事できる体制を引き続き検討していく必要である。 ・ 多職種が連携して食事場面の嚥下状況を確認、評価する仕組みを見ると、そういった評価に関しては不足しているため、今後積極的に日常の食事場面を見て、摂食の評価を行う取組を実施していく必要がある。 5 実施結果の詳細 (1)園全体の自己点検結果及び幹部ヒアリング   ア 自己点検結果 〇 施設支援自己評価表(園全体の自己点検)では、「通過型施設としての運営」、「園のマネジメント」、「利用者主体の施設運営」について、園の考えを確認し、幹部ヒアリングで詳細を確認した。 〇 施設・地域における障害者虐待防止チェックリストでは、「規定などの整備」、「職員への研修」、「外部からのチェック」、「体制の整備」の項目を点検し、概ね実施できている評価であったが、個別支援計画作成会議への利用者本人の参加、福祉サービス第三者評価事業の定期受審等が実施できていないという結果であった。   イ 幹部ヒアリング   (通過型施設としての運営) 〇 中高齢の知的障がい者を対象とした県立施設として、グループホーム等への地域生活移行とともに、ライフステージに応じて、高齢で医療的処置等が必要になった場合は、療養型病院や介護施設等への移行等、循環型としての役割があると捉えている。 〇 また、地域生活移行は居住の場を地域へ移すということだけでなく、日中活動を外部の事業所に通う等、地域のサービスを使いながら、日中活動の場を広げ、地域との交流、地域のつながりを大切にしている。 〇 施設内の活動として、在宅介護マッサージや福祉ネイル等の地域のサービスも積極的に取り入れ、地域の資源も広がりができている。 (園のマネジメント) 〇 今年度の重点目標として、@意思決定支援の推進、A日中活動の充実(交流機会の確保)、B施設入所・短期入所機能の充実、Cリスクマネジメントの再強化、D厚木地区相談支援事業所の充実強化、E高齢化・重度化に対応したグルーブホームの新設準備の6項目を掲げている。 〇 こうした園の目標や方針等は、隔月で実施する全体職員会議で園長から直接説明するとともに、朝の連絡会、毎月の運営会議、さらに記録システムを活用しながら、全ての職員に伝達している。 〇 また、風通しのよい職場づくりに向けて、幹部職員が日々、各課をラウンドし、体調の優れない利用者の様子を確認したり、職員に声掛けしたりすることで、顔の見える関係づくりに取り組んでいる。 〇 園内健診や外部通院等、忙しい時間帯に幹部職員も率先して現場に関わっていくことで、現場からも応援の要請が挙がっている。 〇 権利擁護に向けて、各課で人権目標を定めていたが、今年度は全課共通テーマで議論したり、法人が実施する人権自己チェックの結果が低い項目を人権目標とする等、形骸化しないよう取り組んでいる。 〇 また、虐待防止研修は、雇用形態や職種を問わず、全ての職員を対象に、他セクションとの意見交換を大事にしながら実施している。 〇 リスクマネジメント再強化としては、見守りカメラの活用やひやりはっとの再検証、転倒危険個所の各課点検等の見直しを進めている。 (当事者目線の施設運営) 〇 法人として意思決定支援の推進と実践のため、今年度、意思決定支援推進担当を園に配置し、各寮の小グループ単位で意思決定支援の研修を実施するとともに、日中活動の際の利用者の反応を踏まえ、活動内容の提案等、現場に近い立場で意思決定支援を根付かせている。 〇 また、今年度、意思決定支援プロジェクトを立ち上げ、利用者のヒアリングシートの作成等、意思決定支援の取組を進めている。加えて誰がどこの地域に出かけ、その時の利用者の様子等を寮横断で意見交換していくことで、職員の地域に目を向ける意識は高まってきており、法人、園全体での意思決定支援の取組が始まったところである。 〇 さらに、利用者の意見を園運営に反映させるため、利用者自治会を課ごとに毎月実施するとともに、誕生会や、葬儀業者を呼んだお別れ会を実施する等、利用者の仲間意識を大切にしている。 〇 こうした取組により、全ての課で複数の利用者が本人の希望により、外部事業所への通所や見学体験が進められている。また、グループホームの体験や、グループホームの利用者との交流等も進めている。 (2)課ごとの自己点検結果、施設内ラウンド及び職員ヒアリングの結果   ア 自己点検結果 〇 「利用者の暮らし(生活環境の改善)」、「利用者の理解」、「利用者との関わり」、「日常生活」、「社会活動(日中活動)」の項目を点検した。課(全3課)ごとに自己評価を実施し、平均33/54点であった。 〇 全体の傾向として、高齢の利用者が多く、親族等から生育歴の聞き取りが難しく、人となりを語れるようにまで至っていない、身体状況や介護度等から、入りたい時に入浴できない等、「利用者の理解」や「日常生活」は低い点数に留まっていた。 〇 課ごとでは、生活1課32点、生活2課34点、生活3課35点だった。   イ 施設内ラウンド及び職員ヒアリングの結果   (ア)生活環境 〇 居室は、コンクリートの無機質な壁で、介護ベッドを配置することで壁に付けられていたコルクボード等を外さざるを得ず、とりわけ2人部屋の居室は室内の装飾が少なく、殺風景だった。 〇 1人部屋の居室は、利用者の私物が多く、本人の写真など、装飾が施されていた。 〇 2人部屋は、カーテンで区切り、極力利用者の個別空間を作ることに努めていたが、居室面積が狭く、車椅子の方向転換や、プライバシーの確保が難しいといった構造上の問題があった。 〇 居室の戸棚の扉が外れたままになっていたり、立て付けが悪いままになっていた。 〇 生活1課及び2課の居室内の湿度計は最も高い所で、99%になっており、居室や廊下の至る所に扇風機が置かれ、空調を付けても、床面や換気口に水滴が溜まり、タオルを敷く等、湿気がひどい状況だった。 〇 居室内のベッドの下や扉の上に埃が溜まっている等、清掃が行き届いていない居室も多数あった。 〇 トイレは全ての課で個室の扉が外され、カーテンで隠されていた。また、出入口は扉を開け、カーテンで外から見えないようにしていたが、カーテンを廊下の手すりに引っかけ、トイレ内が常時見えている寮もあり、プライバシーの配慮に欠けている状態だった。 〇 2つの課では、ペーパータオルや消毒液は自由に使える状態だったが、過去にトイレを詰まらせてしまった等の理由から、トイレットペーパーはなく、ペーパーホルダーが取り外されていた。一部の課では簡易的なペーパーホルダーが設置されていた。 〇 ラウンド時、トイレットペーパーのない個室に入り、利用者が排便をした後、トイレから出てきてしまう場面があった。 〇 寮の出入口は、自動ドアにより日中は常時開錠していたが、寮を出たフロアから施設外に出る扉は外に出ると自動ロックがかかり、外から中に入れない状態となっていた。   (イ)利用者支援 〇 利用者の理解について、障がい特性や人柄は理解していても、高齢の利用者が多く、家族等から生い立ちや育った環境等を詳細に聞き取ることができず、全体像を理解して語れる状況には至っていない等、利用者の理解は低い自己評価となっていた。 〇 日中活動は、コロナ対策により活動室は通所と入所でエリアを区切られ、日に応じた課ごとの活動となっており、それ以外の活動は課内の食堂で行われていた。 〇 活動はリサイクル作業としてのアルミ剥がしが主で、活動の幅が少ない印象だったが、手先が器用な利用者は切り絵をしたり、他園の取組を参考に古紙のシュレッダー作業等を取り入れていた。 〇 また、利用者の希望によりドライブや買い物外出、また近隣に新しくできた地域共生文化拠点に複数の利用者が出かけ、地域交流を意識した活動が行われていた。 〇 全ての課で生活介護や就労継続支援B型の外部事業所に通所している利用者が複数名いた。 〇 一方、毎日3?5名の通院があり、医療機関の送迎負担が大きく、外部事業所の利用も送迎可能な事業所に限られる等の課題があった。 〇 利用者の服装は、基本的には清潔が保たれていたが、一部Tシャツの襟が延びていたり、涎で汚れていたままの様子があった。 〇 一部の寮では、介助を要する方ほどジャージパンツを着用している利用者が多く、利用者の好みより介助のしやすさを優先させているような様子があった。 (3)利用者ヒアリング結果  園の暮らしについて、利用者2名にヒアリングを行った。  <70代・男性> 〇 園での生活は「良い」と話されたが、具体的にどのような点が良いのか詳細は伺えず、話を伺っていくうちに、「ここ(園)は良くない」と話を繰り返された。 〇 一方、以前入所していた施設では「旅行や買い物に行けた」、「(食事も)色々なのが食べたい」、「ここ(園)では、そういうのがない。」と、これからの生活に対する希望や外出が叶わない気持ちを伺った。 〇 このほか、ご本人の希望として、「料理がしたい。旅行に行きたい。」といった話があった。 〇 過去に溶接の仕事をしていたこと、現在は外部事業所に通所していることを伺えたが、どのような活動をされているのか具体的な話までは伺えなかった。   【結果】 ・ アセスメントシートや個別支援計画には、外部事業所に80歳までいきたい、外出したい、美味しい食事を食べたいという本人の希望から、外出や通所に関する目標が立てられていた。 ・ 一方、料理や旅行についての記載は無く、ヒアリングからはご本人の望む外出や地域での活動に結び付いていない可能性が伺えた。 ・ 今回は、短時間のヒアリングであり、全ての書類を確認したわけではないが、ご本人の望みや願いが丁寧に反映され、具体的な支援が計画に盛り込まれていたかは確認できなかった。  <60代・女性> 〇 日中の過ごしは、「一人で居たい時は、塗り絵をしたり、音楽を聴いたりしている。」、「さみしい時はみんなでテレビを見ている」と、嬉しそうに塗り絵の絵本を見せていただく。 〇 ご本人のペースで生活をされている様子が伺え、園内での日中活動も、「最初は慣れなかったけど、できるようになった」と嬉しそうに話される。 〇 これからの生活で、やってみたいこととして、「外に出かけたい」「ほたるを見てみたい」「ドライブをしたい」といった声があった。   【結果】 ・ アセスメントシートや個別支援計画には、入所して間もないため、「早く園の生活に慣れたい」、「外出したい」という本人の希望から、外出や通所に関する目標が立てられていたが、例えば、外出に関しての具体的な支援内容は確認できなかった。 ・ 今回は、短時間のヒアリングであり、全ての書類を確認したわけではないが、ご本人の望みや願いが丁寧に反映され、具体的な支援が計画に盛り込まれていたかは確認できなかった。 (4)食事支援をテーマとした園の取組報告等   ア 園の取組報告   (ア)食事場面 〇 利用者一人ひとりを見なければならない中で、職員数は決まっており、食事場面はリスクの高い場面であると認識をしており、利用者ごとで時間をずらしたり、見守りができるような工夫をしていた。 〇 課ごとに食事マニュアルが作成されており、利用者一人ひとりの食事に関する注意点、食席の位置、食形態、服薬方法等が記載されていた。 〇 マニュアルは、盛り込む項目は園全体で決まっていたが、利用者の状況や食形態の変化に応じて即時にマニュアルを見直すなど、各課で柔軟に作成・更新されていた。 〇 食事時も、職員が全ての利用者の食事場面を見渡せる配置となるよう意識されていた。 〇 座席や机の高さは理学療法士の助言を受けながら、個々の利用者ごとに調整されており、できるだけ自身で食べられるように工夫がされていた。 〇 食事場面はリスクを意識する一方、食事を最後まで口から食べたいという利用者の想いを大切にしていた。   (イ)日常の健康管理 〇 口から食べたいという要望・気持ちが強い利用者が多いため、口腔ケアも大切にしていた。 〇 日々の健康管理に当たって、利用者一人ひとりに応じた健康チェック表を作成し、健康管理を行っていた。また、発熱やいつもと違う様子が見られた際には、毎日のチェック表とは別に記載していた。 〇 食事摂取量について、インアウトの状況を重視し、記録を取っていた。 〇 食事摂取量の大幅な減少等が見られた場合には、対応を別の職員に代わって様子を見たり、引き継ぎで状況を詳細に伝えて、職員が代わっても丁寧に様子観察できるようにするなど、配慮がなされていた。 〇 個々の利用者の会議の中で、健康カードやアセスメントシートを確認しながら、嚥下のリスクを確認していた。 〇 看護師も必ず食事場面を巡回し、摂食状況や健康チェック表を確認しており、園内受診の際には、健康チェック表を集計して医師に助言をもらう等、日々の健康管理に役立てていた。   (ウ)専門職の評価 〇 嚥下造影検査を必要に応じて外部の医療機関にて実施し、嚥下の状 況を客観的に確認し、誤嚥を予防する体位や食事形態を検討し、適切な食事が口から摂取できるような工夫をしていた。   (エ)緊急時訓練について 〇 利用者の緊急時(窒息や心肺停止等の緊急事態)の訓練を課単位で  毎月実施しており、園全体の緊急時訓練も年に2回実施していた。 〇 過去の事例などをもとに、シナリオを作成し、課が主体的に考え、実施することで、職員が緊急時にも冷静に対処できるよう、取組が進められていることを確認した。   イ 他の県立施設の取組及び意見交換 〇 食事を食べられない場合、食べられない理由は一つではなく、複数あるため、食事前後の状況等、総合的に考えた上で、職員間で話し合いながら原因を探っていくことが大切である。 〇 勤務に入る際、必ず利用者の今の状態を確認して、支援に入ることが基本である。 〇 食事支援は、介助を要する利用者に対して、職員は限られており、利用者一人ひとりの嚥下等の食事リスクに注意を払い、対応していくことが難しい場面も多々あり、共通の課題であると感じた。 〇 月1回の体重測定を指標としている。特に体重の変化が激しい方は週1回体重を測定し、体調の変化に早く気付くよう徹底している。 〇 嚥下評価を専門職が行うだけでなく、医師や看護師、栄養士、支援員が集った会議で、評価する仕組みがある。また、寮会議にも専門職が入って嚥下状況の情報を共有し、意見交換する等、支援に反映し、実践していく体制を整えている。 〇 食形態は、個々の利用者の状態に応じて細かく分け、食事介助が必要な利用者に関しては個別にマニュアルを作成し、支援している。 〇 毎月専門職(歯科医師・歯科衛生士・管理栄養士・理学療法士・支援員)がチームで昼食場面を中心にラウンドし、それぞれの専門領域から確認し、利用者の摂食評価や摂食状況の改善に取り組んでいる。 〇 日常生活の中で、例えば入浴時に髪を洗う・体を洗う等、自分でで きることは自分で行ってもらえるよう支援することを大切にしている。 〇 食事場面では、誤嚥等のリスクも高いことを意識して、食事支援の人員の充実や見守り体制を整え、対応している。 〇 適切な支援とは何かをテーマとして、施設長が職員一人ずつに面接して、支援を振り返る機会を設けることとしている。 1