資料6−1 12県立障害者支援施設の方向性について 県立障害者支援施設(以下「県立施設」という。)の方向性について、当事者目線の障がい福祉に係る将来展望検討委員会及び県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチームからの指摘及び提言を踏まえ、利用者、家族などの意見を伺いながら検討を進めていることから、現在の検討状況を報告する。 (1)県立施設の方向性に関する基本的な考え方 ア 現状 ・中井やまゆり園で当事者目線の支援を実践する中で、利用者が日中活動に参加して笑顔を見せるなど、良い変化が起きはじめているが、こうした変化がなぜ起きているのかを、学術的、体系的に説明できない。 ・また、全ての入所施設が当事者目線の支援を実践し、どんな障がいがあっても、その人が望む暮らしを実現できることを示す必要があるが、重度障がい者の地域生活移行は、県立・民間を問わず進んでいない。 イ 課題 ・全ての入所施設が当事者目線の支援を実践し、条例の目指す当事者目線の障がい福祉を実現するためには、科学的根拠に基づく当事者目線の支援を確立する必要がある。 ・確立した支援を全ての入所施設等に広めるとともに、こうした支援を実践できる人材を育成する必要がある。 ・しかし、福祉に関する科学的な研究や人材育成は、採算性が低いため、民間施設での実施は困難であり、現在は、現場での経験の積み上げによる支援が中心となっている。 ウ 今後の県立施設の役割、基本的な方向性 ・今後の県立施設は、当事者目線の支援を確立し、広めるための「福祉科学研究」と「人材育成」へと役割を転換する。 ・施設をフィールドとして、当事者目線の先駆的な支援と重度障がい者の地域生活移行というテーマで研究を進め、科学的根拠に基づく支援を確立し、それを実践できる専門人材を育成する拠点となることで、当事者目線の支援のモデルを示す。 ・これまでの取組や実績、地域資源が豊富な立地といった特長を生かすことができる施設を県立施設として継続し、それ以外の施設はこれまでの取組を継続しながら、柔軟な運営ができる民間法人へ移譲する。 ・本人の望む暮らしを支援するため、一人ひとりに目が行き届くよう、現利用者の居場所を確保した上で、施設の小規模化を図る。 (2)各県立施設の方向性 ア 県立施設として継続 (ア) 中井やまゆり園 これまで強度行動障害対策の中核施設に位置付けられており、現在は、アクションプランに基づく当事者目線の支援の実践に取り組んでいる。この取組は、県立施設だけでなく、全ての入所施設のモデルとなるものであり、県立施設として継続し、役割を果たしていく。 イ 民間法人へ移譲 (ア) さがみ緑風園 利用者の望む暮らしの実現に向けて取り組んできた結果、介護保険施設等との役割分担が進み、利用者が減少しており、今後の県立施設としての役割は低く、民間法人へ移譲する方向で調整する。 (イ) 厚木精華園 高齢の知的障がい者支援のモデル施設としての役割を果たしてきたが、民間による取組が進んでおり、今後の県立施設としての役割は低く、民間法人へ移譲する方向で調整する。 (ウ) 三浦しらとり園 横須賀三浦地域における拠点施設として役割を果たしているが、今後の県立施設としての役割は低く、民間法人へ移譲する方向で調整する。また、建物の老朽化が進んでいるため、再整備する。 ウ 引き続き方向性を検討 (ア) 芹が谷やまゆり園 地域資源が豊富な立地を生かして、重度障がい者の地域生活移行を進めることができる可能性が高く、県立施設として役割を果たしていくことが期待できるが、新たな指定管理が始まったばかりであり、その運営状況を検証しながら、引き続き方向性を検討する。 (イ) 津久井やまゆり園 意思決定支援という先駆的な取組を進めており、県立施設として役割を果たしていくことが期待できるが、新たな指定管理が始まったばかりであり、その運営状況を検証しながら、引き続き方向性を検討する。 (ウ) 愛名やまゆり園 県内全域からアクセスがしやすく、地域資源が豊富な立地を生かして、重度障がい者の地域生活移行を進めることができる可能性が高く、県立施設として役割を果たしていくことが期待できるが、建物の老朽化が進んでいることから、再整備の検討とともに、再整備期間中の指定期間延長も視野に入れながら、引き続き方向性を検討する。 (3) 今後の県立施設の役割を果たす施設の組織執行体制 今後の県立施設の役割を果たすためには、県直営や指定管理者制度による運営も可能であるが、柔軟な予算執行や人材確保により、研究などの役割を効果的に果たすことが期待できる地方独立行政法人による運営が望ましいと考える。 (4) 中井やまゆり園を地方独立行政法人化する場合の進め方 中井やまゆり園が地方独立行政法人による運営に移行する場合には、法人の設立に向けて、定款や中期目標等の策定、人事給与・財務会計制度の構築やシステム導入等の準備を進める。 また、過去の地方独立行政法人の設立事例では、準備に相当の期間を要していることを踏まえて、組織執行体制の移行時期を検討していく。 <県立施設の方向性(現時点での整理)> 県立施設として継続 地方独立行政法人による運営が望ましい施設 中井やまゆり園 民間法人へ移譲 さがみ緑風園 厚木精華園 三浦しらとり園 引き続き方向性を検討 (指定管理や施設の再整備の状況を踏まえて、引き続き検討していく。) 芹が谷やまゆり園 津久井やまゆり園 愛名やまゆり園 (5) 今後の対応 「県立障害者支援施設の方向性ビジョン(素案)」をもとに、県議会、利用者やその家族、市町村等と議論を重ねながら、年内を目途にまとめる。 <別添参考資料> 参考資料2「令和5年度 県立障害者支援施設の方向性ビジョン(素案)」 (参考:県立障害者支援施設の概要) 施設名 (所在地) 管理方法 主な対象 定員 築年数 (部屋) 中井やまゆり園 (中井町) 直営 知的障がい者 140人 築23年 (個室・多床室) さがみ緑風園 (相模原市南区) 直営 身体障がい者 80人 築21年 (個室中心) 芹が谷やまゆり園 (横浜市港南区) 指定管理 知的障がい者 66人 築1年 (個室) 津久井やまゆり園 (相模原市緑区) 指定管理 知的障がい者 66人 築2年 (個室) 愛名やまゆり園 (厚木市) 指定管理 知的障がい者 120人 築37年 (多床室中心) 厚木精華園 (厚木市) 指定管理 知的障がい者 112人 築30年 (多床室中心) 三浦しらとり園 (横須賀市) 指定管理 知的障がい児 知的障がい者 40人 112人 築40年 (多床室中心)