11 県立障害者支援施設等における不適切な支援への対応状況について 県立直営の「中井やまゆり園」、社会福祉法人かながわ共同会が指定管理者となる「愛名やまゆり園」及び「厚木精華園」における虐待事案、社会福祉法人同愛会が運営する事業所における虐待事案の対応状況について報告する。 (1)中井やまゆり園事案の対応状況 ア事案の概要 ・令和5年10月26日(木)昼食時、民間の支援改善アドバイザーが園内を巡回する中で、居室内にあるポータブルトイレに座り、排泄している利用者(60代女性)に対し、職員(50代女性・40代女性)が服薬、食事支援を行うなどの行為を目撃し、園幹部職員に不適切であると指摘があった。 ・園は、10月27日(金)に園長をトップとする園内検証チームを立ち上げ、事実確認のため、園職員のヒアリングを順次行った。 ・11月2日(木)に改めて幹部会議を開催し、同日に支給決定自治体に電話で第一報を入れ、11月6日(月)、園幹部職員が同自治体に出向き、障害者虐待防止法に基づく通報として受理された。併せて、利用者本人、ご家族に対して、謝罪を行った。 ・12月8日(金)、支給決定自治体より、心理的虐待にあたると認定された。(ヒアリングの結果) ・前日の夜からほとんど食事を摂ることができておらず、また医師からは薬は必ず飲ませるよう指示があった。 ・排泄のため、居室にあるポータブルトイレに座った際、今なら食事を摂ってもらえると考え、服薬、食事支援を行ってしまった。 ・薬は飲めたので、食べられると思い、食事を優先してしまった。 イ県の対応 (ア)園内で職員による意見交換(11月6日(月)) <主な意見> ・発作があり、薬が飲めないことはとても心配だった。 ・支援に当たって何を優先するかは改めて考えるべき。 (イ)県立中井やまゆり園改革アドバイザリー会議(11月8日(水)) <主な意見> ・職員が追い込まれていたというものではなく、食堂などで皆と食事を摂ることができないという諦めから起きている。 ・居室にあるポータブルトイレに座り、排泄している中でも食べ物を食べることを本人が望んでいると捉えてしまっている。 ・事案発生後、園で検証しても、利用者本人の思いに立って検証することができていない。 (ウ)利用者支援の見直し 寮内でアンケートを実施し、寮会議で振り返りを行い、食事の時間を気にすることなく、本人のペースに合わせて支援することを徹底している。 ウ今後について ・県本庁と園は、支援改善アドバイザーの指導を仰ぎながら、原因究明や再発防止に向けた取組を進める。 ・園職員と園長との意見交換会を継続して実施するとともに、虐待認定を受け、改めて全職員を対象に園長から理念の徹底を図る。 ・園は、支給決定自治体の改善指導に基づき、令和6年1月末日までに改善計画書を提出する。 (2)愛名やまゆり園事案の対応状況 ア事案の概要 ・令和5年11月2日(木)、利用者(20代男性)が足の痛みを訴えているところを園の職員が発見し、その後、当該利用者が市内の病院を受診したところ「右大腿骨亀裂骨折」の診断を受けた。 ・園が、原因究明のため、見守りカメラの記録映像を確認したところ、生活支援員(30代男性)による、当該利用者を蹴る、叩く、足をかけて転倒させるといった暴力行為が記録されており、当該職員は事実であると認めた。 ・園は、支給決定自治体に、障害者虐待防止法に基づき通報した。また、厚木警察署に通報し、同日中に当該職員は逮捕された。 ・同月10日(金)、支給決定自治体により、身体的虐待にあたると認定され、改善指導が行われた。 イ県及び指定管理者の対応状況 (ア)県の対応 a 監査等の実施状況 障害者総合支援法に基づく特別監査及び指定管理基本協定に基づく随時モニタリングを実施し、指定管理者に対して、第一次改善計画を策定し、提出することを指示した。 <調査日時>11月6日(月)、9日(木)、10日(金) <調査内容> ・幹部職員等へのヒアリング調査(幹部職員4名、寮職員20名) ・書類調査、ラウンド及び見守りカメラ映像の確認 <指示事項> ・幹部職員による支援現場の確認 ・不適切な利用者支援の検証 ・負傷事案の再検証 ・日中活動の見直し ・園職員へのアンケート調査 b緊急県立施設長会議の開催 <日時>11月9日(木) <内容> ・愛名やまゆり園における事案を共有 ・ 各施設において不適切な支援がないかの点検実施を指示 (イ) 指定管理者の対応 ・本件事案の原因究明及び再発防止に向けて、法人事務局が園職員への聞き取りや、記録・映像を確認するなど、調査を実施した。 ・県の指示を受けて、第一次改善計画を策定し、他に不適切な支援がないかの検証などを実施している。 ・今回の事案を受けて職員が支援を振り返るため、法人全職員(約780人)を対象とした調査を実施している。 ウ今後について 県は、指定管理者から提出された第一次改善計画を踏まえ、引き続き監査等を継続し、園とともに、徹底した原因究明を行うとともに、再発防止に向けた取組を進めていく。 (3)厚木精華園虐待事案の対応状況 ア 事案の概要 令和5年4月28日、生活支援員(50代男性)が行った、利用者(80代男性)の行動を制止しようとする中、床に引き倒すなどの行為が、同年8月25日、支給決定自治体により、身体的虐待及び心理的虐待にあたると認定され、改善指導が行われた。 イ 県及び指定管理者の対応状況 (ア) 県の対応 同年5月以降、他の利用者に同様の行為がないかなど、随時モニタリングを実施した結果、他の利用者への同様の行為は確認できなかったが、人権意識の醸成や風通しのよい職場作りなどの再発防止を改善指導した。 (イ) 指定管理者の対応 指定管理者は、利用者保護のため、加害職員を利用者の支援業務から外すとともに、県の随時モニタリングや支給決定自治体の指導に基づき、改善計画を作成の上、次の取組を進めている。 ・虐待防止委員会の開催等 ・全職員を対象とした研修等の実施 ウ今後について 引き続き再発防止に向けた取組状況を確認するとともに、改善に向けて、園の会議に出席するなど、園とともに取組を進めていく。 (4)社会福祉法人同愛会が運営する事業所における虐待事案の対応状況 ア事案の概要 令和4年11月に横浜市内の事業所で利用者が職員に暴力を振るった際に、職員が利用者の興奮を助長するような言葉かけをしたり、制止のために職員が首あたりを圧迫するなどの行為と、令和5年8月に同市内の別の事業所の職員が、利用者に複数回膝蹴りなどの暴力を振るった行為が、横浜市から身体的虐待等と認定された。 イ県及び同愛会の対応状況 ・同愛会自ら職員全員にアンケート調査を実施することとしていたが、客観性を確保するため、有識者によって構成する調査委員会が調査を進めることになった。 ・アンケート調査は、職員約1,600人を対象に実施し、10月末までの予定だったアンケートの提出期限を11月中旬まで延長した。 ・アンケート結果は、調査委員会で検証、分析し、同法人に改善勧告を行うとのことだった。 ・今後、県は、同愛会が指定管理を行っている芹が谷やまゆり園に関する情報を中心に、状況を確認していく。 (5)県の対応 ア虐待事案への対応 ・各県立施設に対し、虐待等の未然防止に向けた取組の徹底について通知するとともに、緊急県立施設長会議を開催し、不適切な支援がないか点検するよう指示した。 ・職員の人権意識の徹底を図り、当事者への理解を深めるため、障害当事者や家族を講師とした階層別研修を実施する。 イ指定管理施設以外で発生した虐待事案に係る報告・公表について ・指定管理者が運営する指定管理施設以外の事業所において虐待認定された事案の報告等について、指定管理者と協議を進めた。 ・県と指定管理者との間で、指定管理施設以外の事業所において虐待認定された事案が発生した場合、当該事案を県に報告することについて合意した。 ・合意した内容については、指定管理者との間で締結する基本協定書に反映する。 ・事案の公表については、引き続き指定管理者と協議を進める。