資料5 県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会で調査継続となった事案の調査結果報告書 令和5年5月12日 神奈川県 目次 1 経緯 2 調査事案(24件) (1)情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要がある事案 20件 (2)過去の死亡事案の検証 4件 3 調査期間 4 調査方法 (1)書面調査 (2)ヒアリング調査 (3)実地調査 (4)支援改革プロジェクトチームの助言 5 調査結果 (1)事実の特定が困難な事案(18件) (2)過去の虐待事案等で通報・公表済等、その他の事案(2件) (3)死亡事案の検証結果(4件) 別添1 各事案の調査結果の詳細 別添2 外部調査委員会報告書と本報告書の総括(91件) 1 経緯 〇 県では、令和4年3月3日に「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会」(以下「外部調査委員会」という。)を設置し、県立中井やまゆり園(以下「園」という。)における「事実であれば不適切な支援と思われる情報」として県が把握した91件の事案について、調査を行った。 〇 外部調査委員会では、書面調査やヒアリング調査などを実施し、その結果を取りまとめ、9月5日に「県立中井やまゆり園における利用者支援外部調査委員会調査結果報告書」(以下「外部調査委員会報告書」という。)として公表した。 〇 外部調査委員会が調査した事案のうち24件は、ヒアリング調査ができていない等、調査を継続する必要があると判断された。 〇 そのため、県本庁と園は、外部調査委員会委員が参画する「県立中井やまゆり園当事者目線の支援改革プロジェクトチーム」(以下「支援改革プロジェクトチーム」という。)に助言をいただきながら、引き続き調査を実施し、このたび、調査結果報告書を取りまとめた。 〇 なお、県では、外部調査委員会により、虐待が疑われると判断された25件の事案を関係自治体(11自治体)に関係資料を送付するなどし、虐待通報を行った。 2 調査事案(24件) 県本庁と園は、外部調査委員会で「事実が判然としていない事案」として、調査を継続する必要があると判断された次の24件の調査を行った。 (1)情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要がある事案 20件 (2)過去の死亡事案の検証 4件 外部調査委員会では、死亡に至るところは、救急も含めて、適切に対応していたと判断されたが、利用者の体調不良等に至る前の支援において、利用者の状態を正確に理解した支援が提供できていたのか、また、誤嚥性肺炎になるまでの、栄養摂取の仕方に問題がなかったのかなど、検証が必要であると判断された。このため、県本庁と園では、引き続き検証を行った。 3 調査期間 令和4年9月5日から令和5年5月9日まで 4 調査方法 (1)書面調査 調査事案に関連する利用者について、園に存在する関係書類の全てを調査した。 ・利用者台帳/アセスメントシート/個別支援計画書/モニタリング票 ・情報提供のあった時期の生活支援記録/身体拘束関係資料 ・通院記録/医療記録/看護記録 ・診療情報提供書/医療カルテ ・事故報告書/ひやりはっと報告書/確認・情報共有シート ・寮日誌/寮会議報告書 (2)ヒアリング調査 外部調査委員会の調査結果を踏まえ、調査事案に関係する調査事案に関連する異動した職員や退職した職員も含めた園職員、利用者本人やその家族に対して、令和4年11月10日から令和5年4月26日までの間に、32名の関係者に対面及び書面のほか、電話や電子メール等の方法によりヒアリングを行った。 (3)実地調査 園職員へのヒアリング調査に加え、県本庁職員が情報提供の内容を園に出向き、現場を直接確認するとともに、過去の死亡事案の検証にあたって、園の食事場面等の支援状況を確認するなど、実地調査を行った。 (4)支援改革プロジェクトチームの助言 調査状況は、支援改革プロジェクトチームに報告し、助言をいただきながら、県本庁と園による調査を実施した。 5 調査結果 (1)事実の特定が困難な事案(18件) 引き続き、県本庁と園で調査を行ったが、書面調査やヒアリング調査では事実が特定できなかった。こうした事案の中には、事実の特定に至らなかったものの、外部調査委員会の調査結果と照らし合わせると、該当寮、利用者及び職員といった、対象が一致する内容があり、また、現地で確認した現在の支援状況等から類推するに、事実であった可能性も考えられた。 また、支援内容や情報の共有を図るなど、家族に対し、園の説明が不足していたことから、信頼関係が構築できていない事案も確認した。なお、いつ、どこで起きたのか、直接目撃したのか、推測や伝聞によるものなのか、判然としない情報もあったため、情報提供者(既に退職した職員)に追加でヒアリングを依頼したが、協力を得られず、事実が特定できなかった事案があった。今回の調査は終了するが、今後、情報提供者から何らかの形で情報提供された場合は、速やかに対応していく。   <県が把握した18件の情報> ・ 利用者の座っている食席に意図的に食事を投げるとされる事案 ・ 利用者の顔にお茶をかけるとされる事案 ・ 利用者の服を持って引きずり回すとされる事案 ・ 大声を出して怒鳴る、威嚇、恫喝するとされる事案 ・ 引きずり回し衣服を破くとされる事案 ・ 見て見ぬ振りをするとされる事案 ・ 利用者の着席中、食席に腰をかけるとされる事案 ・ トイレの水を飲水する利用者への関心が低いとされる事案 ・ 部屋に蹴り込むとされる事案 ・ 食事をテーブルから払い落す、食席に着かない利用者を膝蹴りして着かせるとされる事案 ・ 食器を大音を出してシンクに投げるとされる事案 ・ 利用者を蹴るとされる事案 ・ 利用者を殴るとされる事案 ・ 襟首を持って壁に押し付け、恫喝するとされる事案 ・ 利用者の居室に私物(荷物)を置き休憩室化するとされる事案 ・ 見守りを怠った為の事故に尤もらしい言い訳の記録をしているとされる事案 ・ 業務以外の作業を持ち込み利用者への見守りを怠るとされる事案 ・ 当時は転倒による事故であると説明があったが、転倒では考えられないほどのけがだったとされる事案 (2)過去の虐待事案等で通報・公表済等、その他の事案(2件) 情報提供の内容からは、時期は定かではなく、書面調査やヒアリング調査においても、特定できなかったが、外部調査委員会の調査結果と照らし合わせると、同様の事案であったと考えられる内容であった。このため、事実だったと判断し、過去の虐待事案等で通報・公表済等、その他の事案とした。 ・ 利用者を不衛生状態に放置し汚いために支援放棄したとされる事案 外部調査委員会報告書において、虐待が疑われる事案として判断された「居室の天井が便まみれとなっている環境で生活をさせていた事案」と同様の事案であると考えられた。 ・ 居住空間・トイレの衛生に無関心とされる事案 外部調査委員会報告書において、不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき事案として判断された「利用者の行動範囲が制約され、プライバシーへの配慮もされていない居住空間」と同じ趣旨の事案であると考えられた。具体的には、外部調査委員会において、「トイレ内の個室の扉や便座が壊されたままになっており、カーテンもない。」、「トイレ内の洗面台の蛇口が外され、手が洗えない。」という状況を現地調査で確認した事案である。ただし、支援改革プロジェクトチームからは、外部調査委員会報告書で整理した表現では、この事案を正確に表せていないとの指摘があり、この事案を含め、「利用者の行動範囲が、施錠という形で制約される中居室やトイレ等の生活空間の衛生環境が損なわれ、当たり前に提供される環境が整えられていなかった事案」と整理しなおす。園では、各寮を点検し、環境の改善や補修などを進めている。しかし、現在も一部の寮ではトイレの出入口を施錠したり、手洗い場の施錠や蛇口の水栓ハンドルが外されている。園によれば、過去、過度に水を飲む利用者の行動を抑制するために対応していたとのことであるが、この間、こうした対応を再検証したかの確認はできなかった。県本庁と園は、早急に、人が生活する当たり前の環境を整備していく。 (3)死亡事案の検証結果(4件) 次の4事案は、まずどのような利用者か、なぜ園に入所したのか、入所中の様子はどうだったのか、できうる限り遡って、検証を行った。 ・ 誤嚥性肺炎で亡くなった利用者は、職員が食べさせすぎたことが原因ではないかとされる事案 ・ 食事の際、意識が朦朧とし、救急搬送され、入院となるが、誤嚥性肺炎のため、入院当日に亡くなった。 (過去3年間の死亡事案) ・ 食事が摂れないことから入院となり、点滴治療とともに摂食を試みたが、回復せず、誤嚥性肺炎のため、亡くなった。 (過去3年間の死亡事案) ・ 園内受診で、腹水と胸水があり、低蛋白血症、肝硬変の可能性もあり、入院となるが、誤嚥性肺炎のため、亡くなった。 (過去3年間の死亡事案) 各事案の調査結果の詳細は別添1のとおり 【死亡事案の検証を通じて確認した事実】 ○ 目標をたて、支援した内容が明確な理由がないまま、数年で行われなくなっていた。 ・ 入所当初は、自立を目標に自分で食べられるように支援をしたり、ミキサー食にしても、食事を楽しめるよう工夫をしたり、その時々の利用者の状況に応じて支援している記録は確認できた。しかし、明確な理由がないまま、こういった食事の際の工夫や、状況に応じた支援の取組が行われなくなる等、記録からは一貫した支援が確認できなかった。 ○ 生活支援記録からは、利用者の様子や支援した内容が読み取れず、検証できるような記録になっていなかった。 ・ 生活支援記録には、食べ物の摂取量として、主食2分の1、副食全量摂取などの記載が中心で、職員がどのように支援をして副食を全量摂取できたのかなどの詳細な状況は、記録からは読み取れなかった。 ・ また、「37度の発熱あり。」、「少量の嘔吐あり。」といった記載はあるが、その際の利用者の表情や様子が確認できる記録はなかった。 ○ 支援を振り返り、評価した内容を計画に反映する等、見直しが行われなかった。 ・ 個別支援計画の作成やモニタリングの過程において、支援記録同様に、支援した事実のみが評価として記載され、また、誤嚥性肺炎を繰り返しても、従前と変わらない計画が引き継がれていた。 ・ モニタリングにおいて、食事をきざみ食に変更するという記載はあるものの、個別支援計画に誤嚥のリスクに関する記載がなかった事案もあった。 ○ 支援を担当する福祉職以外の医療関係者等専門職が関わっても、支援に反映されていなかった。 ・ 機能訓練のための作業療法士や、摂食嚥下評価のための歯科衛生士が関わりながら支援している記録は確認できた。しかし、こうした専門職が関わった結果がどのように支援に反映されたのか、あるいは、個別支援計画やモニタリングに反映されたのか、確認できなかった。さらに、どの程度、歩けるようになったのかという身体状況の変化や、どういった食事介助の方法が適切かといった支援の具体的な評価や検討、支援の見直しは行われていなかった。 ・ 食事中のむせ込みや、丸のみして食べるといったことが、摂食嚥下評価で課題とされたが、生活支援記録では、関連する記載が少なかった。 ・ 骨折を繰り返す利用者についての具体的な予防のための取組に関する記録なども確認できなかった。 ○ 一人ひとりの利用者の食事リスクや栄養状態を認識して、職員体制が取れていたのか判然としなかった。 ・ ヒアリング調査では、「食事支援には、遅番3人の場合、食堂と2つのホームにそれぞれ1人ずつ配置するのが基本だった。」、「当時、2人介助だったが、人手が足りなくて1人で介助したのではないか。」といった発言があった。 ・ 一人ひとりの利用者の食事リスクをどの程度、認識して、職員体制が取られていたのか判然としなかった。 ○ 亡くなられた利用者の支援を振り返り、評価する仕組みが確立されていなかった。 ・ ヒアリング調査では、利用者の方が亡くなられた後、支援の振り返りを行ったとする職員もいれば、行っていないとする職員もおり、また、その記録も残されていなかった。 ・ 誤嚥リスクの高い利用者の食事支援など、医務課と連携した支援の振り返りと評価を行う仕組みがなかった。 ○ 誤嚥等の食事リスクや栄養状態を認識せず、本人任せにした食事をさせていた。 ・ 自力で食べ物を口に運ぶことのできる利用者については、食事介助せず、本人任せにしてきたようだが、食べこぼしも多く、実際に口に入らない状況や自力で食べることによる誤嚥リスクある状況で、誤嚥等の食事リスクや栄養状態を認識して、利用者本人に摂食を任せていたのか判然としなかった。 ・ 自力で食べることができる利用者が、適切な量を食べているかどうか、栄養摂取ができているか、日々の体重管理や健康診断等で確認できていない可能性が高い、と考えられた。 調査を終えて 〇 調査を継続した事案24件の多くは、発生当時、速やかに虐待通報していれば、事実が明らかになった可能性が高く、県では、改めて園や園職員に対して、虐待通報の徹底を指示した。 〇 また、こうした情報提供に至った根底には、支援の行きづまりや、園内で指摘や議論しあえない風通しの悪さがあったと考えられた。 〇 今回、県が把握した91件の情報について、事実が特定できなかった事案や事実でなかった事案もあるが、事実や虐待の成否にかかわらず、これだけの情報が県に挙がってきたことを重く受け止め、引き続き、県本庁と園が一体となって、利用者支援の改善や園のマネジメントの改善に取り組んでいく。 〇 さらに、死亡事案の検証を通じて確認した事実は、支援改革プロジェクトチームで課題を明らかにし具体的な改善が図られるよう、改革プログラムに盛り込み、早急な改善を図っていく。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(事実の特定が困難な事案18件のうち、5件) @ 利用者の座っている食席に意図的に食事を投げるとされる事案 A 利用者の顔にお茶をかけるとされる事案 B 利用者の服を持って引きずり回すとされる事案 C 大声を出して怒鳴る、威嚇、恫喝するとされる事案 D 引きずり回し衣服を破くとされる事案 情報提供の内容 @ 利用者の座っている食席に意図的に食事を投げることが、頻繁にあった。 A 利用者の顔にお茶をかけることが、時々にあった。 B 利用者の服を持って引きずり回すことがあった。 C 大声を出して怒鳴る、威嚇、恫喝することが、頻繁にあった。 D 引きずり回し衣服を破くことがあった。 利用者の年齢・性別 @ 利用者2名(30代・男性、30代・男性)  A 利用者2名(50代・男性、30代・男性)  B 利用者4名(30代・男性、20代・男性、30代・男性、20代・男性) C 利用者4名(30代・男性、20代・男性、30代・男性、50代・男性) D 利用者4名(30代・男性、20代・男性、30代・男性、20代・男性) 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 @ 職員2名  A 職員2名  B 職員4名  C 職員4名  D 職員4名  調査のポイント 〇 外部調査委員会では、情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要があると判断され、引き続き、県と園で調査を行い、情報提供の内容の事実関係を調査した。 調査結果 ○ 書面調査は、明確な時期が特定されていない情報であったが、他の事案の調査も含め、確認した中で、情報提供の内容を裏付ける記録はなかった。 ○ ヒアリング調査では、虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員にヒアリングを行ったが、情報提供の内容の事実を否定した。 ○ また、情報提供者以外の寮職員から、情報提供の内容に関する証言はなかった。 ○ さらに、園幹部職員も情報提供の内容は把握していなかった。 ○ 情報提供の内容は、いずれも複数の職員が複数の利用者に対して行ったとされる情報であったが、いつ、どこで起きたのか、直接目撃したのか、推測や伝聞によるものなのか、判然としない情報もあったため、既に退職した情報提供者に追加でヒアリングを依頼したが、協力を得られなかった。 ○ このため、いずれの情報も書面調査やヒアリング調査では、事実の特定ができなかった。 ○ 事実の特定に至らなかったものの、外部調査委員会の調査結果と照らし合わせると、該当寮、利用者及び職員といった、対象が一致する内容があり、情報提供の内容が事実であった可能性も考えられた。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(事実の特定が困難な事案18件のうち、3件) @ 見て見ぬ振りをするとされる事案 A 利用者の着席中、食席に腰をかけるとされる事案 B トイレの水を飲水する利用者への関心が低いとされる事案 情報提供の内容 @ 見て見ぬ振りをすることが頻繁にあった。 A 利用者の着席中、食席に腰をかけることが頻繁にあった。 B トイレの水を飲水する利用者への関心が低い。 利用者の年齢・性別 @ 利用者4名(30代・男性、20代・男性、30代・男性、20代・男性) A 利用者2名(30代・男性、30代・男性)  B 30代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 @ 職員2名  A 職員1名  B 職員2名  調査のポイント 〇 外部調査委員会では、情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要があると判断され、引き続き、県と園で調査を行い、情報提供の内容の事実関係を調査した。 調査結果 ○ 書面調査は、明確な時期が特定されていない情報であったが、他の事案の調査も含め、確認した中で、情報提供の内容を裏付ける記録はなかった。 ○ ヒアリング調査では、虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員にヒアリングを行ったが、情報提供の内容の事実を否定した。 ○ また、情報提供者以外の寮職員から、情報提供の内容に関する証言はなかった。 ○ さらに、園幹部職員も情報提供の内容は把握していなかった。 ○ 情報提供の内容は、いずれも複数の職員が複数の利用者に対して行ったとされる情報であったが、いつ、どこで起きたのか、直接目撃したのか、推測や伝聞によるものなのか、判然としない情報もあったため、既に退職した情報提供者に追加でヒアリングを依頼したが、協力を得られなかった。 ○ このため、いずれの情報も書面調査やヒアリング調査では、事実の特定ができなかった。 ○ 事実の特定に至らなかったものの、現在の園の支援について、支援改善アドバイザーからは「利用者との日常的な関わりができていない」、「園全体として、今もなお、立って食事支援を行う、慌ただしく食事をとっている等、誤嚥につながるおそれがある食事支援等が行われている」等の指摘を受けており、これら情報提供の内容は、そうした指摘と関連する内容であり、情報提供の内容が事実であった可能性も考えられた。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(事実の特定が困難な事案18件のうち、9件) @ 部屋に蹴り込むとされる事案 A 食事をテーブルから払い落す、食席に着かない利用者を膝蹴りして着かせるとされる事案 B 食器を大音を出してシンクに投げるとされる事案 C 利用者を蹴るとされる事案 D 利用者を殴るとされる事案 E 襟首を持って壁に押し付け、恫喝するとされる事案 F 利用者の居室に私物(荷物)を置き休憩室化するとされる事案 G 見守りを怠った為の事故に尤もらしい言い訳の記録をしているとされる事案 H 業務以外の作業を持ち込み利用者への見守りを怠るとされる事案 情報提供の内容 @ 部屋に蹴り込むことがあった。 A 食事をテーブルから払い落す、食席に着かない利用者を膝蹴りして座らせることが頻繁にあった。 B 食器を大音を出してシンクに投げることが頻繁にあった。 C 利用者を蹴ることが頻繁にあった。 D 利用者を殴ることがあった。 E 襟首を持って壁に押し付け、恫喝することがあった。 F 利用者の居室に私物(荷物)を置き休憩室化することが当該職員の勤務中にあった。 G 見守りを怠った為の事故に尤もらしい言い訳の記録をしていることが、都度にあった。 H 業務以外の作業を持ち込み利用者への見守りを怠ることが当該職員の勤務中にあった。 利用者の年齢・性別 @ 30代・男性  A 30代・男性  B 寮の利用者全員 C 利用者3名(30代・男性、20代・男性、20代・男性)他多数 D 利用者2名(30代・男性、20代・男性)  E 利用者3名(20代・男性、30代・男性、30代・男性)  F 40代・男性  G 利用者5名(20代・男性、30代・男性、30代・男性、20代・男性、30代・男性) H 不明 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 @ 職員1名 A 職員2名 B 職員2名 C 職員2名 D 職員1名 E 職員1名 F 職員1名 G 寮職員 H 職員2名 調査のポイント 〇 外部調査委員会では、情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要があると判断され、引き続き、県と園で調査を行い、情報提供の内容の事実関係を調査した。 調査結果 ○ 書面調査は、明確な時期が特定されていない情報であったが、他の事案の調査も含め、確認した中で、情報提供の内容を裏付ける記録はなかった。 ○ ヒアリング調査では、虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員にヒアリングを行ったが、情報提供の内容の事実を否定した。 ○ また、情報提供者以外の寮職員から、情報提供の内容に関する証言はなかった。 ○ さらに、園幹部職員も情報提供の内容は把握していなかった。 ○ 情報提供の内容は、いずれも複数の職員が複数の利用者に対して行ったとされる情報であったが、いつ、どこで起きたのか、直接目撃したのか、推測や伝聞によるものなのか、判然としない情報もあったため、既に退職した情報提供者に追加でヒアリングを依頼したが、協力を得られなかった。 ○ このため、いずれの情報も書面調査やヒアリング調査では、事実の特定ができなかった。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(事実の特定が困難な事案18件のうち、1件) 当時は転倒による事故であると説明があったが、転倒では考えられないほどのけがだったとされる事案 情報提供の内容 (家族からの情報提供により発覚) 〇 過去にけがをして救急搬送された際に、当時付き添った職員に、原因を聞いても、だまっていて、教えてくれなかった。また、別の職員も救急搬送、入院となる理由を話さなかった。 〇 当時は転倒による事故であると説明があったが、転倒では考えられないほどのけがだった。 (家族と本庁職員との面談をとおしてわかったこと) 〇 救急搬送された際の園からの説明への不信感と相まって「これは誰かに殴られたことによるケガではなかったのか」という疑念を家族は拭えていなかった。  利用者の年齢・性別 40代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 職員2名 調査のポイント 〇 外部調査委員会において実施した家族からの情報提供内容の事実関係の調査に続き、救急搬送された際の対応、その後の対応について、さらにヒアリング等による調査を進めた。 調査結果 〇 救急搬送された平成30年7月11日に勤務していたが、ヒアリング未了であった職員からは、新たな情報を得ることはできなかった。けがをした場面を現認した者を見出すことはできず、当時のけがが誰かに殴られた等の証言もないことから、受傷に至った経緯の特定は困難であった。 〇 救急搬送された際の対応について、ヒアリングにより確認をしたところ、職員Aは「家族への救急搬送の第一報は職員Bから行われた。」とする一方で、職員Bはそのことについて「正確に覚えていない。」とのことであった。 また、受傷後の状況の連絡については、職員Aは「入院先から家族に電話をした覚えはない。」と証言したが、職員Bは「入院先にいた職員Aに対して、家族へ連絡するように指示したか、自ら家族へ連絡をしたか覚えていない。」とのことであった。 なお、平成30年7月12日に作成された事故報告書によれば、当日に職員Bから家族へ架電したが、留守電状態で、その後家族からの架電を受けていることを確認した。報告書には「(家族は)病院には向かわず、電話にてドクターより病状を確認される」との記述はあったが、最終的にどのような対応になったのかは読み取れなかった。 〇 これらのことから、利用者が医療機関での受診が必要なけがを負った際の家族への連絡に係る確認と責任体制の曖昧さが否めなかった。また、説明及びその内容の伝達と共有が十分でなかったことから、家族の不安と不信を招くことになったと考えられた。 〇 利用者が受傷後、寮内では、居室の変更やクッションマットをデイルームや居室に設置することにより安全な住環境を整えようとした様子は伺え、事故の再発予防には努めていたようだが、受傷防止のための支援方法を職員間で共有するには、時間がかかった。 〇 家族、医務課、寮とともに整理をした発作時の対応を、令和元年12月18日に改めて周知を図り、現在は、寮の全職員が、本人から目を離さない支援を行うとともに ・ 発作時の詳しい本人の様子 ・ その際の対応(すぐに横にさせる等) ・ 救急車を呼ぶような症状 ・ 発作止めの頓服薬が必要な症状 を理解し、発作時の記録をとるための共通の観点などを整理している。また、発作時の様子などを家族にこまめに報告し、家族からの理解を得られるよう努めている。 〇 なお、本事案の発生後に、生活支援(受傷防止)のために必要な人感センサーを購入しているが、こうした施設側の必要性に応じて購入する物品は、本来公費で購入すべきだったところを、一度は利用者本人のお小遣いで購入して、後日返金していた。障害者支援施設としてサービス提供に必要な物品の費用負担に対する担当職員の理解不足に加えて、預り金の組織的な管理が不十分であったと言える。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(過去の虐待事案等で通報・公表済等、その他の事案の2件) @ 利用者を不衛生状態に放置し汚いために支援放棄したとされる事案 A 居住空間・トイレの衛生に無関心とされる事案 情報提供の内容 @ 利用者を不衛生状態に放置し汚いために支援放棄した。 A 居住空間・トイレの衛生に無関心。 利用者の年齢・性別 @ 利用者4名(30代・男性、20代・男性、30代・男性、30代・男性) A 寮利用者全員 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 @ 職員3名  A 職員3名  調査のポイント 〇 外部調査委員会では、情報提供者へのヒアリングができていない等、調査を継続する必要があると判断され、引き続き、県と園で調査を行い、情報提供の内容の事実関係を調査した。 調査結果 ○ 書面調査は、明確な時期が特定されていない情報であったが、他の事案の調査も含め、確認した中で、情報提供の内容を裏付ける記録はなかった。 ○ ヒアリング調査では、虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員にヒアリングを行ったが、情報提供の内容の事実を否定した。 ○ また、情報提供者以外の寮職員から、情報提供の内容に関する証言はなかった。 ○ さらに、園幹部職員も情報提供の内容は把握していなかった。 ○ 情報提供の内容は、いずれも複数の職員が複数の利用者に対して行ったとされる情報であったが、いつ、どこで起きたのか、直接目撃したのか、推測や伝聞によるものなのか、判然としない情報もあったため、既に退職した情報提供者に追加でヒアリングを依頼したが、協力を得られなかった。 ○ このため、いずれの情報も書面調査やヒアリング調査では、事実の特定ができなかったが、外部調査委員会の調査結果と照らし合わせると、同様の事案であったと考えられる内容であった。 ○ このため、事実だったと判断し、過去の虐待事案等で通報・公表済等、その他の事案とした。 @ について 外部調査委員会報告書において、虐待が疑われる事案として判断された「居室の天井が便まみれとなっている環境で生活をさせていた事案」と同様の事案であると考えられた。 A について 外部調査委員会報告書において、不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき事案として判断された「利用者の行動範囲が制約され、プライバシーへの配慮もされていない居住空間」と同じ趣旨の事案であると考えられた。 具体的には、外部調査委員会において、「トイレ内の個室の扉や便座が壊されたままになっており、カーテンもない。」、「トイレ内の洗面台の蛇口が外され、手が洗えない。」という状況を現地調査で確認した事案である。 ただし、支援改革プロジェクトチームからは、外部調査委員会報告書で整理した表現では、この事案を正確に表せていないとの指摘があり、この事案を含め、「利用者の行動範囲が、施錠という形で制約される中居室やトイレ等の生活空間の衛生環境が損なわれ、当たり前に提供される環境が整えられていなかった事案」と整理しなおす。 園では、各寮を点検し、環境の改善や補修などを進めている。しかし、現在も一部の寮ではトイレの出入口を施錠したり、手洗い場の施錠や蛇口の水栓ハンドルが外されている。 園によれば、過去、過度に水を飲む利用者の行動を抑制するために対応していたとのことであるが、この間、こうした対応を再検証したかの確認はできなかった。県本庁と園は、早急に、人が生活する当たり前の環境を整備していく。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(死亡事案の検証結果@) 誤嚥性肺炎で亡くなった利用者は、職員が食べさせ過ぎたことが原因ではないかとされる事案 情報提供の内容 〇 誤嚥性肺炎で亡くなった利用者は、職員が食べさせ過ぎたことが原因ではないか。 利用者の年齢・性別 40代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 寮職員 調査のポイント 〇 外部調査委員会では、食べさせ過ぎたのかどうか、事実の確認はできなかった。 〇 また、病気(誤嚥性肺炎)で亡くなったことについて、当時の対応は、救急対応も含めて適切に対応していたとして、一定の調査を終えたが、体調不良等に早期に気付くことができなかったのか、また、誤嚥性肺炎になるまでの栄養摂取の仕方に問題がなかったのかという視点で、調査を継続する必要があると判断された。 〇 引き続き、県本庁と園で調査を行い、入所から亡くなるまでの間、園でどのような支援を行ってきたのか確認した。 調査結果 書面調査では、当該利用者に関する個別支援計画や生活支援記録、看護記録、通院記録等、園に残されていたすべての書類を調査し、次の内容を確認した。 〇 当該利用者は、自傷や他害などの行動から在宅生活が困難となり、15歳で障害児者入所施設に入所しており、その施設の成人寮廃止に伴い、30歳代後半に園に入所した。亡くなるまでのおよそ5年間、園で暮らしていた。 〇 入所直後の個別支援計画において、食事は、介助によりスプーンの使用はできるとしているが、放っておくと手づかみとなってしまうこと、前入所施設から、手づかみであっても、安定につながっているとの理由から無理にスプーンを使用せず、本人の好きなように摂取している、との記載を確認した。 〇 また、同時期の生活支援記録には、「手づかみが多いが全食する」といった記録があった。 〇 平成28年7月、園内で歯科医に食事の様子を見てもらったところ、丸のみで噛まずに食べている、手づかみで食べることに関して、本人の楽しみを優先するのであれば、このままでよい。手づかみを直すということは、今からだと難しい」といった評価を得ていた。 〇 また、生活支援記録には、食べた量が全量等の記載はあるが、食べこぼしがどのくらいあったのか等の記載はなく、実際にどのくらいの量を食べられていたのか確認ができなかった。 〇 平成29年3月、低血糖と重症肺炎により入院し、退院後には、入院中の食事支援の方法や食事形態などを確認し、園内で医務課や栄養士と調整して、ミキサー食・ミキサー粥による食事提供となっていた。 〇 この時の低栄養となった原因として、当時、主治医は「誤嚥を繰り返し、それに伴う体力低下が生じ、摂食困難となっていたことが考えられる」としていたが、日々の生活支援記録では、むせ込みが激しいなどの記載はなかった。 〇 さらに、個別支援計画のモニタリングにおいて、食事を刻み食にする等の記載が確認できたが、個別支援計画には、誤嚥のリスクや栄養状態についての記載が確認できなかった。 ヒアリング調査では、改めて当時勤務していた職員にヒアリングを行い、食事支援の体制や支援の振り返りについて、次の内容を確認した。 〇 「食事支援には、遅番3人の場合、食堂と2つのホームにそれぞれ1人ずつ配置するのが基本だった」、「当時、2人介助だったが、人手が足りなくて1人で介助したのではないか」といった証言があった。 〇 また、亡くなられた後に、どういう意識で支援に望んでいたのか、職員一人ひとりにコメントをもらい、支援の振り返りをしたと証言した職員もいれば、複数の職員からは、支援の振り返りはしなかったと証言した。このことについて、書面調査において振り返りをしたとされる書面は確認できなかった。 〇 なお、外部調査委員会報告書では、情報提供者と食事介助した職員の証言の相違から、「食べさせすぎたのかどうか事実の確認はできなかった」と判断しており、引き続き県と園が調査する中でも、食べさせすぎたことを原因とする事実は特定できなかった。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(死亡事案の検証結果A) 令和3年7月に病気(誤嚥性肺炎)により亡くなった死亡事案 <過去3年間の死亡事案の検証> 情報提供の内容 ― 利用者の年齢・性別 50代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 ― 調査のポイント 〇 外部調査委員会では、病気(誤嚥性肺炎)で亡くなったことについて、当時の対応は、救急対応も含めて適切に対応していたとして、一定の調査を終えたが、体調不良等に早期に気付くことができなかったのか、また、誤嚥性肺炎になるまでの栄養摂取の仕方に問題がなかったのかという視点で、調査を継続する必要があると判断された。 〇 引き続き、県本庁と園で調査を行い、入所から亡くなるまでの間、園でどのような支援を行ってきたのか確認した。 調査結果 書面調査では、当該利用者に関する個別支援計画や生活支援記録、看護記録、通院記録等、園に残されていたすべての書類を調査し、次の内容を確認した。 ○ 当該利用者は、家族の病気等を理由に、自宅での介助が困難となったことから、40歳代後半から園に入所し、亡くなるまでのおよそ6年間、園で暮らしていた。 ○ 入所時、壁を叩いてしまったり、他者に手をあげてしまう等、不安定なことも多く、スケジュールシステムを使用した支援や余暇の提供、精神科医と連携した服薬調整により支援が行われていた。 ○ 食事に関しては、自力で食べることはできるが、かき込むことがあり、喉を詰まらせないよう小分けにして提供のうえ、側で見守りを行っていた。 ○ 令和2年1月以降、他の専門職による定期的な摂食嚥下評価により、食形態や提供方法等の助言を受けていたが、生活支援記録には嚥下の状況等の記録は確認できなかった。 ○ また、2回目の摂食嚥下評価は、令和2年11月の肺炎による入院から退院した同月に行われ、翌月からは食形態が軟菜・刻み食(主食は普通食)からミキサー・ペースト食(主食は粥)に変更されていたが、生活支援記録には毎食の嚥下の状況等の記載はなく、むせ込み等があった場合のみ記録があった。 ○ 平成2年12月にも再び肺炎により入院となり、その後も亡くなるまでの間、体調不良や服薬調整のため、入退院を繰り返し、令和3年度には入院中において誤嚥性肺炎となっていた。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(死亡事案の検証結果B) 令和元年7月に病気(誤嚥性肺炎)により亡くなった事案 <過去3年間の死亡事案の検証> 情報提供の内容 ― 利用者の年齢・性別 60代・男性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 ― 調査のポイント 〇 外部調査委員会では、病気(誤嚥性肺炎)で亡くなったことについて、当時の対応は、救急対応も含めて適切に対応していたとして、一定の調査を終えたが、体調不良等に早期に気付くことができなかったのか、また、誤嚥性肺炎になるまでの栄養摂取の仕方に問題がなかったのかという視点で、調査を継続する必要があると判断された。 〇 引き続き、県本庁と園で調査を行い、入所から亡くなるまでの間、園でどのような支援を行ってきたのか確認した。 調査結果 書面調査では、当該利用者に関する個別支援計画や生活支援記録、看護記録、通院記録等、園に残されていたすべての書類を調査し、次の内容を確認した。 ○ 当該利用者は、家族の病気等を理由に、自宅での介助が困難となったことから、20歳代前半から園に入所し、亡くなるまでのおよそ45年間、園で暮らしていた。 ○ 入所後に巨大気腫性肺嚢胞症を患い、片肺が機能していないことで、誤嚥や発熱を起こしやすく、日々の生活支援記録では、発熱や嘔吐などが頻繁にあったことが確認できた。また、50歳代以降、度重なる肺炎で入院を繰り返していた。 ○ 園での支援について、入所当初は自立を目標に自分で食べられるよう支援をしていたり、肺炎を繰り返し、平成26年に食形態がミキサー食に落ちる中でも食事を楽しめる取組をしていたり、その時々の利用者の状況に応じて支援している記録は確認できた。 ○ しかし、こういった食事の際の工夫や、状況に応じた支援の取組は、明確な理由等の記載がないまま、数年で記録から無くなっており、支援の内容や目標が引き継がれていることを確認できなかった。 ○ また、生活支援記録は、食べ物の摂取量として、主食2分の1、副食全量摂取などの記載が中心で、職員がどのように支援して副食を全量摂取できたのかなどの詳細な状況は、記録から読み取れなかった。また、「37度の発熱あり」「少量の嘔吐あり」といった記載はあるが、その際の利用者の表情や様子が確認できる記録はなかった。 ○ モニタリングにおいても、支援した事実が記載され、従前の支援計画が引き継がれる等、肺炎が繰り返される中で、日々の記録から評価し、支援の検討を重ねてきた記録は確認できなかった。 ○ 機能訓練のための作業療法士の助言や歯科衛生士による摂食嚥下評価の記録などから、他の専門職も関わって支援にあたっていたことは確認できたが、モニタリングや個別支援計画に反映された記録が確認できず、例えば、どの程度、歩けるようになったのかという身体状況の変化や、どういった食事介助の方法が適切か等といった、具体的な評価や検討、支援の変更がなされた記録も確認できなかった。 各事案の調査結果の詳細 事案の概要(死亡事案の検証結果C) 令和元年6月に病気(誤嚥性肺炎)により亡くなった事案 <過去3年間の死亡事案の検証> 情報提供の内容 ― 利用者の年齢・性別 60代・女性 虐待又は不適切な支援を行った疑いのある職員 ― 調査のポイント 〇 外部調査委員会では、病気(誤嚥性肺炎)で亡くなったことについて、当時の対応は、救急対応も含めて適切に対応していたとして、一定の調査を終えたが、体調不良等に早期に気付くことができなかったのか、また、誤嚥性肺炎になるまでの栄養摂取の仕方に問題がなかったのかという視点で、調査を継続する必要があると判断された。 〇 引き続き、県本庁と園で調査を行い、入所から亡くなるまでの間、園でどのような支援を行ってきたのか確認した。 調査結果 書面調査では、当該利用者に関する個別支援計画や生活支援記録、看護記録、通院記録等、園に残されていたすべての書類を調査し、次の内容を確認した。 〇 当該利用者は、幼少期から障害児入所施設に入所しており、成人に達し、家庭介護ができないことから、20歳から園に入所し、亡くなるまでのおよそ45年間、園で暮らしていた。 〇 入所当初は、落ち着きがなく動き回ることや他利用者の髪を引っ張ってしまうことなどがあったが、本人のペースに合わせて焦らず支援を行う中で、次第に園の行事に参加し、園内の雰囲気にも慣れ、情緒的に安定し、意思表示も増えていった。 〇 60歳半ばを過ぎると、発熱や食事中のむせ込みや嘔吐、転倒が増え、平成30年の転倒骨折で車椅子の生活となり、翌年になると、発熱や嘔吐ら手足のむくみ、食欲不振が続き、体力も著しく低下していた。 〇 園での支援について、40歳半ばから亡くなるまでの間に、3回の肺炎を患っており、自身で体調不良を訴えることが難しいため、日々の体調や食事量の変化等から必要な医療へとつなげていた。 〇 これら肺炎が誤嚥性によるものか判然としなかったが、他の専門職による摂食嚥下評価では、食事中のむせ込みや丸のみして食べていることが確認され、改善策として、食事姿勢を整えるなどの対応が検討されていた。 〇 しかし、日々の生活支援記録には、課題とされているむせ込みや丸のみするという食べ方に関する記載がほとんど残されていなかった。 〇 また、当該利用者は、40歳以降、三度の骨折をしており、転倒や患部の腫れに職員が気づいて医療につながっていたが、日々の支援において、骨折のリスクが高いという認識の上で、具体的に骨折を予防するための支援が行われていたのか確認できなかった。 外部調査委員会報告書と本報告書の総括(91件) 外部調査委員会による調査及び、その後の県本庁と園による調査により、調査事案91件の調査結果は次のとおり。 1 91件の調査結果 外部調査委員会の 調査結果 ※令和4年9月公表 虐待が疑われる 25件 不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき 12件 事実の特定が困難 17件 事実が判然としていない 24件 事実ではなかった 8件 過去、通報・公表済等 5件 今回(県本庁と園の調査結果) ※令和5年5月公表 事実の特定が困難 18件 過去、通報・公表済等 2件 死亡事案における利用者支援を検証し 課題等を抽出 4件 2 91件のうち、県から関係自治体へ虐待通報した事案(25件)の認定状況 自治体の認定状況 件 数 虐待と認定 9件 不適切な支援と判断 8件 通報内容の事実が確認できないと判断 8件 (1)虐待と認定された事案(9件) ア 職員が利用者の両腕を後ろでクロスさせ、腕を押さえながら歩かせていたとされる事案(身体的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 移動中に利用者が衝動的に行動することを防ぐために、多くの職員が利用者の両腕を後ろにクロスさせ、腕を押さえながら歩かせていた事案であり、正当な理由のない身体拘束として身体的虐待が疑われる。 <自治体による判断> 予防的な身体拘束が日常化しており、身体的虐待である。 イ 居室の天井が便まみれとなっている環境で生活をさせていた事案(ネグレクト) <外部調査委員会の調査結果> 利用者が居室で便をして、その便を天井に投げつける行動に対して、園職員は有効な手立てを取っておらず、清掃や消毒はしているとのことであったが、天井が汚れた状態が常態化した中で寝食など、生活させていた事案であり、ネグレクトが疑われる。 なお、県本庁はモニタリング、監査を実施しているにも関わらず、この状態を把握していなかったことは問題である。 <自治体による判断> 本人の拘りから、居室が不衛生な環境となっているにもかかわらず、居室で食事させていたことは、ネグレクトである。 ウ 顔を平手打ちし、こぶしで額を殴ったとされる事案(身体的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 食堂の床に座り込む利用者を台車に乗せて移動させようとしたところ、利用者が職員の腕を噛んだため、制止しようと、顔を平手打ちし、こぶしで額を殴った事案であり、身体的虐待が疑われる。 また、事案発生当時の記録には、強く押した、食堂で過ごしていた時にどこかにぶつけてあざができたとの記録があった。 <自治体による判断>   県に情報提供があった映像から、虐待の事実、虐待者及び虐待を受けた利用者は明らかであり、身体的虐待である。 エ 脱衣場で服を脱がない利用者をふろ場に入れて、服を着たままシャワーをかけたとされる事案(心理的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 県の調査において、虐待者と 利用者に対して、服を着たままシャワーをかけた場面を見たとする情報があり、情報提供者が一緒に目撃したとする職員に確認をした。当該職員は目撃したことはないと証言し、また虐待が疑われる行為を行ったとされる職員も否定し、事実の特定には至らなかった。 しかし、ヒアリング調査の中で、別の職員から利用者が便で全身が汚れているにも関わらず、衣類を脱がない場合には、服を着たままシャワーをかけて、汚れを落とすことがあったとの証言を得た事案であり、心理的虐待が疑われる。 <自治体による判断>   虐待者及び虐待を受けた利用者は明らかであり、排泄物で汚れた利用者のシャワー浴をする際に、服を着たままシャワーをかけた行為は、利用者に不快感を与え、尊厳を軽視したものであり、心理的虐待である。 オ 服薬用のコップの水等に、塩や砂糖が混ぜられていたとされる事案(身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 異物を入れたと疑われた職員は否定しており、入れた職員は特定できなかったが、利用者の水等に異物が入っていた事案であり、身体的虐待が疑われる。 <自治体による判断> 異物を入れたと疑われた職員は否定しており、虐待者の特定はできなかったが、職員の記録等から、異物が混入していたことは明らかであり身体的虐待である。 また、寮職員が現状を確認し、幹部職員へ報告したにもかかわらず、施設側の理由により、その後も異物混入を現認しながらも、利用者の安全確保がされなかったこと、また、その行為が見られなくなったことで、原因究明せず終息する等、虐待に対する認識が欠如しており、園や寮単位でのネグレクトである。また、心理的虐待と認定した自治体もあった。 カ 肛門内にナットが入っていた事案(ネグレクト) <外部調査委員会の調査結果> 利用者の体内にナットが入っていたことは事実であり、現時点で、ナットは肛門から入った可能性が高く、職員が入れた可能性が高いと考えられ、身体的虐待が疑われる。 なお、この事案については、調査結果(第一次)公表後、引き続き、ナットがいつ、どのように体内に入ったのか、職員や利用者本人へのヒアリング調査を継続したが、特定には至らなかった。 <自治体による判断>   ナットを職員が入れたとする事実は明らかにならず、身体的虐待があったとは言えないが、利用者の異変に気付いた時点で、すぐに原因究明や救急対応すべきであったにも関わらず、受診が遅れたこと、物品の適切な管理がなされていないことは、ネグレクトである。   キ 数百回に及ぶ回数のスクワット等の不適切な運動プログラムをさせたとされる事案(心理的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 当初、運動不足の解消を目的として行われていたが、個別支援計画に定めず、シーツ交換を行う条件などとして、一部では数百回に及ぶ過度なスクワットを一部の職員がやらせ、それが寮内で見過ごされてきた事案であり、身体的虐待や心理的虐待が疑われる。 なお、この事案については、他の利用者にも行われていた可能性があるため、調査結果(第一次)公表後も、引き続き、調査を継続したところ、24名の利用者がスクワットや腹筋、踏み台昇降などの運動を行っていた。これらのうち、理学療法士の指導を受け、個別支援計画に目的や頻度などを記載するとともに、適正な運動を実施していた事案は18名であった。 一方で、この24名のうち、6名は運動プログラムの検討や実施評価等が実施されておらず、2名については、強迫的に運動を促していた事案も確認され、これらも身体的虐待や心理的虐待が疑われる。 <自治体による判断> 利用者からシーツ交換の要求が生じた際に、職員がスクワットをさせていた行為について、寮では、シーツ交換の一連の流れとなっていたことは事実である。 利用者本人が交換してもらいたいためにスクワットを行っていたこと他の場面で職員の指示を間違って捉えスクワットを始めたこと、職員が数を数えると促されてスクワットをやり始めていたことは、一連の流れが繰り返されたことで、無意識にすり込みが行われ、条件付けされていったものと考えられる。 さらに、拘りや不穏行動を減少させるため、個別支援計画等に位置づけられないまま、職員個々の判断でスクワット運動をさせる行為も適切とは言えないため、心理的虐待である。また、不適切な対応と判断した自治体もあった。 ク 利用者にコーヒーの提供を交換条件として、課題遂行をさせていたとされる事案(心理的虐待) <外部調査委員会の調査結果> 特定の利用者に対して、「排便があったら、お尻を触らなかったら」といったことを交換条件に、本人が好きなコーヒーを提供していた事案であり、心理的虐待が疑われる。 <自治体による判断>   虐待者及び虐待を受けた利用者は明らかであり、利用者からコーヒーやお菓子の要求があった際に、肛門いじりをしないことや作業を行うことを交換条件として提示した行為は、心理的虐待である。 ケ 職員が殴打した、又は興奮した利用者を居室施錠したまま放っておいたことで、顔が腫れ上がったとされる事案(ネグレクト) <外部調査委員会の調査結果> 書面調査やヒアリング調査の結果、当時、利用者の自傷が激しかったことから、けが防止のための緩衝材が張られた居室に隔離していた。また、居室施錠の間、30分以上、状況を確認せず、結果として、部屋中に血が飛び散るほどのけがを負ってしまった事案であり、興奮した利用者を居室施錠したまま放置したことは、ネグレクトが疑われる。 <自治体による判断>   利用者が不安定な状態となり、自傷行為の可能性があるにもかかわらず、こまめな状況確認をせず、居室に隔離していたことは、ネグレクトである。 (2)不適切な支援と判断された事案(8件) ・ 早く食え、早くしろと利用者の隣で言い続ける等したとされる事案 ・ 共用スペースであるデイルームで、利用者を全裸にしてボディチェックを行っていたとされる事案 ・ 利用者の足を蹴ったとされる事案 ・ 利用者が落とした食器を拾えと職員が大声を上げたとされる事案 ・ 利用者が起きてから寝るまで、廊下を歩かせ続けたとされる事案 ・ 4名の利用者に対し、食事の際に多量のオリゴ糖シロップをかけて食べさせていたとされる事案 ・ 利用者の頭に剃り込みをいれていることを職員が問題視していないとされる事案 ・ 複数の利用者に対して、顔をタオルで薄皮が剥けるほど洗っていたとされる事案 (3)通報内容の事実が確認できなかった事案(8件) ・ 背中に不自然なあざがあったにも関わらず、園は調査をしなかったのではないかとされる事案 ・ 職員が利用者を手のひらで小突いたとされる事案 ・ 利用者に洗濯カートをぶつけたとされる事案 ・ 水の入ったバケツを持って「お水をかけるよ。」と言って、トイレから出てもらったとされる事案 ・ 食事中に利用者を突き飛ばして蹴りを入れようとしたとされる事案 ・ 失禁で汚すという理由で利用者に寝具を提供しないとされる事案 ・ 職員が怒り、殴ったことで利用者が頭を打ち、失神したとされる事案 ・ 水やみそ汁を多量に飲ませていたとされる事案 3 調査結果の概況 ※下線部は、外部調査委員会報告書から更新した内容 「虐待が疑われる事案(25件)」「不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき事案(12件)」「過去の虐待事案で通報・公表済等、その他の事案(7件のうち、虐待が疑われる又は不適切な支援と判断された6件)」の計43件について集計した。 なお、計43件には、自治体に通報内容の事実が確認できなかったと判断された事案も含む。 (発生した事案について) ・ 園にある7つの寮のうち、4つの寮から事案が確認された。 ・ 上記43件の事案のうち、半数以上の事案が2つの寮で確認され、その寮には強度行動障がいを呈する利用者が多く在籍していた。 ・ 園や寮等を単位として職員全体が関与したとされる事案は12件、個別の職員が関与したとされる事案は29件だった。 (時期・場所について) ・ 平成27年度から現在(令和3年度内)までの年度ごとの出現状況は、平成30年度までは各年度1〜2件程度であったが、令和元年度に9件となり、令和2年度は4件となったが、令和3年度は12件だった。 ・ 直近までの複数年にわたって行われていた事案も11件あった。 @職員が利用者の両腕を後ろでクロスさせ、腕を押さえながら歩かせていたとされる事案 A居室の天井が便まみれとなっている環境で生活をさせていた事案 B共用スペースであるデイルームで、利用者を全裸にしてボディチェックを行っていたとされる事案 C数百回に及ぶ回数のスクワット等の不適切な運動プログラムをさせたとされる事案 D利用者が起きてから寝るまで、廊下を歩かせ続けたとされる事案 E4名の利用者に対し、食事の際に多量のオリゴ糖シロップをかけて食べさせていたとされる事案 F利用者の行動範囲が制約され、プライバシーへの配慮もされていない居住空間 G利用者に濃いインスタントコーヒーを飲ませて、利用者を寝かせないようにしたとされる事案 H利用者が歩けなくなったのは、園の支援体制が問題だとされる事案 I利用者を不衛生状態に放置し汚いために支援放棄したとされる事案 J居住空間・トイレの衛生に無関心とされる事案 ・ 複数年にわたって行われていた事案の多くは、当初は、利用者一人ひとりに応じた支援として、また、過度に水を飲んでいた利用者等の対応として行われてきたが、支援の見直しが行われないまま、長期に及ぶものでは、トイレの施錠が10年以上前から続く等、人事異動で職員が変わる中でも、振り返りや見直しは行われてこなかった。 ・ 一部、時期が明らかにならなかった事案もあった。 ・ 事案が発生した場所は、食堂、居室、廊下、デイルームの順で多く、発生した場所が明らかにならなかった事案もあった。 (利用者について) ・ 事案の対象とされた利用者は、実人数28名であった。 ・ 28名のうち、20名が事案発生当時に重度障害者支援加算Uの対象者であり、いわゆる強度行動障がいのある利用者であった。 ・ 最も多い利用者では8件、2名の利用者が6件と続き、5名の利用者は3件の事案に関わっていた。 ・ 性別は、ひとつの事案を除き、すべて男性利用者であった。 ・ 年齢は、令和4年4月時点で、最も若い方で24歳、最も高齢な方で59歳となっており、20歳代が3名、30歳代が5名、40歳代が12名、50歳代が8名、平均は43歳であった。 ・ 入所年数は、令和4年4月時点で、最長で30年、最短で4年なっており、10年未満が8名、10数年が11名、20数年が8名、30数年が1名、平均15.1年であった。 ・ 全利用者(令和4年4月時点)では、平均45.3歳、17.9年となっており、年齢や入所年数からは、顕著な傾向はみられなかった。 (職員について) ・ 「虐待が疑われる事案(25件)」「不適切な支援等であり、速やかに支援方法等を見直すべき事案(12件)」「過去の虐待事案で通報・公表済等、その他の事案(7件のうち、虐待が疑われる又は不適切な支援と判断された6件)」の計43件に関与したとされる職員は、全体で実人数76名であった。 ・ また、個別の職員が関与したとされる事案29件のうち、1名の職員が関与した事案で、最も多いのは6件、1名の職員が4件、1名の職員が3件、2名の職員が2件であった。