更新日:2019年1月21日

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仕事と介護の両立のポイント

 介護を必要とする人の増加に伴い、介護に直面しても仕事を続けることのできる環境づくりが求められています。家族の介護や看護を理由に離職する人は毎年10万人前後で推移しており、要支援・要介護者の増加に伴い、離職者が増加することも懸念されます。


 弊社調査(厚生労働省委託事業)によると、40~50歳代の正社員で仕事と介護の両立に不安を持つ人の割合は7~8割にのぼり、漠然とした不安を抱えている人の多いことが分かります。また同調査では、企業の半数近くが従業員の介護に関する実態について「特に把握していない」と回答、企業側も仕事と介護の両立に向けてどのような支援を行えばいいか分からず、取組が進んでいない状況が見られます。


 仕事と育児の両立と違い、介護については本人が話しにくいと感じていたり、周囲からも介護に携わっていることが見えにくいという特徴があります。仕事と介護の両立に向けて、まず企業には、従業員が介護に直面しても仕事と両立できるよう支援するという方針を伝え、介護について話しやすい雰囲気を作ることが求められます。そして、介護はいつ直面するか予測することが難しいうえに、親の意向やかかりつけ医、近所の知り合いなどを把握していない状況で突然介護に直面すると、介護の体制を整えることは容易ではありません。介護に携わりながら仕事を続けることができるよう、従業員が介護に直面してから仕事と介護の両立に必要な情報を提供するのではなく、介護に直面する前の段階から介護との両立に向けて参考となる基本的な情報を提供し、直面しても離職しなくて済むような支援を行うことが重要です。


 介護者本人は、介護に直面する前の段階から、介護に直面した場合にどうするか、介護が必要になる前から家族と話し合っておくことが重要です。まずは親と介護について話し合う機会を持つとよいでしょう。例えば親に介護保険の保険証が届く65歳のタイミングや、自身の介護保険料の納付が始まる40歳となった時などに、親の生活環境や経済状況、要介護状態となった際にどのような介護を望んでいるのか、といったことを話し合い、介護が必要になった際に困らないようにしておきましょう。親だけでなく、自分の配偶者や、子ども、兄弟姉妹、近所の方々など親と交友関係のある人たちと、良い関係を築くため、日頃から積極的にコミュニケーションを取ることも重要です。


 また介護に直面した際には、自身で介護を抱え込みすぎると、仕事との両立が難しくなります。介護はプロの手で、と考え、介護サービスをしっかりと活用しましょう。そのためには、信頼できるケアマネジャーを選び、現在の仕事や職場の状況なども伝え、仕事との両立に向けた介護の体制について相談をすることが大切です。なお、2017年1月に改正された育児・介護休業法では、介護のために柔軟な働き方が選択できるような制度拡充が行われました。介護をしながら仕事を続けるだけでなく、職場で能力を発揮できるよう、人事労務担当者や上司と相談しながら、働き方を検討しましょう。


 介護に直面した部下の上司(管理職)は、本人から介護の相談があったらしっかりと話を聞き、今後の両立のあり方を話し合い、円滑に両立ができるよう必要な支援を行いましょう。また介護はいつまで続くか分からず、状況が変化することもありますので、両立の体制を整えた後も定期的にフォローしていくことが重要です。なお、日頃から両立しやすい職場環境を整備しておきましょう。特に介護に直面する従業員は、職場で中心的な役割を担う年代であることも少なくありません。他の従業員が代替できない状況では、本人が介護との両立のために時間制約のある働き方を望んでも、周囲からの支援を得ることが難しくなります。普段から多能工化を進めるなど、多様な働き方を受け入れられる職場づくりを行うことが大切です。

(執筆:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

共生社会部 主任研究員 塚田 聡 氏)

 

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