更新日:2018年7月24日

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育児期の就業継続を支援するためにできること 2

「育児期の就業継続を支援するためにできること1」の続きになります。

 前回のコラムでは、育児休業取得者が職場に戻るまでの支援について述べました。今回は、復帰後の具体的な支援策について紹介します。

 育児休業からの復職者は一定の割合で育児短時間勤務(以下、時短)制度を利用しますが、多くの職場で時短社員はまだ例外的な存在です。上司や周囲の同僚は対応に苦慮し、本人も戸惑うケースが見られます。

 時短を使う社員(以下、時短社員)もしくは通常勤務でも時間外労働をしないといった時間制約のある社員でも、経験や能力を最大限に引き出し、職場に貢献させ、中核となる人材に育てていくことが上司の役割です。そのためには、次の3つの対策が有効です。

1.職場レベルでの働き方改革
 これまでの職場はいつでも時間外労働ができる社員を想定した業務管理や働き方になっていなかったでしょうか。このままでは、育児や介護との両立など今後ますます増えて行く時間制約のある社員の力を十分活かすことができません。
 業務の優先順位付けにより無駄な業務を削減し、必要なところに資源を集中することや、社員同士の情報共有や仕事の見える化(マニュアル化)、IT化により、業務時間を減らす努力を職場全体で行うことが必要です。

2.適切な目標設定や仕事配分
 時短社員の中には仕事の質が下げられることにより、モチベーションが下がってしまう人がいます。能力に見合ったレベルの仕事を与え、勤務時間が短い分を調整しましょう。時間当たりの生産性が高い社員についてはその点を評価し、短い勤務時間でも成果がでるような仕事の与え方を工夫します。

3.長期的なキャリア開発の視点
 時短社員の目標設定やチャレンジする機会の提供に関しては通常勤務者と同様に取り扱います。育児中であることを過剰に配慮せず、可能な場合は出張にも行かせましょう。育休や時短制度の利用がキャリアにとってどのような意味を持つのかについて率直に話し、必要に応じてキャリアアップの背中を押します。子どもが小さいからと控えめな態度を取る社員は意欲がないと決めつけず、仕事上での新しい経験や、勉強の機会を与え続けます。

 また、周りで支える社員にも十分配慮することが必要です。なかには、育児はプライベートなことなのになぜ周囲の社員がそれをカバーしなければならないのか、という不満を持つ社員もいます。そのような社員が出ないようにするため、次のような点を心がけましょう。
・男性の社員にも育児休業を取得させる
(有給などと合わせて最低1ヶ月程度)
・育児以外にも制約がある社員についてはそれを尊重する(例:介護/看護、自身の病気、ボランティア/勉強/趣味の活動、不妊治療など)
・有給休暇の取得率を上げる
・時短社員にも休日対応やシフト勤務を可能な範囲で割り当てる
・不満のある社員の話に耳を傾ける
 こういった対応により、職場内の風通しの悪さを防ぐことが大切です。

 企業では、女性活躍推進法による行動計画の中で女性管理職比率の目標を掲げ、達成を目指していることでしょう。当然育児中の女性も含めて育成していく必要があります。

 幸い、育児と両立しながら仕事で成果を出す女性は増えています。ただ、会社が管理職候補として期待している人材にも、管理職をめざすより専門性を磨いていきたい、といった傾向が見られます。これは管理職とは何かを知らないことによる誤解であることが多いのです。本当に自分の専門性を活かし、世の中に必要とされる製品やサービスを提供したいと思ったら、管理職になることが早道であることに気づいてほしいものです。

 管理職を目指せない大きな理由の一つは、育児と管理職を両立している状態を想像できないことです。この対策としては、職場内で女性管理職の姿を積極的に見せる、近隣の企業と交流する、異業種交流会などに参加する、などが効果的です。また、マネジメントやリーダーシップの研修を受講させたり、メンターをつけたりするのもよいでしょう。

 昨今、育児中の女性を転職市場でマッチングさせるサービスが増えてきました。社員の能力を活かせない企業からは優秀な人材が流出していくことでしょう。そうなる前に企業は手を打たなければならないのです。

(執筆:育休後コンサルタント 山口 理栄氏)

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