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更新日:2018年7月24日

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ダイバーシティ・マネジメントとワーク・ライフ・バランス

最近、政府が働き方改革を積極的に推進することにより、ダイバーシティ・マネジメントとワーク・ライフ・バランスの重要性が高まっています。ダイバーシティ・マネジメント(DiversityManagement)とは、個人や集団間に存在するさまざまな違い、すなわち人種・性別・年齢・信仰などの「多様性(Diversity)」を管理・活用する(Management)ことで組織を強化する経営戦略です。ダイバーシティ・マネジメントは、様々な人種や民族が住んでいるアメリカで1960年代に誕生し、日本では、1985年の「改正男女雇用機会均等法」の施行をきっかけに注目され始め、最近は多くの企業がダイバーシティ・マネジメントを導入しています。
 では、なぜ企業はダイバーシティ・マネジメントを実施することになったのでしょうか?その最も大きな要因として挙げられるのが経済のグローバル化です。日本企業の海外現地法人の数は、2006年度の16,370社から2015年度には25,233社まで増加しており、同期間における売上高も214兆円から274兆円に増加しました。また、2015年度の従業員数は557万人で、2006年度の455.7万人から約100万人も増えています。さらに、厚生労働省の「外国人雇用状況」によると、2015年(10月末時点)の国内の外国人労働者数は90.8万人と前年の78.8万人から12万人も増加しています。今後、労働力人口が減少することが予想される中で、外国人労働者を含めたより多様な人材の労働市場への参加が要求されており、ダイバーシティ・マネジメントはより重要性が高まると思います。
 一方、ダイバーシティと密接な関係にあるのがワーク・ライフ・バランスです。ワーク・ライフ・バランスには多様な定義がありますが、仕事と仕事以外の活動がバランスの取れた状態で、両者を共存させながら、持っている個人の能力を最大限発揮し、それぞれが望む人生を生きることを目指している点では一致していると思います。日本では2007年12月に、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が、関係閣僚、経済界・労働界・地方公共団体の代表者等からなる「仕事と生活の調和推進官民トップ会議」において策定されてから、官民が一体となって、仕事と生活の調和が実現できる社会の実現を目指した対策を実施してきました。
 さらに、最近政府は人口や労働力人口が継続して減少している中で、長時間労働・残業などの悪しき慣習が日本経済の足を引っ張って生産性低下の原因になっていると考え、働き方改革に積極的な動きを見せています。今、政府が働き方改革を実施しようとする主な理由としては、(1)人口及び労働力人口の減少に対する対策、(2)ダイバーシティ(多様性)・マネジメントの推進と生産性向上、(3)長時間労働の慣習の改善等が考えられます。
 つまり、働き方改革の核心は、ダイバーシティ・マネジメントの推進とワーク・ライフ・バランスの実現にあると思います。働き方改革が成功するためには、従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観にあった働き方や取り組み、つまりワーク・ライフ・バランス関連の対策を実現する必要があり、そのためにダイバーシティ・マネジメントは欠かせないものだと言えます。
 最近は、日本の多くの企業が労働時間短縮を含めたワーク・ライフ・バランス対策に取り組んでいます。例えば、日本生命保険相互会社が今年の8月に全国の企業を対象に実施した「ニッセイ景況アンケート調査結果-2017年度調査」で、労働時間短縮に向けた企業の取り組み状況を聞いたところ、労働時間短縮に「取り組んでいる」と回答した企業は63.8%で、「取り組んでおらず、今後も取り組む予定はない」と回答した企業の割合10.5%を大きく上回っていました。また、現在は「取り組んでいないが、今後取り組む予定である」と回答した企業も18.2%に達しており、すでに「取り組んでいる」企業と合わせて8割強の企業が労働時間の短縮を当面の課題として認識していることがうかがえます。
 日本は過去に比べて労働環境が改善され、労働者にとってはより働きやすい社会になったと言えます。しかしながら、パートタイム労働者を除いた一般労働者(フルタイム労働者)の平均総実労働時間は2015年に2,026時間で1993年の2,045時間と大きく変わらず、2,000時間前後の高い水準を維持しています。また、2015年の有給休暇の取得率は48.7%で、2004年の46.6%に比べてほとんど改善されていません。つまり、解決すべき問題がまだたくさん残っています。今後、ワーク・ライフ・バランスが定着するためには、何よりも経営者や管理職、そして労働者一人ひとりの意識を変える必要があります。それこそが、現在、政府が推進している働き方改革が、ワーク・ライフ・バランスとダイバーシティ・マネジメントの定着に繋がる近道になると思います。

(執筆:株式会社ニッセイ基礎研究所 准主任研究員 金 明中氏)

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