障害者雇用優良企業インタビュー(イマジネーション株式会社)[No.87]

掲載日:2019年9月13日

小笠原社長に聞きました。

・横浜市中区山下町70-13パークホームズ横濱山下公園203

http://www.imagination.co.jp

    イマジネーションで働く社員 イマジネーション小笠原社長

障がい者雇用を始めた理由について教えてください。

理由は様々にありますが、この会社を経営する中で「正しいこと、自分が良いと思うこと」をしていきたいと考えたのが一つです。また、経営者としてこれまでたくさんのご縁に恵まれてきましたので、そのご縁に対する感謝の気持ちもありました。更に、これまで事業を営む中で様々なリスクに直面してきましたが、何のためにリスクを冒すのか、何のために会社を経営してくのかを考えたときに、社会に貢献するためだという思いが強く私の心に浮かびました。障がい者雇用は私にとって、社会貢献の一つのあり方だと思っています。

ーご自身の経営に対する理念が障がい者雇用に取り組む動機となったのですね。

そうです。その中で、社員の中に前職で障がい者の就労支援に取り組んだ者がおり、彼は当社でも、IT事業を通じて障がい者の就労支援ができないかというビジネスプランを描いていました。そして、私も彼の障がい者就労支援のノウハウと当社のシステム開発のノウハウを組み合わせて、障がい者のIT分野における活躍の場を生み出すビジネスに取り組みたいと考えました。当社では、「分散入力システム」を利用した業務を、社内で精神障がい者の社員に担ってもらっています。また、このシステムが全国に広まり、より多くの障がい者がIT分野で活躍できるよう、様々なチャネルを通じて働きかけています。

ー現在は、御社の「分散入力システム」を社会に広めていく段階にあるのですね。

そうです。ただし、当社はITの会社ではありますが、ITだけに囚われるのではなく、また障がいの有無に関わらず、その人が利益を生み出すことができる仕事は何かに着目して業務を拡げてきました。

ー具体的には、どのような業務に参入なさったのでしょうか?

例えば、当初は名刺の製作を行っておりまして、「恩返し」という紙を使っています。なぜ「恩返し」なのかというと、この名刺の紙は、広島の平和記念公園に毎年世界中から届けられる合計10トンもの折り鶴が原料となっており、この紙には世界中から届いた平和への思いが込められています。だから「恩返し」なのです。この名刺は、他の普通の名刺に比べてかなり高額ですが、お客様はこの名刺の物語に共感して、お金を払ってくださいます。そして、普通の名刺に比べて高額であるからこそ、もし仮に障がい者の生産性が低かったとしても、それを利幅の部分で吸収していくことができます。

ーより高付加価値の商品やサービスを提供することが、障がい者雇用にとって重要なのですね。

その通りです。私は「障がい者が携わったサービスだから買ってください」や「障がい者が作った製品だから買ってください」というようなビジネスの仕方はしたくありません。私たちが提供するサービスや製品が他よりも高付加価値であるからこそ、選んでいただけるようにしたいですし、高付加価値であるからこそ、障がい者の生産性が低かったとしても、利幅の部分で吸収できるようにしていきたいです。利幅がきちんと取れれば、その利幅の中から障がい者の方にしっかりとした賃金を支払うことができます。また、そのように障がい者を生産者として扱い、その働きに対して正当な賃金の支払いが出来なければ、当社が障がい者雇用に取り組む意味はないのかなと思います。

ーそれでは、御社の開発した「分散入力システム」はどのような点が高付加価値なのでしょうか。

まずは、データ入力業務のアウトソーシングによるコストの低減です。また、データ入力を多人数へ分散して割り当てすることにより作業時間が短縮されますし、分散割り当てにより、データが細分化され、情報の全体像が不透明となり、情報の漏洩リスクが減じることも高付加価値化の一つだと言えると思います。

ーそのようにサービスを高付加価値化することで障がい者を雇用していくということですね。

そうです。しかし、ここで問題になるのが「障がい者に仕事を任せても大丈夫なの?」というお客様の根強い固定観念です。また、大企業の特例子会社はIT分野において、とりわけ高い業務の遂行能力がありますので、障がい者でも質の高い仕事ができますよということをお客様にアピールするために、積極的に外に仕事をとりに行って欲しいと思うのですが、現実にはグループ会社の仕事を受託しており、他の企業に対する積極的なアクションはあまり見られません。

ー障がい者がIT分野でも活躍できるということが、なかなか社会に認知されていかないというのが現実なのですね。

その通りです。アナログデータのデジタル化などは高い市場の需要があり、障がい者の働きがサービスに高付加価値を与えることができますが、そのことがなかなか理解されていないのが現状です。また、一般の企業にとっても障がい者雇用を企業の強みにするというよりは、企業のCSRの一環と捉えられがちですし、今、よく言われているSDGsにあやかっているようなものが多い印象を受けます。だからこそ、当社が障がい者雇用を企業戦略として位置付け、障がい者が活躍できる分野をITの中で開拓していくのが大切だと思っています。

ーIT分野での活躍の場を広げるために具体的になさっているアクションはありますか?

障害者優先調達推進法に基づく、国や地方公共団体における障がい者就労施設等からの調達実績は年々伸びていますので、行政分野での実績の積み上げに力を入れています。しかし、調達実績が伸びているのは事実ですが、調達の内訳をみると食料品の購入や、印刷業務の委託が中心で、当社のターゲットであるIT分野は、調達実績がほぼ横ばいで推移しているのが現状です。先ほども述べましたが、IT分野は障がい者であっても、サービスに高付加価値を付与することができますし、今まで実績が伸びていないからこそ、まだ十分な伸びしろが残っているとも言えます。そのため今後、行政分野での実績を積み上げていくことができるよう、地道に「分散入力システム」を利用したアナログデータのデジタル化作業に注力しています。また、こうした地道な実績の積み上げによって、お客様に障がいの有無に関わらず、求めるクオリティの仕事ができることを理解していただければと思っています。

障がい者の社員の具体的なお仕事内容について教えてください。

精神障がい者の社員と身体障がい者の社員は、先ほど申しました「分散入力システム」を利用した業務を担当しています。また、重度の身体障がい者の社員も在籍しており、書類の内容審査業務を担当しています。これは、各地方公共団体から書類の内容審査について委託を受け、書類が正確に記入されているかチェックを行うものです。また、地方公共団体が外部委託する、住民の方からの電話問合せの窓口業務も行っています。

ー重度の障がいの方は、どのような経緯で採用なされたのですか。

経緯としては、通常の採用活動と全く同じです。ハローワークに求人を出して、求人票を見てご応募いただいた方の中から採用しました。また、障がい者の方に入社後担当してもらう業務は求人票に記載された業務だけでなく、採用後にその方の得意分野や、やりたいことは何かの聞き取りをして、配属先や担当業務の決定をしています。そのため面接の際はその方の持つスキルよりも、その方のやる気と意欲に着目して面接を行っています。

ー面接を受けた方が持つスキルではなく、その方の人間性の部分に着目して採用しているのですね。

そうです。人を見て、その人に合う仕事を社内で見つけたり、創り出したりして、障がい者雇用を進めています。ただし、私が社員に対して常々言っていることは、自分の担当業務はこれというような限定をしないでほしいということです。当社で行われている業務は全て、基本的には障がいの有無に関わらず、当社の社員全員が向かうべき業務です。ただ、人には得手不得手があるので、それに基づいて業務の割振りをしているという風に捉えてほしいと言っています。また、全員で向かうべき業務であるからこそ、繁忙期などにはお互い助け合って、特定の社員に負担が集中しないようにしようという考え方が、社員の中に共有されています。

お互いにカバーしあう職場なのですね。そのように助け合う職場の風土はどのように生まれたのか教えてください。

基本的な話しですが、一人ひとりの社員が挨拶をしっかりと行うようにすること、気づいたことを、気づいた時にすぐ行う姿勢を大切にしてくださいとお願いをしていたら、自然と今の職場が生まれたように感じています。また、私が経営者として心がけているのは、従業員満足(ES)を向上させた先に、お客様満足(CS)の向上があるのであり、その逆では決してないということです。従業員が満ち足りた環境で働くことができて初めて、お客様を満足させる仕事ができるのだということを経営者として常に意識して取り組んでいます。

ー障がい者を含めて社員の皆さんが生き生きと働けるのは、従業員満足(ES)を高めた結果なのですね。

そうです。経営者の仕事というのは、社員が気づかないことに気づき続けることだと思います。社員が気づいていないこと、気づかないような小さなことに気づいて、職場の環境を改善していくことは、経営者にとって大事な仕事です。また、経営者として状況に応じて的確な判断をしていくためには、社員に対して私が開かれた存在でなければなりません。そうでなければ、正しい情報が集まらず、正しい判断ができないからです。だからこそ、障がい者の社員を含めて、社員全員にとって私が親しみやすい存在であり続ける、現場で生じた課題が確実に私のところまで届くように努力しています。

ー現場で働く社員の方の声が確実に小笠原社長まで届くよう努力なさっているのですね。

その通りです。ですから、現場の声を確実に聞けますので、私から社員に声かけすることを大切にしています。これは障がい者の社員も同じで、声かけを通じて、業務に関することだけではなく、悩んでいることや、今困っていることを把握できるようにしています。

ー社員の方とよいコミュニケーションをとることが経営者の仕事だとお考えなのですね。

そうです。とはいえ不平不満が全くない職場というのは不可能だと思います。だからこそ、社員一人ひとりが持つ、職場に対する不平不満を受け止めるのも経営者の仕事だと思っています。不平不満を受け止めて、少しでも前向きな方向に持っていくようコミュニケーションをとるのが私の大事な仕事の一つです。

これからこの会社をどのような会社にしたいかというビジョンがあれば教えてください

これからも、「正しいこと、自分が良いと思うことをする」という経営の軸を大切にしていきたいです。そうすれば、障がい者の社員を含めて全員が引き続き良い職場環境で働くことができると思います。

これから障がい者雇用に取り組む企業に対してメッセージをお願いします。

法定雇用率を守るために障がい者雇用をすることも大事ですが、経営者が障がい者だけでなく社員全員に対して愛情を持って接することが大切だと思います。愛情を持って接することができなければ、障がい者雇用に取り組むことは難しいと思います。

訪問を終えて

障がい者雇用にとって大切なことは、その企業のトップの方の社員に対する姿勢であると強く感じました。企業のトップが愛情を持って社員に接していれば、それによって、障がい者の社員を含めた全員にとって、働きやすい職場が生み出されると思いました。

(令和元年8月5日取材)