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更新日:2023年11月24日

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障害者雇用優良企業インタビュー(社会福祉法人幸済会)[No.89]

かながわ障害者雇用優良企業へのインタビュー記事です

事務長の佐々木様にお聞きしました。

・横浜市保土ヶ谷区川島町1514-2

http://www.fukushi-kousaikai.or.jp

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障がい者雇用のきっかけについて教えてください。

地域に根差した施設をつくるという当法人創立者の理念の下、地域の方から依頼を受け、当施設のオープニングスタッフとして雇用したのがきっかけです。平成5年の法人創立時より障がい者雇用に取り組んでおりますので、障がい者とともに働くことが当たり前の環境です。

ーオープニングスタッフとして採用された方の障がい種別について教えてください。

精神障がいです。ですから、当施設として最初に取り組んだのが精神障がい者の雇用ということになります。働き始めた当初は休みや、表情がさえないことも多く、日によって状態に波がありましたが、ご本人と周りのスタッフの努力により、定着へと至りました。

ー日によって調子に波がある中で、状態が悪い時、周りのスタッフの方々はどのように接していましたか?

基本的にいつもと異なる特別な対応をするわけではありません。励ますわけでも、頑張れと背中を押すわけでもなく、少し落ち着いてきたところを見計らってみんなが声をかけるようにしています。今では、時間をかけて見守るという姿勢でおりますが、当初は特に若いスタッフの中で戸惑いもありました。しかし、そのスタッフが主に働く洗濯室を切り盛りするスタッフは母親が自分の息子に接するように余裕をもって接してくれました。精神障がいのあるスタッフに対して上手なアプローチができるスタッフがいたことはとても心強かったですね。

就労支援機関の方に相談等はされていますか?

現在9名の障がい者のスタッフが在籍していますが、今でも月に一度ほどご訪問いただいて、お互いに相談や情報交換をしています。スタッフは本当によく頑張ってくれますが、頑張ってくれるがゆえに、強いストレスを感じている面もあります。また、周りのスタッフは「何でも聞いてね」や、「何でも相談してね」と言っていますが、障がい者のスタッフは、周りが忙しそうにしている中では、「なかなか質問できない」や「なかなか相談できない」ということを揃って言ってきます。ですから、本人、職場の上司、就労支援機関の三者で、落ち着いた環境で自分の意見や考えをじっくりと話す場は重要だと考え、今も月に一度継続しています。ただ、しっかりと定着に至り、就労支援の手を離れたスタッフもいますので、今は3名のスタッフに話し合いの場を設けています。

精神障がい者のスタッフだけでなく、知的障がい者のスタッフも在籍なさっていますが、担当業務と周囲のサポートについて教えてください。

洗濯業務と清掃業務を担当していて、私と同じ事務課に所属しています。また、目も少し不自由なので、仕事に支障をきたすことがあります。そのため、彼に渡す資料に関しては、読みやすいように文字を大きくするといった配慮をしています。

ーそれぞれの障がいに適したサポートをなさっているのですね。

その通りです。もう皆さん勤め始めて長いので、任せればどの作業も十分に一人で出来るレベルにあります。

ーそれではこれだけ長く働くことができる理由はどこにあるとお考えですか?

私が気をつけているのは障がい者のスタッフに対して、「こういう風な仕事をして、こういう風な成果を出して欲しい」ということをきちんと説明して、納得してもらうことです。ですから、スタッフはその仕事を行う意味を理解しながらやっていますし、丁寧に説明することが、仕事のやりやすさにつながっているのではないかと思っています。また、そのように密なコミュニケーションができる環境を作っています。

ー仕事の指示をなさるのは佐々木事務長に一元化されているのでしょうか?

主には私ですが、事務課のスタッフが他に3名いますので、私を含めた4名で仕事の提案や一日のスケジュールについて丁寧に説明して、仕事の成果までしっかりと見届けることを心がけています。

身体、知的、精神と障がい種別は様々ですが、彼らのモチベーションを維持できている理由はどこにあるのでしょうか。

これは特に障がい者のスタッフに限った話しではありませんが、毎朝作業場で朝礼を行っています。その時に例えば昨日の成果や、よくできたことの説明をして、それらについてスタッフみんなで共有しています。この朝礼にはスタッフ全員が参加しますので、その場で、「昨日みたいにやってもらうと本当に素晴らしい」という話しをすれば、みんながモチベーションを高くして、今日の仕事に取り組めると思っています。

障がい者雇用に取り組む中で大変だったことがもしあれば教えてください。

障がい者のスタッフと私たち事務課のスタッフの間でトラブルになることはありませんが、障がい者同士で上手くコミュニケーションをとれず、誤解が生じてしまうことがあります。例えば「私はこれだけの量をやっているのに、あの人は頑張っていない」ですとか、「私はここまで掃除をしたのに、あの人はここまでしか掃除をしていない」といったことです。もしそういったトラブルが生じたときには、私がその当事者を個別に呼び出して、「ひょっとしたらあの人は疲れているのかもしれないね」とか「今日は体調が悪いってあの人から今朝聞いていたんだよ」という風に、スタッフがしっかりと納得するように心がけています。大変だったことと聞かれますとそのようなコミュニケーションの面だけだと思います。

ーやはり、相手に納得してもらうというコミュニケーションの取り方が大切なのですね。

そうですね。あと私がもう一つ心がけているのは、年に1回障がい者のスタッフのご家族と当施設でお会いすることです。その目的は、立派に働いているところを見てもらうことでご家族の方に安心してもらうことです。ご家族は自分の子どもの将来についてとても心配に思っている場合もありますので、これだけ職場で頑張っていますよということを理解してもらいたいと願っています。もちろん、課題について話すこともありますが、それを含めてご家族にお話しすることが安心につながるのかなと思っています。

ー職場でのご様子を見てもらうことで、ご家族からはどのような反応が返ってきますか?

障がい者のスタッフはご家庭ではあまり仕事のことを話していないそうです。ですから、私がする職場での話しをご家族は初めて聞くというケースが多いです。そして、お話しをする中で、ご家族の協力も得ることができるようになっています。ただし、ご家族をお呼びするからといって、障がい者のスタッフを特別扱いしているわけではありません。障がいの有無に関わらず、人には長所と短所があります。だからこそ、その長所を上手く引き出せるようなコミュニケーションを心がけています。そしてそれが仕事の成果につながると思います。

ー長所を上手く引き出せたなというエピソードはありますか。

長所を上手く引き出せた具体的なエピソードではありませんが、本人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、何であっても言いやすい環境づくりを心がけています。私は事務長ですが、「事務長だから話しづらいな」や、「この話しをしたら事務長からどう思われるだろうか」といったことを思うことがないよう心がけています。どんな些細な事であっても、話してもらえれば、解決策を考えることができますし、事務課全体で解決策を考えることもできます。障がい者のスタッフが親近感をもてる人物であり続けようと努力しなければならないと考えています。

障がい者雇用を通じて気づいたこと、学んだことがあれば教えてください。

従来、障がい者のスタッフは洗濯と清掃を担当していましたが、最近では介護の補助を担ってもらうことが増えています。介護業務は事故のリスクがあり、危険を予知した動きが必要です。また、実際に受け入れる介護現場が障がい者のスタッフと働くことに理解を示してくれるかという懸念があり、介護業務はできないだろうと以前は思っていました。しかし、トライアル雇用をした方に、介護業務に携わってもらったところ、こちらが驚くほど現場のスタッフは温かく迎え入れてくれましたし、こんなにも仕事ができるのかという点にも大いに驚かされました。以前の介護現場は、介護専門学校を卒業したスタッフが中心でしたが、現在は多様な分野から介護の世界に入ってくるようになっています。それにより様々なバックグラウンドや考え方を持った人が、携わるようになりましたので、障がい者のスタッフも何の偏見もなく受け入れてくれるのかなと思います。

ー障がい者雇用を現場がサポートしてくれることと、現場の理解があれば障がい者の方にも介護業務はできることに気づいたのですね。

その通りです。しかし、障がいがあることは事実ですので、本人の特性やできることの見極め、勤務が可能な時間、働ける仕事の内容をしっかりと確立することが大切です。そして、そのように長く働いてもらえる環境を作ろうという声が私ではなく、介護現場のスタッフから出てきたことが本当に嬉しかったです。

ー先ほど、障がい者のスタッフが介護業務を何の問題もなくできたことに驚かれたと仰っていましたが、それは具体的にどのような業務でしょうか。

それは、身体介助業務だけではなく、100名を超える利用者様がいる中で、その方たちととても良いコミュニケーションをとれる点です。当初は自分から利用者様に声をかけることに戸惑いがあるかなと思っていましたが、積極的に利用者様とコミュニケーションをとろうとする姿勢が見られたことに本当に驚かされました。今では、「あの人に介助してほしい」というように指名されるスタッフもいます。正直に申しまして、利用者様にいろいろと頼られている姿を見ると自分自身の方がうらやましいくらいです。

ーやはり利用者の方に受け入れられるということが重要なのですね。

そうですね。利用者の方は一人ひとりのスタッフをしっかりと見ていますし、介助するスタッフを選ぶ立場でもあります。その利用者の方と自然に会話する姿が、入って間もなく見られたことに驚かされました。自分から利用者の方と自然に会話を生み出すことは、高いコミュニケーション能力が必要ですので、そこは驚きというより衝撃でしたね。

これだけ多くの障がい者の方が働き、かつ、長く勤めてもらう中で、障がい者雇用にとって一番大切なことは何だとお考えですか?

自分自身が勉強することだと思います。障がい者のスタッフに何かを求める前に、自分自身が障がいを一つの個性と捉え、彼らの良さを見つけて、その良さをより引き出すために勉強しなければなりません。障がい者のスタッフのご家族にとっては、障がい者である前に自分の子どもです。だからこそ、自分の子どもに仕事を頑張ってもらいたいと心から願っています。その気持ちは私も同じですし、ここで働くスタッフも全員同じ気持ちです。そして、そのような気持ちを持たなくてはいけませんし、持ち続けなければいけません。この気持ちが障がい者雇用にとって一番大切だと思います。

これから障がい者雇用に取り組む企業にメッセージをお願いします。

法定雇用率を満たそうという形だけのことを考えるのではなく、障がい者の良さを引き出すことを心がけて欲しいです。特に障がい者はたくさんの優しい心を持っていますし、その優しさを仕事で十二分に発揮することもできます。だからこそ、その優しさを発揮できる環境づくりに努めていただきたいです。良い仕事をするという同じ目標を持つ点で、私たちは仲間です。仲間だからこそ、同じ目線で接していくのが大切だと思っています。

訪問を終えて

「障がい者のスタッフが持つ心の優しさを発揮させるよう心がける」というお言葉がとても印象的でした。長所が引き出される環境だからこそ、障がい者のスタッフが長く働くことができるのだと感じました。

(令和元年8月5日取材)

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