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更新日:2023年7月21日

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障害者雇用優良企業インタビュー(社会福祉法人横浜長寿会)[No.56]

かながわ障害者雇用優良企業である社会福祉法人横浜長寿会の障害者雇用取り組み事例です。

石川理事に聞きました。

今回は、横浜市で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人横浜長寿会 石川理事にお聞きました。

社会福祉法人横浜長寿会

社会福祉法人横浜長寿会

障害者雇用のきっかけについて教えてください。

職業訓練法人神奈川能力開発センターさんから、平成16年に近所の団地に住んでいる学生さんの実習を受け入れてくれないかという話があり、実習を受け入れて、平成17年4月にその方を雇うことになったのがきっかけです。

それから、県障害者就労相談センターのリーフレットに、神奈川能力開発センターさんからの企業の紹介という形で私どもが載りました。それが縁で、県障害者就労相談センターさんからもご紹介していただきました。最近は、特別支援学校の卒業生を採用して、今(平成28年5月)、合計9名の障害のある方が働いています。

私どもとしては、社会福祉法人なので、法定雇用率に達するだけではなく、広く門戸を開いて障害のある方に働いていただけるようにしようというのが理想ですが、もう一つ、私どもの業界は人手が集まりにくい構造になっていまして、実際に人が足りません。仕事が多すぎる現場を助けるためにも障害のある方に働いてもらって、仕事を分業して、職員全体の負担を軽くすることを考えないといけないという事情があります。

障害のある方はどのような仕事をしているのですか。

当初は清掃の職員だけだったのですけれど、清掃の職員から介護をやりたいという人が出てきまして、難しい部分は確かにあるのですが、どこまでできるか、がんばってみようということになりました。

介護の補助をやっている職員がいますが、一人で全ての仕事ができるわけではありません。でも、どう活かすか。例えば、特別浴室という利用者さんが寝たままお風呂に入れる機械があります。必ずお1人の利用者さんに対して2人1組で組まないといけないのですが、健常の職員だけではなく、健常の職員と障害のある職員がペアになり、健常の職員が指導しながらずっと見ていて、育てていけば、作業が可能になります。そうすることで、お風呂に1人充てていた分を他に充てることができます。

他にも、居室周りの清掃で、ベッドの枠を全部拭く作業があります。埃がたまると、利用者さんの呼吸器に異常をきたす場合があるからです。以前は健常の職員が全部やっていましたが、それを障害のある職員に任せています。また、各部屋1つずつ市販の加湿器を置いてある建物では、冬の間は24時間加湿器を沸かすので、朝夕に水をいれないといけません。40近く部屋があり、40個の加湿器に水を入れるとこの作業に1時間とられてしまいます。それを障害のある職員に任せることで、その分を他の仕事、直接利用者さんと関わる仕事に振り分けることができました。

今、9人ですが、介護の仕事を任せられるのであれば、もっと採用したいです。去年4月に入った職員は、入った当初から介護を任せています。実習も介護の実習をやって、ご本人の希望もありました。雑務的なことを1人でやっていて、今、この職員がいなくなると困ると現場から言われています。

―食事の介助もされるのですか。

清掃の職員は食事の手伝いはしませんけれど、介護担当の中には食事の介助をやる職員もいます。自分でお食事を召し上がれない利用者さんには、職員が食事の介助をしなくてはならないのですけれど、ある障害のある職員は、食事の介助をしながら、周りの利用者さんにも気を配り、自分で召し上がっている方に「もうちょっと食べてくださいね」とか「水分とってくださいね」と声をかけています。もちろん、最初からはできないので、徐々にですが。

―いろいろな仕事をされているのですね。

もちろん、食事の介助が難しい職員には別の仕事を振り分けます。他にも、おむつを交換した後にそれを集めて洗濯場に持っていく仕事があります。今まで介護担当の職員がやっていましたが、今は清掃担当の障害のある職員がやっています。その分をまた他のところに振り分けられます。

特別支援学校などからの実習も受け入れていらっしゃいますか。

はい。清掃と介護の実習を半分半分でやってみて適性をみます。どのような感じで動けるのか、例えば、利用者さんとお話ができるのか、できないのか。自分が向いているか、向いていないか、頭の中でこういう仕事と思ってもなかなか難しい部分があるので、やってみないとわからないですね。あと適性もそうですけれど、本人のやりたいという気持ちですよね。

障害のある方の不安や心配事はどのように対応されているのですか。

人間関係の合う、合わないで悩む職員もいます。「最近どう?」とか話をして、本人のやる気を引っ張り出します。皆さん、自分で乗り越えようとしますね。私の部屋の机を拭きに来たときなどにいろいろ話をしますが、私には言いにくいこともあるみたいで、そういうときは直接仕事の支援や指導をしている職員に聞いておいてもらって、情報をこちらにくださいと言っています。聞いてほしいことがあるとき、そこを上手に捉えて話ができるかだと思います。

周りの介護担当の職員には、私が研修に行ったときのテキストで活用できそうな部分をコピーして配って、障害のある方との接し方のこういうところを注意してね、と話をしています。

ストレスが溜まっている職員には、支援機関や別の社会福祉法人の障害者の余暇支援を使ってもらったりしています。ガス抜きができる人とできない人がいます。ガス抜きしないとどうしても仕事の態度に出てきてしまいます。

精神障害のある方も働いていらっしゃいますね。

2人働いています。私どもの場合、自立をさせるということを目標に雇用して、がんばっていただこうという考えなので、障害があっても基本はフルタイムです。ただ、精神障害のある方の場合、あまり無理させない程度で働いています。勤務時間を少しずつ延ばしたり、本当に徐々にですね。

支援機関との連携はありますか。

神奈川能力開発センターさんは、担当の先生がいらっしゃって、きめ細かくサポートしていただけるので、我々だけでは難しい部分があるとき、同じような施設で障害のある方を雇っているところをご紹介いただいて、現場を見せていただいたりして、協力してもらっています。特別支援学校の担当の先生も非常に熱心で、卒業後もいろいろなことで情報をいただいています。

障害のある方を雇用し続けていこうと思うと、自分たちだけではなかなか難しいです。我々も、ここ8年、9年の世界なので、個々にどういう対応をしたらいいのか分からないところが沢山あります。そういうところで、いろいろ情報をもらって、我々も勉強しているというところですね。会社だけでどうにかするのは難しいです。

これから障害者雇用を始める企業にメッセージをお願いします。

以前、県主催のフォーラムに参加させていただいた時、「グラデーション」という話がありました。健常者と障害者には、はっきりとした区別はないという話だったと思います。私どもは、今まで元気だった方が、あっという間に歩けなくなって車椅子になって、寝たきりになってしまうというのを見てきているわけで、そのグラデーションというのが本当にそのとおりだな、と思ったのです。いつ自分の体が不自由になるのかわからない。全く別の世界ではなくて、自分の身近にそういうものがある訳ですよね。そういうものを、普段から考えていれば、おのずと答えが出てくるのかなと思います。

もう一つはですね、何というか、人間的なというか、企業体の中であまりないことですが、温かな気持ちになれるというのが彼らと一緒に働いていると感じられるような気がします。大変なのは確かです。いろいろと現場から苦情が来たりもします。でも、こういう世界があってもいいのかなとも思いますね。

やはり障害のある方に仕事を教えていくのは大変で、現場の職員たちには負担になる部分もあると思うのですけれど、障害のある職員はきちんと仕事を覚えてしまえば長く勤めていただけますし、特に介護では、成果を上げている部分があるので、今9人いますが、いい人がいればもっと雇いたいと思っています。清掃をやっている職員を介護のほうに少しずつシフトしていこうとも思っています。できる準備を少しずつ整えていきたいですね。

私どもも最初から手探りの状況で、学校の先生方や支援機関にご相談に行っていろいろ教えていただきましたが、まだこれからです。これからもう少しうまく教育できるか、ストレスをためないように本人たちの状況を把握できるかということを考えていかなくてはいけないのかなと思いますね。なるべく実習を引き受けながら、これからも広げていきたいです。

訪問を終えて

インタビュー後、石川理事と障害のある職員の支援・指導をしている職員の方と一緒に施設内の見学をさせていただきました。大変なこともあるが、成果も上がっているというお話どおり、障害のある職員の方が働いている姿を見ることができました。また、障害のある職員の方が仕事の手を止めて、支援・指導をしている職員の方と和やかにお話しする姿も印象に残りました。

(平成28年5月10日取材)

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