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更新日:2024年6月10日
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神奈川県立神奈川工業高等学校の活動内容を紹介するページです。
本校は、創立111周年を迎えた「機械科」「建設科」「電気科」「デザイン科」の4つの専門学科を設置する工業科の専門高校です。『来たる国際社会・超スマート社会で活躍できる「Society5.0エンジニア・Society5.0デザイナー」の育成』を学校目標に、理数基礎力(Science&Mathematics)、先端技術活用力(Technology)、工業(工学)に関する知識と技能の活用力(Engineering&Art)、グローバルコミュニケーション能力(English)を応用した創造的な問題発見・解決能力を身に付けさせる「神工STEAM教育」を実践しています。
ここでは、「課題研究」の授業で生徒が主体的に問題発見・解決に取り組んだ活動を紹介します。
この記事を読んでいる皆さんは「たたら製鉄」という言葉を知っていますか。たたら製鉄とは砂鉄と木炭を原料として日本刀や鉄砲、釘などの材料となる「玉鋼」と呼ばれる鋼を作る日本古来の製鉄技術のことです。しかし、ほとんどの方は、アニメや漫画の世界でしか聞いたことがない言葉なのではないでしょうか。それもそのはず、西洋式の製鉄・製鋼技術の発展に伴い、現代において一度失われた技術だからです。その一番の原因は現代製鉄のように大量生産することができないからです。
第一次世界大戦終了後の1923年にたたら製鉄は行われなくなり、現代の洋式高炉を使った製鉄法に転換してきました。それは歴史的背景から、安価で大量に鉄が必要となったからです。しかし島根県において1977年にたたら製鉄が復活し、多くの大学や高校の教員がたたら製鉄に関する研究を行い、2022年まで継承されてきました。
玉鋼には、高温にすると柔らかく加工しやすい性質や独特の模様が表れる性質が特徴として挙げられます。これは、現代の方法で作った鋼には出ない特徴です。何よりたたら製鉄で作られた鋼は現代の鋼に比べ、圧倒的に腐食に強いのです。その証明として、建立から約1400年経過した法隆寺の四角い釘がいまだ錆びずに役割を果たしています。
本校では生徒主導のもと、一昨年度から継続してたたら製鉄の研究を行ってきました。その中で膨大なデータや資料が集まり、操業のノウハウが培われました。たたら製鉄に関する研究は専門性が高く、様々な大学がその研究を行っており、本研究でも昨年度から横浜国立大学や東京工業大学と連携して研究を進めてきました。横浜国立大学の教授による出前授業では材料工学の視点から製鉄について考え、東京工業大学の教授に頂いた資料からは化学の視点でたたら製鉄の構造について考えることができました。
また、現代の社会問題の観点から、たたら製鉄とSDGsの繋がりを考えることができました。例えば本校生徒の仮説で「地球温暖化の解決に対し、たたら製鉄はアプローチできるのではないか」というものがありました。たたら製鉄で生成した玉鋼を用い、経年劣化していく鉄材を代替すれば製鉄の稼働率を下げ、温室効果ガス排出の抑止につながるのではないかというものです。その仮説のもと実験に取り組み、操業時に発生する二酸化炭素の排出量(理論値)の計算や投入した砂鉄と玉鋼の量の比、現代製鉄業に関しての調べ学習等を行いました。結果としては、「私たちが行ったたたら製鉄の方法では、製鉄される際に排出する二酸化炭素の排出量と製鉄された鋼の量の比較を現代製鉄と比べると、たたら製鉄が非効率的である。」という結論に至りました。
生徒が考えたものを机上の空論だと決めつけずに、結論まで取り組ませることが課題解決能力の向上につながっていくと感じました。
このように、本校では課題研究という時間で、日々の学びで発見した疑問や課題を、授業を通じて生徒が解決しようとしています。
「知る・つくる・使う」の一連の流れを工業高校における「ものづくり」を通じて、楽しみながら身に付ける。この楽しむことこそ「ものづくり」において最も重要な姿勢ではないでしょうか。
本校は神奈川県初の県立工業高校として設立を認可され、以来1世紀にわたり神奈川県を代表する工業高校としての歴史を重ね、産業界をはじめ各方面に多くの優秀な人材を輩出してきました。
現在は、この課題研究の授業のように、生徒一人ひとりの興味・関心や進路希望に応じた専門的な学習を行っています。
今後はさらに、実際的・体験的な学習を通して、科学技術の進展を担うために必要な課題を発見し解決する力や主体的に学ぶ意欲、技術等、これからの時代に必要な資質・能力の育成に向けた教育活動の充実に取り組んでまいります。
神奈川県立神奈川工業高等学校
電話:045-491-9461
(掲載内容は掲載日現在のものです。最新の情報は各県立学校のホームページでご確認ください。)
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