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更新日:2023年3月20日

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第1回「人を雇う」ための基礎知識

NPO法人の労務に関する説明です。

NPOで働く

仕事や働き方の選択肢が増えるなか、NPO法人で働く人が増えています。ボランティアや社会貢献などを行うためだけではなく、NPO法人を「働く場」とする人たちも少なくありません。

NPO法人で働く人を雇い入れるときは、一般企業と同じように雇う側(使用者)は労働基準法を守らなければなりませんし、労災保険はもちろん、条件を満たせば雇用保険や社会保険も必要となります。
労働者(職員)を雇ううえで、使用者も知っておきたい内容です。


職員も労働者!では労働者って誰のこと?

働き方には、一般企業と同じように常勤職員(正社員)として働く他に、非正規雇用職員(パートタイマー、アルバイト、契約社員など)といったさまざまな働き方があります。

労働者とボランティアとは違います、では労働者とは?
1.職業や就業の場所に関係なく
2.会社に雇われ
3.会社の指示、命令を受けて
4.定められた時間働き
5.働いたことに対する対価として
6.給料(賃金)の支払いを受ける人
のことをいいます。

働く人々(労働者)を保護するためのさまざまな法律(労働法)があります。

「働くときに知っておきたい労働関連法の基礎知識」NPO法人あったかサポートより引用


労働基準法の役割と内容

労働者を雇い入れるときに、使用者(企業もNPO法人も)が守らなければならない、賃金・労働時間・休日や休暇・労働災害の補償などの最低基準を定めた法律です。
労働条件の決定に際し、立場の弱い労働者を保護すること目的とし、違反すると罰則があります。

ちょっぴり法律♪
労働基準法13条
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。

労働時間の原則

法定労働時間

労働基準法が規定している時間

1日8時間以内、1週40時間以内(休憩時間は除く)
使用者の指揮命令下に置かれている時間
準備、掃除などの後片付け、強制された研修、昼休みの電話番(待機)
なども労働時間

所定労働時間 法定労働時間の範囲の中で事業所ごとに定められた始業から終業の時間(休憩時間は除く)就業規則などに定められている

法定労働時間の例外

  • 変形労働時間制

法律で定められている労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超えて働かせることができる弾力的な労働時間制度をいいます。
たとえば、一定期間内(1週・1か月・1年などの期間)を平均して週40時間以内におさまっていれば、法律で認められます。
採用するためには、就業規則その他これに準ずるものを規定し、労働者に周知しなければなりません。

  • 災害時に臨時の必要がある場合の時間外労働や休日労働

  • 「36協定」による時間外労働や休日労働

使用者は、労働組合、または労働者の過半数を代表する者との間に「36(サブロク)協定」を結んで、労働基準監督署に届け出なければ、時間外労働や休日労働をさせることはできません。
36協定で定める延長時間は、最も長い場合でも次の限度時間を超えないようにしなければなりません。

時間外労働の限度に関する基準(一般の労働者)

期間 1週間 2週間 4週間 1か月 2か月 3か月 1年
限度時間 15時間 27時間 43時間 45時間 81時間 120時間 360時間

※18歳未満の年少者は協定があっても時間外、休日、深夜労働をさせることできません。
※時間外労働の上限が2019年4月から罰則付きで法律に規定されました。(中小企業への適用は2020年4月から)内容を確認してください。

賃金支払の原則

  • 現金で支払う(同意がある場合は、銀行振込みによることができる)
  • 直接、労働者本人に支払う(未成年だからといって、親に支払うことはできない)
  • 全額を支払う(会社が勝手にお金を賃金から引くことはできない)
  • 毎月1回以上支払う(2カ月分まとめて支払うことはできない)
  • 決まった日に支払う(支払日が決まっていないといけない)

神奈川県の地域別最低賃金2019年10月1日~1,011円です。

時間外労働と割増賃金のルール

使用者は法律で決められた労働時間を超えて働かせたり、休日(法定休日)に労働させた場合は、割増賃金を支払わなければなりません。

時間外労働の割増率

  • 法定労働時間を超えて働くことを「時間外労働」→25%以上
  • 1か月60時間を超える時間外労働については50%以上の割増賃金の支払いが必要(中小企業は当面の間、適用猶予)
  • 法定休日に働くことを「休日労働」→35%以上
  • 午後10時から午前5時の間に働くことを「深夜労働」→25%以上

休憩・休日のルール

休憩 1日の労働時間が
6時間を超える場合……45分以上
8時間を超える場合……60分以上
労働時間の途中に与えられ、その時間は自由に利用できます
休日 毎週少なくても1回(法定休日)
あるいは4週間を通じて4日以上

※休憩時間に来客対応や電話対応を行ったら“休憩”ではなく“労働時間”です。
※週休2日の場合、そのうち1日を休日出勤しても休日の割増になりません。

年次有給休暇のルール

有給休暇は、休日以外の日に休んでも賃金を支払ってもらえる休暇のことです。
働き始めてから6カ月間の出勤率が8割以上なら、10日取得でき、その後1年ごとに、8割以上の出勤率を満たしていれば働いた年数に応じた日数が与えられます。

有給休暇の付与日数(基本)

勤続年数 0.5年 1.5年 2.5年 3.5年 4.5年 5.5年 6.5年以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

週の所定労働時間が30時間以上、または週の所定労働日数が5日以上働くパートタイマーなどの労働者の有給休暇は(基本)と同じです。

※アルバイトやパートタイマー(週30時間未満で4日以下)も所定労働日数や勤続年数に応じて付与しなければなりません(「比例付与」という)。
※有給の時効は2年、2年の間に使わないと消滅します。
※有給を取得することで仕事が正常にまわらなくなるようなときは使用者は日程の変更ができます。
※2019年4月から年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して年次有給休暇の日数のうち、年5日は使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられました。パートタイムなどで働く労働者も対象となりますので注意してください。

退職、解雇(雇止め)

退職 労働者からの申出によって労働契約を終了すること
つまり、自分(労働者)から会社を辞めること
解雇 会社からの言い渡しによって一方的に労働契約を終了すること
つまり、会社を辞めさせられること

退職

自分から辞めるとき、会社に就業規則があればその規定にしたがいます。(なければ労働条件を示す書面を確認)
雇用期間に定めがない場合、労働者が使用者に退職の意思を示してから(一般的に「退職届」を提出)2週間経過すれば退職できます。
期間に定めがある契約の場合には、契約期間の満了時に辞めることは問題ありません。
労働契約を更新するには労働者、使用者双方の合意が必要であるため、更新に合意しなければ契約終了とともに勤務も終了します。

解雇

解雇には制限があります
使用者は就業規則などに解雇の事由を記載しておかなければなりません。


ちょっぴり法律♪
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

※たとえ、解雇が有効でも

(1)少なくても30日前に予告をすること。
(2)解雇の予告が行われない場合は、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります。

予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合は、その日数を短縮することができます。

※雇用期間の定めがある場合には、やむを得ない事由がない限り、原則として契約期間を満了するまで解雇はできません。

法律で禁止されている解雇

男女雇用機会均等法で

労働者の性別を理由とする解雇
女性労働者が妊娠・出産・産前産後休業したことを理由とする解雇

育児・介護休業法で

労働者が育児・介護休業の申出をしたこと、または休業したことを理由とする解雇

労働基準法で

業務上のケガや病気の休業中とその後30日間
産前産後の休業中とその後30日間
法律違反を労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇、など


雇うとき、雇われるとき(労働契約)

使用者は労働者と労働契約を結ぶときは具体的な契約内容を書面で交付しましょう。
書面で示すべき労働条件はこちらです。

  1. いつからいつまで働くのですか(契約の期間)
  2. (いつからいつまで働くのか決まっているとき)更新がありますか(更新の有無)更新する場合の判断のしかたはどのようなものですか
  3. どこで働くのでしょう(就業の場所)
  4. どのような仕事をするのですか(業務の内容)
  5. 1日のうち何時から何時まで働きますか(始業、終業の時刻)
  6. 残業はありますか(時間外労働の有無)
  7. 休憩時間は何時から何時までですか
  8. 休日はいつですか
  9. 有給休暇はいつから何日ありますか
  10. 給料は・・・決定、計算、支払の方法、締日と支払日
  11. 会社を辞める(退職する)とき、会社を辞めさせられる(解雇される)ときの決まりはどうなっているのでしょう
  12. 退職、解雇の事由や手続きなど

パートタイマーで働く労働者には上記の内容に加えて昇給、退職手当、賞与の有無などの一定の事項を書面等で明示しなければなりません。

契約期間の定め

労働契約には、期間の定めのない契約と期間の定めのある契約があります。
契約社員は、一般的に半年、一年などの期間に定めのある労働契約(有期労働契約)をいい、有期労働契約は契約期間の満了により自動的に終了します。
ただし、平成25年4月以降、新たに開始する有期労働契約が更新されて通算5年を超えた場合には、労働者が申込むことによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できることになりました。

期間の定めのある働き方とは?

原則は一回の契約期間の上限3年、満60歳以などは上限5年、有期の建設工事等はその期間


就業規則その他

就業規則は、賃金・労働時間・職場の規律などについて、労働者の意見を聞いたうえで事業所が定めるルールブックです。

就業規則は
(1)パートタイマーやアルバイトを含めて常時10人以上雇っている場合に作成
(2)労働基準監督署へ届け出をし
(3)いつでも、見ることができるようにする(周知する)
常時10人未満の事業所もトラブル防止や服務規程を定めた就業規則を作成したほうがよいでしょう。

就業規則には必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)と制度を設ける場合に記載するべき事項(相対的記載事項)があります。

絶対的記載事項 (1)働く時間に関すること
・仕事の始めと終わりの時刻
・休憩の時間と取り方
・休日、年次有給休暇
・交替制の仕方など
(2)賃金に関すること
・賃金の決定、計算方法
・支払い方法
・締切り日、支払い日
・昇給に関することなど
(3)退職に関すること
・退職、解雇について
相対的記載事項 (4)退職手当について
(5)賞与について
(6)服務規律
職場で守らなければならない行動や
服装などに関するルール
(7)懲戒
こういうことはしてはいけない、といった服務規律に違反した場合の罰則
(8)教育訓練について
(9)その他全ての労働者に関すること

就業規則は法律の改正など、必要に応じて変更しなければなりません。
また、労働者を雇入れたら労働者名簿、賃金台帳、出勤簿を備え3年間の保存してください。


社会保障制度

病気、ケガ、出産、失業、障がい、死亡、老齢、介護などさまざまな理由で働くことができなくなったとき、労働者の生活を助けてくれるのが“社会保障”です。
労働者を雇用したら、労働保険や社会保険に加入しなければなりません。国、事業主、労働者、それぞれが保険料を負担します。

労働保険の役割と手続き

労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険を総称して労働保険とよびます。

労災保険の役割

労働者が、

  • 仕事中や通勤途中にけがをした
  • けがや病気を治すために仕事を休み、賃金を受け取ることができない
  • 仕事中のけがで障がいが残った

などの場合に必要な給付を行う制度です。

1人でも労働者(アルバイトやパートタイマーなどを含む)を使用する場合は、適用事業となり、事業を開始した日から自動的に保険関係が成立します。

労災保険の手続き

事業所を管轄する労働基準監督署に

  • 保険関係成立届(保険関係が成立した日の翌日から10日以内)
  • 概算保険料申告書(保険関係が成立した日の翌日から50日以内)

を提出し、所定の保険料を納めなければなりません。
※詳しくは事業所を管轄する労働基準監督署にご確認ください。

雇用保険の役割

労働者が、

  • 失業したとき
  • 育児休業や介護休業を取得したとき
  • 働く能力を伸ばすために教育訓練給付をうける

などの場合に必要な給付を行う制度です。

1人でも労働者を使用する場合は、適用事業となり、事業を開始した日から自動的に保険関係が成立します。

雇用保険の被保険者
雇用保険の適用事業に雇用され、所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上雇用見込みのある労働者は当然に被保険者となります。

雇用保険の手続き

事業所を管轄する公共職業安定所に

  • 雇用保険適用事業設置届(設置の日の翌日から10日以内)
  • 雇用保険被保険者資格取得届(資格取得の事実があった日の翌月10日まで)

を提出します。

新たに労働者を雇入れときには、その都度、被保険者資格取得届を提出します。
※詳しくは事業所を管轄する公共職業安定所にご確認ください。

社会保険の役割と手続き

健康保険と厚生年金保険を総称して社会保険とよびます。

社会保険の役割

健康保険は、

  • 病気やけが(私傷病)で病院にかかったとき
  • 出産したとき
  • 病気やけが(私傷病)で働けないとき

厚生年金保険は、

  • 年を取ったとき
  • 病気やけがをして障がいが残ったとき

などの場合に必要な給付を行う制度です。

原則としてすべての法人事業所(NPO法人も含む)、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所(一部除く)が健康保険厚生年金保険の適用事業所となり、適用事業所に使用される者は被保険者となります。

なお、適用事業所が法人の場合は、取締役(NPO法人なら理事長)は法人に使用される者として被保険者となります。

健康保険では、被保険者に扶養される者も保険給付の対象となります。

社会保険の被保険者
パートタイマーやアルバイト等でも事業所で常時使用される場合は、被保険者となります。
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働時間が同じ事業所で同様の業務に従事している一般の社員(職員)の4分の3以上である方は被保険者となります。
〔一般の社員(職員)の4分の3未満であっても要件を満たせば被保険者となれますので、内容をご確認ください。〕

社会保険の手続き

事業所の所在地を管轄する年金事務所(郵送なら神奈川事務センター)に

  • 健康保険厚生年金保険新規適用届(事実発生から5日以内)
  • 健康保険厚生年金保険被保険者資格取得届(事実発生から5日以内)
  • 被保険者となった方に被扶養者がいる場合には健康保険被扶養者(異動)届(事実発生から5日以内)

を提出します。

被扶養者となれる人の範囲や収入の条件等、添付書類などにご注意ください
※詳しくは事業所の所在地を管轄する年金事務所にご確認ください。


この文書は2020年2月28日現在の法律をもとに記載しています。


講師:岸田則子

プロフィール:社会保険労務士

このページに関するお問い合わせ先

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