水道水質の解説(2)

掲載日:2018年3月6日

keyわーど:アオコ

 経済活動の発展に伴い、その影響を受けた湖沼などでは、富栄養化が進みました。その結果、藍藻類と呼ばれる植物プランクトン(ミクロキスチスやアナベナなど)が大量発生して水面に浮上し、水面が緑色のペンキを流したような状態になる現象が生じるようになりました。この現象は、水面に緑色の粉(アオいコナ)を浮かべたようでもあるため、「アオコ現象」と呼ばれます。

アオコ現象

Keyわーど:一般細菌

 一般細菌は、水道水の水質基準で1番目に記載されている検査項目で、土壌や汚水等による細菌汚染の一般的な指標として用いられています。こうした汚染には、高栄養で体温に近い温度において比較的短時間に集落を形成する細菌が多く含まれます。そのため一般細菌は、様々な細菌が増殖可能な「標準寒天培地」を用いて、約36℃で24時間培養したときに集落を形成する細菌数から求めます。

 水質基準では、「水道水1mL中に100個以下であること」と決められています。食品分野では製品の基準の一つに、「細菌数」あるいは「生菌数」という名称で、類似した検査法(標準寒天培地法)が用いられています。その基準の一部を培養条件とともに表に示します。

製品名 基準値 培養条件
水道水 100個/mL以下 36℃で24時間
氷菓 10,000個/g以下 35℃で48時間
生食用かき 50,000個/g以下 35℃で24時間
冷凍ゆでだこ 100,000個/g以下 35℃で24時間
牛乳(無調整) 50,000個/mL以下 35℃で48時間
細菌数の基準値と培養条件

 食品の基準値は、水道水に比べて、高いことが分かります。水道水では、浄水処理が適切であったことを確認する目的で検査を行っており、厳しい基準値が設定されていると言えます。神奈川県営水道の水道水の一般細菌の検査は、末端給水栓水で毎月行っており、通常は1mL中に0個です。

Keyわーど:クリプトスポリジウム

 平成8年6月に埼玉県越生町において、水道水を介して「クリプトスポリジウム」という胞子虫類に属する原虫(寄生性原生動物)感染症が発生しました。クリプトスポリジウムのオーシスト(接合子嚢)は塩素消毒に対して強い抵抗性があるため、水道水を介して感染したのです。クリプトスポリジウムに感染した時の症状は、腹痛とさらさらの泥水のような下痢を発し、健康な人であれば2週間で回復します。

 クリプトスポリジウムは環境中ではオーシストの状態で存在します。このオーシストは塩素消毒に対する抵抗性が強く、これを除去するためには浄水処理を厳密に行う必要があります。厚生労働省から出された「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」に基づいて、県営水道ではろ過水濁度0.1度以下になるように浄水処理を行っています。

 水道水質センターでは、ジアルジアと合わせて試験を行い、水道原水の監視を行っています。

クリプトスポリジウムの顕微鏡画像

Keyわーど:嫌気性芽胞菌(ウェルシュ菌芽胞)とウェルシュ菌

 「嫌気性芽胞菌(ウェルシュ菌芽胞)」は、ヒトや動物の腸内などの酸素の少ない場所で増殖するため(嫌気性)、それらの糞便には常に含まれています。一方、環境中では乾燥や熱に強い丈夫な殻(芽胞)を形成できる細菌で、長期間生き残ることができます。糞便に含まれることや環境中での強さといった性質から、「嫌気性芽胞菌」は、平成19年厚生労働省健康局水道課長通知「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」において、クリプトスポリジウム等による汚染のおそれを判断する指標とされています。ただし、クリプトスポリジウム等の指標とされていないことには、ご留意ください。

 県営水道では、この対策指針の嫌気性芽胞菌の他に、より軽微な糞便汚染を把握するために、芽胞未形成のウェルシュ菌を含めた「ウェルシュ菌」も測定しています。

嫌気性芽胞菌(ウェルシュ菌芽胞)とウェルシュ菌の検査

Keyわーど好気性芽胞菌

 「好気性芽胞菌」は、嫌気性芽胞菌と同様に芽胞(乾燥や熱に強い丈夫な殻)を形成できる細菌ですが、嫌気性芽胞菌と異なり酸素のある環境で増殖します。食品分野の検査では沸騰水下で芽胞型以外の細菌を殺滅して生残する細菌を芽胞型としていますが、水道における試験では75℃・20分間の加熱条件で生残するものを芽胞型と選別しています。

 好気性芽胞菌は好気条件下での増殖性が高く、腸内のような嫌気的な条件では増殖できないため、嫌気性芽胞菌のように糞便汚染指標細菌とはなりません。しかし、水道で用いる消毒剤の塩素に対しては、他の細菌(嫌気性芽胞菌も含む)より抵抗性が高いため、浄水処理における消毒効果を見る指標細菌として適しています。当センターでは、2mL程度で行っていた試験を4000mL以上でも行えるよう改良し、処理工程での細菌数の変化を把握しています。

好気性芽胞菌の検査

Keyわーどジアルジア

 ジアルジアは、鞭毛虫類に属する原虫(寄生性原生動物)で、人に下痢や腹痛を引き起こす種をランブル鞭毛虫(Giardia lamblia)と呼んでいます。この原虫は増殖が可能な栄養体と、シスト(嚢子)の二形態があり、感染した人や家畜の糞便とともに、シストが排出されます。このシストを取り込むことで感染しますが、健康な成人では症状が出ないこともあり、本人が気付かずにシストを排出している場合もあります。

 ジアルジアのシストは、河川水中に存在していることがあります。しかし、塩素消毒に対してクリプトスポリジウムほど抵抗性はなく、一定の消毒効果は期待できます。浄水場では、厚生労働省の「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」に従い、ろ過水濁度0.1度以下になるように浄水処理を行っているため、最終的にクリプトスポリジウムと同様にろ過工程で除去されます。

 日本でジアルジアが水道水に検出され、給水停止や煮沸勧告が行われた事例もあり、水道水質センターでは、クリプトスポリジウムと合わせて試験を行い、定期的に水道原水の監視をしています。

ジアルジアの顕微鏡画像

Keyわーど従属栄養細菌

 低有機栄養培地を用いて20℃で培養したとき、培地に集落を形成する細菌を「従属栄養細菌」と呼んでいます。この方法は、有機炭素濃度が低く10から30℃という環境である水道水中でも生育できる細菌を検出することができます。

 従属栄養細菌は浄水処理をしていない水道原水中にたくさん存在していますが、浄水処理工程(凝集・沈殿・ろ過・塩素消毒)により0個近くまで減少します。ところが、塩素に抵抗性を持つものは死滅せずに「生きてはいるが増殖できない状態」で存在しているようです。

 つまり、ほとんど検出されない浄水の中にも、塩素で損傷を受けている細胞がいます。その結果、給・配水システムで水の滞留があると、残留塩素が消失し、従属栄養細菌が再増殖します。

従属栄養細菌の検査

 従属栄養細菌は次の目的で利用しています。海外では従属栄養細菌を水質基準項目として採用している国もあります。

  • 有機汚濁指標:有機物質に汚染された水で多く検出されやすい。
  • 浄水処理工程の監視:処理における微生物除去効果を評価しやすい。
  • 清浄性の確認:給・配水システム内の滞留での増加で判定する。 

Keyわーど障害生物生物障害

 浄水場の上流域(湖や河川)で繁殖した生物(主にプランクトン)が流下して浄水処理に影響を与えたり、水道水に濁りや臭いを着けたりすることがあります。こういう状況を「生物障害」と呼び、原因となる生物を「障害生物」と呼びます。下表に、県営水道における生物障害名と原因となる主な障害生物の属名を示します。

生物障害名 原因となる主な障害生物の属名
ろ過閉塞 珪藻類:アステリオネラ属、オーラコセイラ属、フラギラリア属、シネドラ属
ろ過漏出
及び
浄水着濁
藍藻類:ミクロキスチス属
珪藻類:キクロテラ属、ステファノディスカス属、ニッチア属
緑藻類:カルテリア属、クラミドモナス属、ジクチオスフェリウム属
その他:ピコプランクトン(0.2から2μmのプランクトンで、複数の属に所属する)
異臭味(かび臭) 藍藻類:アナベナ属、フォルミジウム属
異臭味(生ぐさ臭) 黄金藻類:ウログレナ属、シヌラ属
発泡 鞭毛藻類:クリプトモナス属
県営水道における生物障害と原因となる主な障害生物

 県営水道では、生物障害の発生を未然に防ぐため、水源、原水、浄水処理工程水及び給水栓水について、月に1回以上定期的に生物試験を行っています。障害生物については、生物障害を早期に発見するため、原水で週1回、発生状況を監視しています。

Keyわーど大腸菌

 水を介して発生する感染症(コレラ、赤痢、クリプトスポリジウム症、腸管系ウイルス症など)を水系感染症と呼びます。水系感染症の原因微生物は、人や動物の糞便に由来しています。こうした原因微生物を一つ一つ検査することは、コストも手間もかかり実施できません。その代わりに大腸菌を測定することにより、糞便の混入を把握しています。つまり、水系感染症原因微生物の混入の可能性を示す指標として用いられます。

 大腸菌とは、Escherichia coli(エシェリキア・コリ)と呼ばれる細菌です。大腸菌一個は、幅1.1から1.5μmで長さ2から6μm(1μmは1mmの1000分の1)の長楕円体をしていますが、肉眼では見えません。ヒトの大腸に常在する腸内細菌の一つで、「ヒトの糞便1gあたり1億個以上も存在する」と言われています。O157などの一部の病原性大腸菌を除くと、これだけの数が腸管内に存在してもヒトへの健康影響はありません。

 平成16年4月から、「大腸菌群」に代わり、糞便汚染により関連の強い指標である「大腸菌」が水質基準項目に採用されました。これは本来、大腸菌を検出する目的で様々な検査方法を開発したものの、他の細菌も検出するため「大腸菌群」とせざるを得なかった経緯があります。しかし近年、大腸菌を特異的に検出できる簡単な試験方法がいくつか開発されました。そのうち、MMO-MUG法は、細菌が持つ酵素を利用し、大腸菌群および大腸菌が特異的に確認できるように工夫された培地を用いる方法で、水質基準の大腸菌試験方法として認められています。この方法を、水道水質センターも採用しています。

 大腸菌試験において陽性を示した場合、その水道水が糞便に汚染された可能性が考えられ、水道施設の点検及び水道水質の総点検を行います。水道水は塩素消毒がされているため、何らかの原因がなければ大腸菌が検出されることはありません。

大腸菌群と大腸菌の検査

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