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更新日:2018年8月27日

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総合計画審議会第61回計画推進評価部会・第13回計画策定専門部会 審議結果

総合計画審議会第61回計画推進評価部会・第13回計画策定専門部会の審議結果

様式3

次の審議会等を下記のとおり開催した。

 
審議会等名称 総合計画審議会第61回計画推進評価部会・第13回計画策定専門部会
開催日時 平成23年11月10日(木曜日)18時から20時まで
開催場所 かながわ県民センター 2階 特別会議室
出席者

鈴木佑司、○江口隆裕、大久保一郎、笹生悦子、藤井繁子、青木昇、澤畠光弘、曽とく深、土井香苗、三井逸友、山本佳世子

〔計11名〕

(◎部会長、○副部会長)

次回開催予定日 平成24年1月26日(木曜日)
問い合わせ先

政策局政策調整部総合政策課計画グループ 諸星

電話番号 045-210-3061(直通)

ファックス番号 045-210-8819

審議経過

議題1 新たな総合計画の策定等について

《資料1「かながわグランドデザイン 基本構想編(仮称)(素案)(案)概要」、資料2「かながわグランドデザイン 基本構想編(仮称)(素案)(案)」、参考資料1「総合計画審議会計画策定専門部会の意見と対応」について事務局から説明。》

 鈴木部会長:事務局の方から説明をいただきましたのは、資料1のグランドデザイン基本構想(仮称)(素案)(案)の概要です。この資料1にありますように、前知事の1期目に、条例により、基本構想の策定や変更等には議会の議決が必要となりました。今、報告をしていただいた部分が県議会で議論されるところですので、なるべく、委員の皆様に分かりやすくお示ししています。

もう一つは、伝統的なやり方と少し違い、基本理念から入って、現状の社会環境は資料として扱うよう変更しています。三点目は、赤字で作っていただいた修正の方向性や内容です。どなたからでも結構ですので、名称を含めてご意見をいただけますでしょうか。

 江口委員:「かながわグランドデザイン」というのは今回はじめてなのですか。つまり、このグランドデザインという構成に知事の思い入れがあるのでしょうか。

 早川総合政策課副課長:名称は県知事の意向に沿った形で、前回で言えば、「神奈川力」という表現をしていました。一般的な言い方では、神奈川県総合計画ですが、インパクトがあって分かりやすい名前を出していくため、こういう名前にしております。

 江口委員:今回の計画づくりで思うことは、知事の政治方針と行政計画の両立が非常に難しいということです。松沢前知事の時は政治家としてのマニフェストを別に作られていたので、マニフェストという政治方針と県の行政計画はある意味二枚看板でしたが、それなりに役割が分かれていた。しかし、今回はそういうものもありません。したがって、議論の効率性という意味で、知事の基本的なスタンスをお教えいただかないと、あまり、生産的な議論にならないような気もします。

 川﨑政策調整部長:名は体を表します。名称については、松沢知事から黒岩知事に代わって、議会でも議論がありました。このままでいくのか、いかないのか。「基本構想」は、議決をいただいておりますので、政権が変わろうとなかろうと、今のままが正しいという意見もありました。名称については、知事を含めて議論させていただき、自治基本条例の中にも「総合計画」の記述がありますので、何を作っている計画なのかが分かるよう、「神奈川総合計画」という名称でも良いのではないか、という整理をしました。そうした中で、県民、県議会等々からご意見をいただきましたが、黒岩知事のカラーはエネルギーや災害対策、それから、「いのち輝くマグネット神奈川」の実現なのであれば、やはり、県民に分かりやすいメッセージとして「かながわグランドデザイン」が一番伝わりやすいのではないかということで、今日はご提示させていただいています。

 内田参与:知事のキーワードは「人」と「いのち」です。今までの科学技術は、すべてにおいて普遍性や一般性、客観性が重要で、合理性があるから良い、使いなさいという考え方が中心でしたが、今はそうではありません。やはり、本来は人が主人公なので、中心に人がいて、たとえ非合理的なものがあったとしても、それに対応する科学技術を考えなくてはいけないという、人を中心に政策をやりたいとおっしゃっていましたので、キーワードはそこにあると思います。それが、エネルギーの政策転換や持続可能な社会とかに表れているのだと思います。

 藤澤総合政策課長:江口委員からご質問のありました個別の政策については、夏の政策サマーレビューの場を通じて議論してまいりました。その結果を整理して原案をつくり、その内容を精査し、実施計画へ具体的に反映させていますが、前回の部会で様々な意見がありましたので、その趣旨も反映したような形で素案の案を整理しています。従いまして、個別の政策については、いただいたご意見や趣旨を精一杯反映させたものと考えています。

 山本委員:資料1と2を見て思ったのは、基本構想の「政策展開の基本的視点」には、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故を意識して、全面的に意味合いが強く出ています。そうした場合、今後15年ぐらいをこのままで進めていくことが適切なのか疑問に思いました。基本構想を見直すにあたり、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故による影響はあったと思いますが、これから15年ぐらいをこのままでいくのでしょうか。別の視点も出てくるのではないでしょうか。

 藤澤総合政策課長:基本構想は2025年までの概ね20年後を見通していますが、資料2の第3章に「基本構想の見直し」というのがあります。これは、実施計画の改定時など、状況の変化に応じて総合的に点検を行うもので、その結果、必要があると判断された場合に、見直しをすることになっています。当初、実施計画は2年程度の期間の設定としていましたが、総合計画審議会などから、3年にした方がよいのではないかとのご意見をいただきましたので、実施計画は3年で策定することとしました。その実施計画との整合性も踏まえ、現行の基本構想の第5章に沿って点検を行った上で、必要があれば見直しをしていくことになります。現時点では、大きな時代の変化として、国難ともいえる状況の中で、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故への対応を強調していくということです。

 川﨑政策調整部長:昨年度の点検において、人口の変化は多少のズレがあったものの大きなトレンドは変わらなかったことから、総合計画審議会でも基本構想の見直しはしなくてよいという結論をいただきました。しかし、その後に起きた東日本大震災が社会環境を大きく変えましたし、福島第一原子力発電所の事故もまだ収束していません。こういった中で、実施計画のプロジェクトではエネルギーや原発に関わるものが相当出てきますが、基本構想にはそうした記述がありませんでした。例えば、エネルギーの問題は、産業にも我々の生活にも影響しますが、現行の基本構想では環境の一部にしか記述がありません。今まで、エネルギーというのは国の施策という捉え方をしていたので非常に狭かったのですが、これからは、過度に原発に依存しない、環境に配慮する、地産地消、などの原則も掲げていかないと実施計画とつながってきません。今回の見直しでは、こうした部分を追加させていただきました。

 青木委員:今、山本委員がおっしゃった受け止め方と同じ考え方を最初から持っていました。従来の基本構想にあるバックグラウンドに加えて3月の非常に大きな事故が起こりましたので、変えなければいけないものは変えた方がいいと思いますが、それがあまりにも強く出すぎているのではないでしょうか。本来の重要なことが、少し、色あせて見えるようなイメージを持ってしまうので、エネルギーや災害は新しく出てきた大きな部分なので、強調することは良いのですが、従来からやっていかなければいけない部分が、小さく見えるのはどうかと思います。

 藤澤総合政策課長:本日お配りした案では、素案のたたき台に対して、震災対策、災害対策を強化すべきとの意見をいただきましたので、基本構想の1ページ目に特出しという形で整理しております。

 江口委員:県の行政がやることは何かということを考えたとき、公共財は市場に馴染まないサービスであり、地震で数千、数万人が犠牲にならないような政策は行政にしかできません。今回の3.11による事象を基本構想の冒頭に置くのは、政策としてあるべき姿だと思うのです。素案のたたき台でも、もっと前に記載しておくべきではないかという意見を出しました。行政の基本的役割は、例えば、地震に強い鉄道や帰宅難民対策といった、市場では対応できないことを行うことです。地震は明日起こるかもしれないし、百年後かもしれません。そこは分かりませんが、安心ということを考えた場合、明日起こるかもしれない前提で行政にやってもらうしかありませんし、それが行政の基本だと思うのです。

 三井委員:私も同じで、行政の継続性なり、グランドデザインという視点は分かりますが、今回の大震災と事故等については誰も予想できなかった規模なので、県の行政が基本構想の中でそれを強く意識していかなければ、県民からお叱りを受けることになります。バランスの問題は当然あるとは思いますが、これくらい踏み込んだことは良かったと思います。

 笹生委員:私も同じ意見なのですが、今回は踏み込んでいいと思いました。ただし、基本構想の2ページ目にある目標年次が2025年と掲げてあるところが、若干、誤解を生むかも知れないと思います。この問題を2025年までずっと追いかけていくという印象を受けるのです。レイアウトや記載の仕方の問題とも思います。

 内田参与:多分、5年ぐらい経った時に、この表現がと言える状況になったらうれしいと思います。私の所属する原子力工学科は、日本で初めて原子力に関係した学科ですので、周りには元東電の社員もいますし、そういう中で日々を過ごしています。神奈川県に住んでいると分からないかも知れませんが、現地では地下水も使えない、何も使えないという想像もつかない事態が起きています。10年以上前から愛媛県西条市のお手伝いをしていますが、ここには上水道がなく、人口12万人が全部地下水を使って生活していて、下水道料金だけ一人580円を取っています。もし、こうした地域で汚染を受けたとしたら、全市民が水を一切使えない状況になってしまうのです。現在、福島県を中心に広範囲にわたり農作物が収穫できないような大変なことも起きているわけですが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という、日本人の特性を表す言葉があります。こういうことが、何年か後になって、「あの時はひどかったけれど、今は本当に良くなった」と言える時代になって欲しいと思います。福島第一原子力発電所事故の第1段階の処置を終了するまでに3年くらいかかります。溶け出してしまった燃料を片付けるには何十年もかかります。それだけ世界から見ても大きなインパクトがあったために、海外の企業や留学生が逃げてしまいました。だから、限られた地域以外は安全ですという英語のメッセージを出したり、放射線量の数値をインターネットで出したりしているのです。海外から見ると、小さな日本列島は、原発事故で全部汚れてしまったと思われています。それだけ、インパクトのある事故だったということです。知事は人を優先して考えたいという気持ちがあるので、何年かはこれを肝に据えるという意味で原点に掲げていきたいのだと思います。こういうことを二度と起こしてはいけませんし、人の命や健康、それから次世代の人達へ影響してしまうのが、普通の事故と違うところなので、そんな思いがあるのだと思います。

 藤井委員:今のお話も分かりますし、エネルギーの問題が先頭にきてもいいのですが、一県民としては、食糧危機が15年先までないのか、水の危機はないのか、というようなエネルギー以上に恐ろしいリスクは無いのかなと思います。

タイトルの「神奈川力構想」ですが、今まで広報活動をやってきたのであれば、もっと浸透するまでやってほしい気持ちもありますが、もしそうでないのであれば、これを機に、もう少し分かりやすいものに変えてもいいと思います。「神奈川力構想」を聞いて、行政の先頭にある計画ということまでは理解できませんが、グランドデザインというのは分かりやすい言葉です。知事が変わってもグランドデザインが最上位の政策であることが浸透するようにしてほしいと思います。

 澤畠委員:原発の問題で思うことは、原子力に依存しないというのであれば、もっと踏み込んで脱原発を目指すぐらいまでの方がメッセージとしていいのではないでしょうか。それから、神奈川県で食料自給率をもっと明確にすべきです。例えば、2030年までに何パーセントまでという方向性を出したほうがいいと思います。

 土井委員:基本構想の「政策展開の基本的視点」に、「(1)神奈川からエネルギー政策を転換します」と「(2)環境と共生し持続可能な社会づくりを進めます」を加えた点は分かるのですが、「(3)くらしの安全・安心を確保します」になると、そもそも、最初の2行の記述がちょっと弱いと思いますし、それ以降が、福島第一原子力発電所の事故関連になってしまっているのは、どうなのかと思います。人間の安全保障ではありませんが、もう少し幅広に安全・安心を考えていく方が良いのではないかと思います。

 大久保委員:震災のことをたくさん書くことは重要なことですが、確かに多すぎるという印象があります。これだけはすごく目立っています。

 鈴木部会長:3点出たと思います。一つ目は、この基本構想の性格は何かということです。どなたが知事になっていようと、3.11の影響を受け止めざるを得ないのが日本社会の現実で、地域によってやり方は違うと思いますが、短期的にも長期的にも、この問題は取り組まざるを得ません。その点で言うと、基本構想編の「策定に当たって」で、基本構想の見直しの視点で、電力不足、災害対策、放射能対策を入れて、しっかりと対応していくのは、行政の責任でありますが、これが2025年までずっと続いていくのかについて、少し、趣旨のところに説明を加えた方が良いと思うのです。もちろん、エネルギー問題や災害対策、原発問題がかなりずっと続くと思いますが、そういうことが分かるように文章で書いておかないと、目標年次が2025年という意味が見えないので、「策定に当たって」で、基本構想の見直しの位置づけをきちんとしておくというのが一点目です。 

二点目は、この「かながわグランドデザイン」というのは、誠に中立的で、政治的キャッチフレーズではありえません。計画の英語版で、中身が見える訳ではないのです。「神奈川力構想」という名前は、非常に明解な考え方というか、当時の力や地域の力をこういうふうに使っていくというのが見えました。グランドデザインという名前は、分かりやすく、分かり易さを求める知事らしいのですが、その中身を盛り込んでいくのが私たちの役割です。今回の電力不足や災害対策、原子力問題について、短期的にも長期的にも重要な施策としてはっきりと入れるのであれば、こういう記述をしていくのは、どなたが知事になろうと、誰が行政を預かろうと、おそらく避けることは出来ません。グランドデザインという名前は、政治的なキャッチフレーズで言うと中立的なので、中身を見てくださいという理解をしていただくのでしょうか。

三点目は、基本構想編を見ていただくと、本来は、先頭に社会環境を掲げて行政は政策を選択していくのですが、今回は順序が逆になっています。これを見ると、2025年の変化が明確になっているところは人口のところだけで、川崎・横浜地区に人口が集中して、県央や湘南は安定的に推移しています。県の人口はまだら模様になるので、きめの細かい、きちんとした政策をとらないといけないのは分かりますが、情報化や産業構造の項目では、現在の数値しかありません。つまり、2025年までの長期的な展望というのが、なかなか見出しにくいのです。そういう中でエネルギー・環境の項目を見ていただきますと、こういうふうに電力を把握せざるを得なくなっています。原発は持っていませんが、原発に依存している巨大都市を抱えているため、原発の問題について、かなり現実的で長期的な方向を示していく必要があるので、こういうところに、きちんと書き込んだ方が良い。県民としては、人ごとでないのですから、そういうセンシティビティー(感受性)を私たちが失わないようにするには、簡単に言えないことを、きちんと表現しなければいけません。ちょっと、オーバーリアクションのところがありますが、このぐらい書かないと、やっぱりシェアできないと思います。もしよろしければ、基本構想の素案に関しては、いただいたご意見を出来るだけ分かりやすく、特に、「策定に当たって」のところに少し入れさせていただき、何故こうしたのかを追記して、それを知事に説明していくという手順でいかがでしょうか。 

 青木委員:今、辛いのは雇用の創出・促進です。それから、非正規労働者、非正規社員という言葉がどこにも出てきませんので、はっきりと書いて欲しい。例えば、基本構想の18ページに、労働環境の整備とあります。正規社員の長時間労働や非正規社員のことも包括していると思いますが、これからも、なかなかこの格差は縮まりません。いかに、非正規社員を支援していくのでしょうか。非正規社員という言葉はどこにも書かれていませんので、是非ストレートに書いてもらいたいと思います。それからもう一点、基本構想の23ページに、新しい公共とあります。これから税収減で、行政サービスがどんどん増えていく中で、ここはやっていかざるを得ないところだと思うのです。コミュニティビジネス、ソーシャルビジネスとか、はっきりと言葉として入れたほうが分かりやすいのではないでしょうか。特に「いのち」と「人」という二つのキーワードがあり、雇用や格差、支えあいとかで、いのちと人がキーワードとして出てくると思います。

 藤澤総合政策課長:この問題につきましては、どこまで、県の役割として対応できるのかということがあります。例えば、県の役割としては、職業能力の向上を図ることと、正規雇用に繋がるようサポートをしていくことがあります。これは、中高年と若者に分けて支援センターを設けて対応しています。多様な働き方がある中で、正規・非正規の議論をするのではなく、県の役割として、職業能力の向上を正規雇用に繋がるようなサポートをしていくという趣旨で、言葉の記載がないということです。

 青木委員:非正規社員を正社員化したり、正社員化するためのスキルを支援したり、就職の斡旋を県がコーディネートするという趣旨ですね。

 三井委員:前回の基本構想と今回のグランドデザイン基本構想編を比べると、前回は企業に対して色々な人達の雇用を促進するとありましたが、今回はそれが無くなっています。県民生活に係わるコミュニティビジネスも無くなってしまっています。それ以外にも、まちのにぎわいを作る商店街の活性化では、前回は多様な担い手、県民、NPO等と連携してという言葉がありましたが、今回は商店街が中心で、商店街が主役ですと明確に打ち出していて、大きなメッセージがあるのかと感じました。

 川﨑政策調整部長:非正規社員の話については、今の雇用関係の中では、年収も不安定で、否応なく選択しているという実状があります。また、その前段階としてワークシェアリングの議論があります。人生にはもっと違う生き方があり、全てが終身雇用の中で生きるのではなくて、むしろ自ら望まず、ルールの中に入っていかない方に対して、行政としてどこまでを個人の選択とするのかという議論がありました。現時点で抱えている問題はそのとおりですが、非正規はそういう捉え方ではなくて、ヨーロッパ型のワークシェアリング方式で考えてみたらどうなのかということです。この問題については、製造業で期間労務者として都合のよい使われ方をしている我が国の現状があり、国でも様々な議論がありますので、地方の行政計画にどのような形で落とし込んでいくのが良いか整理させていただきます。

もう一つ、今回の基本構想や実施計画についてです。今まで、知事とは計画のあり方についてかなり議論をいたしました。計画そのものが必要なのか、計画よりも実行だというところから始まり、たとえ、立派な計画を100、200ページ作っても、誰も見ないのであれば意味が無いし、たくさんの分野があっても埋没してしまうとのことでした。そうした中で、大事なところに絞って、「これをやる」ということを前面に出した方がよいとの考えから、シンプルを第一にして、分かりやすさ、伝わりやすさを重視することにしました。知事が掲げている重要施策を計画の中で整理しながら、総合計画として幅広く検討してまいりました。シンプルさ、分かりやすさ、伝わりやすさを重視しましたが、「それにしては、これは難しい」、「これでは県民に伝わりにくいのではないか」、という部分も含めてご審査いただければと思います。

 三井委員:コミュニティビジネスという言葉は、あまり細かすぎるとか、商店街についても商店街が主役として頑張ってくださいなど、説明がないままに変えるというのはどうでしょうか。一つひとつにメッセージ性がある訳で、県民全体に対しても説明が必要なのではないかと思います。

 藤澤総合政策課長:商店街については、様々な担い手がいて、それが現実の取組みの主体となっていますので、表現を整理した部分がありますが、ご意見をいただきましたので、表現を工夫します。また、コミュニティビジネスについては、県として、これまでの実施計画にも位置づけて取組みを進めてきましたが、市町村と役割分担を整理していく中で、すでに市町村が主体的に取り組む形に変わっています。県の事業としての対応がないのが現状なのですが、いただいたご意見を踏まえ、表現の工夫が出来るのかどうか検討します。

 三井委員:考え方は分かりますが、このグランドデザインというのは、初めから県の行政がやれること、やるべきことに限定されているのでしょうか。コミュニティビジネスの振興や連携は市町村の役割ということは分かりますが、県のグランドデザインに書かない理屈が分かりません。

 藤澤総合政策課長:コミュニティビジネスも含めたソーシャルビジネス全般について、人材とかノウハウの育成支援の中で県の役割が整理されるのであれば、書き込むことができます。この「政策の基本方向」につきましては、市町村やNPOなどへの支援も含めて、事業として県の役割がある内容に特化して記述している部分がありますので、改めて原局と議論いたします。

 鈴木部会長:三井委員が言われた商店街についてですが、実施計画の中には「県も主体として事業を展開する」ということを示しています。よろしければ、実施計画で少し突っ込んだ議論をしていただいて、もう一度、基本構想に戻って今の部分をどうするのか検討する、といった順序にさせていただきたいと思います。

《資料3「かながわグランドデザイン 実施計画編(仮称)(素案)(案)概要」、資料4「かながわグランドデザイン 実施計画編(仮称)(素案)(案)」、資料5「数値目標(案)一覧表」、参考資料1「総合計画審議会計画策定専門部会の意見と対応」、参考資料2「新たな「実施計画」骨子等に係る県民参加意見の概要」について事務局より説明》

 鈴木部会長:実施計画については、先ほど議論のありましたポイントも含めて、ねらいとか取組み内容とか、数値目標までのご意見をいただきたいと思います。目標については、今のうちにこのようなことを考えて欲しいということがありましたら、ぜひご意見をいただけますでしょうか。

 笹生委員:実施主体に、県や市町村、民間が書かれていますが、民間というのは県が民間に何かを働きかけるのでしょうか。それとも民間は独自にやっていただきたいということでしょうか。

 藤澤総合政策課長:2種類あります。まず、県と民間が協働して行う場合として、例えば、13ページの下にかながわ犯罪被害者サポートステーションなどにおける支援の充実とありますが、これは県とNPOが一緒になってやっています。そのほか、商店街の振興など、県がノウハウを支援したり、補助による支援などを通じて民間が主体的に行う場合もあります。

 江口委員:前回の実施計画では、色々な目標や達成状況の記載がありましたが、今回の実施計画ではそれらを白紙に戻して、一から考え直しているのでしょうか。つまり、前回の実施計画の目標との接合性はないのでしょうか。また、前回は数値目標を決めて達成したのかしないのか、何%を達成したのかでABCのランクを付けました。担当部局や実施計画を分かりやすくしたのは今回の特色ですが、一方で、前回のように数値目標を決めて、いつまでにどうするのかという仕組みをどの程度採用しようとしているのか分かりません。まったく白紙から考えているのでしょうか。

 藤澤総合政策課長:基本的には、前回の実施計画からプロジェクトへ継続しているものもありますし、新規にプロジェクトとして立てたものもあります。例えば、プロジェクト3「津波被害を軽減する対策の強化」は新規のプロジェクトです。また、プロジェクト6「高齢者が生き生きとくらせる社会づくり」は目標として特別養護老人ホーム整備床数を掲げていますが、これは前回の戦略プロジェクトのいくつかを集めていて、その中には、特別養護老人ホーム整備床数を目標とした戦略プロジェクトがありました。今回のプロジェクトは入れ替えや統合などをしており、ここを新たなスタートラインに考えています。

 江口委員:プロジェクト6には意見も出しましたが、介護職員や介護施設に対する表彰の実施を3年間の主な取組み内容とするのは意味がありません。つまり、表彰状を配るだけであれば、いくらでも配れてしまいます。問題は誰にどのような基準で配るかです。そもそも、これが主な取組み内容になるのかも疑問ですが、定性的に違うものとして勤務年数が長い人への表彰や、優秀な人への表彰も考えられますが、何をもって優秀とするのかがとても難しいのです。今回の実施計画では、どういう視点で議論するのかが、正直、分からないところがあります。

 藤澤総合政策課長:介護職員の表彰には介護賞というものがあり、これは長年介護に携わり、業績に優れた方を対象に表彰する制度で、この制度以外については現在検討段階にあります。来年度以降の新規事業は現在議論中であるため、実施計画の素案では新規事業を明確にしていません。最終的な案を整理していく中で、表現も分かりやすくしてまいります。

 三井委員:数値目標は、諸刃の剣のようなところがあって、明快で重要だけど果たしてそれでよいのか、数字だけが一人歩きして本当の成果が出ているのかという、数値目標を入れると色々な議論が起きてしまうのは、評価をしてきた立場から痛感するところです。今度の新しい実施計画では、目標を使うことの意味を積極的に説明して欲しいと思います。ただ、これが新しい目標になりました、YESかNOかと言われても判断に迷うところがあります。全部を説明してもらうのは時間がかかりますので、あらためて、説明をしてもらうわけにはいきませんか。

 藤澤総合政策課長:数値目標の趣旨については、目標の下に記述させていただきました。

 三井委員:これはあまりにシンプルです。公にするときにはこれでもよいのですが、なぜ前と違うのか、なぜ継続しているのか、積極的な意味があるのか、もう少し説明するべきです。例えば、プロジェクト23「産業人材の育成と就業支援の充実」では、職業技術校生の修了1年後の就職率という新たな目標が出ていますが、そもそも就職率でよいのかという議論がありますし、なぜこれなのかを示す必要があると思うのです。

 藤澤総合政策課長:資料として、数値目標(案)一覧表を用意させていただきました。前回、配布したものを精査したもので、代表的な事例をできる限りシンプルにして、現時点では一つを選定しています。

 三井委員:この一覧表は、プロジェクトと同じ説明です。そうではなくて、なぜこれなのか、という積極的な意味を説明して欲しい。

 藤澤総合政策課長:数値目標の設定にあたっては、基本的に3点の基準を設けました。まず、県が活動した成果を反映するアウトカム指標で、毎年度把握できる中間的アウトカム、できるだけ翌年度中に把握できるものという、この3つを基本に据えて担当部局と議論や調整を重ね、その中で、目標を設定いたしました。

 三井委員:だけど、この中でプライオリティができています。前回は3つの目標が並んでいましたが、今回は1つに絞られています。それがいけないとは思いませんが、なぜその一つなのでしょうか。例えば、資料5のプロジェクト22「国際競争力のある産業の創出・育成」に企業誘致件数とありますが、プライオリティにより3番目に落ちています。なぜ、企業誘致件数ではだめなのでしょうか。企業が来て頑張ってくれなければいけません。なぜこれなのか、これじゃないのか、なぜ、目標が独創的技術の開発件数なのかについて、説明が欲しいのです。

 青木委員:プロジェクト19「『水のさと かながわ』づくり」ですが、水の大切さを県民に分かっていただくために水源地域のイベントの参加人数という目標が掲げられています。神奈川県の水の自給率は何パーセントなのか分かりませんが、最後はそういう自給率、あるいは震災との絡みで、水源地域の森の植栽を増やすとかだと思うのです。確かに、イベントの参加人数は1年後に分かりますが、ちょっと違うのではないでしょうか。イベントで人を増やし、興味を持ってもらうことはよいのですが、もっと重要なテーマが隠れてしまうので、イベントの参加人数では寂しいと思います。本来は、神奈川県の自給率を目標とするべきです。ただ、時間がかかりますので、果たして1年、2年の目標として掲げるのが良いのかは分かりません。

 藤澤総合政策課長:神奈川県では、県内水需要の100%を県内の水源で賄っていて、東京都にも水を供給しています。そういった、水が豊かな神奈川をセールスしていくため、「『水のさと かながわ』」づくり」をプロジェクトに掲げております。

 土井委員:3点あります。プロジェクト5「犯罪や事故のない安全で安心なまちづくり」にある「体感治安の向上」を指標にするのはやめた方がよいと思います。やはり、治安が問題で、体感は治安と関係ない主観的なものなので、外国人や少年、マイノリティーの犯罪がターゲットになってしまいます。そうではなくて、本当の治安の改善が重要だと思います。

今回、ジェンダーの視点はなくなっていますが、やはり、男女共同参画は重要だと思います。私の分野である人権では、男女共同参画というより、もう少し広く、ジェンダーというように捉えることが多いのですが、生物学的な男女だけではなくて、性的なマイノリティーと言いますが、同性愛者とか、自分の性的な違いを感じている人とか、性のあり方は多様であり、それは取組みとしてすごく大事なことなので、ぜひ復活して、より広く、インクルーシブ(包合)な形にすると課題もまだまだあると思います。なぜ、男女共同参画がないのか分かりませんが、多様な文化や価値観を尊重する神奈川になればと思います。

それから、多文化共生の部分で、先ほど青木委員がおっしゃっていたのと似ているかもしれませんが、ちょっと指標が違うのではないかと思いました。外国籍県民だけではなく、本来は帰化した人たちも入ると思いますが、民族的な少数者に対する支援も必要です。一番、皆さんが嫌なのは差別で、それをなくすような指標にするのが本質的だと思います。

 藤澤総合政策課長:プロジェクトは3年間で重点的に取り組んでいく事業を掲げております。一方、男女共同参画のように重要な政策として着実に取り組んでいく事業には、総合計画のプロジェクトというよりも個別の計画の中で取組みを進めていくものがあります。神奈川県には、男女共同参画の個別計画があり、議決が必要な計画という重要な位置づけを与えられているため、こちらで着実に進めていくことになっています。ただ、男女共同参画の課題のうち、働き方の視点で重点的に取り組んでいく部分がありますので、それはプロジェクト23「産業人材の育成と就業支援の充実」に位置づけています。

 大久保委員:16ページの一番下に「医食農同源など病気にならない取組みの推進」とあります。この「医食農同源」というのは知事の強い意志だと思いますし、食生活を改善して病気にならない取組みを推進するのは非常によいことで賛同しますが、主な取組内容に「健康増進に役立つ食品の研究」とありますが、健康増進に役立つ食品というようなものはありません。好き嫌いなく、色々なものを食べるのが健康の源、原則であり、一つのものを飲んだり食べたりするだけで健康が良くなることはありません。多くの方は「これを飲めば健康になる」と騙されて健康被害を起こしています。そういう、怪しげな健康食品をしっかり評価して、だめなものはだめだということを進めるべきで、県が積極的にこのようなものを開発すると、これを見た多くの人が「やはりそうだよな、これを飲めばよいのだ」、「こういう薬を買ってきて飲んでいれば健康だ」という大きな過ちを起こしかねないので、この内容は検討するべきだと思います。

 内田参与:食のあり方の研究とかで、食品の研究ではないですよね。

 川﨑政策調整部長:現在、科学技術アカデミーで研究を行っています。西洋医学では病気になったら治療をするという考え方ですが、東洋医学には病気になる前の未病という段階で病気にならないための体づくりというものがあります。例えば、漢方や生薬という言い方をする食品に含まれる様々な酵素について、元来、食べ物には抵抗力を付けたり、免疫力を高めるものが含まれているという考え方があるため、それを研究しているグループがあります。神奈川県内には食品会社がたいへん多く、全国トップクラスの従業者数、事業者数なのですが、元々の発想は、アンチエイジング(抗加齢)、あるいはヘルシーエイジング(健康的な加齢)と呼ばれていて、年を取っても元気でいるための一つの手法として、東西医療の融合という観点から、機能性食品やサプリメントに科学的なメスを入れて、一つの大きな柱として掲げていこうという動きがあります。まだ、科学的なエビデンス(証拠)を確立するための研究段階で、販売の実現まではいきませんが、こうした取組みを進めています。併せて、現在、京浜臨海部に国際戦略総合特区の申請をしていますが、その中の一つにも東西医療の融合、あるいは開かれた医療を掲げていますので、そういったものとも連携しながら、研究をさらに深めていこうとしている段階です。

 大久保委員:そういう、正しい食生活を進めることとセットで考えればいいと思います。

 内田参与:これは食品ではなく、食の研究ですね。中国では中医学を伝統的にやっています。

 藤井委員:同じプロジェクトのねらいに、「長生きしてよかったと思える日本一の医療体制の確立」とありますが、医者にかかり続けて長生きしてもよかったとは思えません。日本一の医療体制の確立は理解できますが、「長生きしてよかった」は、医者にかからずということなので、「日本一の医療体制の確立」だけにしたらどうでしょうか。また、食品の研究ではなくて、健康増進のために、予防医学的にも日常的な運動をするようなことを加えたらどうでしょうか。

 内田参与:医療体制の中に、未病も含めて対応するという意味だと思います。今は医療といっても医者が治療するだけでなく、漢方も施すし、大学病院でも食の指導を当たり前にやっています。そういうもの全部が入った医療体制という意味だと思います。

 澤畠委員:プロジェクト5「安全で安心なまちづくり」ですが、罪を犯した人は再犯率も高いので社会復帰の支援をきちんとしない限り、安心・安全なまちづくりはできません。法務省の仕事なのですが、神奈川県でも支援に取り組んで欲しいのです。それから、プロジェクト13「明日のかながわを担う人づくり」にある「障害のある子どもの支援教育の推進」の主な取組みとして特別支援学校の整備とありますが、支援学校でパンづくりをする場合、整備の全体計画が決定するところまでを行政で進めてしまうため、決まった後にパンづくりの相談へ来られても、全部がやり直しになってしまいます。この辺は、NPOなどに呼びかけてもらうとよいと思います。

 藤澤総合政策課長:矯正事業については法務省の所管ですが、県としては犯罪被害者の支援に取り組んでいます。犯罪被害者サポートステーションは、日本で唯一、行政、警察、NPOが場所的にも一体となって支援するという先進的な取組みをしております。特別支援学校については、学校教育法に基づいて設置しており、現在、定員を大幅に上回る状況の中で、県として計画的な整備を進めており、この3年間で1校の開校を予定しています。

 澤畠委員:東京都や中区でもっとしっかりやってほしいということがありました。例えば、来年の4月が開校なのに、先生もいない状態で相談に来ることが多いため、そういう案件では手の出しようがありません。もっと中身の部分を追求してほしいのですが、現実は予算に合わせて設備を整備しているので、生徒は20人なのに、2、3人分の設備しかないのです。

 藤澤総合政策課長:特別支援学校は、国が定める配置基準や設備基準があり、その基準に沿って開校の準備をする体制を2~3年前からしています。

 澤畠委員:行政としては一生懸命やっているかもしれませんが、行政だけでやらないで、もうちょっと現場へ相談したらどうですか、ということです。

 山本委員:基本構想の政策分野別の基本方向「県土・まちづくり」に、未利用エネルギーという記述がありますが、利用が期待されるエネルギーで使っていないエネルギーという意味でしょうか。もし、エネルギーを重視するのであれば、もう少し、未利用エネルギーも具体的に書くべきです。

 藤澤総合政策課長:例示が必要だと思います。バイオマス、排熱、温泉熱などの検討を進めているところです。

 山本委員:太陽光に強いこだわりがあるようですが、こういった未利用エネルギーを含めて、自然エネルギーの活用検討をエネルギーのところに書いた方がいいと思います。また、東日本大震災で津波をかなり意識しているようですが、神奈川県はあまり津波対策を実施してこなかったということですが、実施計画の10ページにある柱II(ローマ数字の2)を見ると、ハード面が中心になっているように見えます。津波被害を軽減するために、避難路や避難場所、津波避難ビルなどを整備することは分かりますが、避難訓練だけではなくて、防災教育などの普及啓発にも取り組んで欲しいのです。直ぐに効果は現れませんが、そういったところも必要です。今回の被災地の沿岸部を現地調査しましたが、現地はもともと津波被害が大きいため、学校教育でも防災教育が進んでいたし、一般人に対しても行政や研究者が説明していました。それでも、油断して逃げ遅れた人が多いのです。こうしたことを踏まえ、ハード面の整備は大事ですが、普及啓発のしくみづくりを考えて欲しいと思います。

 曽委員:30ページのプロジェクト17「神奈川と世界をつなぐ多文化共生」には、前回の計画にあった、外国籍県民かながわ会議がありません。今後はどうなるのですか。

 藤澤総合政策課長:引き続き、取り組んでいきます。

 曽委員:プロジェクト17「神奈川と世界をつなぐ多文化共生」にある「外国籍県民がくらしやすい環境づくり」は、一人ひとりの外国籍県民を対象にした施策で、留学生や県民が理解を深めるということですが、例えば、外国人はNPOの届けを出していないものも含めてコミュニティや組織があります。そうした中で、外国籍県民かながわ会議というのは、外国人の問題を解決する組織なので、もっと活用する視点を打ち出したらよいのではないでしょうか。現状は、不特定多数の人に対する対策に見えます。既存の事業や組織をもっと活用するべきです。

もう一つは、日本の学校は地域社会の核になり得ることです。町内会よりずっと影響力があります。これまでも教育的な見地から地域社会をサポートすることはやっていますが、それをもっと活用すべきです。外国人の様々な問題を解決する組織として、有効な働きをすることもあると思います。既に暮らしている外国人に対する取組みとして、取り入れてほしい。

 鈴木部会長:神奈川県の外国籍県民かながわ会議は全国でも非常に珍しい設置の仕方をしました。一つ目は、県民会議にNGOかながわ国際協力会議を合わせて協働型の会議にしたことです。二つ目は、県民会議のメンバーは各コミュニティの選挙で選ぶという、一種の直接民主主義にしました。三つ目は、県民会議で決議がされた場合、県はそれを諮問として受け取って、時間をかけても必ず実現してきました。四つ目が非常に重要なのですが、あーすプラザかながわには基金をもとにネットワークや情報、様々な言語を通じた情報ライブラリーができ上がっていて、全国でも珍しい情報の集積があります。今では、当時の子ども達が大学生やお医者さんとなり、全国的なネットワークを形成しています。それに加えて、神奈川では外国籍県民で結婚して、離婚されてしまった人や家庭内暴力でひどい目にあっている人たちの駆け込み寺であるシェルターが全国で最も進んでいることです。最近では外国籍労働者の権利を守るための取組みが進んで、最初は担い手が日本カトリック教会だったのですが、最近は外国籍県民自身が担い手になってきています。

そういう意味では、当初は県が主導していたものから、徐々に地域社会が取り込んでいく方向に変わってきていますので、継続して取り組んでもらいたいと考えていました。

 曽委員:成果があるのなら、それをベースにもっと発展させないと、動いている記載がないので、一から始めるというように見えてしまいます。

 鈴木部会長:わかりました。是非、どこかに明記してもらいます。

 曽委員:それと補足ですが、ここにあるような単純な話ではありません。だけど、今は自分達のことで精一杯で手が廻らないので各々が解決しているのが現状です。変な話ですが、日本人が幸せにならないと外国籍県民も幸せになれないので、日本人を優先することは構いませんが、それと切り離したり、関係がないとは思っていません。

 内田参与:国内に30万人いるブラジル人の子ども達は、公立学校や未公認のブラジル人学校に行っています。ブラジル政府から、日本国内の子ども達の再教育をやってほしいという依頼があり、全国で300人選抜してやっていますが、ここでもコミュニティの問題が沢山あります。ブラジル政府が恐れているのは、この子達が何の教育も受けないで、ブラジルに戻ってスラムを作られては困るということです。色々な国の人達が入ってきていることに対して日本が本気で取り組むことが大事なのです。

 曽委員:2つの中華学校で受け入れている子どもが700、800人ほどいます。ところが、もっと多くの中国人の子どもが日本の小中学校に通っていて、コミュニティが問題になって、日本人の先生の頭を悩ましています。子ども達も勉強についていけない状況があり、子ども達は日本の社会に残るので将来の問題にもつながる可能性もあります。教育か多文化共生か分かりませんが、少しでも記述した方がよいのではないでしょうか。

 鈴木部会長:多文化共生の旗を下ろさないようにしてもらいたいということですね。

 土井委員:曽委員がおっしゃったとおり、色々な本質的な問題がありますが、目標が支援者研修の受講者数となっているのはちょっと安易です。難しいとは思いますが、先ほどのイベント開催数も、もう少し本質的な指標になればいいと思います。

 大久保委員:2025年に分かっていることは、鈴木部会長もおっしゃっていましたが、確実に老人は増えるわけで、確実に死ぬ人が増えます。一方、医療供給体制を言うと、病院のベッド数は、これ以上は絶対に増えません。そうすると、どのように在宅で死を迎えるのかということが大切になりますし、患者、家族も在宅を望んでいます。基本構想の20ページにがん患者が在宅で緩和ケアを受けられるという意味で、がん患者と家族への支援の充実を図ります、とあります。これは、すごくいいことで、がん患者やその家族へのアピール度は高いと思いますが、本当に困っているのは、認知症の家族とか先の見えない介護に対する患者支援です。がん患者は、先が見えているので、家族としては全力投球できますが、その背景にもっと重要なことがあります。また、19、20ページに認知症のことが一言もないので、どこかに入れるべきキーワードではないかと思いました。

 藤澤総合政策課長:認知症につきましては、実施計画の15ページに重点的な取組みとして挙げております。

 鈴木部会長:実施計画にあるのだから、基本構想にもしっかり入れておいた方がよいということです。

 笹生委員:分かりにくいのは、実施計画の43ページ目以降にある政策分野別の体系です。例えば、44ページに101から番号を振っていますが、これがどのプロジェクトと関連しているのかもこちらで触れていただいた方が、章ごとの関連性が見えるのではないでしょうか。

 藤澤総合政策課長:前回の計画では、主要施策にプロジェクトの取組みが分かるような表現を入れていました。最終的な整理の中で検討していきたいと考えております。

 青木委員:37ページのプロジェクト23「産業人材の育成と就業支援の充実」にある「就業支援の充実」の主な取組み内容ですが、2012年から2014年まで就業支援をして、若年や中高年者の雇用のミスマッチがどれくらい減ったのか、あるいは就職の件数がどれくらいだったのかを書いた方が分かりやすいと思います。セミナーの実施だけではなくて、結果としてミスマッチがどれくらい減ったのかが分かる就職の件数を入れた方がよいと思います。同じく、障害者の就業は法律で一定の従業員を雇用している企業に1.8%くらいの障害者を雇うことになっていますので、そういう企業がどれくらい増えたのかを、はっきり書いてしまった方がいいと思います。それから、39ページのプロジェクト25「活力と魅了あふれるまちづくりと交通ネットワークの充実」の目標ですが、インターチェンジまでの距離5キロメートル以内の地域の割合というのは分かりづらい。恐らく、渋滞時間を減らすことが目的だと思いますので、あるエリアの渋滞時間がどれくらい解消したのかを目標にした方が分かりやすいと思います。

 曽委員:76ページの川崎・横浜地域圏で、川崎と横浜の説明がありますが、ここには、全然商業のことを言及していません。それから、43ページの政策分野別の体系を見ていくと、「産業・労働」はありますが、商業はどこにもないのです。例えば、商業について言及しているのは、28ページのプロジェクト15「国内外から人を引きつける神奈川の魅力づくり」にある「商店街を核とした地域の魅力づくり」ぐらいです。商業全体は、どのように位置づけているのかと思いましたが、どこにもありません。取り上げる必要もないのか、商業そのものをどう考えているのでしょうか。川崎市域は高度先端産業、横浜市域は開港都市として国際性豊かな歴史や文化を有するとあるだけです。外国人が見ると、どういうイメージのまちなのかなと思ってしまいます。商業的な部分は、どうなのでしょうか。

 藤澤総合政策課長:地域圏ごとの取組みにつきましては、全県域にあまねく課題となっているものは外していて、ある程度、その地域の特徴が見えるようものを整理しています。商業の振興は、55ページの一番上にある「地域に根ざした産業の振興」のところで、県として取り組んでいく商店街の振興を整理しています。

 曽委員:商業の主要な部分を商店街が担っていることは否定しませんが、もっと大きな意味で商業が生産と消費をつなげる部分であることを、もう少し捉えるべきではないかという気がします。

 藤澤総合政策課長:様々な政策分野で、商業と県との関わりがあります。主要施策では商業人材の育成とか、商店街の振興というのが県の役割となっていて、地場の商業の振興は市町村の役割になっています。

 曽委員:商業的な機能が全く欠落してしまって、全然捉えていないという印象があるのです。産業と研究だけで、あとは人の暮らしです。だけど、物を売ったり買ったりするのも重要なのです。

 藤澤総合政策課長:ご意見を原局に伝えて、再整理が可能かどうか検討したいと思います。

 鈴木部会長:一つは目標の立て方で、例えば、土井委員が言われた13ページのプロジェクト5「犯罪や事故のない安全で安心なまちづくり」にある体感治安の向上という目標の立て方がいいのかどうかは若干の疑問があります。かつて、刑法犯認知件数の目標が3割でいいのかという議論がありました。こういう目標の作り方はすごく難しく、アウトプットでは意味をきちんと説明しないと誤解を受けることがありえるので、目標の立て方は注意をしてほしいというご意見がいくつかありましたので、是非、検討してほしい。

他方、21ページのプロジェクト11「子ども・子育て応援社会の推進」にある保育所入所待機児童数という目標は、神奈川県全体の現状が悪いので、この数値が出せること自体はすごく重要な意味があることをきちんと踏まえつつ、アウトプットにもアウトカムにもなるので、どうしたらいいのかをきちんと説明しないと、これも羊頭狗肉になってしまいます。目標というのは、アウトプット型ではなくてアウトカム型、つまり政策効果があったのかどうかを評価するので、そこを注意した方がいいというのが二点目です。

三点目は、県独自の事業については、一次評価をすることが比較的易しかったのですが、徐々に市町村やNPOと一緒にやることが増えてくると、県が一次評価をやるときに、どうしても定性的な評価をやらざるを得なくなり、必ずしも定量的というわけにはいきません。何でも数値化することが決していいことではないし、全部を数値目標にしなければならないと要求していないので、目標の立て方をもう少し作り直した方がいいというご意見をたくさんいただきましたので、少し時間をいただいて事務局と相談をしたいと思います。

今日、いただいたご意見をできるだけ反映させるのが一点目で、二点目は、大久保委員の意見などのように、かなり重要な見識に関わるような部分を削除したり、表現を変えたりします。三点目は実施計画にあるのに、基本構想に全然反映していないものは、基本構想に書き込むということにさせていただきます。11月24日には総合計画審議会がありますので、二週間ぐらいしかありません。なお、今日の部会で言い足りなかったこと、どうしても言いたいことがありましたら、事務局にお伝えいただけますでしょうか。以上で、今日の部会は終わらせていただきます。

(部会終了)

会議資料

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