梅香る、徳富蘇峰記念館
梅の香りと歴史のロマンを。
相変わらず寒い日が続いていますが、春はもうすぐそこまで・・・・・・。
二宮町の徳富蘇峰記念館(とくとみそほうきねんかん)に行ってきました。
徳富蘇峰ってどんな人? ―1階常設展―
徳富蘇峰(とくとみそほう。1863年-1957年。本名猪一郎)は、明治・大正・昭和にかけて活躍した新聞人・ジャーナリスト・歴史家です。
徳富蘇峰記念館は、彼の晩年に秘書を務めた塩崎彦市氏(故人)が、昭和44年、自邸内に建設したものです。
入り口には「蘇峰堂」と書かれた大きな石碑もあります。
1階は常設展。蘇峰が収集した美術品や彼の愛用品などが展示されています。
展示された棚です
徳富蘇峰は、1863年に熊本で生まれました。14歳の時、新島襄(にいじまじょう)が設立した同志社英学校(後の同志社大学)に入学します。
新島襄からはキリスト教思想を学び、生涯に渡り敬慕することとなります。
同志社英学校を退学し、熊本で私塾を開きますが、その後上京し、1887年に出版社「民友社」を設立。雑誌「国民之友」、その3年後には日刊紙「国民新聞」(後の東京新聞)を創刊します。
雑誌「国民之友」は坪内逍遥や尾崎紅葉、樋口一葉などが作品を発表したり、ユーゴーやドストエフスキーなどの外国の文学を紹介したりするなど、日本文学の歴史に大きな影響を与えることとなりました。
その後、政界に参画するなど、様々な活動を行いますが、大正7年、56歳の時に「近世日本国民史」の執筆に取り組み始めます。
織田信長の時代から明治初期まで、なんと計100冊!これを、34年に渡って書き上げたそうです。この時90歳!
写真はその第1巻、「織田氏時代前編」です。
かなり分厚いです。これを100冊。すごいです。
ちなみに、徳富蘇峰はこの「近世日本国民史」以外に、約200冊も執筆しているそうです。
1階にはほかにも面白い展示物がたくさんあります。そのうちの1つが西郷隆盛の愛用した外套です。
西南戦争で着用したものだそうですが、巡り巡って西郷を敬愛する蘇峰の手に渡ったそうです。
うれしさのあまり、実際にこれを着て写真まで撮ったとか。
また、こちらはNHKの大河ドラマ「八重の桜」のポスターです。
先ほど紹介した同志社英学校の創設者、新島襄の妻である新島八重を主人公にしたドラマですが、登場人物の1人として徳富蘇峰が出てくるため、この記念館でもポスターを展示しているそうです。
他にもさまざまな展示や、スライドショーによる映像など、充実した内容になっています。
明治・大正・昭和の手紙アーカイブ館 ―2階特別展―
さて、徳富蘇峰記念館は、別名「明治・大正・昭和の手紙アーカイブ館」とも言います。
蘇峰はいろいろな人と手紙を交わしており、その数なんと差出人12,000人、46,000通とか!
それら手紙の一部と、その他の展示資料をテーマごとに展示しているのが、2階特別展です。
2017年のテーマは、「相模湾沿岸地域ゆかりの名士(西部編)」。
相模湾沿岸地域にゆかりのある名士と徳富蘇峰との交流を描く、全3回シリーズの第2編です。
記念館のある二宮町を始め、小田原市、真鶴町、湯河原町、さらに静岡県熱海市、伊東市、下田市の各地にゆかりのある名士を取り上げています。
展示されている手紙や資料がとても多いため、ここではそのほんの一部だけご紹介します。
こちらは、犬養毅が蘇峰に贈った色紙です。
犬養毅は内閣総理大臣就任後、五・一五事件で暗殺されてしまいましたが、二宮町に別荘を構えており、町の青年たちに向けた講演会を開いたことがあるそうです。
こちらは伊達時(だてとき。1849年-1916年)の石碑の写真パネルです。
伊達時は湘南馬車鉄道の初代社長で、二宮駅の設置に尽力したことでも知られています。
この石碑は、1951年に二宮駅開業50周年を記念して、二宮駅南口駅前に設置されたもので、石碑に刻まれた題字は、徳富蘇峰により書かれたものです。
続いて、伊藤博文が蘇峰に宛てた書簡です。
伊藤博文は初代内閣総理大臣として知られていますが、小田原市に別邸「滄浪閣」を建てています。
ちなみに、その後大磯町に別邸を建築し、「滄浪閣」の名前も大磯に移しました。大磯町ともゆかりのある名士です。
こちらは、与謝野晶子の手紙です。
「みだれ髪」などの作品で知られる歌人与謝野晶子は、真鶴町を訪れた際に開いた歌会で、「わが立てる真鶴崎が二つにす 相模の海と伊豆の白波」など、数首の歌を詠んだそうです。
最後は、北里柴三郎が徳富蘇峰に宛てた書簡です。
北里柴三郎は医者・細菌学者で、破傷風の治療法の確立やペスト菌の発見などの功績で知られていますが、伊東市に自ら設計した別荘を建てました。その別荘にある日本初の室内温泉プールは、一般の人にも開放され、伊東市の人々に親しまれたそうです。
他にも、財閥やホテルの創業者、画家、作家など、たくさんの名士が相模湾沿岸地域にゆかりがあることが伺える展示となっています。
白梅の黄昏時の香をかげは心悩まし春の初めも ―与謝野晶子―
徳富蘇峰記念館のもう一つの見どころ、それが併設された庭園(梅園)です。
2013年にはあの「くまモン」も遊びに来たとか・・・・・・。
取材に行った1月中旬では、全体としてはまだ一分咲きといったところでしたが、きれいに咲いている木もありました。
近づくと、ふわっと梅の香りが。花の美しさはもちろんのこと、香りも魅力的ですね。
他の木もつぼみをたくさんつけていて、見頃の時期には美しい景色が見られそうです。
庭園(梅園)のおすすめのスポットの1つが「二代目 臥龍梅」。見事な樹形です。
左(1枚目)の写真は取材時のものですが、右(2枚目)は以前に撮影した満開時の写真です。
もうすぐこの景色が見られると思うとワクワクしますね。
訪れていました。
梅は2月末まで見頃です。
皆様是非訪れてみてください。
徳富蘇峰記念館
- アクセス
- JR東海道線二宮駅より徒歩12分
- 小田原・厚木道路二宮インターより車で7分
- 東名秦野インターより車で20分
- (駐車場は2台分あり。無料)
- 開園時間
- 10時から16時まで
- 休館日
- 毎週月曜日、年末年始1週間、8月第3週
(月曜が祝日の場合は開館し、翌平日休館) - 入場料
- 一般 700円
高校・大学生 500円
障がい者手帳お持ちの方500円
(団体割引(10名様以上)1割引き、入館料は庭園入園料も含む)
梅園入園のみは100円 - ホームページ
梅の香りと日本近代の歴史を楽しめる徳富蘇峰記念館に、皆様是非お越しください!