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更新日:2021年4月1日

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神奈川県水産技術センターコラムno.50

2021年4月1日号

1 市場調査の醍醐味(相模湾試験場 田村怜子)

2 台湾の優しい朝ごはん(企画指導部利用加工担当 臼井一茂)

1 市場調査の醍醐味(相模湾試験場 田村怜子)

 今年度からこれまでの仕事に加えてマアジなどの資源も担当になり、調査のために夜も明けないうちから市場へ魚の大きさを測りに行くことがあります(写真1)。冬は特に寒くて、厚めの靴下と長靴でも足が冷え切ることがあります。今年はコロナの影響も配慮してあまり調査に出向けていないのですが、市場では普段の生活では見られない魚に出会えたり、漁師さんたちから直接お話も聞けたりできるので、とても貴重な時間です。
 調査はいつも小田原魚市場で行わせてもらっています。鮮魚のせりは6時から始まるのですが、せりが終わった後では魚に買い手がついてしまうので、5時半くらいまでには市場へ伺い、せりが始まる前に魚を測らせてもらいます。水揚げされる魚の量やせりの順番で魚を測れる時間が変わるので、市場に来たらまずその日の水揚げの概要が書いてある黒板をチェックします(写真2)。水揚げされる魚の量が少なかったりすると一つの漁場でとれた魚へのせりの時間が短くなるので、測りたい魚があっても目標の尾数を測りきれない時もあります。

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写真1 夜明け前の小田原魚市場内

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写真2 魚市場の黒板

 調査の対象はマアジで、県の西部では主要な魚種の1つです。調査では魚の尾叉長(魚のあごさきから尻尾の切れ目までの長さ)を測ります。市場で見られるマアジは本当にキラキラしていて鮮度抜群で、今すぐにでもタタキにしたくなります(写真3)。その他にも、イサキとマルソウダが水揚げされている時にはそれらも測るようにしています。ただ、マルソウダが揚がるときにはヒラソウダというそっくりさんが一緒に混じることが多いので注意が必要です。測る必要があるのはマルソウダだけなので、市場調査に同行しているベテランの普及指導員に見分けもらいます。彼曰く、「よく見ると顔つきが違うんだよ」というのですが…うーん、みんな一緒に見える(写真4)。本当は、鰓蓋の上の黒い模様などで区別するのですが、水揚げで魚体が擦れて模様が剥げたりすることもあるので、実際は区別がつかなくなっています。胴体を軽く握ってみると、確かにマルソウダよりヒラソウダのほうが若干平たい形をしています。でも、これも明らかに違うわけではないので、毎回調査の始めに目の前にある「何とかソウダ」をひたすら握ってマルソウダを探す謎の作業をしています。

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写真3 キラッキラのマアジ

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写真4 みんなおなじに見える…

 調査が終われば後は試験場に戻って尾叉長をPCに入力し、データ化するだけですが、時間があるときにはその日獲れている魚がどんなものかを見て回ります。これもなかなか楽しいひと時です。漁場によっては活〆などの処理をした魚を並べているところもあり、場合によってはまだ生きているかのように透き通ったアオリイカを見ることができます。この日は2mはあろうシロカジキが何本か水揚げされていました(写真5)。また、カマスザワラという魚も並んでいて(写真6)、普段そのままの姿でスーパーには並ばない魚をいくつか見ることができました。
 朝早く起きて作業するのは大変ですが、調査が終われば普段見られない魚を見たり、その日揚がっている魚から海の季節の変化を感じとったりでき寒い思いが報われそうな気がします。市場調査自体は漁獲される魚のデータを収集することが目的ですが、市場の活気や漁業者さんとの雑談など、その他の情報も知ることができるのもこの調査の醍醐味だなぁとしみじみ感じました。

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写真5 シロカジキ(右の魚)        写真6 箱に収まりきらないカマスザワラ

2 台湾の優しい朝ごはん(企画指導部利用加工担当 臼井一茂)

 私は台湾が好きだ。真夏の東港でのあの暑さと日差しにはまいったが、温かいところはあちこち傷んだ五体が癒されるし、何より流れる時間が穏やかで、手先の感覚から鼻の奥まで、五感がゆるゆるとほつれがほどけていく。
 さてさて、コロナ禍で海外に行けなくなってしまったが、台湾の朝ご飯はほっとする旨味に甘味、そして少ない塩分が実にいいのです。最初のころは「滷肉飯(ルーローハン)」だ、「小籠包」だ、「牛肉麺」だとか、濃い味わいのものを旅行情報誌で踊っている言葉にうきうきして、あの店この店と食べ歩いていましたが、ふといつの頃からか現地の方が朝ごはんに訪れる朝市の屋台や、街角の小さなお店の簡単な食事を選ぶようになりました。
 台北駅近くのホテルに隣接する焼き饅頭店。どこかの雑誌に紹介されるようなことはないのですが、必ず通るのでいつも買ってしまいます。豚肉の肉まん、ニラや白菜、ハルサメが入ったニラまん、緑色の濃い葉物野菜とシイタケ入り?の高麗菜まんの3種。この饅頭が蒸してから鉄板で底をじっくり焼き上げていて、並んでいる様子はまるで大きなシュウマイの様相。お店の名前は覚えてないけど、お肉もそうだが野菜の旨さが濃すぎず薄すぎず、ハルサメで食感を工夫したり、単純だけど食べてけっこう感動しましたよ。それから、おねーさんが「どれをいくつ~、いくらね~、どうぞ~」って感じだと思う現地語で話してくれて、ビニール袋に饅頭を入れ手渡した後に、少しのスマイルが印象的だった。
 民権西路駅から雙連駅に連なる朝市では、米粉かな?薄いクレープ状に焼いて、そこに湯通しして細かくしたモヤシやキャベツ、ニンジンなどの野菜に、豚の角煮のこま切りと、カジキだと思うデンブにピーナッツ粉がふり掛けられ、薄くてももちもち食感の皮でできた、太めの生春巻き風の装い。普段、サラダやゆでた野菜はコンビニでは選ばないし、夕食でも好きなドレッシングや胡麻和えの素などがないと食べないから、普段の生活の中で量的に摂取量が少なくなってしまう野菜ですが、この「潤餅(ルンビン)」は、この素材の組合せだけで旨いベストマッチな料理。いけるのです!!ちなみに潤餅を崩して、具をお皿に出してから混ぜて食べると、何かもの足らず美味しさという点で満足感が無くなってしまうので、やはり巻いてないといけない料理なんでしょうね。
 善導寺駅の近くにある豆漿のお店では、こちらではまず見られない出来立ての「豆乳」がとにかく旨いのだ。塩味を加えただしスープの様な温かい豆乳の「鹹豆漿」は、大豆の味わいも濃く、どんどんおぼろ豆腐になっていきます。そこには切干大根や揚げパンの油條、ネギに干した小エビがトッピングされていて、これらのダシも合わさり、卵豆腐、茶碗蒸し、焼きプリン、おぼろ豆腐の要素が入っていて、実に満足いく食べ物なのです。そこに、さらに油條を浸しながらいただきますが、トッピングには窯で焼いたパイ生地みたいなサクカリのパンに卵焼きと油條がトッピングされた「厚蛋夾油條」も加わり、あっという間に至福の時に。何故だろう、朝食なので味は全て薄目であっさりで、口の中や喉に残るような味わいなんてなく、さっぱりしているのにこの満足感は。やっぱり台湾の御飯は好きだ。
 家庭料理は毎日食べられるように薄味であり、飲食店では美味しさのインパクトを与えるために1割増しの味つけにされていることがほとんど。特に日本は塩味で味を強くすることから、ダシという考え方以外の手法で、組合せだけでなく素材のクセを利用することがこれからの食生活で必要なのかもしれません。
 日本でも海外でも、最近は特に手軽な食材でとてもおいしいから揚げやフライドチキンが人気になっていますが、この台湾の朝食のように、多めに野菜を食べられ、低塩分なファストフードなら、どの時間帯でもどんな方にでも受け入れられそうですね。
 新しい生活スタイル、そして成人病対策や未病対策に、今までと違った考えで、楽しく野菜と魚を食べられる食品創造の研究をしていきますよ。

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写真:温かい豆乳の「鹹豆漿」は直ぐにおぼろ豆腐みたいに!!

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