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更新日:2021年3月5日

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神奈川県水産技術センターコラムno.49

2021年3月5日号

1 神奈川県でのマガキ養殖(企画指導部 相澤 康)

2 磯焼け対策研究員として感じること(栽培推進部 野口遥平)

1 神奈川県でのマガキ養殖(企画指導部 相澤 康)

 秋冬の食卓を飾る食材の一つにマガキがあります。
 マガキと言えば、大きな産地の宮城県や広島県が有名ですが、東京湾の横須賀市でも養殖されています。
 皆さんが食べているマガキはそのほとんどが養殖したものですが、自然でもごく普通に生息している生物です。岸壁の潮間帯(海岸線の高潮時と低潮時の間の帯状の部分、干潮の時には干上がる部分)を見ると、灰色でゴツゴツした貝がたくさん付着していることがあります。これが天然のマガキで、神奈川県の岸壁には普通に見られます。
 マガキの産卵期は5~8月で、一つのマガキから何千万個の卵が煙のように生まれます。水中で受精した後は、幼生となってプランクトンのように浮遊しながらよい場所に取り付いて、それ以後は一生を動かないで生活をします。
 ですので、自然のマガキは岩や岸壁に張り付いて生活する生物で、魚屋さんやスーパーで見られるゴロゴロした姿は実は本来の姿ではないのです。
 しかし、「自然の物が良くて、人が育てた養殖物は劣る」と言うことは全く当てはまりません。マガキの養殖には長い積み重ねがあって、それで、よく太った美味しいマガキを普通に食べることができるようになったのです。次の機会には、その歴史や工夫、そして神奈川県のマガキ養殖についてお話できればと思います。

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テトラポットに張り付いている自然のマガキ(城ヶ島にて)
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大きく成長した横須賀産の養殖マガキ

2 磯焼け対策研究員として感じること(栽培推進部 野口遥平)

 入庁3年目の野口と申します。近年、全国的に、アラメ・カジメをはじめとする海藻類の群落(藻場)が衰退・消失する「磯焼け」が深刻化していますが、本県もその例外ではありません。海藻類は、アワビのような水産業において重要な生物にも影響を与えるため、早急な磯焼けの解消・軽減が求められています。そこで、本県では磯焼け対策を最重要課題の一つと位置づけ、漁業者への聴き取りや潜水および最新技術を活用した藻場の現状把握、本県における磯焼けの主な要因の一つと考えられる植食性魚類のアイゴやウニ類等からの食害対策研究、藻場の造成に係る研究等に力を入れて取り組んでいます。私は主に藻場の現状把握や食害対策研究等に挑戦していますが、勉強すればするほど、経験すればするほど、一筋縄ではいかない課題だなと感じます。例えば、ウニ類の駆除が本県沿岸各地で行われていますが、駆除活動には毎回多大な労力がかかるうえ継続的な取り組みが必要です。実際、当センターでは約56㎡(7.5m四方)の枠内においてウニ類等の植食性生物を原則毎月1回除去する試験を行いましたが、1か月間除去を行えない月があると、その翌月には枠内にウニ類が激増しているのが確認されました。また、前述の通り、本県では植食性魚類のアイゴが主な磯焼けの要因の一つと考えていますが、アイゴの駆除自体が困難であるだけでなく、波浪や水温上昇など磯焼けの要因は多岐にわたっている可能性もあり、藻場の回復に向けた課題は山積しています。
 磯焼けの解決は簡単ではありませんが、少しでも解決に向かうよう研究担当として今後もアグレッシブに仕事に取り組んでいきたいと考えています。県に磯焼け対策担当を置く必要がなくなるくらい、県沿岸の藻場が回復する日を夢見ています。

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磯焼け前の藻場

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磯焼け後の藻場

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アイゴ

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ムラサキウニ

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水産技術センター

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