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更新日:2021年6月1日

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【当日の記録】平成30年度 第2回インクルーシブ教育推進フォーラム

地域と共につくるインクルーシブな学校 

ーみんなでつくる「わたしたちの学校」ー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、誰もが個性と能力を発揮し、生き生きと暮らしていける共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 全県的なインクルーシブ教育の推進に向けては、教職員だけでなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要と考えています。
 そこで、地域が一体となって子どもを育てていく「わたしたちの学校」について、県民のみなさまと共に考える「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

日時

平成30年8月21日 火曜日 14時00分から16時30分まで

会場

川崎市宮前市民館 大ホール(川崎市宮前区宮前平2-20-4)

内容

1)趣旨説明及び実践報告

  • 「神奈川のインクルーシブ教育の推進」 神奈川県教育委員会インクルーシブ教育推進課

趣旨説明2 神奈川の考えるインクルーシブ教育の推進とは、「支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざす」ことです。
 現在、神奈川県では、すべての子どもが共に学び共に育ちながら、能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加できる力を育むために、できるだけ「地域の学校で学ぶしくみづくり」「通常の学級で学ぶしくみづくり」「高校で学ぶしくみづくり」に取り組んでいます。
 また、これまで行われている特別支援学級や通級による指導などとあわせて、連続性のある多様な学びの場を整えることにより、一人ひとりの教育的ニーズに応えることができる教育の充実も進めています。こうした取組をとおして、地域で共に生きるしくみづくりにつなげていきたいと考えています。

 学校は、さまざまな子どもたちが共に学び共に育つ場を提供していくことが大切だと考えています。子どもたちがかかわり合う機会を多くもつことが、思いやりの心や、お互いを大切にする心を育むことにつながります。

 具体的には、小・中学校での「みんなの教室」、高校での「インクルーシブ教育実践推進校」の取組を進めています。
 「みんなの教室」の取組とは、すべての子どもが、できるだけ通常の学級で共に学びながら、必要な時間に適切な指導を受けることができるしくみのことです。すべての子どもは、通常の学級に所属します。特別支援学級など、在籍の学級はそのままですが、子どもたちはみんな一つの学級の仲間であるという考えのもと、共に学ぶ取組を進めています。「みんなの教室」モデル校では、子どもが生き生きと参加できるわかりやすい授業づくりや、多様な子どもたちが共に過ごし育ち合う学級づくりに取り組んでいます。また、学校全体で「すべての教職員がすべての子どもを育てる」という共通の意識をもち、一丸となって取り組んでいます。
 「インクルーシブ教育実践推進校」とは、共生社会の実現をめざし、知的障がいのある生徒が高校教育を受ける機会を広げながら、すべての生徒が共に学び相互に理解を深める教育に取り組む高校のことです。すべての生徒が、同じ教室で共に学ぶことを通じて、集団の中でお互いを理解しながら、社会性や思いやりの心を育んでいます。また、生徒一人ひとりの教育的ニーズに対応できるように、教育課程や指導体制の工夫などを行っています。平成28年度から始まった県立高校改革において、インクルーシブ教育実践推進校を段階的に指定し、取組を進めています。趣旨説明2サムネイル

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  • 「みんなの教室」モデル事業の取組 厚木市教育委員会

 (モデル校:厚木市立毛利台小学校、玉川中学校)

 「みんなの教室」モデル校では、通常の学級にすべての子どもが所属します。その上で、支援を必要とするときは、リソースルームや学習室(特別支援学級)、通級指導教室、国際教室、こころの教室など、さまざまな場で必要な支援を受けます。厚木市では、それらの支援の機能をあわせて「みんなの教室」ととらえています。
 通常の学級での支援がまず基本です。授業の目標や流れを示して見通しがもてるようにする、道具の使い方や片づけ方を目で見てわかるようにするなど、わかりやすい授業づくりや環境づくりを工夫しています。また、子ども同士の学び合いやかかわり合いを大切にしています。
 必要に応じて個別の学習支援を行うリソースルームを、毛利台小学校では「のびっこルーム」、玉川中学校では「かわせみルーム」と呼んでいます。リソースルームで授業の予習や復習などを行うことで、わかる・できる喜びを感じ、自信をつけて、通常の学級で元気に学べるようになります。
 リソースルームで学習することに対して、子どもが抵抗感をもったり、周囲のからかいを受けたりすることがありました。そこでモデル校では、「リソースルームはみんなの場であり、誰でも困ったときには支援を受けることができる」という意識が浸透するような工夫をしました。毛利台小学校では、子どもたちが「のびっこルーム」の体験をする取組を行いました。玉川中学校では、「かわせみルーム」を昼休みや放課後に開放し、誰でも利用しやすいようにしました。これらの取組によって、リソースルームへの理解が進み、子どもの心の育ちにつながっています。
 モデル校では、子どもの人権意識を高める取組を行っています。「みんなが笑顔になるために自分ができること」を一人ひとりが書いたり、各クラスでいじめ防止のスローガンを考えたりしています。また、生徒が地域の施設を訪問するなど、地域で共に生きるために理解を深める取組を行っています。
 モデル事業の取組をとおして、教職員同士の情報交換や連携が進み、すべての教職員ですべての子どもを支援しようという意識が高まっていきました。教職員の意識が変わったことが、子どもの変化につながっています。厚木市小中サムネイル

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  • 「インクルーシブ教育実践推進校」の取組 厚木西高校

 インクルーシブ教育実践推進校として、すべての生徒のために、共に学び共に育つ取組を進めてきました。特別なことではなく、当たり前なのにこれまではできなかったことを行ってきました。
 厚木西高校では、「学校のすべての教育活動をユニバーサルデザイン化する」ことを学校目標に掲げて取り組みました。
 たとえば、「フロントゼロ」として、教室前面の刺激量を調整しています。黒板やその周辺にはプリント等の掲示をせず、時計のみにしています。時間割や連絡事項などは、教室側面に掲示するようにしました。黒板には授業の目標を必ず書き、何を学ぶのかが明確になるようにしています。生徒が落ち着いた環境で学習できるように、この取組をすべての教室で共通で行っています。
 すべての生徒が教室で共に学べるように、大きなディスプレイで視覚的に示すなど、わかりやすい授業を工夫しています。また、授業によってはティーム・ティーチングを行います。二人の教員で連携し、たとえばポイントをホワイトボードに書いて見せる、補足の説明をするなど、生徒一人ひとりの状況に応じて必要な指導・支援をしています。
 知的障がいのある生徒に対するキャリア教育としては、ビジネスマナーやコミュニケーションに関する授業を行ったり、パソコンや清掃技能に関する資格の取得に向けて学習したり、地域の企業や事業所でのインターンシップ(就業体験)を行ったりしています。
 また、厚木西高校のすべての生徒を対象に、相互理解を促すためのプログラムを実施しています。平成29年度には、校内のユニバーサルデザイン化について考える取組を行いました。みんなで校内をまわって、わかりづらいところや使いづらいところを探しました。校内の表示が少ないことに気づき、わかりやすくする表示のアイディアを生徒自身が考えてプレゼンテーションをしました。生徒からは、「相手の立場になって気づく心をもつことが大切」「気にかけることが大事だとわかった」といった感想があがりました。厚木西高校サムネイル

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2)パネルディスカッション

 「地域と共につくるインクルーシブな学校ーみんなでつくる『わたしたちの学校』ー」

パネリスト 菅原 順子氏(特別支援教育士)
  礒野 晋作氏(富士フイルム株式会社人事部)
コーディネーター 鈴木 文治氏(田園調布学園大学人間福祉学部教授)

主な内容

菅原 順子氏:

パネリスト2 巡回相談員として、県央・県西地区の小・中学校、高校を訪問しています。厚木市の「みんなの教室」モデル校にもかかわってきました。
 20世紀の学校は、どの子どもにも均一的な授業をしていて、そこに居づらい少数の子どもは隔離される形で特殊教育を受けていました。また、クラスの中で、学習がわからない子どもや叱られてばかりの子どもは、疎外感を味わっていたと思います。
 支援教育の導入により、子どものニーズに合った多様で個別的な支援が行われるようになりましたが、クラスで適応できなければ個別にわけるという傾向が強まり、「共に学ぶ」インクルーシブの側面がおろそかになってしまったように思います。
 特別な支援は、道路にたとえると、自動車から歩行者を隔離する「歩道橋」になってしまっていないかと思います。異質なものを排除した単一社会で「歩道橋」を渡ったほうが安全ではあるけれど、地面を踏みしめて歩く楽しさや怖さを実感する機会を奪っているのではないかと思います。
 インクルーシブ教育、そしてその先の共生社会は、多様性を活かせる集団をめざしていくということです。考え方や行動様式、文化の異なる人が共存することで、相手や自分自身の心との葛藤が起きます。しかし、トラブルや葛藤をジャンピングボードにして、自分と違う生き方や学び方、感じ方を知る機会、型にはまった価値観や決めつけを崩していく機会を得ることができるのではないでしょうか。はじめはネガティブな感情もあるでしょうが、自分と違う存在に気づき、いろいろな人がいることが当たり前という日常の積み重ねの中で、お互いを理解し、「○○障がいという一面をもつ、でこぼこの多面体のAさん」ととらえられるようになります。
 インクルーシブな学校の土台は、一人ひとりの子どもの思いに寄り添い、つぶやきに耳を傾けることです。たとえば、先生が子どもの間違いに対して「惜しい」「みんなの勉強になる」などとポジティブに評価してくれると、子どもも安心でき、信頼関係が築かれます。
 「みんなの教室」は、さまざまな支援のしくみの総称であり、文字どおりみんなの教室です。「みんなの教室」は「歩道橋」ではなく、道路に設けられた「給水所」であり、必要としている飲み物をチャージしたら元気に安心してクラスに戻ることを目標としています。この目標がぶれないことで、教室でのインクルージョンと「みんなの教室」での支援とのバランスがとれて、柔軟に行き来のできる連続した地続きになっていると思います。ディスカッション2-1サムネイル

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礒野 晋作氏:

パネリスト3 富士フイルムの人事担当として、障がい者雇用に携わっています。入社後の職場定着支援にも継続してかかわっています。
 「共生」とは「相手の足りない点を補い合いながら生活すること」だと思います。会社や社会にはいろいろな人がいます。ただ一緒に同じ場で過ごすのではなく、「お互い様」という気持ちや尊敬の気持ちがあってこそ成り立つものだと感じています。
 社内で行っている共生の取組には、二つのポイントがあります。
 一つ目は「働きがいをつくる」ことです。社員にもいろいろな人がいて、誰にでも得意、不得意があります。それをお互いに補完しながら、違いを認め合い、それぞれが力を発揮できるように適切な業務設定をし、環境を整えます。そして、できたことを周囲が認め、感謝し、評価することで、一体感をもつことができ、自分の存在価値や意義、やりがいや生きがい、頼られがいなどを感じながら働くことができます。
 二つ目は「業務の標準化」です。業務は多種多様ですが、得意、不得意にかかわらず、誰がやっても、ある程度のレベルで業務を行えるように、業務をわかりやすく、やりやすくする取組を行っています。学校のユニバーサルデザイン化の取組に通じるものだと思います。
 社会はギブアンドテイクで成り立っていて、不得意な部分は他のメンバーが補ってくれます。その一方で、「あなたはどんな得意分野で、どのように他のメンバーにギブできるか」ということが問われます。何か「私の一押しポイント」と言えるものをつくることが大事です。
 会社で必要となるスキルには、パソコンなど仕事に直結するものや、手先の器用さ、緻密さ、丁寧さ、体力、集中力、持続力、人の気持ちに寄り添う力、サービス精神などもあります。
 また、会社はチームで運営されるので、スキルだけでなく、メンバーとうまくやっていく力、つまりチームワークも必要になります。あいさつや素直さ、わからないときに「わかりません、教えてください」と自分から聞くことも大切です。積極性や、やりたくないこともやっていく責任感も大事です。
 幼いうちからいろいろな経験を積み重ねて、そういった力をつけていってほしいと思います。ディスカッション2-2サムネイル

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鈴木 文治氏:

 コーディネーター2私たちは、子どもが地域の中で幼いときから共に育つ過程で、成長するにつれて大きな視野をもっていくということ、そして共生社会の担い手となっていくことを目的として、インクルーシブ教育を行っています。
 インクルーシブ教育には、まだ決まった形はありません。最終的には、地域の学校、通常の学級で、みんなが学ぶのが到達点でしょうが、そこに進むまでには、どのように環境整備や条件整備をしていくかなど、現状の課題への対応について、いろいろな方から意見をいただきながら考えていく必要があります。
 また、障がいのある方のさまざまな進路のあり方についても、議論を深めていく必要があるでしょう。インクルーシブ教育実践推進校をはじめとした高校や、大学、企業など、受け入れ態勢が整いつつあるところもあり、それが一つの希望であると思います。

 


 フォーラム会場2神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての学校においてインクルーシブ教育の推進に向けた取組が進み、共生社会の実現につながっていってほしいと思います。
 今回のフォーラムは、パネリスト、コーディネーター、実践報告者、そして会場全体で「インクルーシブな学校」について考える機会とさせていただきました。

 

主催

神奈川県教育委員会教育局 インクルーシブ教育推進課

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