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更新日:2022年11月15日

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令和4年度第1回インクルーシブ教育推進フォーラム

令和4年度第1回インクルーシブ教育推進フォーラム『小・中学校における「インクルーシブな学校」づくり』をテーマに開催しました

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PDFの内容は、このウェブページにある以下の内容と同じものです。

日時・会場・内容

日時 令和4年8月20日 土曜日 13時30分から16時30分まで
会場 県立総合教育センター
内容 1.開会挨拶2.趣旨説明3.実践報告4.公開座談会5.閉会挨拶

 1.開会挨拶

神奈川県教育委員 笠原 陽子

 神奈川県教育委員会では、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもが、できるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざし、すべての学校にインクルーシブな学校づくりに取り組んでいただいております。本フォーラムもその一環として、平成26年度より継続をして開催をさせていただいております。 笠原委員

 インクルーシブな学校には、特定のモデルはないと思っております。それぞれの地域の皆さんが願い、地域に生活する子どもたちに等しく同じ学びが提供できる、そういうインクルーシブな学校というものについて、対話を重ねて、そして皆さんの手で子どもたちと一緒に作り上げていく。その先に一つの姿があるのではないかと、思っております。本日ご参加の皆様方は、どのような願いや思いを持ってご参加いただいていらっしゃるでしょうか。ぜひ、会場からもご意見をいただきながら、充実したフォーラムになりますようご協力をお願いします。


 2.趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課
藤森 広一郎 グループリーダー兼指導主事

 近年、インクルーシブ教育という言葉を様々な場面で見かけるようになりました。皆様はどのようなイメージをお持ちでしょうか。研修や講義で、「障がいのあるものとないものが共に学ぶことだけが、インクルーシブ教育なのか?」、「すべての子どもが同じ場に一緒にいれば、インクルーシブ教育なのか?」というよというような質問をよくいただきます。これらは、インクルーシブ教育の一つの側面ではありますが全てではありません。初めに、インクルーシブ教育を考える際に大切なことについて説明していきます。藤森グループリーダー
 一つ目は、多様性の理解についてです。ときどき、多様性を「受け入れる」というような表現を聞くことがあります。この表現の背景には、普通か普通じゃないか、という二項対立のような考えがあるのではないでしょうか。また、多数の普通の中に、少数の多様な一部の人が混ざっている、と考えているのではないでしょうか。多様性の理解は、異質な他者を理解し、受け入れることではなく、自身が多様性の一部であるという認識です。そして、多様とは、ある基準から優れている、劣っている、間違っている、ということではないということです。つまり、平均、標準、普通の子どもは存在しない、ということです。多様性は、ある特定の物差しで測れるものではなく、多様性を理解することは、誰かが誰かを受け入れたりするような、方向性のあるものではありません。
 二つ目は、意識をインクルーシブにしていくということです。図の4つは、社会組織、集団等の状態を示す言葉です。どのようなスケールで見るかによっても見方は変わりますし、自分が社会をどう見ているか、と考えてみても見方は変わるかもしれません。4つの状態インクルーシブ教育を推進していく際には、状態や形としてのインクルージョンだけではなく、意識をインクルーシブにすることが必要ではないでしょうか。なぜなら、状態や形としてのインクルージョンから優先してしまうと、子どもの姿に合ったものにならず、インクルージョンをめざすつもりが、結果としてインテグレーションになってしまう可能性があるからです。
 次に、世界的な教育目標としての、インクルーシブ教育について説明いたします。平成6年に、万人のための教育の目標実現に向けサラマンカ宣言が採択され、初めて、インクルーシブ教育が国連で示されました。すべての子どもが共に学び、共に育つことのできる万人のための学校をつくっていくことが、万人のための教育を実現していくとされました。サラマンカ宣言の前書きには、「万人のための学校とは、インクルージョンの原則に基づき、すべての人を含み、個人主義を尊重し、学習を支援し、個別のニーズに対応する施設」とあります。誰も排除されず、すべての一人を尊重し、ニーズに適切に対応することが求められていることがわかります。平成27年の国連サミットでは、持続可能な開発目標SDGsが、「誰一人取り残さない」というインクルージョンの理念のもと、17の目標が設定されました。教育に関する目標4では、包摂的な教育の実現が明記されています。このように、インクルーシブ教育は、現在、世界共通の教育目標として位置付けられています。
 神奈川県では、インクルーシブ教育の推進の基本的な考え方を、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもが、できるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざす、として平成19年に策定されたかながわ教育ビジョンに位置付けられました。支援教育とは、すべての子どもたちを対象に、一人ひとりの教育的ニーズに適切に対応していくことを、学校教育の根幹に据える、という神奈川県独自の教育理念で、平成14年に報告書が出され、各学校では、一人ひとりの子どもを支える取組が充実してきました。対象者を限定せず、多様性を尊重し、子どもの主体性を大切にしながらニーズに対応していくという本県の理念は、先ほど紹介したサラマンカ宣言での万人のための学校づくりの考え方と重なります。
 また、共に学び共に育つことは、形優先ではなく、他者と共生していくことが社会の本質であることから、学校教育でも多様な仲間と協働的に学び、自己の学びを深めていくことは必然的である、という考えに基づいています。学校教育には、その必然性をつくり出す役割があるとも考えられます。
インクルーシブな学校教育に向けては、一人ひとりに教育が届くように、全員が対等な参加者として、学校教育を見直し続けること、つまり、本来の教育の原点を改めて見つめていくことが大切です。現状の学校の教育システムに子どもを合わせていくような指導・支援から脱却し、インクルージョンの意識で、学校教育が目の前にいる子どもに合わせて変化することができる柔軟な枠組みにしていくことが求められます。各学校で在籍している子どもや環境が違うため、決まった方法や取組はありません。各学校にふさわしい取組を考え、実践していくことで、インクルーシブな学校づくりが進んでいくと考えています。

 そこで、本フォーラムでは、実践報告を通して各市町のインクルーシブな学校教育における具体的な取組を知り、公開座談会を通して、インクルーシブな学校づくりについて議論を深めていきたいと考えています。そして、参加していただいている皆様とともに、各自の学校にふさわしい取組とは何だろうか、地域の学校に対して自分にできることは何だろうか、ということを共に考えていきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。


 3.実践報告

実践報告1 横須賀市支援教育推進プランを中心に
横須賀市教育委員会 橘 恒仁 主査兼指導主事

 横須賀の市立学校について説明します。小学校46校、中学校23校、特別支援学校2校、幼稚園1園、そして高等学校が1校あります。本市では、平成23年度から、すべての小中学校に特別支援学級が設置されています。学校外の学びの場については、不登校の児童生徒を対象とした相談教室が5ヶ所7教室あります。小学生だけが通うところもあれば、中学生だけが通えるところ、両方とも通えるようなところもあります。通級による指導を行う場所は、市内3ヶ所にあります。橘主査兼指導主事
 本年度から実施している、横須賀市教育振興基本計画を紹介します。本市教育委員会では、めざす教育の姿を、「あなたが好き 私がすき 横須賀が好き と誇れる人づくり」と掲げています。好きという言葉が使われていますが、好きという言葉には、よさに気づく、大切にする、理解する、という意味も込められています。「様々な価値観を持った人と力を合わせる、相手の気持ちを想像し続ける、多様であることに魅力を感じる、そういったあなたが好き、と誇れる人」、「自分の人生の主人公になれるように、自分を受けとめて、私が好き、と誇れる人」、「町や人との繋がりを大切にして生きる、横須賀が好き、と誇れる人」、これを合言葉にして、教育委員会全体で取り組んでいるところです。

 この振興計画に基づいた、横須賀市支援教育推進プランという計画があります。平成26年度から令和3年度までの8年間の取組を踏まえて、令和4年度からこの新しい支援教育推進プランに基づく取組を始めています。このプランの目的や取組は、インクルーシブな学校づくりに密接に繋がっているものだと考えています。特別支援教育ではなく、支援教育としているのは、先ほど県の方のご説明にもあった通り、すべての児童生徒が対象と考えているためです。支援教育を推進することでめざしているのは、一人ひとりの教育的ニーズに応じて多様な学びを実現し、誰もが安心して学ぶことができるようすること、すべての子どもに目を向けて、共生社会の担い手を育んでいくことです。そのために、他者と関わり合う中で、あらゆる他者を価値のある存在として大切にしたり、自分のよさや可能性に気づいたり、いろんな人と同じ目的を持って力を合わせて実際に取り組んだりするような経験を重ねていくことが大切であると考えています。
 このプランの指針1「学ぶ楽しさを味わえる授業づくり、関わり合う喜びを感じられる集団づくりを進めます」というのが、支援教育の根幹になる部分だと考えています。横須賀市支援教育推進プランの指針まさに、インクルーシブな学校づくりに向けた取組そのものだと思います。共に学び共に育つ魅力ある学校、これをキーワードに分かる授業づくり、居場所づくり、絆づくりを進めるようにしています。
 次に、指針2「一人一人の教育的ニーズに応じた学びのシステムを充実させます」では、一人ひとりの子どもにどのような学びが必要なのか、ニーズを踏まえて将来の自立を見据えた適切な指導、支援をめざしています。課題は、通級による指導や日本語指導の拡充です。例えば、コミュニケーションで支援が必要な子どもを対象に、通級を拡充していきたいと考えています。日本語指導については、今は指導員を学校に派遣するという形しかありませんが、ある程度集中的に初期の段階で指導できるシステムを作っていくように検討しているところです。
 指針3「地域全体で子どもを育てるネットワークづくりを進めます」については、指針1および2を下支えするものです。関係機関との連携やライフステージに沿った切れ目のない支援などの視点を重視しています。横須賀市相談支援チーム連絡会議というものがあり、乳幼児期から学校の卒業後まで、教育、福祉、保健、医療、労働等の関係機関が一体となって、子ども及び保護者に対する相談や支援を行っています。共生社会の実現に向けて、とても大きな役割を果たしています。例としては、本人保護者とともにつくる支援シートというものがあります。これは幼稚園・保育園・こども園と小学校、小学校と中学校、中学校と高等学校、これらの間やその先をつなぐために活用していただいています。
 すべての子どもが自らの人生の主人公として自分らしく生きていくこと、個々の違いや特性を生かし合いながらよりよい社会を築いていくということを願っています。そのためには、インクルーシブな学校づくりというのは欠かせない視点だと考えています。これに取り組んだらインクルーシブ教育が終わりということではなくて、それをめざし続けるプロセスが、まさに、このインクルーシブ教育の推進ということなのではないかなと思っています。他人事ではなく、自分も多様性の中の一部だということも含めて、自分事になっていくことが大事だと思います。また、私たち大人の思い込みで進めるのではなくて、子どもがどう考えているのか、子どもが何を求めているのか、子どもの声を聞いていくことが大事だと思います。これまでは、「同じ」ということを求めがちだったと思いますが、「違う」ということが前提で、私たち大人がどう変われるかということも試されているのではないかと思います。

 

実践報告2 インクルーシブ教育推進に向けての取組について 子どもたちへ届ける支援
大和市教育委員会 髙橋 歩 指導主事 

 大和市の学びの場についてお話します。大和市には、小学校19校、中学校9校が設置されています。そこに通う児童生徒数は約1万8000人です。小中学校以外の学びの場は、通級指導教室として、はぐくみの教室、ことばの教室、教育支援教室として、ひだまりの教室、まほろばの教室、今年度4月に開校した不登校特例校、外国に繋がりのある児童生徒のための日本語指導教室、大和プレクラス、を各学校や施設に設置しています。これら多様な学びの場は、学校で学びづらくなった児童生徒を別の場に任せるためのものではなく、あくまでも学校を中心にして、情報を共有し、児童生徒一人ひとりの個性や可能性に合わせた学びを行うための支援体制です。学校を中心にそれぞれの機関が繋がることで、児童生徒の学びを支える環境が広がり、よりその子に合った支援に繋がる仕組みになっています。
 また、本市では、多様な学びの場を整えるだけでなく、専門性を兼ね備える人材を学校へ配置、派遣しています。髙橋指導主事具体的には、児童生徒、保護者の不安に寄り添う教育相談員、学校を休みがちな児童生徒のサポートを行う不登校児童生徒支援員、通常の学級で学習支援を行うスクールアシスタント、特別支援学級で生活介助を行う特別支援教育ヘルパー、その他にも、放課後寺子屋大和コーディネーター、中学校学習支援員、外国人児童生徒教育相談員、日本語指導員等を配置、派遣しています。これらの専門的な人材も、子どもを中心とした支援体制の一員として位置付けられ、担任、教育相談コーディネーターと協力して支援を行っています。本市としては、学校と専門的な人材が常に繋がり、連携することで、よりよい支援体制の構築に取り組んでいます。
 その支援体制の一つが、大和市特別支援教育センターです。当センターは平成31年4月に開設され、愛称の「アンダンテ」には、一人ひとりの子どもが、その子に合ったペースで成長していってほしいという思いが込められています。センターのコンセプトは二つあり、一つは、特別支援教育に関する専門性の高い機能を持ち、学校との繋がりを大切にした拠点であること。もう一つは、児童生徒や保護者への切れ目のない、継続した支援を推進することです。コンセプトの実現に向け、センターには以下の4つの機能があります。まず、特別支援教育に特化した相談センターとしての機能、次に、教職員に対する研修施設としての機能、三つ目として、教育支援教室「ひだまりの教室」としての機能、そして、通級指導教室「はぐくみの教室」としての機能の4つです。その中から、はぐくみの教室について具体的にお話します。
 通級指導教室、はぐくみの教室は、通常の学級に在籍していて、情緒面や行動面、学習の仕方に課題が見られる児童生徒に、より豊かな人間関係を築き、安心して生活を送ることができるよう、一人ひとりの特性に応じた支援や指導を行う教室です。グループ活動が主となるため、教室内は、コミュニケーションが取りやすい環境になっています。はぐくみの教室は、小学部と中学部があり、担当の教員は小学部が5名、中学部が4名です。センターのコンセプトでもある学校との繋がりを根幹に据えて指導を進めていますので、はぐくみの担当教員は、午前中は各学校を訪問し、教室での「入り込み」支援を行っています。市内の小中学校では、これを「はぐくみ支援」と呼んでおり、実施4年目になって、呼び名も含めて浸透してきています。はぐくみ支援の役割は、児童生徒の観察、直接指導、学級支援の3つです。
 一つ目の児童生徒の観察については、学校での授業や休み時間の様子を、少し離れた場所で見守り、通級指導したことが学校でどのように生かされているか的確に把握し、次の指導に生かしています。また、教室環境など、様々な面からアセスメントも行っています。
 二つ目の直接指導については、児童生徒への個別の言葉がけや、補助教材の提示、友達との関わりの仲介など、状況に応じて、子どもたちの中に入って、指導や支援を行います。その際、子どもたちが安心して授業に取り組めたり、子ども同士が認め合いながら活動することができたりするよう心掛けています。 
 三つ目の学級支援については、ユニバーサルデザインの観点から教室環境の設定や、誰もがわかりやすい授業づくりについて、学級担任にアドバイスしたり、各学級にあった教室環境を担任と一緒にプロデュースしたりしています。
 はぐくみ支援で重要なことは、学校との情報共有です。その中で多く行われているのが、支援方法についての提案やアドバイスです。はぐくみの教室例えば、はぐくみ教室担当教員が支援グッズを使用しながら対応している姿を目の当たりにした学級担任は、きめ細やかな支援の重要性を強く感じているようでした。目の前で子どもの表情が変わっていく様子から、学級担任はきめ細やかな支援の必要性を実感していました。こういった意識の変化は、教員の支援力の向上にも繋がり、指導にも幅が生まれ、子どもへの柔軟な対応へ繋がっていくのではないかと思っています。学校からは、情報共有を通して、「支援は特別じゃないことに気づかされた」、「はぐくみの教室に通う子どもに向けた支援を考えていたが、そのことが学級全体の支援に変わりつつある」という話もいただきました。はぐくみ支援によって、学校での支援のあり方や教職員の意識が少しずつ変わりつつあると感じています。
 本市は、先生たちの気持ちを大切にしながら、子どもたちを中心に据え、すべての子どもたちのためのという意識を持って、これからも一人ひとりの子どもたちに支援を届けたいと思っています。

 

実践報告3 開成町のインクルーシブ教育推進の取組 一人ひとりが「すてきさん」として輝くために
開成町教育委員会 小林 裕史 指導主事 

 開成町は、県内で最も面積が小さな自治体ですが、令和3年度においては、県内で最も高い人口の増加率となっています。開成町には、公立幼稚園1園、私立保育園3園、小学校2校、中学校1校があり、それぞれが比較的大規模の園及び学校となっています。小林指導主事
 開成町では、「すてきさん」が教育の合言葉になっています。開成町では、幼稚園、小・中学校を通して、各学校のめざす子ども像が具現化された姿を「すてきさん」と呼び、一人ひとりが「すてきさん」として輝く教育を行っています。元気な挨拶ができた子、遊びや学習に夢中で取り組む子、苦手なことにチャレンジした子などに対して、先生たちは、「○○さん、すてきさんだね。」と声をかけています。すべての子どもがそれぞれ「すてきさん」として輝くための取組は、神奈川県のインクルーシブ教育推進の取組と、その理念において共通するところが多いのではないかと思います。
 まず、通級指導教室である「ことばの教室」の取組についてお話させていただきます。以前から開成小学校にはことばの教室がありますが、令和4年度からは、開成南小学校にもことばの教室が開設されました。小学校2校にそれぞれことばの教室があることで、自校での通級が可能となり利便性が向上しました。また、ことばの教室担当と学級担任との情報共有もしやすくなり、より充実した指導が図れるようになっています。また、2校の言葉の教室担当が情報共有することも大切にしています。年に数回の連絡協議会を設け、それぞれの教室の指導状況や、子どもの様子を情報共有し、その後の指導に生かすようにしており、担当の指導力の向上にも繋がっています。
 ことばの教室で大切にしていることは、安心して通級できるように通級する体制づくりに配慮していることです。児童が初めて通級する日には、学級担任やことばの教室担当から、通級のねらいや、どんな学習をするのかについて伝える時間を作っています。ことばの教室で本人のペースに合った指導を受けることで少しずつ力をつけ、不安を解消していきます。そして通常の学級で自信を持って授業に参加し、友達とコミュニケーションをとることができるようになっていきます。
 次に、インクルーシブな学校づくりについて、開成小学校での具体的な取組を紹介します。開成小学校では、グランドデザインの中で、令和3年度の取組の重点として、開成の心を育てる、インクルーシブな学校づくり、と明確にインクルーシブ教育の推進を示し、教職員のインクルーシブ教育への意識づくり、全教職員での共有化を図っています。また、教育相談コーディネーターを兼ねたインクルーシブ教育担当を中心とした支援体制を構築しています。インクルーシブ教育担当が各学級の様子を観察し、支援が必要と思われる児童を把握します。そして学級担任と情報共有し、場合によっては、指導方法等について助指導方法等について助言し、その後の支援策の検討なども行っていきます。また、担当が3年前から定期的に「インクルのたまご」という通信を教職員向けに出しています。このような通信を通して、インクルーシブ教育の理念を共有し、教職員の意識を高め、学校全体でのインクルーシブ教育の推進を図っています。
 開成小学校では、授業づくりにおいてもインクルーシブ教育の視点を大切にしています。校内研究会では、誰もがわかりやすい授業をめざして、指導案を書く際に、本時の展開の中にインクルーシブ教育の視点を取り入れています。
 また、共に学ぶための環境づくりも大切にしています。例えば、特別支援学級の児童が交流する際に、自分の机が常に通常の学級にあり、自分のロッカーがあり、物掛けがあり、そういった物理的な環境や居場所を保障しています。また、係活動のグループに入っていたり、日直等の当番活動があったり、活動や活躍の場があることなど、所属意識を高め安心していられる居場所をつくる取組も行われています。
 このような取組によって、教職員だけでなく、子どもたちの中にも共に学ぶという意識が育ってきています。子どもが通常の学級からそれぞれの学びの場に行く際には、「いってきます」、「いってらっしゃい」といったやりとりが自然となされています。このような何気ない一言の中に、相手を理解しようとする気持ちや、お互いを認め合う気持ちが感じられ、気持ちよく学びの場に向かうとともに、所属意識をより高めることに繋がっているのではないかと思います。このような、当たり前のことを、当たり前に積み重ねていくことが、インクルーシブな学校づくりで大切なことではないかと思います。
 最後に、町の広報誌による町民に対する周知啓発についてです。学校の取組を地域社会が知ることで、インクルーシブ教育について共通理解し、町全体で子どもたちを育てていこうという意識を高めることに繋がっていくのではないかと思います。すてきさん
 一人ひとりが、「すてきさん」として輝くために、今後もより一層のインクルーシブ教育の推進に努めて参りたいと思います。

 


 4.公開座談会 小・中学校における「インクルーシブな学校」づくりとは

登壇者
 橘 恒仁 氏(横須賀市教育委員会 支援教育課 主査指導主事)
 髙橋 歩 氏(大和市教育委員会 特別支援教育センター 指導主事)
 小林 裕史 氏(開成町教育委員会 学校教育課 指導主事)
司会進行
 藤森 広一郎(インクルーシブ教育推進課 グループリーダー兼指導主事)
 程島 観 (インクルーシブ教育推進課 指導主事)

藤森:インクルーシブな学校づくりに向けて、何ができるのか。また、自分にできることは何だろうかということを、ひとり一人が考えていくきっかけとなるような座談会にしたいと思います。まずは、登壇されている3名の方に、他市町の実践報告の感想をお聞きしたいと思います。座談会全景
橘:3市町とも小中学校以外の学びの場をそれぞれ用意していますが、「もう任せたからね」ということではなくて、それぞれの学びの場が、きちんと繋がっているということが、とても大事なのではないかと感じました。特に大和市の実践報告の中では、その部分を強調されていて大切にしていると思いました。
 もう一つは、開成町の実践報告の中で、コーディネーターの方が通信を出して、先生方にインクルーシブ教育を意識してもらっているというお話がありました。学校に関わる人すべてが、インクルーシブ教育を意識していくことが大事なのではないかと感じました。そこにいる人が、自分の事としてインクルーシブ教育というものを考える。そのための工夫は、市町村の規模や地域が違うにしろ、共通して考えていけることがあるのではないかと思います。

髙橋:横須賀市の実践報告を伺って、プランを立てて、インクルーシブ教育を着実に進めているのだなと感じました。プランを任せきりにしてしまうと実態がなかなか見えなくなってしまうと思うのですが、横須賀市の実践報告からは、学校の具体的な取組や細かい部分までしっかり把握されていると感じました。開成町の実践報告は、先生たちの意識の共通理解を図った上で、具体的に進めていて素晴らしい取組だと思いました。教育相談コーディネーター通信の「インクルのたまご」のように形にすることで、広がっていく取組も多くあると思うので、共通理解するための具体的な取組はやはり必要なのだなと思いました。

小林:率直な感想として、インクルーシブ教育の推進に向けた取組というのは、市町村の規模の違いや、地域の特色によって、やはり取組は同じではなく多様であるなと思いました。インクルーシブな学校づくりにモデルはない、というようなお話もありましたけども、他の市町村の様々な取組を伺いながら、開成町の取組をより推進していきたいと思いました。

藤森:会場の皆さんからも、3市町の取組について、感想をいただきたいと思います。

教員(小学校):インクルーシブな学校づくりが少しずつ広まってきているということを、本日の報告から感じました。一つ質問させてください。大和市の入り込みの支援に関しては、学びの教室に何名の教員がいて、どの程度の頻度で学校に入っているのか教えてください。

髙橋:大和市としては、通級指導教室の入り込み支援に、とても力を入れています。髙橋指導主事小学校19校全て通級している児童がいますが、5名の教員で、2週間に1回は各学校に行くように計画を立てています。中学校についても、通級している生徒の学校へ訪問しています。また、要請があった場合も訪問しています。

藤森:さて、多様な子どもたちが、普段の学校生活を送っている学級は、インクルーシブな学校づくりを進めていくにあたり、どういう学級になっていけばいいのでしょうか。

橘:今年度から本市で実施している支援教育推進プランの指針1というのは、前の8年間も全く同じ文言で指針1というのを立てて取り組んできました。指針2や指針3については割と形になりやすく、この8年間で取組が進んだ実感があります。ですが、この指針1の部分は成果が形としては見えにくい。私はどういう経緯でその活動にたどり着いているのかというプロセスがとても大事だと思っています。
 この指針1の取組が充実することによって、子どもたちが、自己選択をしたり、自己決定をしたりする場面をたくさん用意してあげられるような学級や学校になっていってほしいと考えています。また、学級や学校がすべての子どもの居場所になっていってほしいとも思います。居場所と言ったときに、いつもみんなで仲良く外遊びに行かなきゃいけないのか、というと、そうではないと思っています。ひとりでゆっくり過ごしたい子も安心して教室にいられる。自分と過ごし方が違う子がいても誰も否定をしない。それはそれとしてきちんと受け入れる。そして、自分とは違う過ごし方をしている子の魅力というか、面白さっていうのでしょうか、そういうところに気づけるような、そんな取組が生まれるといいなと思っています。
 例えば、授業への参加についても、一言もしゃべらないで参加している、という形はあると思うのです。もしかしたらその場にいなくても、どこか別の教室から参加していることもあるかもしれません。形の話ではなくて、そこで行われている学習活動に全員が何らか関わりを持って参加できているかどうかで、わかりやすい授業づくりを追求する。そんな、学級や学校になるといいなと思っています。

小林:やはり多様性の尊重ということがベースになるのではないでしょうか。小林指導主事それは、これまでも先生方が大事にしてきた部分であるので、より一層、ということになるとは思うのですが、最初の藤森さんのお話の中に、多様性理解で大切にしたいことは、異質な他者を理解し受け入れることではなく、自身が多様性の一部であるという認識を持つこと、と言われていて、とても大事なことだと思いました。そもそも誰もが違うということですよね。人はそれぞれ違うということを、いろいろな場面で伝えていき、多様性を尊重するような学級の風土をつくっていくということが、これからの学級づくりにおいても大事な土台となるのではないかと思います。

髙橋:私は、やわらかい学級がいいなと思っています。子どもがここにいるとすごく居心地がいいなと思える空間を学級の中につくっていくのが理想です。担任の先生はどうしても学級をまとめていくということに目がいってしまうということもあるので、はぐくみ支援の入り込みの時に、規律はもちろん大切ですが、子どもたちにとって居心地が良いような声掛けになるように、ちょっと視点を変えてみることを具体的な支援の中で見せていって欲しい、ということはぐくみ教室の担当に伝えています。

藤森:こんな学級、学校になるといいな、というご意見を会場からもお願いします。

保護者・教員(中学校):中学校の教員をしていますが、4歳の子どもを2人育てておりまして、今日は教員ではなく保護者の立場で参加しています。これからの学級というところに関しては思うところがあって、いろいろ形はあると思いますが、「すぐ抜けられる学級」というのもいいのではないかと思っています。ひとつの学級の中には、学習の理解度に幅のある子どもたちがいるので、分からない時に我慢してずっと座っているのではなく、分からない時には分からないと言えて、別の場所に行って学べるとか、実際には人手不足で難しい部分もあるかもしれないですが、そういう環境が理想的だと思います。さらに、なるべく同質性が働きにくい仕組みにできればいいのではないかとも思っていて、例えば、少しずつ実践が始まっていますが、年の違う子どもたちが1つの学級で学んでいくというのも手段としては有効であると思います。どちらかというとその方が、実際の社会には近いのではないかと。今までの学級のその境界線を溶かすというか、そういう取組がこれからできるのではないかと思います。

教員(小学校):趣旨説明のお話から、インクルージョンというのは、形だけではない、つまり、ただ共にいるだけではなくて、「そこの場にいて一緒にいてよかった」と思える実践であることが、改めて大切だなと感じました。どうしても意識が形に行きがちになってしまい、その子の個別のニーズを意識すればするほど、一緒にいる時間がなくなってしまうことが、果たしてその子にとっていいのか、逆に、通常の学級の中にいることだけが、その子への支援になっているのか、という部分で大変悩んでいます。大和市の入り込み支援の話を伺い、外部機関との連携や、教職員との情報共有をする中で、その子にとっての学びの機会を確保していくということが大切だと改めて思いました。貴重なお話をいただいたと思います。

程島:程島指導主事誰が居心地の良い学級を作るのか、誰がやわらかい学級を作るのかと考えたときに、それは1人の担任だけではないと思います。その学校にいるすべての教職員、子どもたち、保護者、地域の方、みんなが自分の事として考えていくことが大事だと思います。では、自分の事として考えるためにはどうしていくといいのでしょうか。

髙橋:われわれ教育委員会が主催しているような研修会等で、インクルーシブ教育の推進についてどのように考えていますか、など、先生たちに問いかけていくことが大切だと感じています。子どもたちが思うやわらかい学級、先生たちが思うやわらかい学級とは何か、自分の学級はどうですか、といった問いかけを、諦めずにやっていく事が大切なのではないでしょうか。

小林:子どもたちが、自分の事としてインクルージョンの意識を高めていくのは、教師がモデルになる部分が大切だと思います。例えば、「いってきます」とか「いってらっしゃい」の挨拶も、最初は担任が、そういった姿を見せることで子どもたちに広がっていくこともあると思いますし、教師がいろいろな子どもの良さだけでなくて、課題も肯定的に認めていくという姿勢を、子どもは見ているのではないでしょうか。「すてきさん」とは、誰かがすてきさんで、誰かはすてきさんではない、ということではなく、全員がすてきさんという考え方で、一人ひとりのいいところを見つけていこうということなのだと思います。

橘:教師として、私はこのスタイル、というように決めていたり、満足したりすると、自分の事ではなくなってしまうのではないかと思います。インクルーシブ教育を考えるときに、ここがゴールと決めてしまうといけないような気がしていて、自分を変えることを諦めないというか、「ここまで」という線を引かないことが大切なのではないでしょうか。例えば、学級担任であれば、教室にいられず飛び出してしまう子がいたときに、その子を変えるのか、学級集団を変えるのか、それとも教師としての自分が変わるのか、いろんなものが変わる可能性があるということを諦めないということが、大事なのではないかと思います。

保育士:認可保育園の園長をしています。先生方が本当に真剣に、いろいろと取り組んでくださっているということを聞いて本当に安心しました。園には、療育手帳を持っている子や療育センターに通っている子、四肢に欠損のある子、難聴の赤ちゃんがいます。個別の支援を必要としているお子さんたちの他にも、家庭的な問題で保健師さんと繋がっているご家庭もあります。そのような子どもたちが、みんな楽しく過ごしています。私たちも、子どもの成長に合わせて柔軟な対応をしながら、一人ひとりの子どもにとってそこが楽しい場所であるように、毎日保育をしています。当園では、個別な支援はもちろんしますが、みんなと同じように、または、同じようにではなくても、それぞれの子どもができる限りの力を発揮して、成長している、喜んで生活している、ということが手応えとしてあります。このような背景から、普段から一番インクルーシブに近い生活をしていると自負しています。日頃から地域の小学校の校長先生、それから先生方と幼保小の連携等で親しくさせていただく中で、子どもの様子をきちんと伝えていくことが、私たちの園でできる、一番インクルーシブな教育に繋がることではないかと思い、実践を重ねています。今のような関わり方で、私たちはいいのでしょうか。

髙橋:幼稚園・保育園・小学校が繋がりを持つことは、よりお子さんが安心して自信を持って小学校で過ごすことができたり、その子に合った適切な支援ができたりするという意味でとても大切です。したがって、園長先生が言われていたように、園での子どもの姿を伝えることはとても重要な事だと思います。就学相談を担当している中で、園の方にも訪問に行かせていただくのですが、保育園・幼稚園では、本当にいろいろな支援をしてくださっているので、小学校と一緒に支援を考えていくことは、大切なことだと感じています。

藤森:最後に、この座談会の感想や、今後に向けてメッセージをお願いします。

小林:多様性を認められる学級づくりが大切だなと改めて思いました。他者を認めるためには、自分自身を認めていく、自己肯定感を高めていくということも合わせて必要だろうと思います。自己肯定感を高めて相互理解していくことが、インクルーシブ教育の推進に繋がっていると思いました。ありがとうございました。

髙橋:困っている子のチェックリストを作りがちだと思いますが、そうではなくて、子どもたちの良い部分をどう見取っていくか、といった視点を先生たちとともに考えて広げていきたいと思います。自分の中では、インクルーシブな学校づくりにおいて、やわらかい学級というものが理想であると、改めて思いました。ありがとうございました。

橘:橘主査兼指導主事何十年も前からやってきている学校現場の実践の中に、すでにもうインクルーシブの視点というか、そこに繋がるものがたくさんあるのだと思います。その中で自分の教育活動を見直し続けることが大事なのではないかと考えています。横須賀に帰ったら、学校の先生方とそういう話をしてみたいなと思いました。今日はありがとうございました。

程島:これをやるとインクルーシブな学校、学級になります、というような取組は、果たしてあるのだろうかということを、私自身も考えています。私たち教師も変わり、子どもも変わるので、やはり固定された取組というのがあるようでないと思います。したがって、変わっていく子どもの姿を丁寧に知る必要があり、改めて一人ひとりの子どもに目を向けていくということが大事なのではないかと思います。ありがとうございました。

藤森:インクルーシブな学校づくりに向けて、一人ひとりが自分の事として、主体的に考えて行動していく。そして、学校でこんな取組ができたとか、地域でこんなことに取り組んでみた、ということを来年のフォーラムで話題にできるといいなと思います。ありがとうございました。


 5.閉会挨拶

神奈川県教育委員 笠原 陽子

 インクルーシブな学校づくりに取り組んでいる、ある小学校について紹介します。1学期、校長先生も教頭先生も一緒に全教職員が、インクルーシブな学校をつくるために、それぞれが自分自身にできることを考えて取組を行いました。そして、取り組んだことについて職員全員で夏休みにポスターセッションで発表しました。その中のひとつの発表では、「それぞれが自分なりのスタイルで勉強することで、集中して取り組めるようになった」というような内容の発表がありました。2学期にどのようになっていくか、とても楽しみにしています。
 つまり、インクルーシブな学校づくりに答えはなく、自分たちで見つけていく。お互いの話を聞きながら、その学校の、その子どもたちにとって何が一番いいのかを見つけようとする。そういう具体的な取組を通して、先生方自身にも当事者意識が生まれてくる。これから先は、具体的な行動に移すことによって、そこから生まれてくるものを共有していくことがとても大事になってくると思います。
 また、インクルーシブな学校をつくる、インクルーシブ教育を推進する際には、従来の枠組みにとらわれずに、先生方が取り組んでいくことを教育委員会がバックアップして仕組みを整えていくということも大事だろうと思います。
 平成26年度に実施されたインクルーシブ教育推進フォーラムの初回から色々な形で関わらせていただいていますが、本当に時間をかけて、皆様方がまかれた種が少しずつ少しずつ、それぞれの地域でそれぞれの咲き方を模索しているのかな、というような実感を得ております。引き続き皆様のご理解とご協力のもとで、神奈川県において、インクルーシブな学校づくりがより一層、それぞれのところで、実を結べるようにお力をいただけたら本当にありがたいと思います。


 今回のフォーラムは、今後の神奈川のインクルーシブ教育の推進を考える上で、大変有意義な機会となりました。神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての地域において「インクルーシブな学校」づくりに向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。


主催
神奈川県教育委員会 横須賀市教育委員会 大和市教育委員会 開成町教育委員会


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