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更新日:2024年5月15日

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令和3年度第2回インクルーシブ教育推進フォーラム

令和3年度第2回インクルーシブ教育推進フォーラム『みんなでつくる「インクルーシブな学校」共生社会の実現をめざして』」をテーマに開催しました

PDF版記録

PDFの内容は、このウェブページにある以下の内容と同じものです。

日時・会場・内容

日時 令和3年11月28日 日曜日 13時30分から16時30分まで
会場 海老名市文化会館大ホール
内容 1.開会挨拶2.趣旨説明3.実践報告4.公開座談会5.閉会挨拶

 1.開会挨拶

海老名市教育委員会 伊藤 文康 教育長

私が指導主事だった当時、さまざま就学相談がありましたが、ある保護者から「うちの子は海老名の学校に行けない。養護学校に行くことが決まっている。1回だけでもいいから海老名の学校を見に行かせてほしい。」というお電話をいただきました。医療的ケアが必要な子どもでした。みんなで階段を持ち上げて、1年生の教室の後ろの扉から入りました。授業が終わると、お母さんが、「うちの子うれしそうでしょ、喜んでいるんです。もう満足しました。私は、うちの子を養護学校に入れます。」と言っていました。itou
ここが私の疑問点であり原点です。「なぜこの子は海老名市立の学校に入れないのか、何の支障があるのか」この気持ちは当時から変わっていません。海老名市立の小・中学校には、どんな支援が必要でも、来てほしいと思っています。海老名市立の学校で教育できる場所をきちんとつくってあげたい、という気持ちは当時と一緒です。
海老名という地域で、どのように実現できるのか。私たち大人が、インクルーシブな学校をつくるために皆で話し合い、考え、発信することが大切だと思います。それを子どもたちに見せることが最高の指導だと思います。今日のフォーラムがその役割を果たしていただければと思います。

 


 2.趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課
藤森 広一郎 グループリーダー兼指導主事

地域のすべての子どもが通い、学ぶことのできる「インクルーシブな学校」は、県および市町村教育委員会と各学校だけで進めるのではなく、その学校がある地域の皆さまと共に取組を進めていくことが大切だと考えております。
「インクルーシブな学校」とは、地域の多様なすべての子どもが、地域の学校で共に学ぶことができ
る、そんな学校のことです。例えば、困ったときには、いつでもだれでも助けを求められる学校であること。すべての子どもにとって分かりやすい授業が行われている学校であること。子ども、教職員がお互いの違いを認め合い助け合うことができる学校であること。そこに通う多様な子どもに合わせて変容していくことができる学校であること。そのようなイメージです。fuji
学校は、社会のしくみのひとつであり、これからの社会をつくっていく子どもが育っていく場所です。すべての子どもの多様性を生かしていくような、「インクルーシブな学校」をつくり、地域の子どもがそのような学校で育っていくことは、すべての人が地域社会で共に生きるインクルーシブな社会、すなわち共生社会をつくっていくことに他なりません。
つまり、学校づくりは社会づくりでもあり、「インクルーシブな学校」は、その地域社会に暮らすすべての人と共に考えていくことが必要なのではないでしょうか。
そこで、本フォーラムでは、実践報告をとおして海老名という地域の取組を知り、公開座談会をとおして社会の中の学校のあり方について議論を深め、参加していただいている皆様と共に、地域社会にある「インクルーシブな学校」とは何か、地域の一員として自分にできることは何か、ということを考えていきたいと思います。

 


 3.実践報告
「多様性」を受け止め、「多様性」を生かし、ひとりひとりの学びを保証する教育をめざして ~えびなっ子しあわせプラン~

海老名市教育委員会
浅井 大輔 教育支援センター所長兼指導主事
三村 沙織 指導主事

海老名市教育委員会では、「えびなっ子しあわせプラン」を平成27年から実施しています。現在は第3期として、「多様性」を受け止め、「多様性」を生かし、えびなっ子ひとりひとりの学びを保障するために、一人ひとりの「多様性」に対応した教育の実践をめざしています。
第3期「えびなっ子しあわせプラン」には3つの取組の柱があります。1つ目の柱は、「授業改善の実践」です。子どもを中心に据えた、また、子どもの視点に立った授業を掲げて研究しています。日々よりよくなっていこうと努力する子どもたちの思いを大切にし、可能な限りの個別最適な学びと同時に、共通する目的や課題、経験や興味を通して、協働的な学びを実現し、多様な子どもたちが等しく学ぶ手ごたえを感じられる授業をめざしていきます。さらに、インクルーシブ教育のめざす共生社会はもとより、国際社会、情報社会、高齢化社会など、常に変化し続ける社会を子どもたちが力強く生きていくために、外国語教育やICT教育、人権教育やキャリア教育など、豊かな学びの実現に努めていきます。
2つ目の柱は、「教育支援体制の充実」です。全国的に増加傾向にある不登校やいじめ問題に対応し、先ほどのICTを活用した学びの保障についての研究を進めていきます。また、日々の対応についても、学校や教育委員会に加え、福祉や心理などの専門職や専門機関と連携をしています。さらに、効果的な支援を行うための人材の活用を広げつつ、教育支援のためのチーム体制を整えます。また、個別の教育支援計画の作成や環境整備により、すべての子どもを対象とした支援教育を実践します。具体的には以下の7つの取組を実践しています。


1.個別の教育支援計画の作成asa
2.通級指導教室の設置
3.特別支援教育補助指導員の配置
4.別室登校支援員・心の教室相談員の派遣
5.日本語指導講師の派遣・国際教室の設置
6.介助員・看護介助員の配置
7.言語聴覚士の巡回指導


3つ目の柱は、「特色ある学校づくりの推進」です。市内19校においては、学校を取り巻く環境や学校の伝統等に応じて、それぞれ特色のある学校づくりが進められています。特に、本市においては、すべての学校に「学校運営協議会」を設置し、すべての学校がコミュニティ・スクールになっています。特色のある学校の一つとして、県のインクルーシブ教育校内支援体制整備事業の指定校である海老名市立杉本小学校の取組を紹介いたします。杉本小学校では、平成29年度よりインクルーシブ教育を推進しており、今年度で5年目になります。この歩みは、生活の中にあるインクルーシブなものや場面を見つけるところから始まりました。そして、見つけたことを学級、学年、学校全体で、また、教員間や児童間で、つなげていきました。さらに、会議やたより、掲示板などを活用し、学校中に、また、家庭や地域に広めていきました。具体的な取組は、以下の5つです。


1.教育相談コーディネーターを中心とした校内支援体制の整備mimu
2.交流及び共同学習の充実
3.通常の学級における支援の充実
4.授業のユニバーサルデザイン化
5.地域との連携・交流


5年間の成果としては、まず、教職員の意識の高まりが挙げられます。当初は「インクルーシブって何?」という声がありましたが、取組を積み重ねていくうちに、「これがインクルーシブなんだ」という気づきにつながりました。そして、今では自然とインクルーシブな視点で、日々の教育活動にあたることができています。特別なこと、真新しいことを行うことだけが、インクルーシブ教育ではなく、「これもインクルーシブなんだ」と今すでに行っている支援や環境づくりや個を大切にしている活動の中にあるものを、再度見直し、価値づけながら、大切にしていきたいと考えています。子どもたちの姿にも変容が見られました。少しずつですが、学年学級問わず、教師が声をかけずとも相手の立場に立って互いに助けおうとする姿が見られます。また、話し合い活動をはじめ、子どもたち同士の関わりの中で、自然と違いを受け入れる姿が増えてきました。5年間の取組を通じ、子どもたち一人ひとりへの支援の過程を大切にし、チームで考え、チームの力で取り組んできた成果があらわれています。これからも、杉本小学校を中心として、市内にインクルーシブな学校という考え方が広まるよう、働きかけていきたいと思います。
目の前の子どもたちは、本当に様々で、一人ひとりがかけがえのない存在です。そんな子どもたちの姿から、インクルーシブ教育の実践に向けて、共通した手段や方法はないということを実感します。目の前にいる子どもたち一人ひとりによって、また、学校や地域の特色によって、支援やアプローチの仕方は数えきれないほどあると思います。これからも、学校を支えていただく多くの皆さんのお力をいただきながら、子どもたちの「今と将来の笑顔」のために、集団や社会の一員として「幸せに生活する」ために、仲間とともに、安心して学び、育つことのできる学びの場、共に生きる社会の実現をめざしていきます。

 


 4.公開座談会「社会の中にある学校のあり方」

常泉院住職 元海老名市教育委員 松樹 俊弘 氏
海老名市立上星小学校PTA会長 橋本 恵 氏
海老名市教育委員会 社会教育主事 重岡 慎一朗 氏
コーディネーター
独立行政法人国際協力機構 技術顧問 滝坂 信一 氏

滝坂:よろしくお願いします。早速ですが、会場の皆様にお伺いします。「インクルーシブな学校」を自分の言葉で説明するとしたらどんな言葉になりますか?taki
会場(一般):多種多様な子たちが、自由に、その子らしくいられる教育の場、という印象です。
会場(高校生):私は、障がいの有無に関わらず、全員が同じ授業を受けることができる学校、と考えています。また、それは実現可能だと思っています。
滝坂:登壇者の皆様に伺います。実践報告で海老名市の取組について説明がありました。それについてと、「インクルーシブな学校」やインクルーシブ教育ということについてどう考えていますか?
重岡:3月まで小学校教員をやっていました。今の学校でやっていることを見なおすことで、その場にいる子が過ごしやすくなるのかなと感じました。「支援する」という考えがなくなるというか、当たり前に支援ができればいい。その子たちへの支援とはいわない社会になったときが、インクルーシブな社会だと思います。今は、「やってあげている」ようなイメージです。「当たり前に誰もが過ごしやすい」ということが、できていたらなと感じています。
橋本:小学校のPTA会長をやっています。中学1年と小学5年生の子がいます。親としては、海老名で「えびなっ子しあわせプラン」などをやっているので、ここに住めてよかったと思っています。「インクルーシブな学校」という言葉は座談会に出ることになって初めて聞いた言葉でした。そこからいろいろなものを読みました。
地域に住むどんな子どもでも、同じ場で一緒に学べる場所、学校をつくることと感じています。
実際に、自分の子どもに同じ学校にいる子どもと、どんな関わりを持っているか聞いてみました。すると、「学校の階段が急で、一人で上り下りできない子がいたら、手伝ってあげる。」と話しました。子ども自身もインクルーシブという言葉が分かっているわけではありませんが、「そうしなきゃいけない」ではなく、それができていました。そういうことがインクルーシブな学校なのかな、と思います。
滝坂:ここまでの話でいくつか疑問が出てきます。そういう学校は前からなかったのか、地域に住んでいる子どもが一緒に学ぶことに取り組んでこなかったのか。今どうして取り組んでいるのか。そういったことをきちんと皆で考えたり話し合ったりすることが大切だと思います。
松樹:これまで、健常者と分けた教育をしてきたと思います。専門の支援学校が障がい児を受け入れるという形です。学校の建物の構造からして、そうせざるを得なかったのかもしれません。matsuインクルーシブの観点が出てきたことで、それはいけないと気づいたのではないでしょうか。徐々に変わってきていると思います。どんどん当たり前にしていかなくてはと思います。
滝坂:会場からもお願いします。
会場(特別支援学校教員):多様な学びの場として、海老名市立の小・中学校とも協力しています。海老名市での多様な学びとして今後も続けられると思います。特別支援学級に通う子ども、不登校の子どもが増えています。今日の話を聞いて、それが今回の取組とどうつながるか、興味があります。
会場(大学教員A):杉本小学校の話を聞きました。海老名市立の学校なので、こういう事業を県から市町村にお願いすると、県の考えが違う使われ方をされることがありますが、きちんと受け止められている感じがしました。杉本小学校の取組を全市に広げたいという話がありましたが、実現できると素晴らしいと思いました。
会場(大学教員B):現場の取組を見ていて、多様性を尊重する、そのマインドは浸透してきました。インクルーシブ教育という言葉も浸透してきていると思います。現場で困っていることを見ると、どうやって実現していくかという点で苦労されています。理念的というよりも、これからは具体的にスキル的なところをやっていきたいと思っています。
滝坂:なぜ海老名市では、インクルーシブな学校づくりに取り組むべきだと思われたか、お聞きしたいと思います。
会場(伊藤教育長):不登校の子どもや特別支援学級の子どもがどんどん増えました。それを焦点化して解決するのでなく、多様性として捉え、多様な子どもがいることが楽しいという視点から、物事を解決していく経験をすることが、今後の社会をつくる子どもたちには必要だと思いました。多様性に対応する教育を具体的に進めなくてはいけないと思っています。その中にインクルーシブも入っています。すべての子どもたちの多様性に対応できる学校教育でなくてはならないと思います。
滝坂:インクルーシブの考え方が普及し、自分のことばで説明ができるようになりつつある段階に来ているのだなと感じます。では、次の段階としてより具体的にどう進めるか、今の課題を共有する段階かなと思います。障壁は何か、また、それをどうしていくことが大切でしょうか。
重岡:個人的に思うことは2つあります。1点目は、学校には「こうしなければいけない」という固定的な考え方が多いと感じます。それが必要なところもありますが、今まで続けていることが、子どもたちを苦しめているなら見なおすべきかと思います。
2点目は、学校だけでは限界があるとも感じます。地域の人と一緒に地域づくりをされている人がい
る。学校という場でいろいろな人の力を借りながら、一緒に子どもたちを育てる地域になれば、いろいろなところで活動ができ、居心地のよい空間になれると思います。
滝坂:松樹さんは、曹洞宗の僧侶でもいらっしゃいますよね。明治までは、日本はお寺が持っていた地域の教育がありました。文化的なことも含めて、何が重要で何が障壁になるか教えてください。
松樹:人的支援も必要かと思います。昔は寺子屋がありました。うちのお寺も、戦後までは地域の方が子どもを預けたりしにきました。檀家の人との関わりがお寺にはあります。学校では、先生以外の方と関わることは少ないと思います。地域の中の関わりで人間は成長していくと思うので、それが今は足りないかなと思います。
滝坂:地域との関わりが少ないことが、現在の学校の課題だとお二人が言っています。今、子どもたちを育てる機能を地域で取り戻す時期にあるのではないかと思います。それを含めて、保護者の立場から、インクルーシブな学校をつくるとき、どんなことが大切で、どんなことが妨げになっているか、橋本さん、感じることはありますか?
橋本:学校だけではなく、保護者や地域の人が皆で関わりあって学校を支えなければいけないと思います。hashi学校だけに押しつけるのでは、煮詰まってしまうと思います。学校の中にいる先生だけに、多様な生徒の対応を任せるのではなく、専門の知識のある人や教職員などの支えがあって、できるのだと思います。
滝坂:「他の子と異なっている子どもには、特別な教員がいないと何もできない、その子に対して応じられないと、学校から排除する」というのがこれまでのことです。結果として障がいのある子どもたちを排除することになってしまいました。これは、子どもの問題ではなく、学校の仕組みに問題がある。学校のあり方、先生のあり方などを変えていく。それがインクルーシブな学校の開発です。どうしていけばよいのでしょうか。
重岡:自分のこととして考える。その方も社会の一部で、主体的に関わっていると思ってもらうために、共通のねらいを持つとか。自分もみんなの一員だと、自分事として考えられるような働きかけが大切かと思います。
松樹:やはり、自分のこととして捉えることが大切なのではないでしょうか。
橋本:とても大きな問題だと思います。私自身が変わらないと、これから先もインクルーシブな学校をつくる考え方ができないと思います。
滝坂:授業についてはどうでしょうか。今までの形で、先生が黒板を使って一方的に進めるというスタイルでは、おそらくダメなのだと思います。どう工夫するのか、子どもたちと話しながら工夫がなされていかないとダメだと思います。重岡さん、どんなことが考えられますか。
重岡:黒板に書いたことをノートに書かなければならないだけで、負担になっている子がいます。shige書くことが負担となっている子には、写真をとって貼らせることもしていました。
会場(小学校教員):先生がまず変わることがなければ、この取組は成功しないと思います。いくらお金などが付いても、先生が前のままでは有効にできません。共通理解をして進めなくてはと思っていますが、学校は他にもやることが多く、先生方はいろいろなことに追われているので、ゆっくりこの話をする機会もなかなかありません。どうしたらよいか模索している最中です。
保護者にも協力していただき、特別支援学級の子どもの生活の場所を通常の学級に移すことを始めてみました。その結果、先生の意識も高まってきましたが、意識を変えることは大変だと感じています。
滝坂:「インクルーシブな学校」と言い出したのは、日本政府ではなく国連です。途上国では学校教育を受けられない子どもがたくさんいます。そういう国に対して、すべての子どもたちが教育を受けられる仕組みをつくっていこうとしている。これをインクルーシブな教育システムといいます。日本はインクルーシブな教育システムをある意味完成させています。どんなに障がいが重くても、教育が受けられる仕組みをつくりました。
国連はインクルーシブな教育システムをつくるためには、インクルーシブな学校の開発が欠かせないと言っています。日本はこれには至っていない。神奈川県や海老名市を含め県内の各市町はそこに取り組んでいます。
では、インクルーシブな学校をどうつくっていくかといえば、意識、考え方の転換が大事です。「エクスクルージョン(排除)」は、学校教育を受けられない子がいる状態。「セグリゲーション(分離)」は、小・中学校と特別支援学校や特別支援学級という形で別々に教育が行われている状態。「インテグレーション(統合)」は、学校の枠組みをそのままにして、そこに障がいのある子をただ入れること。ここで行われるのは障がいのある子への支援。そして「インクルージョン(包摂)」は、いろいろな子どもがいて、それに学校が合わせていくということ。そう考えたときに、海老名市の小・中学校はどういう状況にあるのでしょうか。今、どういう状況に海老名市の小・中学校があるかを理解することで、次の一手を考えることができます。いつでもその子が皆と学べるように、学校全体を変えていこうということです。
20年ほど前のことですが、ユネスコでインクルーシブな学校の開発に関わったノルウェイ、オスロ大学の教授に、インクルーシブな学校の開発が一番できているところはどこかと聞いたことがあります。「『インクルーシブな学校』というのは、それをめざして進めば道を誤らない、ガイディングスターなのだ」と言われました。ガイディングスターとは、北極星と南十字星です。昔、船乗りたちは北極星と南十字星を目印にして航海をしました。それにより方向を間違えませんでした。その言葉を聞いたときに、インクルーシブな学校は永遠に実現しないのかと失望に近いものを感じました。しかし、実際に取組を進めるなかで、めざす方向に対して今どこまで来ているか、次の一手は何かと、それによって皆で考えることができると感じるようになりました。学校の新しいかたち、新しい文化は、先生方が今の学校で仕事をしている間には実現はできないかもしれません。学校文化をつくる一過程のなかで自分は仕事をしていると先生自身が考える必要があるのだと思います。
松樹:5年後、10年後どうするか、現場の先生だけで相談したり議論したりするのは難しいと思います。教育委員会、コミュニティ・スクールなどもあります。その中で、しっかり話をして方向性をみつければよいと思います。長いスパンであれば、こうだったら変えられるとかの議論をしたほうがいいかと思います。
橋本:先生方がやらなくてはならないこと以外に考えるのは難しいことを思うと、保護者も先生たちを支える立場で関わっていけばよいかと思います。
重岡:幅広い方の意見を聞く。大人が多様な意見を言いあって、目標に向かって「こうしていく」と方向性を決めていくことではないでしょうか。海老名市では学校応援団もあります。幅広い地域の方などにも参画してもらうのが理想かと思います。いろいろな会議で地域の方やPTAの方にも関わっています。
今、皆さんで話し合っていることを伝えて、その方々が所属している場所に持ち帰り、そこから徐々に広げてもらうような仕掛けづくりというか、皆さんの協力が得られるような働きかけです。
松樹:私の子どもは大学生と社会人です。教育委員が2年前に終わってから、学校に行く機会が減りました。ふだん、用事もないのに学校に行くわけにもいきません。歩いて2~3分の距離にあるのに。地域の方が学校に入れる仕掛けをつくってほしいです。防犯面もあると思いますが、もっと広めて、地域の方が入っていけるといいと思います。関わりを持つのが一番です。学校は子どもたちのもの、というのが第一義ですが。地域の学校をめざすのがいいのではないかと思います。
滝坂:日本に学校ができて、来年で150年になります。当時は、近代国家、富国強兵のために学校はありました。第二次世界大戦後、新しい学校の考え方と六三三制などの仕組みがつくれて75年になります。
そのときは戦後復興と民主国家が目標でした。では、これからの社会を考えたとき、学校はどうあればいいのか。子どもたちにどのような機会、場を提供する仕組みとしてあるのか。これからの社会を考えて、学校をつくりかえる時期に来ていると思います。
さて、この1~2年、いろいろなところでSDGs、17の目標が話題になっています。この目標は「持続可能な社会のための2030年アジェンダ」という文章のなかにあります。本文には社会的にインクルーシブな世界をつくっていこう、と書いてあります。これは、17の目標を通して、「誰ひとり取り残されない社会をつくろう」ということです。SDGsとインクルーシブな学校は繋がっています。それに取り組んでいること、それが大事なことは冒頭の教育長の話にもありました。神奈川県はこれにずっと取り組んできた県です。ガイディングスターには方向性を皆で共有してやっていきましょう、というメッセージがあります。自分にできることは何かを考えることが大事です。
滝坂:最後に、こんなことをやろうと思っているということをお話ください。
重岡:指導主事としていろいろな授業を見ています。そこで感じること、こうしたらどうだろうとアイディアを出せるよう自分もしっかり勉強したいと思います。
橋本:私自身もインクルーシブのことで、わからないこともありました。もっと親の世代にわかってもらえるように、いろいろな子と触れあえるようなイベントをPTAの活動として企画できたらいいなと思いました。
松樹:インクルーシブな地域、共生社会をつくっていくことは大切だと思います。社会に子どもたちが出たとき、習ってきたことと違うとギャップが生まれると思います。インクルーシブな世の中に本当になっているのかは、大人の責任だと思います。「誰一人取り残されない」ということで、インクルーシブな地域をつくる責任があると改めて感じました。
滝坂:ありがとうございました。伊藤教育長さんどうでしょう。
会場(伊藤教育長):私自身は、自分をよりよくしようと言っています。そのために勉強しています。学校や子どもたちがよりよくなるのは、自分の仕事だと思って勉強しています。授業を見に行くと、具体として支援が必要な子どもも、皆と一緒に学校生活が送っている。そういう場面を、先生たちは大変でも増やしていってほしいと思います。それに対して、教育委員会はこうすべきだと一生懸命、私の立場でやろうと思っています。この子のために、この子が喜んでくれた、みんなで一緒にできたという場面が増えていくことを望んでいます。
滝坂:みんなで協力して、すべての人が少しでも地域から、地域の学校から排除されないで、支え合い、育ちあうことで実現していけるといいと思います。ありがとうございました。

 


 5.閉会挨拶

神奈川県教育委員 笠原 陽子

インクルーシブ教育推進フォーラムは、平成26年からスタートして、さまざまな形で実践されてきました。今回のフォーラムは、神奈川県と海老名市が主催しました。kasa
県が推進するのと同時に、市町村が主体的に取組を進めることがとても大事なことだと思います。地域で暮らす子どもたちを受け入れる小・中学校の教育がどうあるべきかを考えることは、高等学校にあがる子どもたちに教育の場を保障し、地域のみんなで子どもたちを育てることに繋がると思います。
お話しいただいた海老名市の取組が県内のどこの市町村にとっても、それぞれの取組をより推進して
いくことで、意思が共有されることを願います。皆さま方も、それぞれの場に戻ったら、ぜひ今日の話をしてください。さらなる一歩が進むと思います。
本日は最後までご参加いただき、心からの感謝を申し上げます。

 


今回のフォーラムは、今後の神奈川のインクルーシブ教育の推進を考える上で、大変有意義な機会となりました。神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての地域において「インクルーシブな学校」づくりに向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。


主催
神奈川県教育委員会 海老名市教育委員会


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