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更新日:2022年3月28日

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令和元年度 第4回インクルーシブ教育推進フォーラム 記録

令和元年度第4回インクルーシブ教育推進フォーラムの記録を掲載します

みんなでつくる「インクルーシブな学校」

ー共に考えること、自分にできることー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 「インクルーシブな学校」は、学校だけでつくることができるものではなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要です。そこで、県民のみなさまと共に「インクルーシブな学校」づくりについて考えていくために「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

 

日時

 令和元年10月26日 土曜日 14時00分から16時30分まで

会場

 相模原南市民ホール(相模原市南区相模大野5-31-1)

内容

  • 趣旨説明及び実践報告
  • 公開座談会

 


趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課 熊本志穂指導主事

 神奈川県のインクルーシブ教育の推進とは、これまで神奈川県が推進してきた支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざすことです。
 小・中学校では、昨年度まで4市町7校にご協力いただき「みんなの教室」モデル事業を行ってきました。「みんなの教室」とは、すべての子どもが在籍の学級にかかわらず、できるだけ通常の学級で共に学びながら、一人ひとりのニーズに応じた指導・支援を受けることができるしくみのことです。取組の成果としては、子どもの変容に加え、学校のすべての子どもをすべての教職員が支え育てるという意識が高まったこと、そして、先生方がお互いを支え合うようになっていったことだと考えています。そこで今年度から、組織的に子どもたちを支援する体制を整備する事業を拡げています。県教育委員会では、「みんなの教室」の取組の成果を全県に普及させ、すべての学校がインクルーシブな学校となることをめざしています。
 県立高校では、共に学び共に育つことを一層推進するために、インクルーシブ教育実践推進校の取組を進めています。今年度より県内のどの地域からも実践推進校に通うことができるよう、新たに11校を指定し、令和2年度入学者選抜から、14校のインクルーシブ教育実践推進校で、知的障がいのある生徒を対象とした、インクルーシブ教育実践推進校特別募集を実施します。
 これからも小学校段階から高校段階までの共に学ぶ取組や相互理解を進めるための取組を充実させ、連続性のある取組となるようにしてまいります。 

実践報告 「インクルーシブ教育実践推進校の取組~茅ケ崎高校生徒の声から~」

茅ケ崎高等学校 清宮 太郎 校長

 神奈川県では、平成28年度から、茅ケ崎高校、足柄高校、厚木西高校の3校のパイロット校で高校におけるインクルーシブ教育の取組をスタートさせました。平成29年度から生徒が入学し、ちょうど今年度3年生が卒業します。まだ進路は確定していませんが、この4年間の実践をお伝えいたします。
 インクルーシブ教育の取組は、小学校、中学校の義務教育段階では、かなり進んでいると思いますが、高校においては、おそらく全国でも初めてといってもいい、「前例のない」取組でした。私たち3校は、前例をつくること、それが大きな役割だったと思っています。
 私は平成28年度に茅ケ崎高校に着任しました。私は、「特別な生徒が入ってくるから特別に」という取組にはしたくありませんでした。今までも高校で取り組んできた実践を拡げ、そして深めること。それが大切だと思って取り組んできました。その想いが「すべての生徒にとって居心地のよい学校・学級づくり」という言葉に示されています。障がいのある生徒だけではなく、いろいろな生徒が支援を必要としています。日本語が十分に理解できないとか、経済的なものとか、自分だけでは解決できない課題があります。そういう課題があったとき、「今、自分は困っているよ」、「こういうところを助けてくれると嬉しい」というメッセージを生徒自身が自然に出せる。そういう学校づくりが大事だと思い、「困ったときに、困ったと言える環境づくり」に取り組んできました。高校時代は、子どもたちにたくさん困ってほしいのです。困ったときにどうやって自分で解決する力をつけるかが大切であり、社会に出てから初めて困ったのでは、それこそ困ってしまいます。

 高校でどう学ぶか、車いすバスケットボールの例に置き換えながら少しお伝えしたいと思います。
車いすバスケットボールの映像や写真はご覧になったことがあると思います。下半身に障がいのある方が車いすに乗って、3
m以上ある高さのリングに向かってシュートします。もし、下半身だけでなく、上半身にも障がいのある方が一緒に楽しみたいと思ったら、皆さんならどうしますか。「あなたは無理だからあきらめて」といいますか?どうやったら一緒にできるかを考えると思います。ご存じの方は少ないと思いますが、車いすツインバスケットボールという競技があります。上にシュートできる人は上に。届かない人は高さ1mくらいのもう一つのゴールを用意して、フリースローサークルの外から下のゴールにシュートしてよい。それも難しい人は、もっと近づいて、玉入れのようにやる。こうやって工夫すれば、同じバスケットボールを楽しめると思います。
 学習も一緒です。高校生がここまで到達するという目標があれば、得意な教科は一緒に同じ目標をめざせばいい。苦手な教科は、自分のゴールを作ってそこをめざせば良いのです。そうすれば、授業中にやれることはたくさんあります。学校生活で苦手なことがあれば、それに代わるものを考えれば良いのです。高校で共に学びたい、一緒にがんばりたいと思う気持ちが何より大切です。いろいろなゴールやルールがあってもよい。抽象的な話かもしれませんが、そういうイメージを持っています。
 茅ケ崎高校では、平成28年度から全校生徒にアンケート調査を行って、統計を取っています。「茅ケ崎高等学校がインクルーシブ教育実践推進校で良かったか」という項目では、学年別に見ると、今年入学した生徒の99%の生徒が「良かった」と回答している。義務教育段階から、生徒たちが共に学ぶことに十分に取り組んできていることを裏づけるデータだと言えます。bunkasai
 そして、高校でも互いの違いを尊重し理解しあえるように、相互理解を促進する学習も重ねてきました。ちょっと恥ずかしいのですが、今年の文化祭のパンフレットの画像です。私の顔の横に、「互いの個性を認め尊重していく」と書いてあります。先生が書かせたのかと思いましたが、生徒たちが自分で考えて書いたそうです。一般入学の生徒もこの学校の取組を理解してくれていると感じています。

 3年間、生徒や保護者に繰り返し「一緒に壁をのりこえる、そういう取組にするのはやめよう」と伝えてきました。「壁をのりこえる」のではなく、「壁をこわす」こと。そこが、私たちのめざしていることです。まさしく最初の大きな壁をこわせたと思っています。インクルーシブ教育実践推進校が14校に広がったときに、それぞれの学校が工夫をして、この取組も新しいステージに進むと思います。皆さんに力をいただきながら、新しい社会に向かって、共に力を合わせていきたいと思います。

 


公開座談会 「インクルーシブな学校から共生社会へ」

  • 青山 昭彦 氏(株式会社ギオン管理本部 総務部次長)
  • カンスリヴォン セイキ 氏(株式会社ギオン 神奈川第一センター)
  • 金 愛蓮 氏(さがみはら国際交流ラウンジ運営機構 代表)
  • 横川 敬久 氏(NPO法人ラウレア 理事長)

コーディネーター

  • 滝坂 信一 氏(独立行政法人国際協力機構技術顧問)

滝坂:
座談会のテーマは「インクルーシブな学校から共生社会へ」です。共生社会とか、インクルーシブ教育とはどういうことなのか、そして、学校はどういう場であればいいのか。今日お越しの皆さんが、こういうことなら自分でもできそうだという具体的なアイデアを、1つでも2つでも持ち帰れるようにしましょう。
「インクルーシブな」とは何か。言い換えれば、人権の問題です。その地域にいる人の中で、だれかが追い出されたり、虐げられたり、苦しい思いをするのは、どう考えてもおかしい。今の日本の社会は、残念ながらインクルーシブではありません。
神奈川県が「インクルーシブな学校をつくる」ことに取り組んでいくことに決めたということは、そういう状況を変えると決めたのだと、私は思っています。
いろいろな課題がある社会に対し、これから巣立っていく子どもたちに対し、学校がどういう場であるべきなのかを考えていきたいと思います。
では、登壇者の皆さんに自己紹介をしていただきます。
青山:
株式会社ギオン管理本部総務部人事課の青山です。
株式会社ギオンは相模原市南橋本に本社があり、昭和40年に創業し54年目を迎える総合物流企業です。地域社会との共生をめざし、物流・健康・環境の三本柱で幅広い事業を展開しています。障がい者雇用の際、特別支援学校の新卒者の受け入れに力を入れていますが、実践的な現場実習を繰り返し、働くことの喜び、厳しさ、職場のルールやマナー、従業員との関わり、働く意欲や働く力を体験的に身に付けていけるように取り組んでいます。ギオンでの仕事が自分にあっているのか、自分で理解できるようにすることで、離職率の低下にもつながっています。採用した社員は、生涯を通して働けるように、自立生活をめざし、企業と社員がWIN-WINの関係を作っていこうと取り組んでいます。
カンスリヴォン:
株式会社ギオンの神奈川第一センターで倉庫内作業をしています。
21年間、日本に住んでいます。今もラオス民主主義共和国の国籍を持っています。
小学校は通常の学級、中学校は特別支援学級、高校は特別支援学校の分教室に通いました。
ギオンに入りたかったのは、街中でトラックが走っているのを見ていたので、働いてみたいと思ったからです。現在、4年目です。他の社員さんにも積極的に自分から話しかけて、和気あいあいと仕事をしています。運転免許を取得したばかりですが、将来は中型のトラックドライバーになることをめざしてがんばっています。
金:
アニョハセヨ!こんにちは。日本に来て、30年になります。私は、「さがみはら国際交流ラウンジ」運営機構の代表として来ました。今回の話をいただいてから今日まで、どう話そうかとか、いろいろな方にインタビューをして、毎日考えてきました。
滝坂:
「さがみはら国際交流ラウンジ」で仕事をされていて、外国から来られる方の相談を受ける中で、日本という社会の問題だと思うことはありますか?
金:
日本の皆さんは、わりと「自由」という感覚が身についてない生活をしていると感じます。だから、もう少し「心の中からの自由」を大切にして、「自分でやっていいよ」と素直に出せる社会だったらと思います。
滝坂:
なるほど。僕はJICA(国際協力機構)で仕事をしています。いわゆる途上国でボランティアをしてきた人たちの帰国後面接をするのですが、皆、金さんと同じことを言います。
金:
そうですね。日本人の皆さんは、自分の他に3人いたら、3人と違うことを気にする。その3人に合わせたい気持ちが強いのかなと思います。
滝坂:
横川さんにうかがいます。横川さんは、子どもも大人も関係なく、いろいろな人たちが集まり交流する場を展開している方です。
横川:
「自由」という言葉が出てきました。僕の座右の銘は「自由と責任」です。自由だけを訴えるのではなく、そこには責任が発生するということを大事にしながらやっています。日本の福祉に僕も今、携わっているわけですが、自由にはやれていないな、もっと自由になれないのか?という気持ちをもってやってきました。
僕自身がやっているのは、重度の障がいがある子どもや、医療的ケアが必要とされる子どもたちの学童保育である「放課後等デイサービス」という事業に取り組んでいます。今は5年目ですが、始める時に、既に経験のある専門職、学校教員、保育園の方とか、いろいろな方に意見を聞いてみました。多くの方から返ってきた言葉が「やめたほうがいい」ということでした。「どうして?」と聞くと、「専門性がないとできない」「子どもに携わったことがないとだめ」とか。インクルーシブという前に、これからチャレンジしようという人を受け入れようとしない社会が、この日本の福祉の中にあると思いました。
滝坂:
医療的ケアの必要な子どものための「放課後等デイサービス」ということですが、障がいのある子は集まってくるけど、そうすると地域の子どもと出会う機会が減ってしまうと思いますが、そこはどう考えますか。
横川:
障がいのある子どもたちのための施設というデザインで最初から作ればそうなるでしょう。でも僕のなかには、障がいのある子どもを守るのではなく、いろいろな人と出会うことが必要という考えが最初からありました。そこで、子どもを連れて出勤する人をスタッフとして雇用しました。親と子がスタッフとして来て、子どもは自由に遊ぶ。家に帰ったら子どもと一緒に遊べてよかったとか、楽しかったねと振り返りをして、障がいがなくても、子どもも自分らしく遊べる場所を作る。これを繰り返しています。
滝坂:
横川さんは、地域の中で障がいがあってもなくても一緒に活動できる取組をされているとのことでした。ギオンも、障がいのある人もない人も一緒に仕事をしていますよね。その中で、青山さんが取り組んでいることや、感じていることはありますか?
青山:
当社では、外国籍の人もいますし、年齢層も幅広く10代~70代までの人たちが一緒に作業を行っています。障がい者雇用にあたっては、雇用の前に行う実習では、スピードや効率を求めません。一つ一つ正確に教えられたことをミスなくやれるかどうかに重点的に取り組みます。従業員や責任者には「とにかく声をかけて」と伝えています。周りのフォローが大事なので、そこを注意してもらっています。
ある時、会社から突然「障がい者雇用に取り組んでくれ」と言われました。最初は何も分からず、企業の社会的責任というところから入っていきました。今思っているのは、障がい者だからこの作業しかできないだろうというのは全くなくて、任せてみれば「できる」ということです。私も障がい者雇用に取り組む前は、関わる機会がなかったため、ある意味、壁があったのかもしれない。今は、バリアをなくして、各事業所で社員や責任者も自然に受け入れられる体制を作っていきたいと考えています。
カンスリヴォン:zadankai4
自分も4年間勤務していますが、実習生がくると、今までは学生だったけど、社会に出ると大変だというのが分かるというか…。実習が終わって、仕事の楽しさや人間関係がうまくできたかを見ています。仕事は作業だけでなく、人間関係もうまくできた方が一番いいと改めて思いました。
滝坂:
人間関係ですね。今、ギオンで仕事をして人間関係で大変だと思ったこと、良いなと思っていることなどがあれば教えてください。
カンスリヴォン:
仕事を任されても量が多くて大変な時は、1人でやるには時間がかかって、途中であきらめたいという本音が出てしまうこともあります。でも、誰かが手助けして一緒に仕事してくれて、達成感というか「協力してくれてありがとう」みたいなことがあります。これからもそんな感じでやっていければいいなと思っています。
私のことを「普通の人」って思う人もいるけど、一方で「この人いやだなあ」と思う人もいると思う。成長していく中で、お互いに全く関わらない人だと、障がい者とか「やだな」となるかもしれない。そうならないように、自分から積極的に話しかけるようにしたいと思っています。人生は長いので。
滝坂:
ありがとうございます。さっき金さんが言った、もっと自由にやってほしいというのは、すごく大切なことだと思う。それは僕たちが枠にとらわれているということ。障がい者とか、外国につながりのあるとか、高齢者とかの枠組みでとらえてしまうことがあるけど、僕たちが、そこからいかに自由になるか。
金:
私は学生まで韓国で過ごしました。日本で子育てをしていて、日本の教育がよくわからなかった。教育に関係する仕事をして、日本の学校の中身が少し分かってきました。私の子どもが通った小学校には、特別支援学級がありました。韓国では、障がいのある子が一緒のクラスになることはあまりなかったから、「日本の教育制度、日本の学校、けっこういいじゃん!」って思った。クラスにも一緒に入れたりしてね。でも、学年があがるにつれ、離れていく。最初は一緒だった時間が80%、そして50%、中学校は別のクラスになって、高校は別の学校になる。今、「インクルーシブ」って皆さんは言っている。普通にできていたことを、私たちが離してしまった。「取り戻す、元に戻していこう」としていると私は感じました。zadankai5
私は外国につながりのある生徒達の支援をしています。神奈川県では、外国から来て3年未満の生徒が、高校に進学できるように「在県外国人等特別募集」という制度があります。日本の生徒さんたちは、外国からの生徒たちと言葉もわからないのに、よく混ぜて生活してくれているなと思います。でも、周囲の生徒とあまり関わりがないという話も聞きます。関わりがないから、もちろん、いじめも起きません。外国からの生徒たちは「わからない存在」として、ただそこにいるだけになってしまうこともあるようです。
これからインクルーシブ教育実践推進校が14校になります。何も関わらない生徒を育てないでほしい。当事者が一緒に活動できる、同じ授業で教え合い、関わり合えるカリキュラムを作って下さい。当事者が繋がるような工夫を先生方も考えてほしいと思います。
私が知る限り、日本の先生が世界で一番熱心で、一生懸命仕事をしていると思います。でも、もっと先生たちが自由な発想で、自由にやりたいことをできるといい。教員の多様性がもう少し認められればいいと思います。カリキュラムなどに制限されるけど、もう少し、学校が先生を包んであげて、力を発揮できるようにするべきではないでしょうか。
滝坂:
カンスリヴォンさんは、ラオスの国を誇りに思って、その文化も大切にしていきたいそうですね。どのように伝えていこうとしていますか?また、大切にするような工夫はありますか?
カンスリヴォン:
毎年5月に代々木公園でラオスフェスティバルが行われます。1回だけ、日本の友達と一緒に行きました。そこで気づいたことは、ラオスがどういう文化なのか、どういう食べ物を食べているか、日本の方でも気になっている人もいるんだな、ということです。ラオスの文化を日本の方にも伝えていけば、友好的な国になれると思っています。
滝坂:
ここから、今後、それぞれの学校がどうあればいいのかを考えていきたい。神奈川県は、地域の小中学校で一緒に学ぶことをめざして踏み出しています。さらに今後進めるために、何を願っているのか4人に伺いたいと思います。
横川:
僕がずっと思っていること。それは、僕がやっている「放課後等デイサービス」を廃止すればいいということです。今、学童保育でも障がいのある子どもを受け入れようとしています。必要な専門職を配置して、学童保育に一本化して運営できるようにすればいいと思います。学校だけで何かをしようとするのではなく、周りの地域も、そのようになっていかなくてはなりません。
今、障がいのある子の中には、家から送迎バスで学校に行き、学校から送迎バスで事業所に行き、事業所からの送迎車で家に帰る、という生活をしている子もいます。地域で暮らす時間がない。だから僕は、送迎に出る時間をちょっと早めて、家のちょっと手前で降ろす。そこから地域のコンビニとか本屋に寄って、店員に挨拶するようにしたいと考えています。この子が地域で暮らしていることを、地域の子育て中の皆さんや、近隣の方々にも知ってもらうことが必要だと思います。
高校で知的障がいのある生徒の受け入れが始まったということですね。一方で、肢体不自由の子どもはどうなっているでしょうか。言葉を話せない、手足が動かせない子は、「3+3は?」と聞かれても答えを出せないかもしれない。でも、IT化が進んで上手く活用すれば、3+3がいくつかは実はわかっていて、ただ表現の仕方がないだけだったことが分かるかもしれない。そういう子たちにも進学や学びの機会が広がればいい。そのようなツールも使っていきたいですね。
金:
ITを活用する教育はやっていくべきですね。さらに、ジェンダーの問題や人権教育、性教育も増やしていってほしい。
私の上の子は海外で仕事をするとき、履歴書の書式に驚いたそうです。まず「ウェルカム」、そして、「この会社で何がしたいのか」でした。国籍・ジェンダー・歳は聞きません。日本の履歴書は、どうですか?まず、国籍、名前、生年月日、どこに住んでいるかを書きますよね。日本独特の文化といえるかもしれませんが、気づいた習慣から変えていくと、もう少し明るい社会が来ると思います。
カンスリヴォン:
僕は、中学から一緒に過ごしてきた友達との友情が大事です。高校進学の時、友達は普通科の高校に入って、僕はその高校の中にある特別支援学校の分教室に入りました。文化祭の時は、分教室も出店して、好きなことを一緒にやっていこうと話し合ったりしました。今後は、交流ができる学校行事が、もっといっぱいあればいいなと思います。
青山:
地域社会との関わりでいうと、多くの方は障がいのある方との関わりに無関心で、避けているところがあると思います。どのように交流の場をつくるか。ある学校では、地域の自治会との結びつきを強め、学園祭や体育祭にも招待したり、喫茶室を設けていつでも地域の人が来たりできるようにして、交流が芽生えていました。インクルーシブ教育実践推進校が増えていく中で、地域社会との関わりあいが結びついていければいいと思います。
金:
2つのことを言わせて下さい。インクルーシブ教育実践推進校を増やすなら、できれば、進学校も含め、いろいろなタイプの学校を選んでほしいです。多様な人たちが共に学ぶインクルーシブ教育を多くの生徒が体験し育つことで、インクルーシブな社会を理解しつくっていく人たちを増やしたい。
もう1つは、マンネリ化してほしくないということ。インクルーシブ教育実践推進校を「つくりました」で終わらず、立ち止まり、改善し、いいところは生かしていく取組にしてください。
会場:
「障がい者」という言葉を今後は変えていくべきだと個人的に思っています。先ほど「自分の中の壁を壊す」という話がありました。私には、障がいのある子どもがいますが、子どもが生まれる前は、私にも壁があった。子どもが生まれて壁を壊してもらえた。この子たちには、すごい力があると感じています。インクルーシブも、金さんが言うように、自分らしく生きる、私らしく生きる、自由に生きること。一人ひとりが自由になったときに、インクルーシブが定着すると思います。
滝坂:
ありがとうございます。かつて、障がいのある方を「チャレンジド」という言葉で表現していましたが、現在、国連はこのことばを使うのをやめようと提案しています。それは、社会の障壁が、障がいのある人にチャレンジを強いている。むしろ「チャレンジさせている社会」が問題なのだから、「チャレンジド」はやめましょうというのが国連の考えです。「ハンディキャップ」も同じです。国連は、「a person with disability」という表現をしています。「まず一人の人間である」ということです。社会の在り方が変われば、「ディスアビリティ」は減ります。
私たち大人が、自分の中にある差別感、人権の認識から外れたことはないかを毎日折に触れて考えること。それなくして子どもたちに伝えることはできない。私たち一人ひとりがタブーにしないで、きちんと考えること。今日、皆さんの話を聞いて、みんなで意見交換をしていくことが大切だと改めて思いました。引き続き、みんなでこの社会を作っていきましょう。

 


 今回のフォーラムは、インクルーシブ教育実践推進校パイロット校が3年間で歩んできた道のりを、お伝えすることができました。また、公開座談会では、多様な立場の5名の登壇者の皆さんに、それぞれの経験を交えながら「共生社会」について語り合っていただきました。今後のインクルーシブ教育を考える上で、大変有意義な機会となりました。
 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての学校においてインクルーシブ教育の推進に向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。

主催

神奈川県教育委員会

 

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