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更新日:2022年1月27日

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令和元年度 第3回インクルーシブ教育推進フォーラム 記録

みんなでつくる「インクルーシブな学校」

ー共に考えること、自分にできることー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 「インクルーシブな学校」は、学校だけでつくることができるものではなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要です。そこで、県民のみなさまと共に「インクルーシブな学校」づくりについて考えていくために「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

 

日時

令和元年8月28日 水曜日 14時00分から16時30分まで

会場

寒川町民センター ホール(寒川町宮山165)

内容

  • 趣旨説明及び実践報告

  • 基調講演・フリーディスカッション

 


趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課 石井 友紀 グループリーダー兼指導主事

 神奈川県のインクルーシブ教育の推進とは、これまで神奈川県が推進してきた支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざすことです。
 小・中学校では、昨年度まで4市町7校にご協力いただき「みんなの教室」モデル事業を行ってきました。「みんなの教室」とは、すべての子どもが在籍の学級にかかわらず、できるだけ通常の学級で共に学びながら、一人ひとりのニーズに応じた指導・支援を受けることができるしくみのことです。取組の成果としては、子どもの変容に加え、学校のすべての子どもをすべての教職員が支え育てるという意識が高まったこと、そして、先生方がお互いを支え合うようになっていったことだと考えています。そこで今年度から、組織的に子どもたちを支援する体制を整備する事業を拡げています。県教育委員会では、「みんなの教室」の取組の成果を全県に普及させ、すべての学校がインクルーシブな学校となることをめざしています。
 県立高校では、共に学び共に育つことを一層推進するために、インクルーシブ教育実践推進校の取組を進めています。今年度より県内のどの地域からも実践推進校に通うことができるよう、新たに11校を指定し、令和2年度入学者選抜から、14校のインクルーシブ教育実践推進校で、知的障がいのある生徒を対象とした、新たな特別募集を実施します。
 これからも小学校段階から高校段階までの共に学ぶ取組や相互理解を進めるための取組を充実させ、連続性のある取組となるようにしてまいります。

実践報告1 「みんなの教室」モデル事業の取組

寒川町立南小学校 毛藤 まゆみ 教頭

 南小学校は、寒川で5番目にできた開校26年目の小学校です。地域の方や保護者が活動できるスペースや、地域に開放できる大きなホールもある新しい形の学校です。
 「みんなの教室」モデル校として3年間の実践を行ってまいりました。インクルーシブ教育とは何か、と考えているときに、私の心に「なるほど」と入ってきた1枚の絵を紹介します。
 野球場で3人の子どもが観戦しています。この子たちに平等に同じ高さの台を渡しても、右側の子はまだ見ることができません。そこで、3人が観戦できるよう公平な高さの台を渡します。その子にあった高さの台にする。平等と公平の図これを「合理的配慮」と言います。教室の中で苦手や困り感のある児童も、合理的配慮をすることで、みんなが一緒に授業を受けられるようにする。これがインクルーシブ教育なんだと私にもわかりました。
 南小学校の「みんなの教室」は、すべての子どもが同じ場で共に育つことができるよう、支援していくことを目的としてきました。場合によって、「みんなの教室」で学習をしたり、クールダウンしたりすることはあっても、クラスで一緒に学習することにつなげるためであり、取り出して個別に支援することを目的にはしていません。
 「みんなの教室」には、「みんなの教室」担当の先生、先生方の相談にのってくれるアドバイザー、こころの相談員、そして教育相談コーディネーターがいます。

  • 「みんなの教室」担当の先生は、困り感のある児童を対象に、一斉授業の際に児童のそばで支援しています。児童の理解がある程度進み、落ち着いた時点で支援を終えます。
  • アドバイザーは、児童への支援や授業づくりのヒントを担任の先生などにアドバイスします。
  • こころの相談員は、月2回、学校を訪問して、児童や保護者が困っていることや不安なことの相談を行っています。
  • 教育相談コーディネーターは、児童・保護者の困り感に、担任の先生と一緒に相談にのったり、学級や家庭でどのような配慮をしたらよいのかを一緒に考えたりします。必要に応じて、相談機関を紹介することもあります。

 週1回、「みんなの教室」のスタッフ等で情報共有し、どんな支援をしていくかミーティングを行っています。
 具体的な実践を報告します。例えば算数の分度器や図形作成の場面です。一人ひとりについて細かな支援をしたことで、「いつもはかけないけど今日はかけた!」と児童の満足そうな顔が見られました。担任だけでは気づきにくいつまずきにいち早く対応し、算数に苦手意識のあった児童も、理解できたことで自信を持って学習に取り組めるようになり、意欲的になっていきました。
 「みんなの教室」に子どもが来て学習支援することもあります。日本語が話せない児童に対し、算数や言葉の学習支援を行いました。じっくり話を聞くことや、前年度までの学習で理解ができていなかったところを個別支援していったことで、自信をつけてクラスに戻り、授業に意欲的に取り組めるようになりました。
 感情のコントロールが苦手な子にとっては、クールダウンの場であり、もう一つの居場所です。こころの相談員に、友だちや親、担任の先生にも話せなかったことを相談している子もいます。教員とは違う視点での気づきや、子どもたちのしぐさや表情の変化を教員に知らせてくれるので、その後の支援にも活かせています。
 3年前は、「みんなの教室」とは何か?と手探りで始めましたが、みんなの教室のスタッフ、そして学校がチームになり、一人ひとりの児童を大切にして取り組んできました。3年間の「みんなの教室」の実践を活かし、今後も子どもたちの笑顔のために取り組んでいきたいと思います。

実践報告2 インクルーシブ教育実践推進校の取組

茅ケ崎高等学校 大関 隆夫 総括教諭

 本校3年生のある生徒の話をします。その生徒は、この夏休みに企業に体験実習に行って感じたことを、下級生と教員にプレゼンテーションしました。後輩に対して「仕事をする際に、失敗することや難しいこともあるかもしれないが、めげずに前向きな考え方で取り組めば、仕事もきっと楽しいと思える」と語りました。
 今でこそ、人前で発表ができるようになった彼ですが、中学生の頃は教室に入れないこともあったそうです。中学校3年生の時、茅ケ崎高校の説明を聞きに来て「僕は茅ケ崎高校に入りたい」と強く思い、中学校の先生方の支援も受けながら入学まで頑張ってきたと中学校の先生から後で伺いました。彼は、自分自身が高校生になりたかったのです。入学後も不安はありましたが、自信をつけて頑張っています。彼は学校が育てたのではありません。仲間の中で育っています。インクルーシブ教育実践推進校の連携入学で入った生徒ではない友達も作っています。彼は、高校生として高校の中で自分自身を育てたのだと考えています。
 支援体制について説明します。各クラスには普通の担任と、支援担任がいます。ホームルームや総合的な学習の時間など、2人で行っています。支援担任は、要点を伝えたり補足したりしてフォローします。授業では、国語、数学、理科、社会、英語の5教科で、1年生を中心に(2人の教員で授業する)チームティーチングを行っています。サブの教員は、1クラス38人くらいの中にいる連携入学生徒を意識しながら、他の生徒への支援も含めて教室内を回っています。このような支援は、連携入学生徒だけでなく、一般の生徒への支援にもつながっています。
 また、各フロアにリソースルームを作っています。そこにはサポートティーチャーがいて、休み時間に話をしに来る生徒もいます。別室で勉強した方が良いと判断した時には、リソースルームで個別支援を行うこともありますが、恒常的に個別支援は行いません。特別支援学級ではありません。あくまで、通常の学級に戻るために、リソースルームを個別支援のために使うということです。
 次に、個別教育計画と成績についてです。個別教育計画は、保護者・本人と話し合いながら、どのように授業に取り組むか目標を立てます。生徒の目標への取組を評価し、個人内評価を踏まえた観点別学習状況の評価を行っています。本人が目標に向かって努力したか、達成できたかは問います。欠席が多い、意欲がない場合は単位認定できないので、進級できないことはあります。
 最後に、将来の選択肢と社会接続について。茅ケ崎高校を出ると高卒になります。将来への選択肢は広がります。現時点で専門学校への進学を決めている3年生もいます。社会接続に向けての学校設定教科もあります。1年生では夏休みに企業見学をします。2・3年生になると、選択科目として、実際に企業で実習をしたり、障害者職業能力開発校に見学に行ったりします。このような取組を通して、連携入学生徒が社会に出るための具体的なキャリア支援をしています。
 平成29年の連携入学生徒を対象に1年生の学年末にアンケートをとりました。「1年前の自分に比べて自信がつきましたか?」という項目。よく頑張っているのに自己評価の低い生徒もいますが、10段階で10、9、8の生徒が多いです。どの生徒も自分の一年間の成長を評価してくれていると思います。
 まだまだお話ししたいことは山ほどありますが、時間になりましたので終わります。
 ありがとうございました。

 


基調講演・フリーディスカッション
みんなでつくる「わたしたちの学校」

講師・コーディネーター 伊藤 大郎 氏
(鎌倉女子大学教育学部教育学科准教授)

 伊藤氏のコーディネートにより、実践報告を受けての質問や、インクルーシブ教育についての意見など、会場と活発なフリーディスカッションが繰り広げられました。
 フリーディスカッションで出た話題をもとにしながら、基調講演が行われました。

【会場からの声】

  • 教育に関係する職を志していない周りの若い人達は、インクルーシブ教育を知らない。どのようにすれば、広がりを持っていくのかを皆さんにお聞きしたい。
  • 障がいのある子の親は外に出づらい。周りの親は声をかけづらい。お互いに触れ合う機会があることで垣根がなくなり、バリアフリーな社会になると良い。
  • 昔は、障がいがある子も一緒に教室にいた。授業も受けずに走り回っている子もいたが、共に学びあっていた。
  • どういう社会にしたいかをイメージできたら、「インクルーシブ」は成り立つのではないか。
  • 学校だけで抱えず、地域にいる専門職などの人材も活用してほしい。
  • 今の子どもたちを見ていると大人よりもずっと自然に関わり合っている。
  • 高校は入学者選抜があり、適格者主義が強いと感じる。高校段階でどのようにインクルーシブ教育をすすめていくのか。さらに高等教育につなげていくかが課題。
  • インクルーシブ教育は、支援をするということだけでなく、みんな分け隔てなくという教育である。

【伊藤氏より】
 昔は、教育のシステムではないけれど、生活の中で町内会やご近所での支え合いが今よりずっと機能していたのだと思います。でも、今はこうした地域共同体の機能が崩れてしまい変わってきているので、システム化しなければならない状況になっています。
 障がいのある子に対しての教育では、昭和54年に養護学校が義務化されました。それまでは、重たい障がいのある子どもは学校に通わなくてもよい、という就学猶予もありましたので、家庭の中にずっといたという現実もありました。しかし、養護学校が義務化され、誰でも養護学校に行けるということになりました。その時に、義務化されると今までは普通の小学校に通っていたのにいけなくなるのではないかと養護学校義務化反対運動もありました。戦後、障がい児教育が進んできたことはよかったのですが、小学校の中には特別支援学級という特別な場所があり、小学校とはさらに離れた場所に、手厚い支援が受けられる養護学校ができた。あなたは重たい障がいがあるから、地域から離れて養護学校へどうぞ、という動きがありました。現在は、養護学校は制度上、特別支援学校になりました。インクルーシブ教育の動きというのは、もう一度、かつての形に戻していこうという意味があると私は思っています。つまり、地域の小・中学校、あるいは高校で子どもたちを受け止めるという動きが出ているのだと思います。

 インクルーシブという言葉は分かりにくく、みんなイメージが違います。これは日本の教育に新たに持ち込まれた教育というより、教育の根幹であり教育そのものだと言えます。
 先ほど寒川町立南小学校の実践報告で使われたスライド「平等と公平の図」を用いて、障がいとは何かのお話しさせていただきます。
 踏み台支援論と言いますが、野球場に3人の背丈が違うこどもが観戦に来ています。壁があるので子ども達には同じ高さの踏み台が配られました。
 しかし、一番背の低い子どもは、その踏み台では壁より視線が低いため、野球を観戦することができません。この時、この子どもは障がい児になります。障がいというのは環境設定が不十分なため、不利をこうむることです。「子どもが障がい」ではなく、「壁が障がい」です。他の2人は、この踏み台の高さがあれば野球が見られますので障がいによる不利をこうむりません。この小さい子は、2つ踏み台をもらえれば自分で野球を見ることができます。彼は障がい児ではなくなります。漢字でかくと「障害児」の3文字で表す一つの単語ですが、英語では、「a child with disability」と言います。踏み台が2つあって、野球を自分で見ることができればdisabilityは消えます。さらに言えば、壁そのものがなければ3人とも地べたで観戦ができます。この時、3人ともただのchild、普通の子どもになるのです。背の高い子も、時には、支援が必要となる時もあります。障がいのある子でも、バリアがなければ支援は不要です。障がいがあるからいつでも支援が必要なのではなく、バリアがある時に支援をつけるのです。学校のすべての子どもに対して、学習が難しい環境があれば、支援をつける。障がい児だけが支援の対象ではなく、すべての子どもが支援の対象です。

 私なりに、インクルーシブ教育のめざすところについて経過を整理したものがあります。1994年にインクルーシブ教育のめざす方向を示す形で、サラマンカ宣言が出されました。これはインクルーシブ教育の骨子になった部分です。その中で大事なのは、障がいのある子どもの潜在的可能性に焦点を当てるということです。障がいの重たい人は社会参加がはばまれていて、その能力が十分発揮されていないという過去がありました。障がいのある方の潜在的能力を発揮し、もっと社会に貢献してもらうには、地域社会はどうするのか。神奈川県では、大変不幸な津久井やまゆり園の事件が発生しましたが、このような事件が二度とくりかえされないよう「共に生きる社会」を作っていこうとしています。

 ESD(Education for Sustainable Development)という言葉を聞いたことがありますか。SDGs(Sustainable Development Goals)は国連が定めた「持続可能な開発目標」のことですが、その教育版がESDで「持続可能な開発のための教育」のことです。これには、障がいのある子どもも共に参加してもらおうじゃないかということが書かれています。地球環境が汚染され、人口増による食糧問題があり、紛争も絶えません。このような状況の中で、津久井やまゆり園の事件の犯人のように、障がいのある人を排除するというのではなく、地球上に存在する人間のすべての潜在能力を高め、人類全員が参加し、持続可能な世界を作る必要があるのです。人類が一丸になって持続可能な世界を作っていこう、私はそれをインクルーシブ教育の目的に設定すると良いと思います。
 「障害者の権利に関する条約」では、締結国は、障がい者が、社会を豊かにするために自分の能力を活用するという機会を保障していこうとしています。
 これで、フォーラムを閉じようと思います。どうもありがとうございました。

 


 

 今回のフォーラムは、「みんなの教室」モデル校の実践、インクルーシブ教育実践推進校での取組を、詳しくお伝えすることができました。また、フリーディスカッションでは、会場の多くの皆様が「共生社会」や「インクルーシブな学校」について発言をしてくださいました。まさに「地域と共に考える」ことができ、今後のインクルーシブ教育を考える上で、大変有意義な機会となりました。
 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての学校においてインクルーシブ教育の推進に向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。

 

共催

神奈川県教育委員会、寒川町教育委員会

 

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