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更新日:2022年1月27日

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令和元年度 第2回インクルーシブ教育推進フォーラム 記録

みんなでつくる「インクルーシブな学校」

ー共に考えること、自分にできることー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
 「インクルーシブな学校」は、学校だけでつくることができるものではなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要です。そこで、県民のみなさまと共に「インクルーシブな学校」づくりについて考えていくために「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

 

日時

令和元年8月8日 木曜日 14時00分から16時30分まで

会場

厚木市文化会館 小ホール (厚木市恩名1-9-20)

内容

  • 趣旨説明及び実践報告

  • 基調講演・フリーディスカッション

 


趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課 石井 友紀 グループリーダー兼指導主事

 神奈川県のインクルーシブ教育の推進とは、これまで神奈川県が推進してきた支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざすことです。
 小・中学校では、昨年度まで4市町7校にご協力いただき「みんなの教室」モデル事業を行ってきました。「みんなの教室」とは、すべての子どもが在籍の学級にかかわらず、できるだけ通常の学級で共に学びながら、一人ひとりのニーズに応じた指導・支援を受けることができるしくみのことです。取組の成果としては、子どもの変容に加え、学校のすべての子どもをすべての教職員が支え育てるという意識が高まったこと、そして、先生方がお互いを支え合うようになっていったことだと考えています。そこで今年度から、組織的に子どもたちを支援する体制を整備する事業を拡げています。県教育委員会では、「みんなの教室」の取組の成果を全県に普及させ、すべての学校がインクルーシブな学校となることをめざしています。
 県立高校では、共に学び共に育つことを一層推進するために、インクルーシブ教育実践推進校の取組を進めています。今年度より県内のどの地域からも実践推進校に通うことができるよう、新たに11校を指定し、令和2年度入学者選抜から、14校のインクルーシブ教育実践推進校で、知的障がいのある生徒を対象とした、新たな特別募集を実施します。
 これからも小学校段階から高校段階までの共に学ぶ取組や相互理解を進めるための取組を充実させ、連続性のある取組となるようにしてまいります。

実践報告1 「みんなの教室」モデル事業の取組

厚木市立毛利台小学校 堀 雅也 教諭

 毛利台小学校は、インクルーシブ教育を「一人ひとりを大切にする教育」としています。基本的な考え方は、まず担任が一人ひとりに目を向け、必要な配慮を行うことです。ポイントとしては、3つあります。
1 特別支援学級の子どもも含め、すべての児童がクラス(通常の学級)に所属する
2 のびっこルーム、特別支援学級、こころの教室、相談室、この4つを「みんなの教室」として捉える
3 これらは場所ではなく、クラスに所属するサポートが必要な子に対しての機能である

 校内支援体制の充実については、毎月1〜2回、校内支援会議を行っています。教育相談コーディネーターを中心とし、みんなの教室に関わる複数の教員で児童の情報交換を行います。複数の教員で、子どもの現状と課題を知ることで担任の先生が相談しやすい雰囲気が生まれました。
 次に、効果的なのびっこルームの運用についてです。のびっこルームには、子どもたちが部屋に来ておこなう「個別支援」と、教員がクラスに出向いておこなう「クラス支援」があります。学習面、心理面、行動面で幅広く支援しています。支援する曜日や時間は固定しません。担任の先生が一週間の予定を作る際に、学習の内容やクラスでできる配慮を考え、必要時にのびっこルームの個別支援やクラス支援を活用することになります。
 例えば、外国にルーツを持つAさん。学習単元の最初にわかりにくい言葉の意味をのびっこルームで確認することによって、クラスでの授業が理解しやすくなりました。文章を書くのが苦手なBさん。作文学習の時間だけ、のびっこルームの先生と考えます。不登校傾向のCさん。のびっこルームだけでなく、相談室、こころの教室、特別支援学級など、みんなの教室の機能を複数使ってサポートし、クラスで学ぶ時間が少しずつ多くなってきました。
 のびっこルームは、マラソンで言えば給水所の役割があります。マラソンランナーにエネルギーを与えるように、のびっこルームでは子どもたちに、自信や元気を与えて、クラスに戻って学習に取り組めるように支援する機能になっています。
 インクルーシブ教育を「一人ひとりを大切にする教育」ととらえることは、どの学校でも、どの先生でもできることではないでしょうか。インクルーシブな学校で育った子どもは、大人になったときに、互いを認め合い自然な関わりができる、共生社会の一員になるはずです。

厚木市教育委員会 教育指導課 長谷川 真 主幹兼指導主事

 厚木市には、さまざまな支援を必要とする子どもたちがいます。特別支援学級はすべての学校にあり、市内には通級指導教室、国際教室、こころの教室などがあります。子どもは、支援が必要なときに支援が受けられる場所に行き、安心感を得て、自信や元気、能力を身につけ、通常の学級に戻ります。個別指導の中には、有効な手立てがあります。その手立てを通常の学級の中に取り入れます。これが「みんなの教室」の機能です。
 厚木市では、平成28年度から3年間、毛利台小学校と玉川中学校において進めてきた研究を受けて、今年度からインクルーシブ教育推進部会を新たに立ち上げました。それぞれの学校でどのような教育資源があるのか、どんな取組をしているのか。意識せずに取り組んでいることもインクルーシブの視点で見て価値付けをしていく。そうした中で、インクルーシブ教育推進部会の担当になった先生が週に1時間、各学級を回り授業を見て、その取組を広く発信しているなど、各学校において新たな取組が始まっております。
 厚木市は、今後より一層インクルーシブ教育を広げていきます。これからも、ご協力をいただけたらと思います。

実践報告2 インクルーシブ教育実践推進校の取組

厚木西高等学校 竹本 弥生 副校長

 インクルーシブ教育実践推進校のパイロット校に指定され、4年が経ちました。パイロット校では地域の中学校と連携し、知的障がいのある生徒の募集を進めてきました。厚木市の中学校と連携して募集して入学した生徒のことを、厚木西高校では連携募集生徒と呼んでいますが(以下、連携募集生徒)、現在、1年生から3年生まで計54名が在籍しています。 
 教室で授業を受けることがベースとなり、高等学校の教科書を使った学習をしています。授業は、チームティーチングと言って、メインとサブの先生の2人体制で行っています。授業の目標を示す、振り返りの実施など、見通しの持てる授業に取り組んでいます。これは一般生徒にもわかりやすいものとなっています。連携募集生徒の中には、学習に対して、とても苦手意識を持っている生徒もいます。そのような生徒には、基礎的な内容を楽しみながらできる補習も夏休み中にしています。また、総合的な学習の時間で、パソコン検定に向けた実技指導をしています。
 職業教育については「職業と生き方」という科目で、1年生と2年生は週1回、3年生は週4時間、キャリア教育を受けています。連携募集生徒1〜2年生は、夏休みに5日間程度、近隣の会社で職業体験を実施しています。職業体験の前には事前学習会、事後には、良かったこと、改善したいことなど、振り返りを行います。高等学校が終わると、社会人、職業人として生きていきます。そのときに大切なのが、ジョブマッチング。自分がどんな仕事に向いているのかが大切になります。今、3年生がいて卒業を控えていますが、就職や進学など一人ひとりの希望を聞きながら、進路先を検討しているところです。
 放課後は、半分くらいの連携募集生徒が部活動に入って活動しています。アルバイトをしている生徒もいます。高校生として色々なことにチャレンジしています。
 難しい学習内容もありますし、苦しいこともたくさんあると思います。仲間との衝突もあります。たくさんのことは起きますが、厚木西高校は全力で支えたいと思っています。

厚木西高等学校 保護者 福泉 圭以子 様

 連携募集生徒の保護者として感じていることをお話しします。
 息子が中学校3年生の時、厚木西高校がインクルーシブ教育実践推進校に指定されたことを教えていただきました。何度も家族で相談しましたが、一番心が揺れ動いていたのは私でした。そんなとき父親が「周囲からどう思われるかが問題ではなく、本人が周囲を見てどう思うかが大切なんだよね」と言いました。その言葉を聞いてストンと心に落ちたように思います。

 私は、他の連携募集生徒、クラスの仲間と本当に馴染めるのか、不安でした。連携募集の生徒には入学前のプレ登校があるのですが、各クラスに分かれたとき、「福泉くんだよね」と声をかけてくれた生徒がいたそうです。その時、息子は「やっていけるなと思った」と言っています。「大変だったことは何?」と聞くと、「1日1日クラスメイトの人柄がわかってきて、気づいたら不安はなくなっていた」そうです。私も毎日、学校の様子を聞くのが楽しみになってきました。
 息子に、厚木西高校で良かったことを挙げてもらいました。先生に「困ったことがあったら言ってくれ、言ったことで後悔はさせないよ」、「学校と教室は間違えるところ」と言ってもらったこと、廊下で先生と鉢合わせ「どうぞどうぞ」とにこやかに道を譲ってくれたこと、遅れて提出物を出したら「はい、お疲れさん」と言ってくれたこと、こんな話が尽きません。もしかすると、どこの学校でも当たり前のことかもしれません。でも私は、学校に温かさ、先生方に愛情を感じます。
 色々な経験を通して、子どもの成長を感じています。人は環境で育つと思います。できればこの環境で、自立心を育み、努力することを学んでもらえればと期待しています。今はこの学校で本当に良かったと思っています。そしてこの厚木西高校に通えることに、心から感謝しています。

 


基調講演・フリーディスカッション
みんなでつくる「わたしたちの学校」

講師・コーディネーター 伊藤 大郎 氏
(鎌倉女子大学教育学部教育学科准教授)

 前半の実践報告を受けて、伊藤氏と会場で活発なディスカッションが繰り広げられ、若い世代やさまざまな立場の方からご発言をいただきました。フリーディスカッションで出た話題を深める形で、基調講演が行われました。

【会場からの声】

  • インクルーシブ教育を進めたいが、教員の意識改革が課題だ。
  • 特別支援学級の子どもたちは通常の学級と交流することをどう思っているのか。
  • 小さい頃から多様な障がいがある子の存在を目で見て実感することが重要。
  • 海外から来た子どもたちもインクルーシブ教育の対象者だ。
  • 対話的でお互いの考えを出し合う授業は、対人関係やアイデンティティの確立にもつながる。
  • 共生社会とは、障がいのあるなし、高齢者と若者など分けて考えるのではなく、すべてが人間として尊厳を持ち生活できる社会であり、その一環としてインクルーシブ教育があるのではないか。

【伊藤氏より】

 学習指導要領には、「交流及び共同学習」という学習があります。ここでいう「交流」の「交じる」という表現は、それぞれの立場を残して交じる場合に使います。ですからこの表現では、通常の学級と特別支援学級という枠組みの中で子どもが活動していることになります。しかし先週、南足柄市で行われたフォーラムで紹介のあった、子どもたちが一緒に給食を食べたり、授業を受けたりしている活動を見ていると、こうした枠にとらわれている様子はうかがえません。一人の具体的な子ども同士として、一緒に活動していました。通常の学級と特別支援学級の子どもの交流の設定だとしても、子どもたちはその枠を超えて、障がいの有無に関係なく子ども同士として活動していました。私はこれがインクルーシブ教育ということだと思っています。

 私は、障がいのある人と障がいのない人にわける発想を超えていきたいと思っています。伊藤氏の説明スライド 障がいについて
 車椅子の女性が階段の前にいる写真があります。車椅子の女性に機能障がいはありますが、その人自身に障がいが内在しているのではなく、あの階段が、障がいなのです。エレベーターがあれば彼女は障がい者ではありません。環境が彼女を障がい者にしているのです。
 英文で障がい者を表現するとわかりやすいのですが、「A person with disability」となります。「A person」という主体に「disability」が附属しています。障がいが外付けなのです。これが日本語だと「障害者」と3文字で熟語なので、これだと人が丸ごと障がい者のようで、環境要因を考慮する余地がありません。本当は環境によって、「disability」が付いたり外れたりするのです。
 「障がいとは、機能障がいを有する者とこれらの者に対する態度及び環境による障壁との間の相互作用である。」と障害者権利条約に書いてあります。周囲の人々の態度も学校の環境も整っていないとき、子どもは障がい児となります。しかし、人々の態度を変え、学校の環境を整備すれば、子どもは障がい児ではなく、ただの子どもとなります。伊藤氏の説明スライド インクルーシブ教育とは
 すなわち、インクルーシブ教育というのは、人々の態度と学校の環境を、障がいを生み出さないよう整備することにより、「障がいのある子ども」が「子ども」として学ぶ教育のことなのです。
 その人が参加するために障壁を取り除き、教育環境や学習環境を整え、みんなと一緒に学ぶことができるようにするのがインクルーシブ教育です。
 インクルーシブ教育と環境要因について最後にお話しさせていただきました。ありがとうございました。

 


 

 今回のフォーラムは、「みんなの教室」モデル校の実践報告、そしてインクルーシブ教育実践推進校に実際に入学した生徒の保護者の声を届けることができました。会場の多くの皆様が発言をして下さり、「インクルーシブな学校」について共に考えることができました。また、会場ホワイエでは、厚木西高等学校茶道部の皆さんによるお茶席、美術部の作品展示もあり、にぎやかなフォーラムとなりました。
 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての学校においてインクルーシブ教育の推進に向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。

共催

神奈川県教育委員会、厚木市教育委員会

 

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