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更新日:2022年1月27日

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令和元年度 第1回インクルーシブ教育推進フォーラム 記録

みんなでつくる「インクルーシブな学校」

ー共に考えること、自分にできることー

趣旨

 神奈川県教育委員会では、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つ、インクルーシブ教育の推進に取り組んでいます。
「インクルーシブな学校」は、学校だけでつくることができるものではなく、保護者の方や地域の方と共に取り組んでいく必要があり、県民のみなさまのご理解とご協力が何より重要です。そこで、県民のみなさまと共に「インクルーシブな学校」づくりについて考えていくために「インクルーシブ教育推進フォーラム」を開催しました。

日時

令和元年7月31日 水曜日 14時00分から16時30分まで

会場

南足柄市文化会館 大ホール(南足柄市関本415-1)

内容

  • 趣旨説明及び実践報告

  • 基調講演・フリーディスカッション

 


趣旨説明「神奈川のインクルーシブ教育の推進」

インクルーシブ教育推進課 石井 友紀 グループリーダー兼指導主事

 神奈川県のインクルーシブ教育の推進とは、これまで神奈川県が推進してきた支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、すべての子どもができるだけ同じ場で共に学び共に育つことをめざすことです。
 小・中学校では、昨年度まで4市町7校にご協力いただき「みんなの教室」モデル事業を行ってきました。「みんなの教室」とは、すべての子どもが在籍の学級にかかわらず、できるだけ通常の学級で共に学びながら、一人ひとりのニーズに応じた指導・支援を受けることができるしくみのことです。取組の成果としては、子どもの変容に加え、学校のすべての子どもをすべての教職員が支え育てるという意識が高まったこと、そして、先生方がお互いを支え合うようになっていったことだと考えています。そこで今年度から、組織的に子どもたちを支援する体制を整備する事業を拡げています。県教育委員会では、「みんなの教室」の取組の成果を全県に普及させ、すべての学校がインクルーシブな学校となることをめざしています。
 県立高校では、共に学び共に育つことを一層推進するために、インクルーシブ教育実践推進校の取組を進めています。今年度より県内のどの地域からも実践推進校に通うことができるよう、新たに11校を指定し、令和2年度入学者選抜から、14校のインクルーシブ教育実践推進校で、知的障がいのある生徒を対象とした、新たな特別募集を実施します。
 これからも小学校段階から高校段階までの共に学ぶ取組や相互理解を進めるための取組を充実させ、連続性のある取組となるようにしてまいります。

実践報告1 「みんなの教室」モデル事業の取組

南足柄市立福沢小学校 妹尾 尚悟 教諭

 南足柄市では、平成28年度から平成30年度まで県から「みんなの教室」モデル事業の委託を受け、福沢小学校、向田小学校、足柄台中学校で取組を進めてきました。これまで行ってきた支援教育を見直し、価値づけ、さらに充実を図るといった地道な実践を積み重ねてきました。特別支援学級や個別支援を行う教室、通級指導教室など、これまでも設置されていた様々な支援の場を活用しながら、個のニーズに応じて柔軟な支援を行ってきました。
 特別支援学級に在籍する児童・生徒については、交流及び共同学習の充実を図りその質を高めることをめざしてきました。交流学級にクラスの一員として生活できる環境を整え、朝の会、給食、行事など、一緒に活動しています。特別支援学級担任も交流学級担任も交流及び共同学習のねらいを明確に持ち、子ども自身もめあてを持てるようにしています。また、すべての教職員が在籍に関わらず同じように指導・支援にあたっています。交流学級の担任が授業を持たない時間に特別支援学級の指導・支援にあたったり、中学校では教科担当が特別支援学級で授業をしたりすることもあります。また、周りの児童・生徒の理解が大切です。朝会や集会で、いろいろな勉強をする場があることや、お互いに知ることが大切だと学んだり、特別支援学級の学習発表会を見たりすることを通して理解を深めました。
 通常の学級に在籍する支援が必要な児童・生徒については、TT(チームティーチング)などの集団の中での指導・支援と、個別の指導・支援の充実に取り組んできました。TTでは、支援の役割や支援する児童・生徒を固定せず、その場で困っている子がいたら、臨機応変に支援にあたっています。また、すべての児童・生徒が参加できる授業づくりのためにユニバーサルデザインの視点を取り入れた授業づくりも行ってきました。
 これらの取組を通して、児童・生徒からは、相手を大切にしたり、認め合ったりする様子が見られるようになりました。さらに、複数の教員が指導・支援にあたることで、個別に対応できる子が増え、自分らしさを発揮し、安心して学校生活を送る姿が見られるようになりました。また、教職員も周りに相談しやすくなり、教員自身の意識の変容が見られ、児童・生徒理解や授業改善につながっています。今後も日常的な取組を積み重ね、インクルーシブ教育の理念が浸透し、すべての子どもたちが共に学び、共に育つ南足柄市であってほしいと思います。

実践報告2 インクルーシブ教育実践推進校の取組

足柄高等学校 中津川 まみ 総括教諭、横山 利久 教諭、生徒3名

中津川:私たちのめざす生徒像は「障がいのあるなしにかかわらず、共に学ぶ学校、明るい学校づくりに取り組むことができる」です。インクルーシブ教育を推進するために、4つの「支える」を紹介します。

1 学習を支える
中津川:本校の特徴は、習熟度別、さらにTT(チームティーチング)によって指導を行っています。小さな集団に先生が2人いる授業を実際に受けていてどうですか?
生徒:先生が2人いるので、困った時に声をかけやすいので、とてもいいです。
中津川:よく、高校の授業って難しいよねと言われます。実際に授業を受けている感想をお願いします。
生徒:すごく難しいですが、なんとか先生を頼ってやってきています。1〜2年生の頃は10点満点の単語テストもなかなか点が取れなかったのですが、3年生になってやっとコツをつかんできて、10点満点中8〜9点は継続して取れるようになりました。平均点が70点くらいの世界史のテストで59点とって、努力してどうにか授業についていけている状況です。授業はすごく楽しいです。わかりやすいし、本当に先生のおかげだと思っています。
中津川:ありがとう。彼は国語や社会が得意です。国語で満点をめざそうと目標が絞れてきました。一人ひとりのニーズに合わせた計画をたて、目標に向かって取り組んでいます。
中津川:学習環境については、リソースルームを設置しました。また、ホームルーム教室にはスクリーンを常設しています。プロジェクターやモニター、書画カメラを活用して、視覚に訴える工夫をしていますが、授業を受けてみてどうでしょうか。
生徒:教科書や黒板より、プロジェクターが見やすくていいと思いました。

2 社会接続を支える
横山:進路を担当している横山です。連携募集や特別募集で入学された方は、学校設定教科の授業を受けます。1年生では、集団で企業見学をして話を聞いたり体験させてもらったりします。そのような経験を通して、進学したいとか、就職したいとかクラスメイトで話し合っています。体験してみた感想を教えてください。
生徒:シュウマイを作る体験をしました。作るのは難しかったですが、楽しかったです。
横山:2年生になると、企業見学、障害者職業能力開発校の見学をします。また、夏休み等の期間に企業で実習を行っています。実習はどうでしたか。
生徒:最初は全然しゃべれなくて、すごく緊張しました。行ってみると雰囲気が良くて、社会に出るとこんな感じなのかと思い、実習はやってよかったと思います。
生徒:2年生の夏休みに自動車工場の実習に行きました。慣れないことで、きつかったです。
横山:就職を希望するときは、弾力的に実習を優先させることもあります。進学希望の場合は、前期実習の部分をオープンキャンパスや体験授業に当て、進路選択をしてもらうことをねらいにしています。その他、校外の方に講義をしていただく機会も作っています。

3 高校生活を支える
中津川:足柄高校にはたくさんの部活動があります。家庭科部の活動はどうですか。
生徒:デザートやおかずを作ります。文化祭ではワッフルなどを作って販売しました。みんなで協力して作れるので楽しいです。
中津川:修学旅行に行った感想をお願いします。
生徒:平和学習でひめゆりの塔に行ったけど、むごかったです。2日目はタクシーでいろいろな所に行きました。クラスの友達が仲良くて良かったです。3日目は、人生初のシュノーケリングをして、とても綺麗でした。ホテルではトランプをして、みんなで話をしました。
中津川:文化祭の感想をお願いします。
生徒:1年生の文化祭は生徒会に所属して忙しかったです。2年生では、映像をやりました。こうしたほうがいいと、友達と一緒に話し合って、映像に盛り込んだのが印象的でした。「ドラえもん」をやったのですが、自分はのび太にコスプレして、すごく目立って、すごく楽しかったです。

4 学校生活を支える
中津川:インクルーシブ教育は、連携募集や特別募集で入った生徒だけのものではありません。足柄高校全校で相互理解を促進するための取組として勉強会を重ねてきました。生徒のアンケートから回答を紹介します。「多様性を認め合う社会を作っていくことが大切だと思いました」「普通に接するのが一番いいと思いました」
私たちは、今新しい取組の途中にいます。始まったばかりのようで、それでも、もう3年の月日が経ちました。いいことばかりではなく、辛いことや苦しいこともたくさんあったと思います。今、彼らは足柄高校の3年生として、ここにいます。みんなと一緒に高校生活を送っています。
 ありがとうございました。


 足柄高校の実践報告では、実際にインクルーシブ教育実践推進校で学ぶ生徒3名が教師とともに登壇しました。会場から出された「足柄高校を選んだ理由」や、「どんな学校になってほしいか」といった質問に対し、生徒自身が自分の言葉で回答をしました。

  • 「足柄高校を選んだ理由は、一番は友達といっぱい話したいと思ったから。」
  • 「知的障がいがあって、勉強はちょっと苦手でも何とか努力で追いつけるかもしれないと思った。」
  • 「インクルーシブ教育はまだ全然知られていないし、知っていても世間からの差別は正直なくならない。でも、そういう人が一人でもいて、困っていたら、大人の助けを求めるし、自分たちもわからないことがあったら、先生達や大人の助けを求めるし、自分たちもわからないことがあったら先生達や大人に頼ればいいと思う。」

 現在、高校3年生の彼らの率直な声、そして、これまでの成長と、将来へのエールの気持ちをこめて、会場から大きな拍手が送られました。

 


基調講演・フリーディスカッション
みんなでつくる「わたしたちの学校」

講師・コーディネーター 伊藤 大郎 氏
(鎌倉女子大学教育学部教育学科准教授)

 伊藤氏のコーディネートにより、実践報告を受けての質問や、インクルーシブ教育についての意見など、会場と活発なフリーディスカッションが繰り広げられました。
 フリーディスカッションで出た話題をもとにしながら、基調講演が行われました。

【会場からの声】

  • インクルーシブが推進された学校とは、どんな学校かイメージが湧かない。
  • インクルーシブ教育実践推進校は、一般募集の生徒にとってどのようなメリットがあるのか。
  • 知的障がいに限らず、40人いたら困っていることはバラバラなはず。でも教室は一つ。「わかった、できる」にするにはどうしたらよいのか。

【伊藤氏より】
 実践報告では、足柄高校の生徒3名にお話しいただきました。私たち大人が話すより彼らの方がずっと雄弁で、足柄高校の雰囲気を感じていただけたと思います。
 また、福沢小学校のプレゼンテーションで、一番素晴らしいと思ったことは、「支援の役割や支援する児童・生徒を固定しない」という言葉です。

 TT(チームティーチング)で教室に入っていたとしたら、そこに障がいのある子どもがいるから支援するのではなく、困っている子がいたら支援をするということです。このポイントは、「支援は人につけるのではなく場面につけるものだ」ということです。障がいは環境が生み出します。その子どもの人生まるごとが障がい児ということではありません。バリアが現れたときに障がい児になってしまうのです。ですから、その子が困っている場面に支援をつけるのです。そう考えると、障がいの有無にかかわらず、すべての子どもに支援が必要な場面があるはずです。インクルーシブ教育とは子どもを障がい児として見るのではなく、子どもとして見るということなのです。
 インクルーシブ教育が推進される背景は2つあると思います。
 一つは、津久井やまゆり園のような事件を二度とくり返してはならない、ということです。やまゆり園事件のあとに、「障がい者」のことをもっとよく知らなければいけないという考え方を見かけました。障がい者のことをよく知るという考え方は善意であるけれど、危険でもあると思っています。なぜかというと、障がい者をよく知ろうと言ったとき、自分は健常者という立ち位置になるからです。人を障がい者と健常者に分けて固定化してしまう考えにつながる危険性があります。
 私はいつも、「障がいのことをよく知りましょう」と言っています。障がいについて深く考えていくと、障がいのある人、障がいのない人と分けることはできないということが分かってきます。
 なぜならば、障がいは環境によって発生するからです。その人が障がいを持っているのではありません。駅に階段しかない場合、車椅子の人にはこの階段が障がいになります。つまり、環境が障がいなのです。
 この社会を共生社会にしていくためには、障がいについてもっとよく知らないといけないと思います。

 もう一つは、近年、知的障がいの教育課程を有する特別支援学校を希望する方が増えていることです。それは保護者が自分の子どもに個別的な指導を求めてきたからと考えられます。本来、教育課程は、基本的に小・中学校の特別支援学級で学んできた子どもは高校へ進学する想定のつくりとなっています。そういう子どもの多くが、知的障がいの特別支援学校へ進学しているのです。
 こうした状況を背景に、神奈川県では高等学校で知的障がいのある生徒を受け入れていこうと、インクルーシブ教育実践推進校の取組が始まりました。知的障がいのある子どもを受け入れる、どんな子どもでも分かりやすい授業をつくる、どんな子どもにも集団の中で学べる教育環境を設定しようということです。
 高等学校の学習指導要領には、障がいのある生徒には困難さに応じて指導を工夫するように書いてあります。視覚障がいには点字、聴覚障がいには手話などがあります。知的障がいの場合には何があるでしょうか。私は特別支援学校高等部の知的障がいのある生徒に協力してもらい、高校数学の順列の問題をどのように教えたら知的障がいのある生徒にも理解しやすいか、確かめてみました。結果、具体的な言葉に置き換えて、スモールステップで丁寧にやると、知的障がいのある生徒は解くことができました。彼らは、「順列とはこういうものだと理解できた。わかった。」と本当に喜んでいました。

 今回のインクルーシブ教育実践推進校の取組は、とても大きなチャレンジだと思います。人間の発達には認識の発達と関係性の発達=社会性があります。学校は、この2つの発達の指導に取り組んでいます。認識の発達は教科で勉強します。関係性の発達は特別活動、行事、運動会、文化祭、修学旅行などで取り組んでいるのです。
 高校は、こうしたたくさんのことを学べる環境にあります。共生社会の実現に向け、学校は様々な工夫をしてくれていると思っています。

 


 

 今回のフォーラムは、「みんなの教室」モデル校の実践報告、そしてインクルーシブ教育実践推進校に実際に入学した生徒の声を届けることができました。会場の多くの皆様が発言をしてくださり、「インクルーシブな学校」について共に考える機会となりました。
 神奈川県教育委員会では、すべての子どもができるだけ共に学び共に育つ中で、一人ひとりの人間性や多様な個性を尊重し、お互いを理解していくことが大切だと考えています。すべての学校においてインクルーシブ教育の推進に向けた取組を進め、共生社会の実現につなげてまいります。

 

共催

神奈川県教育委員会、南足柄市教育委員会、中井町教育委員会、大井町教育委員会、松田町教育委員会、山北町教育委員会、開成町教育委員会

 

このページに関するお問い合わせ先

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