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更新日:2023年11月27日

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障害者雇用優良企業インタビュー(特定非営利活動法人障害者雇用部会)[No.29]

かながわ障害者雇用優良企業であるNPO法人障害者雇用部会の障害者雇用取り組み事例です。

障害者雇用のきっかけ・目的

  • 各企業で障害者雇用が進まない現状を打破するとともに、障害者の一般就労へのステップアップの場を提供するために、平成16年から知的障害者の雇用を開始した。

障害者雇用に対する取組み

  • ジョブコーチを1名配置し、直接的かつ専門的な定着支援を行い、職場定着に努めている。
  • ジョブコーチが巡回指導し、何かあった場合は指導員と意見交換を行うなどの職場定着支援をしている。
  • 就労移行支援施設、特別支援学校などから常時毎日4名の実習生を受け入れ、勤労意欲の意識付けを行っている。
  • 実習生の受け入れ時は、指導を障害者に任せることによって障害者のやる気などを引き出すようにしている。

障害者が従事している業務について

当法人は平成13年度の電機神奈川福祉センターが主催する勉強会からスタートしました。平成15年にはNPO法人となり、障害者雇用に関する啓発活動、障害者の職場定着支援や支援者の育成、障害者が生活しやすい社会環境づくりの政策提言などを行っています。

現在法人で6名の知的障害者の方を雇用しています。神奈川県や教育委員会などから委託された文書整理や印刷などの業務で働いています。具体的には、県庁や県教育委員会などで実習生と一緒に、メールや郵便物の仕分けや集配、印刷・製本の仕事をしています。

小野口副理事長に伺いました!

障害者の方はみなさん長く勤められていますか?

私たちが知的障害者の方の直接雇用を始めたのが平成16年からですから、長い人だと10年近くになりますし、みなさん5年以上は勤務されています。

これは障害者の方の能力に仕事を上手くマッチングさせながら、その人の特性を上手く引き出せた結果だと思っています。もちろん最初から全てが上手く行った訳ではありませんが、幸いなことに障害者の方たちも仕事を通じて自身を成長させてくれました。今では、障害者の方が職場で実習生を教えられるようになっています。

障害者の方が実習生を教えるというのは、実習生にとっては同じ障害者が先生ですから緊張しなくて済むというメリットがありますが、それ以上に教える側の障害者にも勉強になり自信がつくといった大きなメリットがあります。そういった仕掛けを雇用側がしていくことも、障害者雇用の取り組みとして大切なのではないかと考えています。

また、障害者の方が先輩の背中を見て成長するという環境づくりも有効です。先輩をきちんと育てていけば、自然と障害者の職場定着に繋がっていきます。

職場定着支援の鍵となる「企業内育成型ジョブコーチ」の育成事業も県から委託を受けていますが、障害者と関わる人たちにどのようなことを話されているのでしょうか?

色々なことを話しています。今思いつくことを挙げるなら、障害者の方を一人の人間としてきちんと扱うことがとても大事だということです。それと同時に一人の労働力としてきちんと働いてもらいます。そしてその対価として障害者の方はお給料を貰う。そういった当たり前なことを自然体で行わないと障害者雇用は上手くいきません。昔、町の叔父さんや叔母さんがやっているような小さな工場などでは障害者の方たちを普通に働かせていました。もちろん多少の配慮は必要ですが、特別視をしないで普通の視点で人としてどう扱うかがとても大事なんです。社会的義務だからとか雇用率を言われるからといって障害者を雇用し、一人の労働者として障害者を雇わなかったらその雇用は失敗だと思います。

あと注意すべきこととして支援者があまり「手伝い過ぎない」ということを言っています。支援側がやりすぎてしまうと障害者をもっと障害者にしてしまいますからね。分かっていてもついついやってしまうことが多いようですが、「やらせて可哀想」ではなく「やらせない方が可哀想」という風に考えを変えて障害者の方の成長に繋げていくことも大事です。そうやって成長すれば、支援者よりも知的障害者の方が単純作業や反復作業の仕事では早いし正確に行います。

障害者の方の能力をどう引き出すかについては、障害者の方には他の人よりも優れたところが必ずありますから、そこに如何に早く気づいて如何に伸ばしていくかと言うことに尽きると話しています。例えば自閉症の方などには特有のこだわりがありますから、それを早くに見つけてあげて仕事にどう活かしていくかを一緒に考えていくということです。

そういう意味においても雇用する前のトライアル期間などを活用することは、その人の能力や特性、適性をある程度見極めることが出来て、なおかつ会社の仕事にマッチング出来るか否かを判断するいい機会になりますから、非常に有効だと思っています。

今、知的障害者の方の能力の引き出し方についてのお話が出てきました。能力の開発、スキルアップについてはどうでしょう?

私は以前、特例子会社で9年間知的障害者の方の雇用を担当していました。そこでの経験から言わせて貰うならば、障害者の方の能力開発やスキルアップは職域拡大こそが最大のポイントであると思っています。

人には向き不向きがあります。その人の特性に合った仕事であれば大きな成果を上げることが出来ます。例えば清掃など身体を動かす仕事の方が好きな人がいる一方で、静かに一人で黙々と仕事をする方が好きな人もいます。また、その両方が出来る人もいます。ですから、色々な仕事が用意できればそれだけ障害者の方が働ける領域が広がり、その人の特性に合った仕事をしてもらって能力を存分に発揮してもらう機会が増えていくことになります。

またこれも私の経験から来るものですが、知的障害者の方は、自分で設計・開発を行う仕事以外ならば大体出来てしまうのではないかと思っています。業務がきちんとマニュアル化されていて、それも常にメンテナンスされている「使えるマニュアル」だということが条件になりますが、その位の能力を彼らは持っています。もしも今、知的障害者の方を雇用しているのであれば、障害者本人にマニュアルを作らせてみるといいかも知れませんね。まさに「使えるマニュアル」が出来上がると思いますよ。

知的障害者の方を指導していく上で、何が大切だと思われますか?

日々の教育はとても大切です。私の言う教育とは「今日育」と書きます。「今日をどう育むか、どう育てるか」と言う意味です。毎日の積み重ねなので時間が経つと大きく変化が見られるようになってきます。仕事の話はもちろんのこと、チームワークといった人間関係の話など色々なことについて毎日朝礼などの時間を使って話をしますが、例えば「悪質なキャッチセールスにのらない」とか「事件に巻き込まれない」とか障害者のプライベートの時間のことも取り上げます。こういったことは一見仕事と関係ないように思えますが、プライベートの時間は仕事の時間を下支えしていますから、実はとても大切なことだと思っています。一回言ってすぐに理解するとは限りませんので、何度も何度も繰り返し指導します。ただ、毎回同じことを繰り返しているとマンネリになりますから、たまには遊びの要素を加えたりしながらすることも一つの方法です。ロールプレイングで私が悪者になり、ちょっとしたお芝居をしながら教えたこともありました。

また「今日育」とともに障害者の方と一緒に半年先、一年先の目標を設定することも大切です。その時には仕事の目標と個人の目標の両方を決めるようにもしています。なぜ個人の目標も決めるかというと、プライベートの時間をどう過ごすかということがやはり仕事の方にも大きな影響を及ぼすからです。今までに「海外旅行に行く」とか「一人で新幹線に乗って何処かへ行って来る」などがありましたが、こういう目標が本人の生活の糧になるのです。ですから私も以前の会社では様々なレクリエーションの機会などを作り、勤務時間外での活動をサポートするようにしていました。

これから新たに障害者雇用を始めようとする企業に向けてメッセージをお願いします。

障害者の方を採用するにあたって面接やトライアル雇用をされるかと思いますが、その方のマイナスのところを見ても仕方がありません。いいところを見るようにしてください。皆さんそれぞれに必ずいいところがあります。そして採用後にそのいいところを伸ばしていけばいいのです。例えば仕事に失敗はつきものですが、その失敗から学ぼうとする障害者の方もいます。そういった姿勢を見逃さないでください。失敗することによって人は真剣に自分で考え、次に失敗しないようになります。そうすると今度は本人に自信が生まれます。学校は知識を与えることで人を育てますが、企業は自信を与えて人を育てるものです。

また、企業側は障害者に見合った仕事を用意した上で、障害者の方とマッチングさせなくてはいけません。その仕事をちゃんと出来る障害者かどうかも注目して見るようにするといいかと思います。

「障害者雇用は大変」といったイメージがあるかもしれませんが、情熱こそは全てに勝ります。「壁」だと思わずに「ハードル」くらいに考えてぜひチャレンジしてみてください。「ハードル」くらいならぶつかってもそんなに痛くはないですよね(笑)。逆に障害者の方から学べることもたくさんあるものですよ。

小野口 富士男 副理事長

(小野口 富士男 副理事長)

訪問を終えて

障害者雇用部会は知的障害者の方の就労におかれて様々な取り組みをされています。そのため、今回は個別の取り組みよりも、障害者との関わり方や採用時のポイントなど障害者雇用全般についての話を中心にインタビューさせていただきました。

インタビュー中もホワイトボードを使いながら熱く障害者の方の話をされる副理事長の姿に思わず「何か少年野球のコーチみたいですね」と言ってしまいました。すると「障害者雇用を上手くやっている企業の担当者には少年野球やサッカーのコーチの経験がある人が多いんですよ。」との言葉が返ってきました。

その情熱が企業と障害者双方の架け橋となり、障害者雇用の現場を支えていると実感することが出来ました。

(平成25年11月12日取材)

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