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更新日:2024年3月13日
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平成30年度黒岩知事との”対話の広場”地域版(川崎会場)実施結果
日時 | 平成30年10月23日(火曜日)18時30分から20時00分 |
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会場 | ソリッドスクエアホール |
テーマ | 子どもみらいをスマイル100歳に! |
地域テーマ | みんなで育む子どものみらい~イキイキ学ぼうinカワサキ~ |
参加者数 | 157名 |
内容 |
1 知事のあいさつ 2 事例発表
3 意見交換 4 知事によるまとめ |
こんばんは。ようこそいらっしゃいました。神奈川県知事の黒岩祐治です。私が知事に就任してから対話の広場を開催してきましたが、総参加者数が今日で1万人を超えました。記念すべき回ですが、今日は率直に意見交換をしていきたいです。
毎回、テーマを決めて開催しています。そのテーマについて、私の方からプレゼンテーションします。今年の年間共通テーマは、「子どもみらいをスマイル100歳に!」です。
私が知事になってからずっと言ってきたことは、「いのち輝くマグネット神奈川」です。いのちが輝くためには何が大事でしょうか。医療が充実することは大事ですが、それだけではいのちは輝きません。医療も大事ですが、食も農業も、エネルギーも環境も、まちづくりも。いろいろなものがそろっていないと、しかも連携していないと、いのちは輝きません。ところが、医療の担当者は、医療のことだけ、農業の担当者は農業のことだけを考え、縦割りになりがちです。そうではなく、「連携してやっていきましょう」と言い続けてきました。すると、こういったものがでてきました。皆さん、知っていますか。こちらは、SDGsと言い、国連が定める持続可能な開発目標のことです。是非、覚えて帰ってください。
今のままだと、地球は持続可能ではないのです。持続可能にするためには何が大事かを17のゴールとして書いてあります。
例えば、「すべての人に健康と福祉を」、「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、「海の豊かさを守ろう」、「陸の豊かさも守ろう」などと書いてあります。これは、「いのち輝くマグネット神奈川」と同じです。
SDGsは、2030年までに地球全体を持続可能にするための国際目標です。SDGs未来都市及び自治体SDGsモデル事業の取組について全国で10の自治体が選ばれ、その中で神奈川県が都道府県で唯一選ばれました。横浜市と鎌倉市も選ばれ、10の自治体のうち3つが神奈川県勢です。そういったことで、我々は、SDGsを徹底的に進めていこうと取り組んでいます。
そのような中で、何を目標にしていけば良いのか。
「笑い」が大事です。どんな人生100歳時代が良いのか。みんなが笑っている社会を目指して行きましょう。子どもたちが100歳までずっとスマイル、笑って過ごせるような持続可能な社会を目指すという視点で、我々の政策を大きく3つにまとめました。「健康」でスマイル100歳、「学び」でスマイル100歳、「共生」でスマイル100歳。今日は、「共生」でスマイル100歳に焦点を当てて対話を進めてまいります。共生でスマイル100歳のためにはどんなことが大事でしょうか。私が知事になった頃は、「子どもの貧困問題」という言葉そのものを聞いたことがありませんでしたが、最近、子どもの問題が話題になることが多くなっています。神奈川県では、かながわ子どものみらい応援団を作り、NPOや民間団体が行っている子ども食堂、放課後学習支援、フードバンクへの協力など、様々な取組をマッチングし、人材育成にも取り組んでいます。「かながわ子育て応援パスポート」を協力施設に提示することにより、割引や景品の提供など各施設が設定する優待サービスを受けることができるなど、子育てしやすい環境づくりにも取り組んでいます。
また、「パパノミカタ」というホームページを作成し、パパは子育てにおいて何をすれば良いかをわかりやすくご紹介しています。その中に面白いページがあります。パパ育児の秘訣は、「妻のケア」にあり。これは、女性の愛情曲線です。女性たちの愛情の配分はライフステージによって変化します。結婚直後は、「夫」に注がれる愛情が最高潮ですが、出産後、妻の愛情は「子ども」に注がれ、夫への愛情が急降下します。ここが運命の分かれ道です。出産直後、夫への愛情が低下しているときに、パパが積極的に子育てに参加していると、妻の愛情が徐々に回復します。子育てに参加しないと、妻の夫への愛情はずっと低迷してしまうという恐ろしいデータがあります。今日は、子どもたちが100歳まで、笑顔でいられるような社会を作るにはどうすれば良いのか、子どもたちはどんな問題を抱えているのかについて、まず、お二方に事例発表をしていただき、それを基に皆さんと対話を進めていきたいと思います。
はじめに、認定NPO法人キーパーソン21代表理事の朝山あつこ様をご紹介いたします。朝山様は、子ども自身が未来を作る力を育成していく、「キャリア教育プログラム」を開発した方で、平成17年に日経WOMAN主催「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2005」クリエイティブ部門に入賞されました。また、平成28年には、経済産業省「第7回キャリア教育アワード」中小企業の部の最優秀賞を受賞されました。
現在は、川崎市内の小・中学校でキャリア教育の支援を行うほか、高校生・大学生、さらには企業向けの「わくわくエンジンの発見プログラム」などを実践していらっしゃいます。それでは朝山様、よろしくお願いいたします。
皆さん、こんばんは。キーパーソン21というNPO法人の代表理事をしております朝山と申します。今日は、日ごろ、私たちがどんな活動をしているのかお伝えしたいと思います。
私たちは、一人ひとりのわくわくエンジンが未来を作ると言っています。わくわくエンジンというものがあり、高校生も小学生も大人も、おじいちゃんもおばあちゃんも、誰もが、わくわくして動き出さずにはいられない、原動力のようなもの、わくわくエンジンを持っているという大前提で活動しています。
どういうことかと言いますと、例えば、鶴見に住んでいる中学生のU君の話です。好きなものは動物、なりたい職業は獣医です。しかし、ブラジル出身で、家はそれほど裕福ではなく、勉強もそれほど得意ではありません。獣医になるのは学力的に無理そうで、どうせ自分なんて、と思ってしまう。獣医学部は、6年制で、お金もかかるから両親に駄目と言われるかもしれない、アルバイトしても学費が足らないかもしれない、と諦めてしまいます。このとき、学習支援の現場の方はどうするかというと、「そうだよね」と同調しがちです。でも、私たち大人は、本当に一緒に悩んであげるだけで良いのでしょうか。どうしたら良いのか考えてほしいのです。
例えば、川崎の有名私立進学校に通うSさんの話です。親が医者で親に「医学部に行きなさい。」と勧められます。「医者もいいかもしれない。」と、理系コースに進んでみたけれど、勉強が大変だったので進学先を医学部以外の学部に変えようと思い、学校の先生に相談します。このとき、先生や親は本来どうしたら良いのでしょうか。子どもが医者になりたい理由も分からず、迷っています。このとき、学校の先生もどうしたら良いか悩んでいます。親御さんも期待しているし、進学率も下がってしまう。医学部をあきらめさせるわけにはいかない。でも、本人は苦しそうだな、どうしたら良いのだろう。
また、進学塾に通うFさんの話です。「どうして勉強しなければいけないの。」と言います。言われた先生は、「将来に備えて、今はちゃんと勉強しておいた方が良いよ。今は、難しく考えずに大学に入ってから考えなさい。」と先送りにします。皆さんの生活の中に、こんなことはありませんか。
この子たちは、誰もわくわくしていません。大人たちが言う正解の中に自分をはめ込もうとして苦しんでいます。私たちは、この子たち1人1人が納得して自分の人生を選択して歩むように導いていく、ということをしています。納得して自分の人生を選択するだけでなく、わくわくさせる。私たちのミッションは、「あなたの人生をわくわくさせる」ことと考え、実践しています。
私は、3人の息子を育てる普通の母親でしたが、子どもたちがどのようにすれば、自分を生かしていきいきと仕事をして生きていくことができるのか、この問いに17年間向き合い、このプログラムを実践しています。未来は予測できず、職場にAIが導入されれば仕事がなくなるのではと不安になります。それならば、私たち大人は、子どもを社会の枠にはめ込むのではなく、今ある枠を超えて未来をつくる人を作ろう、枠を超えて、わくわくしよう。
私たちが描く理想の社会は、子どもたちがわくわくエンジンを発見し、いきいきと仕事をして生きていることです。一人ひとり丁寧にわくわくエンジンを引き出していく、ということを大事にしながら、子どもは家庭で生まれ、学校の先生と出会い、地域の大人と出会います。その大人たちがみんなで子どもたちを育てていく。あらゆる立場の大人が、オールジャパン、オール神奈川で子どもたちを育てようと実践しています。社会とのつながり、人と人とのコミュニケーションはもちろん大事ですが、これからは、企業とNPO、NPOと行政、行政と企業など、協働のコミュニケーションが重要になってくるのではないかと思っています。私たちは、わくわくエンジンが当たり前の社会を作ることを目指します。
自分を発見するプログラムを開発し、学校や学習支援の現場、児童養護施設等の地域の施設などと協働して実施しています。これまでに、4万3000人以上の子どもたちにプログラムを実践しています。プログラムはゲーム形式で、大人が関わり、みんなで楽しんでやっています。チームワークを大事にしています。自分で考え選択する力、行動する力を身につけることを目標にしています。大人はティーチングではなく、子どもたちの中にあるダイヤモンドの原石のようなものを引き出し、伴走していくことができる人を育てます。
わくわくエンジンとは何か。これがわかると、エネルギーの行き先がわかります。川崎市内の中学生、A君、B君、C君がいます。みんな野球が好きで、野球にわくわくしています。一生懸命にやっていて、野球部で大会にも出場しています。そうすると、大人はすぐに、職業につなげて、「野球選手になれば。」と言います。でも、今の自分と未来をたった一つの職業だけにつなげるのは危ないのです。「野球選手になりたい。」と言っているときは、野球に一生懸命になっている自分と、社会で野球選手になって活躍する自分がつながっています。しかし、中学、高校と過ごすうちに、「俺、選手になれないかも。」と、どこかで気が付きます。その時に、「どうせ、俺なんて。」「やる気ないし、自信もない、どうしよう。」と言い出します。未来はわかりません。野球選手を目指していた自分と社会がつながらなくなる。職業につなげるキャリア教育がいかにナンセンスかということがわかります。
私たちは、携帯で世界中の情報をすぐに得られます。でも、江戸時代は飛脚でした。職業はなくなったり変化します。でも逆に、作ることもできます。ネイルアーティストは、昔はありませんでした。
では、私たちは、どうすれば良いのか。この3人に、野球の何にわくわくするかを聞きます。A君は、「作戦や戦略を立てることにわくわくする。」と言います。B君は、「チームで何かを達成するために自分が役に立っていることにわくわくする。」と言います。C君は、「素振りや筋トレなど、日々の小さな成長を感じることにわくわくする。」と言います。だとしたら、子どものこういった気持ちを育てるように、学校でも家庭でも接することできれば、この子たちは、社会から求められる人になる。このようなことを私たちはやっています。
私たち大人がやらなければならないことは、一人ひとりを認めること。一人ひとりのわくわくエンジンが見つかればあとは自分で進んでいきます。わくわくすると人は能動的になります。
北海道から沖縄まで全国でいろいろなプログラムを提供しています。一人ひとりのわくわくエンジンは、人の幸せ、まちの活性化、神奈川県の元気、世界の幸せのきっかけになると思っております。そのためには、すべての人がキーパーソンです。ご清聴ありがとうございました。
続いて、一般社団法人ピッカの代表理事であり、有限会社ロック&ヒル ミュージックのプロデューサーでもあります、岩永浩二さんをご紹介します。
岩永さんは、ミリオンヒットした沢田知可子さんの「会いたい」の制作を担当された音楽プロデューサーでいらっしゃいます。また、福祉施設での歌や音楽の活動をプロデュースしたときに、子どもたちの笑顔に感動し、平成27年にピッカの前身となる一般社団法人を設立されました。
平成28年には、「津久井やまゆり園」でダンス教室を開催し、現在は、県内の特別支援学校を中心に、音楽や絵画などの、芸術に関するチャレンジ教室を開催する活動を実践・展開していらっしゃいます。それでは岩永様、よろしくお願いいたします。
こんにちは。一般社団法人ピッカ代表の岩永と申します。僕は、大学卒業後にレコード会社に入り、音楽制作に関わってきました。アーティストの活動には、2つの基礎があります。1つは、レコーディングをしてCDを出すこと。もう1つは、コンサートをすること。
かつて、あるアーティストがいろいろな地方、県庁所在地以外の小さな市区町村などでもコンサートをしていましたが、リハーサルが終わったあと、特別支援学校や高齢者施設に歌をプレゼントしに行きたいので、岩永さんも手伝ってくれないかと言われました。それが、ピッカを設立するきっかけとなりました。特別支援学校の生徒さんや高齢者施設に入居されている方には本物のエンターテインメントが心に染みわたるということを経験しました。9年間で全国180か所の特別支援学校などの施設に行きました。収益事業であるエンターテインメントの事業とは別に、非収益事業の団体を作りたいと思って作ったのがピッカです。
活動をするにしても、皆さんにエンターテインメントに触れ合ってもらうとなると各家庭の皆さんには経済的負担になります。それでも、どこかで経験させてあげたいと考えると、ゆめ基金や文科省の育成事業の協賛などを得て、活動することになりました。
アーティストと一緒にいろいろな施設に行きました。
左はRadio Fish(レディオフィッシュ)のツトムさん、ダンサーとして安室奈美恵さんなどとも踊ったキハラリュウさんなどがいます。子どもたちにも大人気です。「岩永さん、その活動を僕らにも手伝わせてくれないか」と、彼らが僕に言います。ダンスを習いたいが、ダンス教室の授業料が高く、習えないということがあります。それは、僕らの本意ではありません。
養護学校の先生から「子どもたちはエンターテインメントが大好きです。」と後押ししてもらい、高津養護学校でダンスチャレンジ教室をやり始めました。
「ジャズでアートチャレンジ」という、音を絵にしてみようという活動があります。J-POP、童謡までは知っていても、ジャズの生演奏は聴いたことがない子どもは多いです。これも子どもたちに大人気です。「マジックチャレンジ教室」という活動も考えました。ラスベガスやドイツなどで活躍している先生を招いて教室を開催しています。「フリーセッションチャレンジ教室」もあります。元劇団四季のトップスターと一緒にライオンキングやキャッツを歌おうという「ミュージカル・チャレンジ教室」、世界中のドラム・太鼓を集めた「ドラムサークルチャレンジ教室」など様々な教室を、神奈川県内の特別支援学校を中心に、遠くだと宮城県、福岡県、長崎県などでも開催しています。
写真は、チャレンジ教室の様子です。子どもたちと楽しくチャレンジしています。参加者には、小さい子どももいます。保育園児、幼稚園児から小学生。車いすの子どももいます。車いすではダンスは踊れないかというと、手だけで踊るタップダンスができます。エジプトの絵画のようなダンスをやってみんなで楽しんでいます。障がい児も、健常児も、ともに生きる感じで、みんなでチャレンジする場を僕らに提供してくれています。そんな中、残念な事件が神奈川県の津久井やまゆり園でありました。岩永さんたちがやっているダンス教室を津久井やまゆり園で開催するのは難しいだろうかと県から相談がありました。僕らはそういうところにこそ積極的に行きたいと応じ、ダンス教室を開催し、喜んでもらえました。参加者の笑顔を見ることで、僕ら自身が癒やされたと感じました。
次は、アートチャレンジです。この企画では、児童・生徒、障がい児、健常児を含め、上手に絵を描くことが目的ではありません。ジャズの生演奏を聴きながら絵を描きますが、手で描く、壁に紙を貼って描くなど自由にやっています。子どもたちが楽器に興味を示し、楽器を離さなくなることもあります。字を書くのもアートだと説明しています。ウルトラマンが来てくれたこともありました。活動をする中で、僕らは1日だけのチャレンジ教室を開催しており、一過性のものだと思うようになりました。子どもたちは僕らに「また、来てね。」と言います。何度も続けたいと思いました。
エンターテインメントを経験してもらったらエンターティナーとして発表できる場を提供したいと思うようになりました。今年2月に多摩市民館で発表会を開催しました。子どもたちは夢中で絵を描き、ウィリアム症候群の子どもが歌を歌いました。中央支援学校の子どもたちはピアノで演奏しながら歌ってくれました。最後はみんなで合奏しました。
エンターテインメントを一過性ではなく継続していろいろな場所で、たくさんの子どもたちに体験させてあげたいと思っています。僕たちは、音楽や美術、エンターテインメントは障がい者、高齢者と共生していくときに役立つコミュニケーションのツールだと思っています。ご清聴ありがとうございました。
ありがとうございました。素晴らしいお話しでした。現場で実践している方の話は説得力があり、聞いているだけでわくわくしました。朝山さんのプログラムは既存のものを使っているのですか。
現場の声を生かしながら、学校の先生やお父さん、お母さん、企業や行政の方、大学の先生など、みんなで考えて作りました。オリジナルのものです。わくわくしながら、「楽しい」と思うこと、チームで行うこと、大人が関わること、この3つを大切にプログラムを作りました。
キャリア教育は本来、学校や家庭でするべきだという考えはありますか。
あります。実際に、授業でこのプログラムを取り入れてくださって、先生方も年間で子どもをどのように育てていくかを決めていらっしゃいます。
先生に意識があって、理解があって、生徒一人ひとりと向き合っている方もいるでしょう。
ですが、指導要領に則って40人の生徒を預かっていると、お忙しいですからなかなかキャリア教育まで手が回りません。教員の研修は「ティーチング」です。教える部分です。キャリア教育に関しては、教えるのではなく、引き出すものです。「ファシリテーション力」です、教員育成で手つかずの部分です。
学生さんが今日はたくさん来ていますので、どんな受け止め方をしたか、後で聞いてみましょう。
岩永さんも随分いろいろな場所で活動されていますが、この活動はすべて非営利ですね。あれだけいろいろと活動していたら、お金が大変ではありませんか。
そんなに持ち出しがないように、助成金の予算内でやっています。
こういった活動を進めるためには何が必要ですか。
いろいろな企業からご支援いただきたいところもありますが、足掛かりになるのは行政から最初のきっかけをいただく、もし、良かったら予算をいただいて活動し、きっかけとなればと思います。
特別支援学校に行って、みんなを巻き込み「楽しい気持ち」にさせる。こういった地道な活動を続けていただけることは本当にありがたいことだと思います。さて、ここから皆さんとお話していきたいと思います。
川崎区で少年の剣道連盟の世話役をしています。今、小学校から高校まで、先生方の事務量が多く、非常に忙しいです。これがいじめの問題、生徒を伸ばすチャンスを奪うことにつながっています。川崎市の教育長に言っても全く動きません。知事が率先して事務量を半分にするように働きかけてほしいです。
先生が忙しすぎるという話が出ましたが、私の耳にも入ってきています。この中にも先生がいらっしゃいます。先生、どうでしょう。
事務量は、非常に多いです。一般教諭の先生方は、事務量が多く、子どもたちと対話をする時間がありません。その中でも工夫をしながら子どもたちと向き合っています。今後は、AIなどいろいろなものを活用して工夫をしながらやっていかなくてはならないと感じています。教育委員会を含め、神奈川県全体で考えてほしいです。
今、発言があったように、私が「事務量を減らします。」と言えば減るものでしょうか。
言葉だけでは、無理だと思います。教員以外に事務を手伝う人を教育現場に派遣すれば、私たち教員の負担は減ると思います。教員が子どもたちと向き合う時間、教育に時間をかけられるようにしてほしいです。
県では、人生100歳時代を迎え、定年退職後の学校の先生に現役の先生のサポート役をしていただく取組を進めています。子どもが好きで、子どもに向き合いたいと思っている先生が、事務に追われて子どもと話をする時間がないということでは、本当の教育はできません。
事務量を減らすことも、大事なことではありますが、子どもの可能性を引き出す力を教員の皆さんに身につけていただくことが大事だと思います。
「教える」だけではなく、「引き出す」ことが大事なのですね。高校生もうなずいていますね。高校生は、どうですか。先生たちは忙しそうですか。
私は、野球部に所属しています。先生がいないときは、自分たちだけで練習していますが、怪我が多くて困っています。
先生が忙しくて、怪我をしても先生は相手にしてくれないのですか。
怪我をした生徒に先生が1人ついて行ってしまうと先生が足りなくて大変です。
先生に用事があり、職員室に行きます。相談しやすい先生にばかり生徒が集まり、その先生の時間が取られてしまいます。すべての先生が相談しやすいと良いと思います。
面白いですね。相談しやすい先生と相談しにくい先生がいるのですね。相談しにくい先生はどんなタイプの先生ですか。
怖い先生です。相談しやすいのは若い先生です。
若い先生は相談しやすいのですね。事務量は同じはずなのに、相談しやすい先生と相談しにくい先生がいるということですね。「教える」ではなく「引き出す力」について、実際の教育現場で感じるものはありますか。
自分で気が付いていないことを先生に褒められると、自分の良さを再発見できます。
褒められると引き出されるということですか。
親が子どもを「褒める」というように、「褒める」というのは上から目線です。それよりも「認める力」が学校にあればいじめもなくなるのではと思います。
私は、小学校の教師を目指しています。周りの方から、「小学校の先生は大変だ。」と言われます。先ほどお話がありましたが、事務量が多いというのも理由の1つだと思います。「事務量が多い」ということは、みんながわかっているので、学校の先生は大変というイメージが子どもにもあると思います。私は周りに「大変」と言われても、なりたいと思っていますが、言われたことで、学校の先生になることをあきらめようかどうしようかと悩んでしまう子もいると思います。
彼がどうして小学校の先生になりたいのか関心があります。
子どもが好きということが小学校の先生になりたい理由の1つですが、私は、子ども会で活動をしており、子ども会では、小学生が元気に活動しており、そういったエネルギッシュな環境で働きたいと思っています。私は、事務量が多いことは気にしていません。
大人が、本人が「なりたい」と言っているのに、ネガティブな面だけを捉えて「やめておけば」と言ってしまうのは良くないことだと思います。何でなりたいかを聞いたら、「エネルギーのあるところに身を置いて、子どもたちとともに成長したい」という感覚を持っています。この感覚は大事です。彼は、子どもとエネルギーのある場に身を置くために、事務量を減らす工夫をするような良い先生になると思います。
先ほどの話で、岩永さんと一緒に活動しているアーティストの名前が出ていました。岩永さん、ご紹介いただけますか。
ダンサーのキハラリュウさんです。彼は、保育園児からも特別支援学校の児童からも大人気です。
普段活動していてどのようなことを感じていますか。
やりがいを感じています。子どもたちと触れ合っているときは、自分も心の底から楽しんでいて、終わった後も、疲れよりもエネルギーに満ちあふれます。終わった後に保護者の方や障がいを持ったお子様たちの喜んだ顔を見ると僕も幸せな気持ちになります。
せっかくなので、車いすでもできるダンスを披露してください。
このダンスは、特別支援学校の体育館で発表しています。保育園でもやっています。
保育園でも今のダンスをするのですね。皆さんもやってみましょう。これだけでも楽しくなってきますね。わくわくしている子どもたちを見て、教える側もわくわくしてきます。
チャレンジ教室は、土日開催のため、立ち会ってくださる先生方に申し訳ないと思っていますが、先生自ら踊ってくれたり絵を描いたりしてくださることも多いです。
神奈川県で保育園を運営しています。世界一わくわくする保育園を目指しています。子どもがのびのび生き生きするためには、まず、先生方が楽しく生き生きすることが大事です。毎朝夕、先生たちがハイタッチ・ハグをする、ということをしています。保護者の皆さんともハイタッチ・ハグをします。そして、職員同士が「ピグマリオンミーティング」という褒めるミーティングを行っています。それから、「人のミスを責めない」という「パチパチフォーティ」というワークも取り入れています。みんなが仲良くなって、ミスを責めない。助け合う文化を創り出すための習慣づくりを大切にしています。みんながわくわくニコニコする。ハイタッチをすれば自然に笑顔になります。シンプルなことを大事に続けております。
素晴らしいですね。ミスをしたときに責めないというのは、子どもの話ですか。大人の話ですか。
まずは、大人同士がチームづくりのために「パチパチフォーティ」というワークをしています。ゲーム形式でやります。ゲームでは、ミスが付き物ですが、ミスをしたときにみんなで「ドンマイ」と声を掛け合い、ミスをするほど笑顔になるワークです。いろいろな人がこのワークを見に来て、全国に広がりつつあります。
現実の仕事のミスに対してではなく、ワークショップでやっているのですか。
ワークとして毎日練習します。だから、本番でミスをしても助け合える文化ができます。
現実に、仕事で大きなミスをしたとき、「何をやっているんだ。」と普通は言ってしまいます。
普通なら、責められたりしますが、みんな、仕事は一生懸命しています。好き好んでミスする人はいません。責めるとモチベーションが下がるだけ。みんなでフォローして、「良いよ、みんなでカバーしようよ」となると、結果的にミスが減るという循環ができます。
100歳まで生きる時代になると、みんなでこぼこで良いと思います。違いを認めるということにもつながります。良いところを見つけて、引き出し、伸ばしていくことが大事です。
先ほど、保育園の理事長の方から先生自らわくわくしているという発言がありましたが、学校の先生はそう上手く行かないものです。事務量が多いという話もありました。まさにその通りです。先生は、朝6時か7時には登校し、事務をこなし、生徒とあいさつする頃には疲弊していることもあります。教育改革の話もありましたが、授業を担当している先生に「教育改革について先生はどう思いますか。」と聞いたことがあります。すると、「現実的ではない」と皆さんネガティブな意見でした。知事のご意見をお聞かせください。
僕の先生のことを書いた本があります。中学・高校の恩師のことで、「恩師の条件」という本です。どんな教育を受けたのか書きました。国語の先生でした。先生は伸び伸びと授業されていました。当時、私立の中高一貫校に通っていました。今なら許されないと思いますが、その先生は、学校の教材を一切使いませんでした。「銀の匙(さじ)」という本を3年かけて読み解くという授業でした。教材は先生の手作りで、昔のガリ版刷りで、先生も寝る時間が無くなるほど時間をかけて教材を作ってくれました。その教材で授業をするためこちらも真剣でした。その先生の思い出が自分のベースにあります。そういう先生像が、教育現場で目指すものかなと個人的には思っています。先生自身が伸び伸びと自分の個性を発揮して、真正面から子どもたちにぶつかる。子どもたちは、真正面からぶつかってくる先生からは逃げられない。当時は、今のように教育現場で生徒を殴ったりしない時代ではなく、遅刻したら出席簿で生徒の頭を殴っていた時代でした。それでも生涯「恩師だ」と思える先生でした。今、話を聞いていて残念に思うことは、文部科学省が決めた指導要領をきちんとやらなくてはならないという先生に対するプレッシャーがあり、報告書を作成するなどしていると子どもと向き合う時間が取れないという現実があります。どう変えていったら良いのか、答えは自分の中で出せていません。私の恩師の先生のように、文部科学省の教科書なんか使わなくていいですよ、好きにやりなさい、指導要領なんか無視していいですよとは、知事の立場としては言えません。そこが自分の中のジレンマです。
今の先生は枠の中にはめられてしまっています。知事の恩師は伸びやかに授業をされていたのだと思います。きっと、自分のわくわくエンジンに基づいて授業をされていたのでしょう。今の先生にも、自分の信念に基づいて授業ができる自由な環境がもう少し許されて、わくわくする先生を増やしたいと思います。
今は、教育現場に関わっていませんが、35年前に教員を目指して教員採用試験を受けたことがあります。結果として、教員になれませんでしたが、塾の講師や産休補助教員として公立学校で働いたこともありました。その時代に青春ドラマや教育ドラマがあり、ドラマに登場する熱い教師に憧れ、中学生の頃から教員を目指しました。学習塾の教師や産休補助教員をやった2年間は非常にわくわくしていました。自慢話になりますが、中学校の産休補助教員をやった際に、若いからと担任を持たせてもらいました。受け持ったクラスは、勉強では、常に真ん中の成績でしたが、文化祭、体育祭といった学校のレクリエーション行事はすべてトップの成績でした。一番記憶に残っているのは凧揚げ大会です。クラス全員で連凧を作り、等々力競技場の近くで揚げました。特賞を取りました。こういうことにわくわくする教員が今はいません。子どもたちの親が悪いのです。子どもに、学校の悪口、教員の悪口を言うのです。先生たちは、何かあると親から文句を言われて、やりたいことがやりたくてもできない。わくわくするような取組をすることには大賛成ですが、その前に親を教育するプログラムを考えないと駄目です。私の姪は、小学校で教員をしています。私の昔話を姪にすると、姪は、そういうことは親から文句を言われるので、できないと言っています。
子どもは生まれて、まず親に出会います。親は子どもを自分の型にはめたり、人の悪口を言ったり、人の批判をしてしまうこともあります。子どもの良いところを見つける力を親がどう身に着けていくか、その子の可能性をどう伸ばしていくかということを考える必要があります。先ほどの「パチパチフォーティ」のようなことをして、親も成長していく必要があると思います。
先生の自由度を奪う要因として、親の存在が大きいのですね。攻撃的に迫ってくる、クレーマーのような親がいて、先生たちはこの対応に時間を割かれ、精神的にも疲弊するという話も聞きます。
親も認められなくて、しんどい思いをしている人も多いです。親も子どもを産んだだけでも立派だと褒めてあげる。人を認める力が社会全体にあると良いと思います。
障がいのある子どもたちの親御さんも疲れている方が多いですが、親子でニコニコしている人もいます。そういうのが伝播していけば良いと思います。
親自身がわくわくしていない、何かに追い詰められているようです。負の連鎖があり、その結果、子どもたちがわくわくできない。わくわくは連鎖します。わくわくしている人の隣にいれば、その人もわくわくしてくる。それを広げることが大事なことではないでしょうか。
一般社団法人「ピッカ」に所属し、主に子どもたちに音楽を教えています。ピッカを立ち上げてから、障がい児やその親御さんと接してきました。一番胸が痛いことは、親御さんが「先生にうちの子が迷惑をかけるかもしれない」と、教室に通う前、チャレンジする前に、心配してしまうことです。健常のお子さんならあり得ない考え方だと思います。どういう迷惑かは、障がいの程度で違います。お絵描き教室なのに、走り回ってしまうかもしれない。音楽の授業でダンスをしてしまうかもしれない。先生に迷惑をかけてしまうかもしれないとメールが来ることに胸を痛めています。私たちは、「そんなことはないです、1度来て下さい。」と言います。勇気を出して来てくれる人もいます。「楽しかった。うちの子も楽しんでいた。でも、ダンスは難しいかもしれない。次は、来られないかもしれない」とちゅうちょする親御さんもいます。そういう場がないから慣れていないのです。この活動がもっと市民の皆さん、県民の皆さんに広がると良いと思います。そうすれば、そのようなことはなくなるのではないか、と思います。継続して地域で、小さな催しを開催していきたいです。障がいのある子は、電車で会場に来るのも大変です。このような活動について、知事のお考えを聞きたいです。
障がいのあるお子さんを持つ親御さんへの配慮、気遣いが素晴らしいです。ノーマライゼーションにはまだ垣根があるという証拠になのでしょう。迷惑をかけてしまうのでは、と心配をしてしまうような世の中なのですね。「うちの子は障がいがありますけど、楽しめますから。」というのではなく、「大丈夫ですかね。」と言わせてしまう社会。「ともに生きる」と言いながらも、どこかに障壁があるのでしょう。みんなでそれを乗り越えて行かなくてはと思います。
今日のテーマにおいて、「わくわく」という言葉が出てきています。私は、世界一わくわくする保育園を目指しており、寝ても覚めてもスタッフがわくわくすることを考えています。大人があいさつをできていないのに、子どもに「あいさつをしなさい」と言うのは不思議な光景だと思います。まず、大人が徹底して楽しくあいさつをしている姿を子どもに見せる必要があると思います。大人が笑顔であいさつをしていれば、子どもは自然とまねをします。私の園では、それを実践しています。
あいさつは基本ですが、あいさつをしても返さない人もいますね。
私は、企業に勤めながらキーパーソン21で活動をしています。子どもが2人おり、学校行事にも参加すると時間的には厳しいところもありますがキーパーソン21で活動をしている理由は、活動の場で子どもの変化が見られることが楽しく、「わくわく」しているからです。知事への要望になりますが、「わくわく」を増やす活動をするには、予算も大事です。
2020年に学習指導要領の改正があり、総合の時間の4分の1くらいのコマ数が業務委託できると聞いています。学校の先生だけではなく、地域社会が教育をお手伝いすることが可能になります。地域と連携し、より質の高い教育が提供できるように、予算の確保についてご検討をお願いします。
総合の時間の4分の1の枠の話は、知らなかったので、研究しておきたいと思います。神奈川県は、私立高等学校等に通う年収約590万円未満の方には国に先駆けて授業料実質無償化に踏み切っています。少しずつ、頑張ってやっていきます。
先生や親御さんのわくわくの話がありました。自身の経験で思ったことがあるので、皆さんに伝えます。高校には楽しく通っていますが、中学生のときに嫌なことがありました。中学3年生のときに部活動のことで先生に相談したところ、「それは、あなたのわがままじゃない。」と言われ、先生とけんかのようになりました。相手の生徒と話し合いをしたときには、自分の意見を先生に全面的に否定されました。先生自身がわくわくしておらず、生徒の可能性を引き出す前に見限っていることもあるのではないかと思います。すべての先生がそうだとは思っていませんし、頑張っている先生が大半だと思いますが、中にはそういう先生もいるということをお伝えします。みんなが楽しめる学校になるには、先生や生徒がどうすれば良いのか考えています。
先生に全面否定された時に、「そうか、私は、わがままなんだ。」とは思わなかったですか。
私のわがままだったのかな、と思った部分もありましたが、私の言い分を分かってくれる人もいました。
よく話してくれました。ありがとうございました。
私もキーパーソン21の会員です。今日は「わくわく」の話がたくさん出ています。お時間が許す範囲で是非、朝山さんに、知事のわくわくエンジンの引き出しをしてほしいです。わくわくエンジンの引き出し方や、知事がどんなものを大切にしているのかというのを皆さんも知りたいと思いまして。
あと2分でできますか。
黒岩知事、お好きなものを3つ挙げてください。
ラーメン、ミュージカル、走ること。
どうして走ることが好きなのですか。
走るとすっきりし、嫌なことを全部忘れられるからです。
忘れるために走るのですか。どんな気持ちになりますか。
すっきりとして、解毒作用できれいになる感じがします。
解毒作用。きれいになる感じがするのですね。走りきった達成感もありますか。
それもあります。フルマラソンを走り切った時の達成感はすごいものです。
ミュージカルは、どうですか。
ミュージカルは、小さい頃から大好きでした。いろいろなミュージカルを観ています。
どんな気持ちになりますか。どんなところが好きですか。
魂が揺すぶられるというか。泣いたり、笑ったりの感情があるとすっきりします。
すっきりするのが好きなのですね。泣いたり、笑ったり、感情が揺さぶられて、すっきりする。これも解毒作用になるということですね。ラーメンはどうですか。
なんで好きかといわれると、おいしいからというのが理由です。
短い時間なのでこれ以上はできませんが、黒岩知事の好きなものから出てくることとして、「魂が揺さぶられる」という思いでお仕事をされていて、嫌なことがあっても、一度気持ちをすっきりとリセットして次のことに向かうという感じですね。
そうですね。基本的にポジティブシンキングで嫌なことは早く忘れたい性格です。嫌なことにこだわって自分がネガティブになりたくないとも思っています。楽しいこと、面白いこと、良いことを前向きに考えるとわくわくしてきます。その感覚を大事にしたいです。
そこにわくわくエンジンがあり、神奈川県のために明日も頑張れるということですね。
ありがとうございました。引き出すというのはこういうことなのですね。自分を再発見してもらうことでもあるのでしょう。
今日は、皆さんと対話して私もわくわくしました。とても大きなエネルギーをもらった気がします。冒頭に申し上げましたが、神奈川県の目標は「笑い」です。100歳までみんなが笑い合う社会を目指しています。「笑い」は目標であると同時に手段でもあります。1人で笑う人はいません。1人が笑えば隣の人も笑います。笑いは伝染していきます。100歳まで生きても暗い人生は嫌ですよね。みんなが笑い合える社会を目指したいと思います。今日の皆さんとの議論で、いろいろな展開ができることに気が付きました。1人がわくわくすれば周りの人がわくわくする。先生がわくわくすると生徒もわくわくします。「わくわく」を広げていくこと、「良いこと」を広げていくことで良い循環ができます。今日はありがとうございました。
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