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初期公開日:2023年8月2日更新日:2024年3月29日

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第1回 黒岩知事と当事者とのオンライン対話 開催結果

第1回 黒岩知事と当事者とのオンライン対話

令和5年7月12日に開催した「黒岩知事と当事者とのオンライン対話」で当日ライブ中継をした映像です。

開催概要

令和5年7月12日に開催した「黒岩知事と当事者とのオンライン対話」の結果概要を掲載しています。

※意見募集は令和5年9月12日で終了しました。

テーマ「当事者目線の障害福祉」

当事者目線の障害福祉の実現に向けて、先駆的な支援を実施している施設の職員から話を伺うとともに、障害当事者を交えて地域生活移行を含めた必要な支援について意見交換を行います。

対話相手

  • 社会福祉法人横須賀たんぽぽの郷 わたげ 後藤 博行氏
  • 社会福祉法人すぎな会 すぎな会愛育寮 川合 明子氏
  • 社会福祉法人育桜福祉会 桜の風 法人事務局総務課長(元施設長)佐野 良氏
  • 社会福祉法人みなと舎 ライフゆう 森下 浩明氏
  • 神奈川県立保健福祉大学 准教授 在原 理恵氏
  • 社会福祉法人足柄上地区委託相談支援事業所相談支援センターりあんピアサポーターフレンズ 隅田 真弘氏
  • 神奈川県立中井やまゆり園 小関 満氏

実施結果

神奈川県 情報公開広聴課長

皆様、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
ただいまより第1回黒岩知事と当事者とのオンライン対話を始めます。
情報公開広聴課長の望月と申します。よろしくお願いいたします。
この対話は、様々な課題に対する当事者の皆様の生の声を知事が直接伺い、今後の県の施策につなげていくものです。
この様子はYouTubeでライブ配信を行うとともに、アーカイブで県のホームページにも掲載いたします。
今回のテーマは、「当事者目線の障害福祉」です。
先駆的な支援を実施している施設の従事者や障がい当事者の方々にご参加いただいております。
本日は60分間、2時半までを予定してございます。
YouTubeをご覧の皆様は、ぜひツイッターから意見をお寄せください。
それでは、意見交換に先立ち、黒岩知事から挨拶を申し上げます。

知事

皆さんこんにちは。神奈川県知事の黒岩祐治です。今日はご参加いただきまして誠にありがとうございます。黒岩祐治と当事者とのオンライン対話ということなのですけども。
これ実は、この間の選挙の時に実際ちょっとやってみたんですね。10のテーマに分かれて、それぞれを当事者の皆さんと直接こんなふうにしてお話をしたんですね。
これ非常に有意義だったんですね。実はそこでいただいた様々なテーマも、当選した後すぐに、実現しようというものは、現在作業進めているところです。

ですから今日は生の皆さん声、ぜひ、どんどんいただきたいと。
今日のテーマが、「当事者目線の障害福祉」。
「当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」は、4月から施行しているのですけども、津久井やまゆり園事件のようなことを二度と起こしちゃいけない。そんな思いで、「当事者目線の障害福祉」をやっていこうということの決意を表明したものなのですけど、このテーマで、皆さんの率直な意見を聞かせていただきたいなと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

神奈川県 情報公開広聴課長とゲストの皆様

それでは参加者の皆様のご紹介をさせていただきます。こちらからお名前を紹介させていただきますので、一言短く、ご挨拶をいただければと思います。
まず、施設従事者の立場から4名の方にご参加いただいております。

1「社会福祉法人横須賀たんぽぽの郷 わたげ」の後藤博行様です。
横須賀たんぽぽの郷の後藤です。わたげという所の施設長をしております。よろしくお願いいたします。

2「社会福祉法人すぎな会 すぎな会愛育寮」の川合明子様です。
こんにちは。初めまして、厚木にあります、すぎな会愛育寮の川合明子と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

3「社会福祉法人育桜福祉会 桜の風」の元施設長で、法人事務局総務課長の佐野良様です。
こんにちは。社会福祉法人育桜福祉会法人本部におります佐野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

4「社会福祉法人みなと舎 ライフゆう」の森下浩明様です。
はい、横須賀にあります、社会福祉法人みなと舎の森下です。本日はよろしくお願いいたします。

続きまして、障がい当事者の立場から、

5「足柄上地区 委託相談支援事業所 相談支援センターりあんピアサポーターフレンズ」の隅田真弘様です。
りあんピアサポーターフレンズの隅田真弘です。今日はよろしくお願いします。

6「神奈川県立中井やまゆり園」に入所されております。小関満様です。
おはようございます。お願いします。

最後に、今回議論のコーディネーター司会進行をお願いしております、

7「神奈川県立保健福祉大学」准教授の在原理恵様です。
はい。皆さんこんにちは。在原理恵と申します。
県立保健福祉大学で教員をしております。今日は本当にご一緒させていただいてありがとうございます。
皆さんのお話を伺って、当事者の立場に立つことを大事に、当事者目線に立つことを大事にしながら、共生社会を作っていくにはどうすればいいのかなということを考える時間にできればいいなと思っています。
どうぞよろしくお願いします。

神奈川県 情報公開広聴課長

それでは意見交換に移ります。本日は三つのテーマで対話を行います。対話ごとに参加者の方からお話をいただいた後、知事からコメントし、質疑を行う流れとさせていただきます。
それでは、司会進行を、在原様にお願いしたいと思います。在原様よろしくお願いいたします。

司会(在原様)と各施設・事業所の皆様(4名)

はい。それではここから進行役をさせていただきたいと思います。
今日は三つのパートに分かれておりますけれども、まず最初のパートからいきたいと思います。
最初は、各施設、事業所での取組みということで、4ヶ所の4人の方からお話を伺っていきます。
まず最初に後藤さんからお願いします。

後藤様

それでは、社会福祉法人横須賀たんぽぽの郷わたげの取組みを後藤からお話させていただきます。
私ども、わたげは、通所の生活介護事業所ということでございまして、その多くの方ほとんどの方が、自閉症という診断を受けた方たちに利用していただいております。

そういったこともございまして、支援の中で、大切にしていることは、自閉症を伴う人たちが、できる限り自立して、地域で豊かに暮らしていくということを支援するということを、支援の中では大切にして27年間これまで支援を展開してまいりました。
利用者に提供している主な活動は、工場からの受注の仕事を受注製作になりますが、例えば、ねじを二つ袋詰めにしてホチキス止めにするとかですね、あるいはルアーの仕事で、魚を釣るルアーを組み立ててパッケージングすると。
そういった仕事を提供しております。

利用していただいている方々の得意なことを通して、あるいはできることを通してですね、社会に貢献する場を提供したいと。そういう意図がございまして、受注の仕事を提供し、初めと終わりがわかる、出来栄えがはっきりしている、そういった得意なものを通して社会に貢献していただく、そういった場を提供しております。

そういった支援の中で、とても大切にしていることは、ここに提示してありますとおり、必要とする人に、必要とする場で、必要とするサービスを、というところを支援の要としております。
例えば、わたげでいろんな取組みをやって、わたげでできたということがたくさんあるわけです。
それをただ単に家族にお伝えして、「こういう形でやってみてください」、「おうちでもできるはずです」とか、あるいは、「ヘルパーさんとこういう形でやってください」と。「家族で外出したときに、こういうふうにやってみてください」というふうに提供すると、場所と人が変わってしまうことで、なかなか利用者さんが力を発揮できない。自閉症の方たちが本来ある力を発揮できないということが多々見受けられます。

実感としてそうすると、なかなか地域で暮らすということが、豊かになっていきにくいんではないか、こういう思いの中で、やっぱり必要としてる人に必要とする場所に行って、必要とするサービスを届けたいんだという思いで、私どもはこれまで支援をやってまいりました。
そういうふうにどこででも力を出すということが苦手な利用者さんたちですので、お店でチョコレートを買いたいということであればそのお店に行って、わたげで練習した手順を使って、お店でチョコレートが買えるように、あるいは家でケーキがつくれるように、そういったことを、実際にご家庭に伺って、お店に一緒に行って、その場でできるようにする。

そうすることで、少しでもその生活が豊かになっていくことにつながればいいな、そんな思いで支援をしてまいりました。
施設で落ち着いて過ごすということは、とても大切なことなんですが、そこは私たちはあくまでも出発点として捉えまして、このわたげでできたことが、一人ひとりの地域での生活にどういうふうにつながっていくのか、どういうふうに活かされていくのか、どう豊かな暮らしにつながっていくのかっていう視点をですね、常に持ちながら、施設とこの地域での暮らしということをですね、つなげて考えながら支援を展開しております。

メインの仕事では受注の仕事もあるのですが、ここにまた個別のニーズがございます。先ほども言いましたけれども、図書館で本が自分で借りれるようになりたいとか、あるいは、好きなチョコレートを店で買いたいとか、そういった個々のニーズに基づいて、また個別に展開をしていく。
お一人おひとりの得意なことできることを生かして、そういったことが実現できるように、わたげという施設で練習し、ゴールはおうちでできるようにすること、あるいは家庭でケーキが一人でできるようにすることっていうふうに設定した時に、実際にその場に行って、ご自分が達成できるようにサポートをしてまいります。

そういう意味では施設から地域に、その方を理解していただくようにつなぐ支援であったり、家庭にその方の持っている力を引き継いでいく支援だったり、そういうつなぐ支援を大切にして支援を行っています。以上です。

司会(在原様)

ありがとうございました。生活介護という事業を通所の事業なのですけれども生活介護の場にとどまらずに、いろんなその人の暮らしの広がりというか暮らし全体のことを見据えて、支援なさっているのがよく伝わりました。ありがとうございました。
では次にいきます。川合さんお願いします。

川合様

はい。
それではまず最初に「すぎな会」を簡単に紹介させていただきたいと思います。
すぎな会は今から61年前に障がいのあるお子さんを持ったご家族が集まって学校卒業した後の暮らしの場であるとか、働く場を作りたいという思いから、東京の高輪で、無認可の施設として始まりました。その2年後には、厚木の地に引っ越してまいりました。

いただきました御題が当事者目線の支援を考えるとき、これまで法人が取り組んできた様々なエピソードを思い起こすことができます。
例えば利用者さんの願いや思いですね。まず働きたい。一人で暮らしたい。家族と暮らしたい。結婚したい。様々ないろんな思いがありました。
その願いや思いは実現させていった方も、この61年の歴史の中では、多くの方がいらっしゃいます。
その方々が、すぎな会で行う行事なんかにいらっしゃることがよくあるのですけれども、その時には、私たち、私の世代でもまだもう知らない。利用者さんも含めてですけれども、当時の思い出話をたくさんしてくださいます。そういった交流も今もあります。

一方で、長く施設の中で暮らしてらっしゃる方がいるのもこれも事実です。
そういった中で、地域で暮らす方が、今後高齢になって介護が必要になった場合の暮らし、それを考える視点も述べさせていただきたいと思います。

例えば今地域で暮らしている方が、今の障害サービスにプラスして介護サービスを入れた場合でもやはり足りない。もう少しほしいという方もいらっしゃるかもしれません。
一つのエピソードとしてはすぎな会で入所して、そのあと他の法人のグループホームに行きたいと言って旅立って行かれた方がいるのですけれども、やはりだんだん体が難しくなって、健康面、生活面、いろいろ不安があって、再び相談がありました。
やっぱり知った顔ぶれで知った職員がいる。古巣と言っていいのかどうかわかりません、これは。またすぎなに戻りたいよと言って戻ってこられる方もいらっしゃるというのもありました。

そういったことを改めて考えると、その人なりの暮らし方に合わせて、暮らしの場を選択するっていうことがやっぱり大切なんだなと。そんなふうに考えます。入所施設、通過型というふうに言われますけれども、地域にある社会資源の一つであって、やはりライフサイクルに合わせて利用するものでもあるなというふうに考えます。
望む暮らしを選択する観点からも、循環型の支援。これは肝要ではないかなというふうに考えます。

今ちょうどこの地域は田んぼが、もうとても青々として、美しい。風がすごく気持ちいい。こんな季節ですけれども、グループホームに暮らす方々は本当に早朝早く6時過ぎぐらいから、お散歩に出られる方も結構いらっしゃるんですね。
そうすると、地域の方とご挨拶されている。そんなのを見ると、本当に地域に暮らす人なんだなとつくづく思います。
合わせて、入所しておる方も同じなんですね。お散歩に行かれたり、図書館に本を借りに行ったり、CDを借りに行ったり、釣りに行ったり、いろいろされています。
やっぱりこの近所の方から声をかけられ、ご本人も自然に挨拶されます。そんなのを見ると、やはり入所施設であっても、地域の中の住民の一人なんだなというふうに考える、とてもいい瞬間を今でも感じることがあります。

日頃の取組みとしては大変簡単ですが、私からの報告は以上です。ありがとうございました。

司会(在原様)

ありがとうございました。暮らし方を、自分で決めていくっていうことで選んで、グループホームに移られたり、いろいろ入所施設で暮らし続けたり、いろいろある中でもちょっと印象に残ったのが、古巣とおっしゃっていたかもしれませんがなんかこれ、実家みたいな何かちょっと違うかもしれませんがその人とのつながりで戻ってくるみたいな、そういう人と人のつながりというのが、そのサービスとか事業とかを何か越えて、大事なものとしてあるかなというふうに聞かせていただきました。
ありがとうございました。

では、3人目の佐野さんお願いします。

佐野様

それでは改めまして、よろしくお願いいたします。育桜福祉会の佐野と申します。
簡単な資料を用意いたしましたので、画面と合わせてお聞きいただければと思います。
まず、社会福祉法人育桜福祉会という法人は川崎市で障害福祉に特化して、事業を行っている法人となります。

現在私自身は法人本部事務局で仕事をしており、主に人材の確保ですとか人材育成を担っておるところですが、桜の風という入所施設で、その開設の準備から約10年間、施設長として仕事をしてきております。そういった背景もあり、今回このような機会にお招きいただけたのかなというふうに考えております。

桜の風の紹介をして参りますが、桜の風は平成25年に開設した川崎市の指定管理の入所施設です。
実は条例で定められた正式な名称は画面にあるように、川崎市井田重度障害者等生活施設というのが、施設の正式名称になります。
ですがこれ準備の段階で、まさに当事者目線じゃないのですけれども、この施設名を言える利用者の方がどれぐらいいるだろうかと、なかなか馴染まないんじゃないかという議論をしまして、利用者の方にとっては難しすぎる名前なので、桜の風という通称を作りまして、そのような名前でご覧の通り看板も作り、スタートをしたと。今まではすっかり桜の風という名前が定着しているかなというふうに思います。

スライドをおめくりください。はい。少し具体的な内容に触れてまいります。桜の風は開設の準備段階、平成24年の段階から、通過型の入所施設を標榜してまいりました。
当時は実はちょっと笑われたこともありまして、そんなことを言っても受け入れ先がなかなかないねということを厳しいご意見もたくさんいただきました。
ですが10年経過をして、今現在は通過型という言い方を改めて地域生活支援型というようにしています。
これは、この地域移行を通じて通過していく、この一方向性のイメージではなくて、地域の社会資源の一つとして、地域での暮らしを支える機能、そのような考え方を浸透させたいという思いから、この地域生活支援型という言い方にいたしました。

入所施設は、自らの希望で、自分の意思で入所される方っていうのはほとんどおりませんで、地域での暮らしにおいて様々な暮らしの上での、困難さによってやむなく選択されて入所されてくるといった方がほとんどです。
重度の障がいがある方や、強度行動障がいと言われるような状態像にある方は、
どうしても我々支援者は、難しさであったり、地域では難しいんじゃないか、できないんじゃないかというような、できない理由を探してしまい、それに目を奪われてしまいがちになるのですが、桜の風では、どんな工夫があればチャレンジできるだろうか、こんなことやれそうだねとか、こんなことできそうだからちょっと工夫してやってみようなんていうふうに、可能性を見いだす支援、これを重視して取り組んでいる。そんなところになります。

この可能性のアセスメントが、支援の組み立てにつながって、こんなことをやれそうだけどちょっと工夫が必要だから、ちょっとここを少しサポートしてトライしてみようと、そんなアセスメントから支援の組み立てがつながり、地域でのその人らしい暮らしをイメージすることにつながっています。

当事者目線で考えてみると、もともと望んだ入所施設ではない方が多くいらっしゃいます。地域移行という言葉を、どこか施設から出るための取組みというふうに考えてしまうのではなく、施設側、支援者目線で言うと、どう地域に出すかみたいな、そんな発想で考えるのではなく、これからのその人の暮らしをもう一度、地域の中でどうデザインできるだろうか。地域生活のリデザインなんていう言葉で書きましたけれども、これからの暮らしにこの人の地域での暮らしを想像したときに、どんな感覚でどんな支援ができるだろうかということを考えていくことが大切だと思っています。
難しさもたくさんありますし上手くいかないこともたくさんですが、一つの入所施設のあり方を提案するようなチャレンジとして、当事者目線の障害福祉の実践だと考え、努力しているところです。
以上です。

司会(在原様)

ありがとうございました。
可能性に目を向ける、そして一緒に地域での暮らしを作っていくっていう、そういう考え方で関わっていけると、きっともちろん、当事者の方が生き生きしてくるだろうなと思いますし、支援者もきっと生き生きできそうな気がいたしました。ありがとうございます。
それでは4番目で、森下さんお願いします。

森下様

よろしくお願いいたします。社会福祉法人みなと舎の森下といいます。
みなと舎は1997年に法人を設立し、1998年から障害福祉事業を横須賀で行っています。みなと舎では利用者をメンバーさんとお呼びし、職員はスタッフと呼び合っています。

みなと舎はメンバーさんの存在に後押しされた親御さんたちの思いによって作られました。特に、当時の養護学校を卒業しても、障がいの重さから日中通えるところが、横須賀にはありませんでした。そこで、どんなに障がいが重くても、街の中で人々の中で普通に暮らしていくをテーマに、通所施設、「ゆう」を始めます。

メンバーさんの障害状況は、重度重複障がい、あるいは重症心身障がいと言われ、多くの専門家や支援力が必要とされ、全国的には入所施設中心の時代でした。
また、当時の措置費では、十分な職員や専門職の確保が難しい中、地域住民の参加を求めました。
子育て経験のある方、ボランティア経験のある方、もちろんこの業界が初めての方など、非常勤スタッフを中心に多くのスタッフを集め、日中に1対1に近いメンバーさんとの関わりの場を作りました。

福祉事業を行うとき、職員の質と職員の量はいつも重要な要素になりますが、明らかにこの25年間の実践の中でいえることは、職員の量の重要性です。量で質を補うことはできても、質は量で補うことが難しいということです。
メンバーさんとじっくり関わることで、メンバーさんとの信頼関係を作り、職員の質を上げることができました。つまり、メンバーさんとの関わりの中から多くを学びました。それは、メンバーさんの生きる力も引き出すことができました。
この関係性を大切にした取り組みは、その後の福祉職による医療的ケアの実践にもつながります。

地域で暮らし続けるには、毎日の連続したケアが必要です。それは、一つの専門性だけで担いきれないということです。施設看護師や嘱託医と理解、協力を得て、そして家族と一緒に考える場を作り、多くの福祉職が喀痰吸引や経管栄養の実践を学びました。そこで重視したことは、メンバーさんとの個別性、関係性、継続性です。
こうした「ゆう」から始まった事業は、社会参加と個別支援を重視したヘルパー事業につながり、家族から離れた生活を場としてグループホームやショートステイの事業へ展開されていきます。

重度重複障がいがあっても、グループホームで暮らす。医療的ケアがあっても、親から離れての生活にチャレンジする。電車バスを利用し、様々なところに出かける。実は一番遠く出かけたところはハワイまで出かけました。

2014年に「ライフゆう」という医療型の入所施設を立ち上げます。医療を必要としながらも、家族から自立していく生活の場として作りました。
当時、親御さんの説明会で、これから作る「ライフゆう」は親が面倒を見られなくなったから預けるところではありません。どんなに障がいが重い方であっても、家族からの自立はあります。

「ライフゆう」はそのような場にしていきたいと説明しました。現在もメンバーさんと、自立と社会参加を大切にし、街の中で、人々の中で暮らしていく。その思いと実践は形を変えながら継続しています。
私たちは地域の多くの方々との関わりや交流、そして、メンバーさんの存在から発信されていく、メンバーさんの人生、その豊かさを求めること。メンバーさんの人生をいかにその存在に価値があるか。それを明らかにしていくことが、私たちに求められる仕事であり、当事者目線を大切にすることに他ならないと今思っています。
メンバーさん中心というメンバーさんに導かれながら、私どもの法人が立ち上がって今にいるということで、常にやはりメンバーさんが羅針盤になっていくんだという思いで事業を展開しております。
以上です。

司会(在原様)

ありがとうございました。
大切なことがいっぱい詰まっているお話だったと思うのですが、やっぱり当事者の方とじっくり関われる体制づくりをして、そうやって関わる中から学んでいって質を上げていったというところのお話がとても印象に残りました。
その体制づくりをどうやっていけるかということ、本当に知恵を出し合っていきたいなと思いました。4人の方ありがとうございました。
それでは4人のお話を聞いていただいて、黒岩知事いかがでしょうか。

知事

皆さん本当に何かすでに当事者目線の障害福祉を実践されているような感じがして、非常に心強い感じがしました。
早速ツイートもありましてね、「現場の話をお聞きしたいです。また障害者の方をどのように支援しているのか、どんな苦労をされているのか。現場の生の声を聞きたいと思っています」という。
今お伺いして、ちょっと私の方からご質問したいと思うのですけれども、私はこの「当事者目線の障害福祉」と、なぜ「当事者目線」と言ったのかって言ったときにですね。

親の存在っていうのはどうなのかなというところなのですね。実は津久井やまゆり園でも、そこからもともと原点であったわけですけども、皆さんの声を聞くと言ったときに、まずはですね、家族会が大きな発言をされるわけですね。
まずそこに引っ張られていくというか、その利用者の皆さんの生の声を聞こうとしてもなかなか聞けないなという感じが実はあったと思っていたんです。当時はですね。
実はそうじゃなかったのだけども、そのときに皆さんがその「当事者目線の障害福祉」を実現しようとされている中で、その親御さんとの関係ですね、今、最後、森下さんが家族からの自立という表現をされましたね。家族からの自立という表現したときに、その家族はどう思うのかというか、その家族の理解がないとなかなかそれは前いかないですね。そういった辺り、ご苦労というのはあるでしょうか。家族との関係について皆さんちょっとお伺いをしたいと思います。

まず、森下さんお願いします。

森下様

はい、知事ありがとうございました。家族との関係というところで、私どもの施設を利用している方は重度重複、重症心身ということで、ある意味、全ての人生を他人に委ねながら日常を生きていると言っても過言ではない方々なんですね。
そうすると、家族の皆さんは、その自分の子供たちの自立していく姿とか、そこに思いをはせていくっていう実践に、やはり日常的に触れているっていうことがあまりないんです。
ということは、家族に何もないところでというよりは、やっぱり家族に寄り添いながらでも事業として、あるいは、実践としてやっていくんだという我々の宣言であったり決意であったり、その具体的なラフスケッチ、絵柄というものをやっぱり出しながら一緒に作っていくといえば、価値はどうしても必要かなと思います。
ですから、最初からすべて家族が描いているわけではなくて、我々はそれを描いていく役割をやっぱり担わなければいけない。それが先ほど言ったように、ここは自立の場ですと私は言い切ったんです。そういうところですよって。
家族からいつまでも預かるところじゃないんですっていうことを言い切ったことによって、なんとなく家族の皆さんは少し近寄ってくれたかなっていう印象はありました。

知事

佐野さんはいかがですか。その家族のことについて、その通過型よりも地域生活支援型と非常に良い言葉だなと思ってメモしておきましたけども。

佐野様

ありがとうございます。やはり最初通過型と言って、まあ地域生活支援型と言っておりますが、ご家族入所されてくる際のご家族の状況としては、もうさんざん長いこと、大変なご苦労を続けてこられて、やっと入れた入所施設というそんな心境で入所されて来られます。ですので、実際に地域移行やグループホームの見学に行きましょうというだけでも、ご家族はすごく抵抗感があったり、心配されるということが非常に多く、実際にグループホームが見つかってチャレンジできそうなときにもご家族がどうしても心配だということで、強くご心配のご意見いただくような場面もたくさんあります。
これは桜の風で考えていたことはご家族が地域移行に反対をしているのではなくて、地域で暮らしていたときのようなたくさんの苦労や心配や、そういった生活に戻ってしまうのではないかという不安に対する抵抗感なんだろうというふうに考えております。

ですので、その抵抗感をいかに和らげて安心して、もしかして失敗するかもしれないけど、そのときはまた戻っておいでよと。そんなサポートを整えながら、チャレンジをしていくという、そんな取組みをしています。
実際にグループホームに行って世話人さんにかみついちゃって、その日の夜に戻ってきたなんていうエピソードもたくさんあるのですけれども、そういったことを繰り返しながら地域で暮らすっていうことを親御さんも一緒に、イメージしていっていただくような、そんな取組みをしております。
以上です。

知事

はい、ありがとうございます。川合さん、いかがですか。

川合様

はい。ありがとうございます。最初に申し上げましたように、すぎな会は家族が中心になって作った施設ではありますけれども、最初から言われていたことは、やはりこの人たちがどうやってこの先、生きていくのかというところです。
家族の思いとしては、やはり最初に作ったときの石碑があるのですけれども、楽園にしたいというような言葉も碑の中にはあるんですけれども、ここで一生暮らすということではないということは、ご家族も十分承知だったとは思います。
実際にグループホームを立ち上げて、平成21年にたくさん作っていたのですけれども、そのときにご本人は、やはりもう外で暮らしたい、施設を出て暮らしたいという方がたくさんおりました。

その思いをご家族と何度も何度も話をしていく。ご家族の心配というのは、やはり佐野さんもおっしゃっていましたけれども、この後失敗しちゃったらどうなるんだろう、その後この人はどこで生きていくんだろうという思いですね。
けれども、あの入所施設があるという安心感も当然あったのかもしれません。でも、失敗にするのではなくて、繰り返し繰り返し必要に応じて、必要なその人に合った形で暮らしを作っていく。そのときに一旦入所施設を使うってこともあるでしょう。
また戻るということもあるでしょう。暮らしの仕方というのはいろいろだろう。そんなこともご家族と話をして、本当に長く入所されている方がどんどん地域移行されたっていうのが、これが現実としてあるところです。
ご家族の理解はやはり、話をちゃんとしていく、理解していただけるように話をしていくということが、大切なのだなというふうに思っております。

知事

はい、ありがとうございます。後藤さんいかがですか。

後藤様

はい。私どもは通所の事業所二つでグループホームが一つということで、通所事業を中心にというところでありますが、ご家族との関係はかなり密に連絡を取ったりですね、情報交換をしたりという形で、きめ細かくやらせていただいてるという状況です。

やはり子どもの頃から一番近くに、本当に生まれたときから一番近くに寄り添って育ててこられた、そういう親御さんたちでありますので、本人の成育過程で、大事にしてきたこととか、大切にしてきた思いとか、そういったことはやはり親御さんたちを通してしか私どもは知りえませんし、今日どうしてこの方が調子が悪いのかとか、そういったこともご家庭に伺ったりしながら、あるいは、施設での様子を見ながら考えながら、今日どういう支援をすればいいのか。

どうすればこの方が満足していただけるのかというようなことも考えながらやっていくっていうことを基本にしています。そういう意味では、よかったことも悪かったこともご家族と共有しながら、ざっくばらんにコミュニケーションをとりながら、支援の方は進めていくと。
そういった中で、親御さんの考え、今後の不安とかいろんなものも当然あると思いますので、そういったことをお伺いしながら、一緒に今後のことを考え、進んでいくというようなスタンスで、情報をきめ細かくやりとりしながら、今までは支援を展開してきております。

知事

ありがとうございます。

司会(在原様)

はい。ありがとうございます。それでは、次のテーマに移りたいと思います。お待たせしました。次のテーマは当事者の立場からということで、隅田さんと小関さんに伺いますが、まずは隅田さんからお話をお願いします。

隅田様

りあんピアサポーターフレンズの隅田正弘です。今日はよろしくお願いします。ちょっと作文を書きましたので、聞いていただけたら幸いです。よろしくお願いします。では、読ませていただきます。

「地域で暮らす前の状況、思い、考え」
皆さんが障がい者と聞いてどう思われますか。
世の中の人に理解してくれる人が増え、仕事を含め、障がい者も楽しく、心に傷を負わない生活が送れる日が来て欲しいと思います。僕には障がいがあります。
僕は、自分の障がいに納得できません。知的障害とは何なのか。その言葉が嫌いです。僕はそのせいで悩み苦しんできました。その言葉がコンプレックスになっています。でもその言葉があるから、頑張りたい、克服したいという感情がわいてきます。

もう一つ。普通って。普通とは何なのかわかりません。普通とは、家庭が安定していて、勉強ができて、とか思うけれども、それが本当に普通なのか。
自己満足や、贅沢ではないかと思います。今まで普通という言葉を追っかけてきました。

僕は、小学校2年生から高校3年生まで、家庭と離れた生活を送ってきました。
児童養護施設でずっと暮らし、自分の意思とは違った環境の中で生活してきました。
なので、ここから親に敷かれた人生ではなく、自分の決める、自分で切り開く人生をこれからも歩んでいきます。いきたいです。ですが、意思決定支援は、相談をたくさんした中で、最終的に自分で決めたいです。
施設生活が長いと、自分の考えを話すことが難しい状況でした。
同じ思いの仲間やもっとつらい思いをしている人が多いので、自分の思い、自分の気持ちを出しづらかったです。
その後、訓練施設、グループホームで生活し、現在は、一人暮らしをしています。
一人暮らしをしたいと思ってから実現するまでに15年かかってしまいました。
グループホームも含め、施設という言葉から離れたかったです。

第1のハードルは貯金です。第2のハードルはメンタルです。第3のハードルは仕事です。
仕事は長続きせず、退職を繰り返してしまいました。スーパーでの仕事は、10年続きました。目標の金額が貯まったので、グループホームで一人暮らしの練習をしました。課題は、部屋の片付けと料理と金銭管理でした。
以上です。

司会(在原様)

はい、ありがとうございました。まずは一人暮らしに至る前までのことと、いろいろ自分のこれまでずっと思ってらっしゃったお気持ちを共有していただきました。なんかすごくいろんな壁とかハードルを感じて、頑張ってらっしゃったのがすごく伝わりました。また後のパートのところで一人暮らししてからの話もあるので、聞かせてください。ありがとうございました。
それでは次に小関さんお願いします。

小関様

こんにちは。私の名前は小関満です。49歳です。
神奈川県立中井やまゆり園で暮らしています。わたしは去年から、コープリサイクルセンターで働いています。週に5日、中井やまゆり園から電車に乗って通勤しています。
コープでは、チラシの仕分けや、キクラゲの収穫などをしています。仕事は大変なこともありますが、職員に教えてもらいながら仲間と一緒に頑張っています。
コープに通うようになって、疲れることもあるけど充実しています。返事、挨拶をしっかりすること、仕事中はイライラしないことを教わっています。
毎月15日がお給料日です。お給料をもらえることは嬉しいです。今度、お給料で「キングオージャー」のおもちゃとブルーレイを買いたいです。
こちらが今住んでいる私の部屋です。前はあまり物を置いていなかったのですが、最近は好きなものを置いています。このテレビとDVDは、お給料で買いました。大切に使っています。
入所施設にいても、外で仕事をしながら暮らしています。
中井やまゆり園は、人がたくさんいます。人がたくさんいるのはいいこともありますが、うるさい人がいたり、叩く人がいるので、がまんすることも多いです。これからもお仕事頑張ります。ありがとうございました。

司会(在原様)

小関さんありがとうございました。
お仕事を頑張ってらっしゃる様子とか、お部屋にいろいろ好きなものを置かれている様子とか、映像を見せていただいたのでよく伝わってきました。ありがとうございました。
そうしましたらお2人の方のお話伺って、黒岩知事いかがでしょうか。

知事

いや小関さんすごいですねえ。すごいですね。びっくりしましたよ。お仕事どうですか、楽しいですか。

小関様

楽しいです。

知事

楽しいですか。何か表情伝わってきましたね。

小関様

楽しいです、大変ですが、これからも頑張ります。

知事

頑張ってください。コープリサイクルセンターの職員とはどんな話をされるのですか。

小関様

好きなご飯のお話をします。お昼はコンビニで、好きなパスタ弁当を買いました。

知事

生活の中でのお楽しみは何ですか。

小関様

お部屋でテレビを見ることが好きです。お給料で好きなものを買うことも好きです。外泊に行くことも好きです。この前は江ノ島水族館に連れて行ってもらいました。

知事

いやあ素晴らしい。自分で働いて給料稼いで、もらって、それで自分の好きなものを買って、そしてそれで楽しんでいるということですよね。素晴らしいですね。うん。感動しましたよ。頑張ってくださいね。

小関様

頑張ります、ありがとうございました。

知事

隅田さん、さっきのお話は、ものすごく重要なことおっしゃっていましたよね。胸にぐんぐん迫ってきましたね。
普通とは何ですかって、これ答えられる人いるでしょうかね。いやあ、なんかとっても考えさせられましたね。何を普通というのか、逆に言うと障がいって何なのか。
実は私もですね、この「当事者目線の障害福祉」という、これをずっと作り上げてく中で、障がい当事者の皆さんと徹底的に議論を重ねてきたのです。
そのときにだんだんわかんなくなってきたのは、障がいって何のことを言っているのかなというのがわからなくなってきてしまう。
いや本当に、その障がいというのは、そのご本人が持っているのではなくて、周りが障がいを作っているというか、そんなことじゃないかなと思うのですけども。
障がいも何も、全部とっぱらっていくような世の中、まさに「ともに生きる社会」を作っていくためには、どういうことが大事ですかね。どう思われますか、隅田さん。音声が入っていないですよ。どうぞ。

隅田様

そうですね、ずっと。生活してきてですね、街の中で障がいの方、障がいの方っていう言葉を聞くと、障害物とかそういう言葉でそういう言葉はよく街の中で聞きますけど、やっぱりそれは人間である人には当てはまらないんじゃないかって思ったりもするんですけども。自分はやはり小さい頃から妹がいるのですけども、健常者の妹がいて、その上に立ちたいというのは違いますが、同じ風の立場でありたいなと思っていて。
でも、やっぱり、言葉にされるのは、お兄ちゃんだからしっかりしなさいとか。あとは何でしょう。
障がい者なんだからそんなことできないんじゃないのという風潮が世間の中にあるので、そこを変えたいと思って。
自分はどんどん向上心が湧いてきてですね、やっぱりこれは悔しいと思って、それを原動力にして今まで生活してきました。
すみませんちょっと長くなってしまってすいません。

知事

いやあもう素晴らしいですよ。素晴らしい。自分の課題、夢はこんなふうにしたいんだと思って、その壁をどんどん自分で乗り越えていこうという、すごい強い意思。そして、その実践。実際そういうふうにそこまで来られているということは、なんかすごいなと思いましたね。
素晴らしい。在原さん、本当に感動的ですよね。

司会(在原様)

本当ですね、その強さを感じました。そうしましたら、3番目のテーマにちょっと時間が少なくなってきてしまったのですけど、また隅田さんの時間もまだありますのでね、3番目に行きたいと思います。
最後なので、「当事者目線の障害福祉」を実現するためにはというふうにテーマを置きましたけれども、後藤さんと隅田さんから、また少しお話をいただいて、最後、時間を許す限りディスカッションして終わりたいと思っているので、まず後藤さんお願いします。

後藤様

はい、それではお話しさせていただきます。
「当事者目線の障害福祉」を実現するにはということで、まさにこれまで私どもも27年間ですね、こういうふうな福祉でありたいというふうに日々研鑽を重ねている途中でありまして、私からこうあるべきというようなことは決して申し上げられないのですが、エピソードを通してですね、私どもが考えていることを少しお話できればと思います。
ここの左側ですね。この絵がございますが、これは私どもの利用者さんが毎日日課のように一生懸命クレヨンで書き溜めている絵です。ビデオの気に入ったシーンを止めて、そこを切り取って書くという、独特の個性的な、とっても惹かれる絵なのですが、とにかく絵を書くことが好きという利用者さんです。

このお宅から夕方5時過ぎですね。もう当然着いているだろう時間に電話が入りまして、「後藤さん、うちの子がクレヨン1万円分を行きつけの文房具屋さんから持ってきちゃった。」っていう親御さんからのお話でした。

その時に、「わかりました、今すぐ行くからね」ということで、職員と駆けつけようというときに私どもが考えたのは、文房具屋さんの店主さんの顔を写真に撮らせてもらって、本人にとりあえず返そうという説得をしようということを考えて、写真を撮ってご自宅に伺いました。
返そうねということで、とりあえず最初は頑なにクレヨンを放してくれなかったんですが、30分ほどしたらやっと本人の表情が緩んで返してくれました。

通常ですとこれで返せてよかったねという話になるのかもしれませんが、やはり私たち支援者としてはこれでは足りないのだろうなっていうふうに考えました。
どうしてこの方がそういう行動をとったのかということ、そこにやっぱり寄り添わなければ支援者としては足りないのではないか。そういう意味で、私たちはどうしてなんだろう、この持って帰ってきたというその表面上の行動にとらわれずに、背景に何があったんだろう。

結局はものすごく絵が好きで、なくなったクレヨンの色を補充して絵を描きたかった。その強い思いがあったっていうことだと思います。
そういう意味では、やはり表面上の行動だけで対応するということではなくて、その方の背景にある思い、そういったことを読み取る力、汲み取る力をもっともっと磨いてですね、利用者さんの思いに、いろんな記録やデータから寄り添えるようになりたいということが一つと。

あと、やはり買いたいんだよねという思いをですね。描きたいんだよねというときにクレヨンを買うということをですね、一緒に練習しようということになるわけですが、僕らが買う、一般の人が買うというイメージでは買えないわけですね。
けれども、彼には持っている力があって、それをどうにかして、なんとか買えないかということで、この右側にあるボードなんですが、彼が買いたい色について、本数とか何色かというのを伺って、事前に職員がこれを準備して、これボードになっていまして、1本1本が落ちないように実物が載せられるようになっているんですね。
それを文房具屋で1本1本乗せて、買わせてもらえないか、これに必要なお金は必ず持ってきますのでということでお店と交渉して、本人がこういう買い方をさせてほしい。そうすると本人もすごく楽しみにして日々が過ごせるし、消費者として、一市民としてこの店も安心して利用ができるんだということで交渉させていただいて、こういうやり方で、このボードに乗せたままレジにこのボートと財布を出すということで買わせていただくということになりました。

このときにやはり、障がい者の方、うちの利用者だけが頑張るのではなくて、地域の目線も利用者に合わせてもらえないかっていう話し合いをしていく交渉をしていく。そういうことで、その一人の方が暮らしやすくなる。そういう意味では、狭い意味ではそのお店、あるいは、地域の目線を変えてもらう。障がい者に合わせてもらう、そういうつなぐ支援というのが、私どもとしては必要なんじゃないか、ということですね。
あと、この事例のように、夕方お母さんが連絡して相談するということを受けとめるという、そういう何かの時に相談する、受け止めるというところの場所がやはりあって、とりあえず私どもはワンストップでいろんなご相談を受け止めて、そこからどう連携するかとか、そういうことを考えられる施設でありたい。
そういうことを実践しながら、どんどん研鑽を積み重ねながら、当事者目線の障害者福祉が実現できればいいなというふうに考えています。

司会(在原様)

はい、ありがとうございました。ちょっと時間がなくなってしまいましたが、隅田さんの方も用意していただいたものもあるので、短めにと言っても難しいですよね。お願いしてもよろしいですか隅田さん。

隅田様

どこら辺を強調した方がいいですか。

司会(在原様)

なんかパワーポイントを作ってくださったもので、お料理の紹介していただきましょうか。お料理にはまっていらっしゃるのですよね、一人暮らしで。

隅田様

そこの部分を読ませていただきます。
今はヘルパーさん、保佐人さん、看護師さん、相談員さん、そして何と言っても精神のピアサポーターをやっている友人など多くの人に支えてもらっています。特に、友人が心の支えになっています。
隣の酒屋さんは、怪我をしたときに絆創膏をくれたり、困ったときには助けられています。
僕は料理をすることが好きで、ヘルパーさんにもいろいろ教えてもらっています。スマホのアプリを見ながら、自分でも作っています。最近は世界の料理にはまっていて、ヘルパーさんにはボルシチを作りたいと言ったら、ヘルパーさんはこんな小難しいものをつくれないよと言いながらも一緒に作ってくれました。楽しいです。
ですが、一人暮らしは静かな環境にいるので、グループホームと違って困ったときや気分が落ち込んでしまったときに、同じ建物に知らない人が住んでいるので相談できる人がいません。寂しい気持ちもあります。だから、たくさんの人に手伝ってもらうことが大切だと思っています。
以上です。

司会(在原様)

はい、ありがとうございました。
そうしましたら、時間がなくなってしまったので残念なのですが、ここで黒岩知事に総括をいただいて終わりたいと思います。お願いします。

知事

ツイートきていますよ、「障がい当事者の方から直接お話しを聞ける貴重な機会でした。ありがとうございます。小関さん、お仕事大変かと思いますが、応援しています。」だって、

小関様

頑張ります。

知事

応援していますとメッセージ、きていますよ。

小関様

頑張りますって言いたいです。

知事

素晴らしいですね。いやなんかね、本当にいい話を今日聞けたなと思いましたね。
まさに「当事者目線の障害福祉」と我々言っているけども、いろんな形で工夫しながら実践されている方の生の声は非常に重要だった。それを本当に、これを全国、全県的に広げていくためには一体何が大事なのか。
そういった中で、例えば、家族と一緒になってやっていく体制を作るといったこと、これまたすごく大事なことですよね。例えば、津久井やまゆり園で家族の方から言われたのは、要するに、「全然受け取ってくれる施設がなかった、あっち行ってもダメだ、こっち行ってもダメだって。やっと津久井やまゆり園で受け止めてくれたんだから、あとはもうその中でどんなことがあったか何とかもう言わないでいいじゃないですか。」と、最初に言われたんですよね。
やっぱりそこのところで、この家族と一緒になってこうやっていくっていう形がなかなか取れなかったっていうことが大きなやっぱり原因になっていたのかなということを改めて感じたところがありましたね。
それと、いい言葉を聞いたなと思うのは通過型という言葉じゃなくて、その地域生活移行型、地域生活支援型。この言葉が大事だというのは、なるほどそうだなって。通過すればいいってものではなくて、その出た後に早く通過してくれと言っている気持ちにも聞こえてしまうかもしれませんよね。そうではなくて、地域生活を支え支援してきますよという、そういう形に持ってくことが大事なんだというんですね。なるほどそうだなと思いましたね。そして当事者の皆さんの生の声って、本当になんか勇気づけられ、元気づけられましたね。
要するにさっきもあったけども、クレヨンの話もそうだけども。要するに、実際あった話はですね、僕は当事者の方とずっと対話した中で、24時間部屋に閉じ込められている、これは居室施錠。これは虐待なのですよね。これが今まで平気で続いていたときに、当事者の皆さんの中でこんなことを言った人がいました。

「私もかつて閉じ込められていました。なぜか。暴れたからです。暴れたけども、なぜ私が暴れたのかあのとき聞いてほしかったんです。」こう言われたんですね。だから、本当の思いがあるけど、うまく伝えられないっていうときに思わずこう暴れるような形になってしまって、そしたら押さえつけられ押さえつけられで、部屋に閉じ込められちゃうというか、そういうふうなこともある中で、やっぱりこのコミュニケーションをしっかり取ろうとする、そのやっぱり姿勢というのは、これは家族もそうだしその利用者皆さんとその施設の職員の皆さんもそうだし、地域の皆さんもそうだし、みんなこのコミュニケーションしっかり取れるようなこの大きな輪を作っていくということが必要なんだなっていうことを今日は皆さんから教えていただきました。
どうもありがとうございました。これからもね、なんかこういう会を作っていきたいですね。小関さん、それから隅田さん、頑張ってくださいね。

司会(在原様)

はい。皆様、本当にありがとうございました。それでは、司会をお戻しします。

情報公開広聴課長

ありがとうございました。在原様、進行役を務めていただきまして、ありがとうございました。また、本日参加の皆様、貴重なご意見ありがとうございました。
YouTubeで視聴していただきました皆様、ありがとうございます。本日の様子は、県のホームページに掲載し、 YouTube動画も配信いたします。また、ご意見につきましても受け付けておりますので、
県のホームページにアクセスし、ご意見お寄せください。それでは、これをもちまして第1回黒岩知事と当事者とのオンライン対話を終了いたします。皆様本当にありがとうございました。

知事

ありがとうございました。

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