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更新日:2024年3月29日

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第13回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

平成26年11月13日(木曜)に開催された、第13回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川の実施結果についてご覧いただけます。

概要

第13回対話の広場意見交換風景

テーマ

超高齢社会を乗り越えよう! 第3弾:少子化対策から人口減少社会を考える

日時 平成26年11月13日(木曜) 18時30分から20時
会場 神奈川県庁 本庁舎3階大会議場
参加者数 124 名

実施結果(動画版)

当日の録画映像をご覧いただけます。

※参加者配布資料はこちら[PDFファイル/1.28MB]からダウンロードできます。





  • 実施結果(テキスト版)

司会

皆さん、こんばんは。本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。ただ今から、第13回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」を開催いたします。

“対話の広場”Live神奈川では、会場外からのツイッターによる意見も受け付けております。お寄せいただいたツイッターにつきましては、意見交換の中で随時ご紹介させていただく予定です。

続きまして、本日のゲストの方をご紹介いたします。本日は2名の方にゲストコメンテーターとしてご出席いただいています。

まず、国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 副センター長でいらっしゃいます、齊藤 英和(さいとう ひでかず)様。齊藤様は、生殖医学・不妊治療の専門家で、大学などで加齢による妊娠力の低下や、高齢出産のリスクについての啓発活動もなさっていらっしゃいます。本日は医学的な見地から、「妊娠適齢期を意識したライフプランニングの薦め」についてお話しいただきます。

続きまして、少子化ジャーナリストで作家として多数の著書も出版していらっしゃいます、白河 桃子(しらかわ とうこ)様。白河様は相模女子大学で客員教授を務めていらっしゃいます。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア形成、男女共同参画について研究なさっているほか、婚活ブームの火付け役でもございます。また、齊藤様とともに大学などでボランティア出張授業も行っていらっしゃいます。本日は少子化ジャーナリストとしての専門的な視点から、「女性の活躍と人口減少社会」についてお話しいただきます。

また、お二方には、皆さまとの意見交換にもご参加いただきます。本日はよろしくお願いいたします。それではまず、知事からごあいさつと今回のテーマについてご説明をいたします。

知事

ようこそ神奈川県庁へお越しくださいました。神奈川県知事の黒岩祐治です。

この“対話の広場”というのは、定期的にやっております。私が知事になって3年7ヶ月が経ちました。できる限り県民の皆さんと直接対話をし、生の声を聞きながら、県政にどんどん反映させていきたいということで、こういう場をずっと定期的につくっております。

その都度テーマがあるんですけれども、今年1年は「超高齢社会を乗り越えよう!」というテーマ、これを共通テーマとしています。そして各回ごとのテーマの設定があるわけですけれども、今日はここに書いてありますように「少子化対策から人口減少社会を考える」というテーマです。超高齢社会が圧倒的な勢いで進んでくるという問題もあるのですが、もう一つ、人口がどんどん減少して来るぞという問題も今指摘されているところです。つい先日でありますけれども、元総務大臣の増田さんが中心となってまとめられた、これからの人口減少社会は大変なことになるぞという話。今の市町村、神奈川県の市町村でも、消滅するところが出てくる。人が誰もいなくなってしまうということだってあり得ると言われて、みんなこういう未来を見てぞっとしているんです。さあ、どんどん人口が減ってくる中でどうするのか。いろんな対策があるでしょうけれども、やっぱり少子化対策ってどうやって進めていけば良いのかな、ということを皆さんとともに議論してみようじゃないかということであります。

そんな中で、今日、非常にうれしいのは、高校生の皆さんがずいぶんとたくさん来てくれています。本当に皆さんの問題なんですよね。どうやって次の世代を育み、少子化を止めていくのかという、まさに当事者の皆さんがこういう場に来てくださったというのは本当にうれしいと思います。今日この“対話の広場”というのは、ここに来てくださっている方との対話だけではありません。この模様はインターネットでライブ中継をされています。そこで見ていらっしゃる方が、ご意見があったらツイッターでどんどん送ってくれますから、そういったものも受けながら、それもご紹介しながら会を進めていきたいと思います。

それでは、今日はとても素晴らしいゲスト2人にご参加いただいておりますので、まずはそのゲストの話を聞いていただいて、そこから皆さんとともに議論を始めていきたいと思います。それでは最後までよろしくお願いします。

齊藤 英和 氏(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)

ご紹介ありがとうございました。このような機会をいただきまして本当に僕らはうれしく思っています。特に若い方にたくさん来ていただいたので、張り切って発表させていただきたいと思います。

今回のテーマ「妊娠適齢期を意識したライフプランニングの薦め」。妊娠適齢期というものがあります。皆さん若い方はまだまだ先だろうと思うし、生理が50歳まであるから50歳まで妊娠適齢期だろうと思われるかもしれませんが、そんなものではないということを今日お話しして、皆さんがどう考えるかについて討論できればと思っています。

なぜこういう話をするようになったのかというと、妊孕性(にんようせい=妊娠しやすさ)、妊娠に関する知識を国別に調べたことがあるのですが、日本は先進国の中で一番こういう知識を知らない国だということが分かりました。トルコの次くらいでした。我々のところに、30代、40代の方が不妊治療に暗い顔をして来られます。このことも知識不足が原因だと思うようになり、多くの皆さんに妊娠ってどういう時期が良いのかという話をするようになりました。妊娠に関する知識にはいろいろあり、女性に関するもの、男性に関するものがあります。すなわち女性だけの問題ではなくて、男女両方とも年を取ることによって妊娠しにくくなるのです。結婚年齢と生涯不妊率

そこで、3つに分けてお話しします。この図は、結婚年齢と生涯不妊率の関係を示した図です。女性が若いときに結婚されると、生涯子どもを持てない率はすごく少ないのです。5%くらいです。ところが年齢を重ねるに連れてどんどん妊娠できない可能性が増えてきます。このことが「Science」(サイエンス)という立派な雑誌で発表されています。

加齢に伴い妊娠する能力が低下するという話は多分中学校、高校で習ってこなかったと思いますが、これは皆さんが今後生活をしていくとき、家庭と仕事を持つときに、大切な知識です。

年齢別排卵と妊娠率この図は、タイミング(性交すること)を取ったときにどの程度妊娠するかを検討した報告なのですが、若い女性だと大体タイミングが一番良いと5割くらい妊娠します。ところが年齢が上がると、妊娠する確率は減ります。どの年齢から減るのかというと、20代後半くらいから減ります。こんなに若い時期から妊娠する能力というのは落ちていくと言われています。

また、男性はというと、男性が女性より5歳上の率が破線で示されていますが、女性が35-39歳のグラフだと男性は40歳以上、この年齢くらいからかげりが見えてくると言われています。このように年齢でだんだん妊娠しにくくなる、その年齢も女性だと20代の後半、男性でも40歳以上はちょっと厳しくなる、ということが分かっています。

その1つの理由として卵子の数が影響します。女性は卵巣に卵を持っていますが、一番多い時期は、お母さんのお腹の中にいる時期です。それが生まれるときにはもう200万個に減っているし、生理が始まる頃には20万から30万個、排卵しないと無くならないのかと思っているかもしれませんが、そんなことはなく、お腹の中ではどんどん無くなっていくということが自然に起こっています。そして最後はゼロに近づくというように、卵というのはどんどん無くなるという性質を持っている。これは病気ではないのです。病気だともっと激しく無くなりますが、病気じゃなくてもこんなに減ります。だから年齢が高くなると、妊娠しにくくなるのが分かると思います。

年齢とAMH値卵巣にある卵子の数を、血を採って分かるようなホルモンが最近見つかりました。これをAMH(アンチ・ミューラリアン・ホルモン)と言います。このホルモンを測ってみると、若い人は高いし年を取っている人は低い結果になります。この結果はなるほどと思いますが、もう1つこのグラフで気をつけていただきたいのが、このスタンダード・ディヴィエーション、標準偏差、ばらつきです。皆さん中学校、高校で習われたと思いますが、ばらつきとは何かというと個人差です。個人差がすごく大きいということが分かります。ですから、若い方でも25歳だと平均値がこんなに高いのですが、ばらつきで低い方の人は49歳の方と同じくらいしか卵を持っていない人もいるのです。また、44歳でも30代中ごろの方と同じくらい卵を持っている人もいます。ですから、ある40いくつのタレントが「私は産みました」と言っても、同じ年の皆さん全員が産めるわけではないということを、しっかり知っておいた方が良いと思います。卵子の数は個人差が大きいものだと覚えておいてください。

今までは生理的、すなわち病気ではなくて起こっていることを話してきました。次に病気について1つだけ話します。最近子宮内膜症という病気が増えています。生理のときにすごくお腹が痛くなる病気なんですが、やはり不妊にもなります。遅く子どもを産もうとすると子宮内膜症は増えてきますので、晩婚・晩産化はこの点からも妊娠しにくくなります。

年齢別周産期死亡率今度は妊娠した後のことをお話しします。今までは妊娠するところを考えましたが、年を取ると妊娠後もいろいろなトラブルが起こりやすいのです。周産期死亡率とは、お産のときに赤ちゃんが死ぬ確率です。大体1,000人が生まれると3、4人の赤ちゃんが死にます。昔は5、60人死んでいたのが、産科医療がすごく良くなって1,000人に3、4人となりました。この数値は世界に比べてもすごく良い数値ですが、これも、年齢が高くなると上がります。やはり、一番安全に産めるのは20代です。

それからお産のときにお母さんが死んでしまう率というのも若い頃の方が少ないです。次に赤ちゃんの染色体異常、奇形について話します。ダウン症に関しては、産む母親が20代だと1,000に1つくらいの確率が、40歳になると100に1つくらいと10倍高くなります。すべての染色体異常も500に1つだったのが、66に1つとやはり7.5倍以上になります。このように年を取るといろんな危険が増すと言われています。

男性もいらっしゃるし、本当は男性の加齢に関連する妊娠能力の低下についてもたくさんありますが、ここでは1つだけお話しします。男性だって年を取ると危ないと言えます。それは何かというと、精子のDNAの断片化です。DNAは設計図です。DNA、多分理科で習われていると思いますが、DNAが断片化、バラバラになってしまう。そうしたらちゃんとした体が作れません。そういうことが、40歳を超えてくると起こってきます。年齢が高くなると男性だって妊娠する能力、または妊娠させる能力とも言いますか、その力が落ちてくると言われています。

ですので、人は男も女も加齢によって妊娠する能力は落ちると考えて良いと思います。そういう理由で妊娠中や分娩時のリスク、赤ちゃんの危険が増してくる。このことから、妊娠・出産に良い時期はというと20代になります。

この知識は今まで教わってこなかった。でもこれからは教えようと言っています。文部科学省もこれから教科書を変えようとしています。今の高校生の方々がどの程度教えてもらっているかというと、その内容は少しだけ入っています。しかし、きちんと理解できるまで教えてもらうには、もっと時間を割いて学校の中で教えていただくと良いのですが、まだまだ不十分です。皆さんはこの知識を得たのですから、このことを意識しながら妊娠の一番良い時期を考えて、じゃあ自分はどうするのかを考えてほしいと思います。治療周期数

ところで、不妊治療は万能ではありません。皆さんは不妊治療があるからどんな状況でも妊娠できると思っていませんか? そんなことはないんです。これが日本の不妊治療の数ですが、最近は32万件。すごく多いです。アメリカ合衆国は人口が日本の2倍であるのに、17万件しか治療していない。だから人口比で考えるとアメリカの4倍、日本は不妊治療を行っている不妊治療大国なのです。

そして、もう1つ大切なのは高齢の方が受けている。この治療の4割近くが40歳以上です。治療を受けても40歳以上の人はそんなに妊娠しません。これが成績ですが、体外受精をやっても、若いと2割くらい妊娠・出産できますが、40歳を超えると7から8%、45歳だと1%となか治療生産率なか妊娠・出産できません。だから不妊治療があるから絶対に妊娠できると思ってはいけないということです。また、この治療はお金もかかります。1治療30万円と計算すると、1人が生まれるのにどのくらいかかるのかというと、若い人は20%だから5回に1回、だから150万円くらいですが、40歳だと370万円かかって1人の子が生まれています。45歳だと約3,700万円かけて1人が生まれています。年を取るとこのくらいお金をかけないと生まれなくなってしまいます。ところが若い頃だったら自然にお金もかけなくても妊娠できる人が多いのですから、こういうことも考えていただきたいと思います。

そして、産む時期ですが、人生のライフプランをどのように考えるのか。出産すると育児や教育がついて回りますが、自分の人生を考えるときに介護も忘れずに考えていただきたいと思います。自分だけで家庭内の仕事はなくてやはり親の介護もどこに入るのかを考えながら、自分のライフプランを考えてほしい。遅く産むと、全部が一緒になって大変なことも多いと思います。若く産めば、自分のお母さん・お父さんが育児を手伝ってくれるかもしれない。こんなことも考えながら人生設計をしていただければと思います。

まとめですが、1つ、不妊治療に関しては、医学の発展があるからといっていつでも妊娠できると考えてはいけないということ。妊娠に関しては、できないこともある。それから2つ目、自ら正しい知識を持って、自分でライフプランを作ってほしい。そして最後は黒岩知事が多分一生懸命やっていただけると思いますが、若い時期に安心して産み、育てることができるような社会を作ってほしいと思っています。皆さんは最初の2つを頑張っていただければと思います。以上です。

白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

皆さま、こんばんは。今日は「女性の活躍と人口減少社会」というお話をいたします。パワーポイントはお配りはしていないんですが、私から新聞記事を2枚持ってきました。「『自活女子』を目指して」というのと「仕事続ける女性 かぎは男性」、まあこれは今のこれから就職する若い方への一番のメッセージだと思っていますので、後で是非読んでいただければと思っています。

私は本を書くのが仕事です。私の一番有名な本は「婚活時代」というピンクの本で、これがきっかけで婚活ブームというのが起きました。それから齊藤先生と一緒に、結婚の次は妊娠だということで、「妊活バイブル」という本を書きました。今、一番新しいのは、私と先生が一緒に大学・高校に出張授業に行っている内容の「『産む』と『働く』の教科書」という本です。それは授業をそのまま本にしたものなので、先ほどの先生のお話、これから私のするお話はそれのショート・ヴァージョンになるわけですね。婚活、妊活とやってきて気がついたのは、なぜこれがうまくいかなくなってしまうのかというと、実は仕事がすごく大事だったということに気がつきました。女性の仕事ですね。なので女性と仕事の本も書かなくちゃと、この「女子と就活-20代からの『就・妊・婚』講座」という本も書かせていただきました。

個人的なお話をすると、私は53歳、バブル世代なんですね。20代は楽しくてあまり結婚とか考えていなかったのですが、36歳で結婚しました。わざとというわけではなくて、本当に知識不足、準備不足ということで子どものいない人生になりました。楽しいは楽しいんですけれども、後悔もあります。いつも私が言いたいことというのは、これからの皆さんに、「私が若いときの自分に会ったら、ここを気をつけてね、ここがポイントだよ、と言いたいこと」を言うようにしています。

今、大学生との活動を中心にやっています。ふだんは女子大生とやっているので、女子高生の皆さんと話をするのはすごく新鮮なので今日は楽しみです。

私のミッションは「産む」×「働く」女子と、そのパートナーを育てること。パートナーはすごく重要なんですね。パートナーの男性も育てたいと思っています。

少子高齢化の話がありましたけれども、国は50年後に人口1億人を維持したいと言っています。でも1995年生まれ、皆さんと年が近いと思われる95年生まれの女性は、5人に1人が50歳の時点で未婚で、生涯子どもを産まない女性も3人に1人という予測がされている。齊藤先生も私も「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」に入って何とかしようとしているんですが、1億人と簡単に言ってもなかなか難しい。人口を維持する出生率2.0のためには、簡単に言うと、女性が10人いたら、子ども3人の人が5人、子ども2人の人が2人、子ども1人の人が1人、子ども無しの人が2人、このくらいじゃないとダメなんですね。1億人と言うのは簡単ですけど、やっぱり一人ひとりの女性が産みたいという気持ちにならなきゃダメなんですね。どうしたら産みたいという気持ちになるのか、どうやったら女性の心を動かせるのか、それはこれだけ女性のことをずっと研究している私でもなかなか分からないことです。

出生率を動かす一つの数字があります。「女性が働くから産まないんじゃないか」という話もありましたが、それは過去のことなんです。今は女性がたくさん働いている、活躍できている国ほど出生率が高いんです。で、女性があまり働けていない国というのは、韓国、イタリア、ギリシャ、日本など、出生率が低いわけなんですね。

今の女子大生が何を考えているかというと、早く結婚して早く産みたいとみんな考えている。出産したら仕事は、と聞くと、続けたいと答える人の方がやっぱり全然多数派です。早稲田大学だと80%もいました。じゃあどういう人生にしたいの、と。バリキャリ(=バリバリのキャリアウーマン)で一生働きたいという人もいるんですけど、ゆるキャリ(=ゆるやかなキャリアウーマン)、9時から5時までの仕事をしながらワーク・ライフ・バランスよく一生働きたいという人も最近はけっこう多く、実は人気があります。じゃあバリキャリで一生働きたいっていうくらいやる気のある人ってどんな人、というと、その人たちもやっぱり早く結婚して早く産みたいと思っているわけです。

私は「産む」×「働く」を実現するためには4つのハードルがあると思っています。まず1つは、産める体のメンテナンスをちゃんとできるような妊娠の正しい知識が不足していること。今日は先ほど齊藤先生からスペシャルな講演を10分いただいたので、もう皆さん知識はこれで得ていると思います。第1のハードルは実はここに来た人はクリアできているんですね。それから第2のハードルはなんと結婚です。フランスなどのように、同棲している方たちがそのまま子どもを産んで、それが50%以上という国もあるんですが、日本の場合やはりまだまだ結婚したい、結婚してから産みたいよね、という人が多いので結婚のハードルをクリアしなきゃいけない。そしてそのハードルをクリアしたら、今度は仕事と子育てがなかなか一緒にできないというハードルがある。この3つのハードルを、先ほど齊藤先生が言ったように若いうちに超えられないと、今度加齢による不妊問題というのが出てきてしまうわけです。日本は今、非常に不妊治療が多い国になっているということなんです。

では、これらのハードルを一個一個見ていきます。

私がこのように就活、婚活、妊活、全部本を書いているのは、仕事も結婚も子どもも昔は、日本人にはベルトコンベアに乗っていけば手に入るものだったんですね。でもこれからの皆さんは、自分の意志を持って、結婚したければしたいという意志を持っていく。子どもが欲しければ欲しいという意志を持っていく。受身で待っているだけでは何も起きないんだよ、ということを言いたいといつも思っています。婚活というのは、お見合いパーティに行けということじゃないんですね。自分で結婚する意志を持っていこうということです。妊活というのも自分で意志を持って授かろうね、ということです。最後に授かるというのは、やっぱり妊娠だけは、例えば29歳まで仕事して30歳に産もうと思っても、なかなかそのとおりうまくはいかないからなんです。最後は授かるという敬虔な気持ちも必要です。

で、この4つのハードルをどうやって超えていくか。今日は簡単にご説明しますと、第1のハードルは先ほど言ったように正しい妊娠の知識をしっかり持つこと。

第2のハードル、結婚に今日は注目したいと思いますが、結婚は妊娠の序章ではありますけれども、結婚したい女子はまずちゃんと仕事しようね、ということなんです。自活女子を目指す。結婚したいという人は実は非常に多いんですが、齊藤先生が言った20代、一番良い時期、20代の女性の6割もが未婚です。結婚していないんですね。これはなぜかというと、まず恋愛問題。日本人の独身者のうち3人に2人が実は恋人がいません。日本人ってあんまり恋愛しないんですよ。男性で恋人がいる人は30%、女性でいる人は40%しかいないんですね。まずは恋愛しないという問題。これはなぜかというと、7割の女性が、「自分は恋愛は相手からのアプローチを待つ方だ」と答えているんですね。ところが、男性6割も「自分は待つ方だ」と答えている。お互い待っていて何も起きないのが今の日本の独身者なんです。ですから何を言いたいのかというと、ちょっとでも良いなと思う人がいたら、是非自分から行こうねということなんです。

そしてもう1つの重要な問題、経済問題です。今、実は男性の年収ってそんなに上がらないし、逆に女性もしっかり働くので、女性がけっこうしっかり年収を取れるようになっているんですね。なので、男の人は自分の力一人で一家を養うのはちょっと無理だな、とても無理だなと思っているんですね。まだまだ結婚したくないし、奥さんも働いてほしいと思っている。女性の方は、働きたい、働きたくないにかかわらず、やっぱりちょっと不安なんですね。もし出産して仕事を辞めることになったら年収が半分になっちゃいます。やっぱり養ってくれる男性じゃないと、とどうしても思ってしまう。雇用が安定しない若い世代が急増し、1997年からなんと男性不況というのが起きていて、男性の職場、男性が稼ぎやすい職場がだんだん減ってきているんですね。反して、女性が活躍しやすい職場、少子高齢化社会ですから医療分野とか、働く女性が増えますから保育の分野とか、女性が活躍しやすい仕事の方がどんどん増えているということです。

東京の女性がよく「年収600万円以上の男性と結婚したい」と言いますけども、そんな人は100人中5人しかいません。じゃあ400万円以上でいいので妥協します、って言う人もいるんですけど、400万円でも実は、4人に1人しかいないんですね。婚活っていうのはいくら頑張っても限界があって、女性がもうこの人に全部養ってほしい、私も子どもも全部養って、と思うと、養えるまたは養う気のある男性の数が少な過ぎるということなんです。この数の限界にはいくら婚活をやってもなかなか太刀打ちできないわけです。

私の考える解決策としては、働きたくない女性もいるし、働きたい女性もいる、でもとにかく女性がみんな当たり前のように働けるようになって、2人で結婚、仕事をして、そして子育てをして家事をしてというふうになっていけるのが一番良いなと思っています。先ほどの結婚できないと言っていた2人が結婚するためには、2人で仕事、家事、子育てすべてをシェアしていく。女性もしっかり働くし、そして男性は育児も家事もできるイクメンになるということですね。こうやって先ほどの2人はめでたく結婚できるわけです。

鍵は夫が握っているもう1つこの少子化に関わる重要な数字があります。日本の男性は、外国に比べると、家事・育児時間がこんなに短いんです。なんと男性の家事・育児時間が短い国ほど実は少子化になっているんです。だから女性がたくさん働けて、男性が家事・育児をしっかりやっている国ほど、少子化ではないということなんですね。夫の協力と第2子の出生にもすごく関係があって、男性が第1子のときに全然子育てを手伝ってくれなかった、ゼロ時間だったという場合、その後8年間に2人目のお子さんが生まれている確率はわずか1割しかないんです。ところが6時間以上一緒に子育てしてくれたとなると、7割の方が第2子を産んでいる。やっぱり男性は本当に重要な役割を担っているんですね。

とにかく先ほどの4つのハードルを超えるには、自分の体はしっかり自分で守りましょう。結婚はなるべく早い方が良い。そして女性はとにかく“男性に養って”を目指さず、細く長く働き続ける覚悟を持つ。そして何かの専門性、武器を持つ。仕事はバリバリやっていても良いんですけれども、お子さんができたらちょっとペースダウンするかもしれない。でも続けることが大事です。子育て後の復帰はなるべく早い方が良い。そして夫をほめてほめてイクメンに育てる。そしてまあ高校生の方には言いませんが、大人の方にはですね、妊娠は先ほど齊藤先生がおっしゃったように非常に貴重な機会です。ライフプランのとおりじゃないからといってあきらめないで、もし授かったらそこは真剣に考えていただきたいと思います。私の講演は以上で終わりです。ご清聴ありがとうございました。

知事

さあ、ここから“対話の広場”が始まります。どういうシナリオ、どこにどう話が展開するかまったく予測不能でありまして、皆さんから出てくる意見、質問、それによってどんどん展開してまいります。

ただ、これだけは勘違いしないでほしいと思うのは、結婚であるとか子どもを産むとか育てるというのは人生の非常に重要な選択でありますから、それを押しつけるとか、そういうためにこの“対話の広場”をやっているのではないですからね。要するに、正しい知識というものを分かったうえで、自分で自分の人生をどう考えるのかという、そういう視点でこの議論をしていきたいと思っています。高校生の皆さんも、せっかくここまで来てくれたんですから、いろいろ発言してくれるんじゃないかなと楽しみにしています。それではまいります。意見でも質問でも何でも結構です。意見のある方どうぞ。

参加者1

横浜市港北区のハタといいます。自分はもうすぐ50歳でまだ結婚もできていないので婚活を一生懸命やっているんですけど、自治体でやっぱりそういう出会いの場みたいなのを。自分は以前、埼玉県に住んでて、例えば鴻巣市だったんですけど、図書館に半日くらいかけて出会いのなんとかみたいのがあって、すごく良い。その時自分ちょっともう失業するんであれだったんですけども。

横浜市にも聞いてみたんですけど、昔やってたそうなんですけど、今はそういうのはやっていないと。で自分がよく横浜とか新宿とか銀座とか行くんですけども、やっぱりこう、なかなか誰でも良いわけじゃないですし、できるだけ選択は広くパートナーを得たいと思って、で、個人的にはなんか最近ちょっと自信が出てきたんで何とかなるかな、と思っているんですけど、自分的にはですよ。でもやっぱり少しでも若い時期にやった方がね。

これとこれちょっと結びつきにくいかもしれないけど、やっぱり少子化ってすごく大事なテーマですし、だから新聞なんかに例えばアルコールなんか出してるとなんか良くないから自治体ではそういうのはやらないって載っていたりして。予算的なあれですけど、そういうところに僕が行っても水とかお茶くらいなもんなんですよ。だから神奈川県とかそういうところでも、やっぱ神奈川がやれば、何て言うのかな、少子化対策についてこれは本気だぞっていうのでね。僕なんかよくそういうところで女の人とも話して、そういうことを言うと、やっぱり女の人もそういうのがあったら良いなって言います。企業ベースでやっていても1時間、もう3分くらいで終わっちゃうんで、自分も、この何ヶ月でもう50回くらい行ってるんですけど、金額と時間もかかるんで、是非そういうのを神奈川県としてお願いしたいと思います。

知事

ありがとうございます。確かにそういう婚活イベントというのはね、是非やってほしいという声はありますね。基本的にこれは、第一義的には市町村単位のものですね。県の行政というのは全県の広域的な行政なんで、それは是非市町村にそういうのをどんどんやってくださいと呼びかける立場だとは思いますけどね。今のお話を受けながら、是非呼びかけていきたいと思います。いろんな工夫されているところもありますよね。

総合政策課長

他県の事例ではございますが、県レベルでもそういった出会いのサポートをやっている事業として、佐賀県などの例がございます。あとは今知事がおっしゃったように、市町村レベルでそういった縁結びのプロジェクトをやっている自治体がございます。

また、参考ではございますが、昨日、知事も出席された九都県市首脳会議の場でも、そういった結婚の支援を首都圏でしていきましょうというような提案が埼玉県からございまして、そこで了承されたという経過がございます。

知事

九都県市というのは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県とそこにある政令市ですね、そのトップがみんな集まったサミットでありましたけどね、確かにそれが昨日話題になったばかりです。他の県では県としてやっているところもあるというから、我々もちょっと今受けたお話を県としても考えなきゃいけないですかね。ちょっと考えます。

参加者2

小田原市から来ましたオカザキと申します。

先ほど子育て後の社会復帰は早い方が良いという意見があったんですが、神奈川県では確か子育て後の社会復帰率がそこまで高くないのではないかなと、ちょっと自分で調べました。その要因は、通勤時間が結構かかるとか、いろいろな要因があると思うんですけど、社会復帰を促すときにはそういういろいろな要因を解決しなければならないので少し難しいと思うんですが、それについてどう思われますか。

知事

いや、そのとおりですね。

M字カーブというのがありましてね、女性が何歳のときにどれだけ働いているかということですね。そうすると、若いうちは学校を出てすぐ働くんですね。その人たちが結婚とか出産を機にいったん仕事を離れるんですね。子育てが一段落すると、また仕事に戻って来たりと。ということでこれMのような形になるんですけれども、これが神奈川県の場合にはこの落ち込みが深いんですね。非常に大きな問題ですね。M字カーブ

白河さん、どうですか、M字カーブの落ち込みを何とか食い止めるためには、どういうことが必要でしょうかね。

白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

M字カーブの落ち込みを止めるのは、やっぱり企業さんの努力が一番ですよね。

神奈川県がなぜM字の落ち込みが深いかというと、例えば奈良県はホームタウンというか、子育てしやすい良い町なんですけれども、働きに出ているのがみんな大阪なんです。通勤時間が1時間くらいあって、帰って来る時間が平均8時なんです。そうすると、子どもをそんなに遅くまで預けられないので、働きに出られない女性が非常に多いわけなんです。専業主婦が多い都市なんですが、そうすると何が起きるかというと、専業主婦を養える男性しか結婚できないので、奈良県はなんと男性の結婚希望が落ち込んじゃったんです。

なので、奈良県と同様そういった通勤時間などの問題を抱える神奈川県は、県内でなるべく、お家の近くでいろいろ働けるような工夫をするとか、女性が在宅勤務ができるようにするとかの工夫があると素晴らしいですね。在宅ワークについては、県が支援しているところもありますし。また、例えば、お迎えに行きやすいように駅のすぐ近くに保育園を作る。駅のすぐ近くの保育園が難しければ、今、駅から遠い保育園はけっこう空きがあるので、まず駅までお子さんをみんな連れて来て、そこから各保育園にデリバリーするような制度があるところもあるんですね。そうすると駅の近くの保育園だけがいっぱいであとは空いているということにならないので、工夫次第でやりようはあります。あとはもちろん企業さんが早く女性を帰してくれる時期があっていいと思います。例えば4時とか、3時までの正社員。3時まで働けばいい短時間正社員みたいな制度をやっているところもありますので、いろんな働き方を企業さんが可能にすることによって、M字カーブというのは落ち込まなくなると思います。

知事

ありがとうございます。やっぱり女性が子どもを育てながら働ける環境、これを作らなければいけないですね。その中で例えば待機児童という問題がありましたね。横浜市が待機児童をゼロにしたということで全国的に注目を浴びましたけども、待機児童をゼロにすることは、県も目指していきたいなと思っているんですけれども、そんな中でいろんなことをやっていく。今お話にあった、駅に保育所を作っていくというのもあるだろうし、そのときいろんな規制が邪魔になっていたら、その規制を緩和してもらおうなんてこともあります。

神奈川県が今やろうとしていることの1つは、保育士さんを増やすこと。保育士さんの数が足りないんですね。で、保育士さんの数をなんとか増やさなきゃいけないという問題も実はあるんです。ところが保育士の国家試験というのは、年に1回だけなんですよ。大体そういう資格というのは年に1回の試験が普通ですけれども、保育士を増やすために、これを年に2回できないかということです。神奈川県だけが手を挙げました。神奈川県全体が全国6ヶ所の国家戦略特区に選ばれていまして、そこで、保育士の試験を神奈川だけ年2回やろうと。地域限定保育士といいます。地域限定保育士、この人たちはですね、3年間は神奈川県だけで働いてもらいます。その間は他では通用しない資格です、神奈川県がやるんですから。その代わり3年間働いたらその後はもうどこで働いていただいても結構だという、そういうことを神奈川県独自で今やろうとしているところなんですね。

そういうことも含めて、いろんなことをやっていかなければいけないな、というふうに思っているところです。M字カーブの落ち込みを落とさないようにするということは非常に重要なポイントですね。ありがとうございました。

参加者3

横浜市南区のフカガワです。今仕事をしながら1歳になったばかりの子どもを育てているんですけれども、白河さんの本も読ませていただいて、2002年入社当初から結婚はどうしたら良いのか、出産はどうしたら良いのかということをずっと考えてきました。今日言われたことは読ませていただいた本にも書いてあったし、先ほどの話にもあったんですけど、妊娠力・結婚力・結婚維持力というのが必要なんじゃないかと私は思っていまして、あんまり偉そうなことを言うと、私、夫に失礼だなと思うんですが、私は結婚してから子どもを敢えてすぐに作らずに、夫を育てて夫をイクメンにしました。なので今私はとても幸せですし、今ここに子どもがいないというのは夫が見てくれているからであって、でもそれは“見てくれている”と今言いましたが、夫なので子どもの父親として当たり前のことをしていると夫は思ってくれているので、とてもありがたいなと思っています。

結婚したらやっぱりすぐに「子どもは?」っていろんな方に聞かれるんですけど、是非結婚した方に、できれば女性の方に「良い旦那さんに育ててる?」って聞いてあげてほしい。「良い旦那さんですか? 子どもを育てるのに一緒に育てていける旦那さんですか?」ってことを聞いてあげてほしいなって思います。

先ほど齊藤先生の方から言われたAMHの値についても踏まえて、もっと高校生・大学生に知ってもらいたいなと思いますし、例えば子宮がん検診をするのと同じタイミングでその数値を調べるっていうのを、1年に1回、2年に1回でもできれば自分のことが分かって良いのかなとも思います。

やっぱりプレッシャーが妊娠につながらないこともあると思うので、それは女性だけの問題じゃなくて、夫婦でうまくそれを考えていけることが大事かなと思っています。

で、あと今自分の子どもについて不安に思っていることは、子どもの20年後、本当に仕事があるんだろうかと思っていて、今子ども1人を育てるのに3,000万円かかるって言われているところで、今2人目を持つかって言われたら、年間150万円用意する自信が無くて、2人目を持てないなと思っているところです。で、もちろん産むにあたって3,000万円最初に用意しなければいけないわけではないんですが、教育熱心になればなるほど用意できないなと思って、子ども1人で良いかって思っている家も多いのではないかと思っていまして、第3子からの補助ってけっこうあるんですけど、第2子でもそういった補助があったら良いなと思っているところです。県でそんなことができると良いなと思います。

知事

ありがとうございます。最初の、夫をイクメンに育てるんだという発想は面白いですね。どんな教育をされたんですかね。その教育プログラムを見たいものです。そういう発想は非常に大事だなと思います。

先ほどもちょっと話がありましたね。経済的理由で子どもさんを作れないというね、そこを迷ってしまうという声は確かにあるんでしょうね。ただ、20年後に仕事があるかなって、物事の考え方なんですけれども、皆さんがそういうふうに思うとしぼんでいっちゃうと思うんです。「まあ何とかなるだろう」ということで、とにかく子どもを産むことによって、そういう仕事がなくなる状態を変えていく。このように、私はポジティブに考える方なんです。みんながそう思うと、うまく行くというか。そういうものってあるんじゃないのかなと実は思いますね。

経済的に豊かなときに子どもがたくさん生まれるかというと、歴史上そうではないんですよね。すごく貧しいとき、貧しい国の方が実は子どもはたくさん生まれていたりするわけでありまして、こういう状況を何とか乗り越えていこう、みんなで楽しく乗り越えていこうといったときに、子どもはどんどん生まれてくるということなので、ここは非常に難しい問題だと思いますけどね。

それでは、県としてたくさん子どもを産んでくださった方にどんどん支援をしようと、正直検討したことはあるんですよ。ところが、ここでまた難しいのは、子どもさんを持てない方もいらっしゃるじゃないですか、医学的なことで。じゃあその人たちに対しては、そのことからすれば、支援が行かないわけですよね。それで果たして良いのかな、なんて問題を考えると、またそう簡単じゃないなということで、我々もぐるぐる回っているというのが正直なところですね。

参加者4

私は葉山からまいりましたマツオと申します。葉山で「葉山にこにこ保育園」という保育園をやっております園長です。

今日は保育園のこともなんですが、私はボランティアで東京のおもちゃ美術館というところで学芸員をしておりまして、今マスコミでもずいぶん取り上げられるようになって、子どもとおもちゃということでやっております。美術館には0歳のお子さんを連れた若い保護者の方から、80歳の高齢の方までたくさんの方がお出でになります。外国の方もたくさんお出でになって、多いときには1,000名を超す方がご来館されています。木のおもちゃを中心としたおもちゃで遊ぼうというコンセプトでございます。

この活動を通じて、おもちゃは“子どもと子ども”だけではなく、“子どもと大人”、そして“大人と大人”を結ぶコミュニケーションのツールだということを確信いたしました。私は保育園をやっておりますから、虐待防止の話もたくさん伺います。保育園の保護者の方にもいろいろお話を伺いますと、子育てが苦痛だとはっきりおっしゃる方もいらっしゃいますし、どうやって子どもと遊んで良いか分からないと訴える保護者の方も少なからずおります。そういうときに私はこういうふうに言います。「ご自身が子ども時代に大好きだったおもちゃを思い出して、それでお子さんと遊んでみてください」。そして「笑って一緒に遊ぶということが子育ての基本なんですよ」ということをお伝えします。実は私は子育てが辛いと思っていた母親だったものですから。3人子育てをしましたけれども、今は子どもが大好きです。

今日お話をさせていただきたいと思って来たのは、葉山に近代美術館という素敵な県の施設がありまして、私もよく行く大好きな施設なんですけれども、ここにおもちゃ美術館を作りたいなといつも見回しています。やっぱり場所が必要だと思います。子育てや遊びの、そしてあとは観光のスポットにもなるんじゃないかなと実は思っています。鎌倉に行って、葉山に行って、三浦半島一周してという、そういう人の流れもこれでできるんじゃないかなというふうに思っています。

そして私は孫が1人おりますが、親子もですけれども、おじいちゃん・おばあちゃんと孫ですね、そういう異世代の交流の場にもなるし、今、中学生が職場体験で保育園に来ていますが、その子たちにもおもちゃで遊ぼうなんて今日もやってきました。そういった異世代交流の場としての近代美術館、おもちゃ美術館というのを是非作っていただきたいなと思っています。沖縄をはじめ全国でもそんな動きが出ているようなので、是非お伝えしたかったのでまいりました。

知事

ありがとうございます。おもちゃがコミュニケーション・ツールになるというのはなかなか面白い発想ですよね。この横浜にはすごいコレクターである北原照久さんの「横浜ブリキのおもちゃ博物館」というのもありますけどね、近代美術館でそういうのができるかどうかちょっと考えてみたいと思いますね。

参加者5

横浜市港北区に住んでいます、県立港北高等学校からまいりましたマスダです。よろしくお願いします。

先ほど白河先生のお話の中に、男性が第1子の育児を手伝うほど第2子の出生率が高いというお話があったんですけど、私は以前赤ちゃんが生まれる関係の映画を観て、その中でお母さんが妊娠して赤ちゃんがだんだん大きくなっていく中で、お父さんたちが赤ちゃんのお風呂の入れ方だとか、そういう育児を学ぶシーンを見たことがありました。それって病院とかでよくやっているんだなと思ったんですけど、それを是非県や市町村の役場などに病院の方を招いて出張の父親学級のような形で開けば、わざわざ病院に行く手間も省けますし、手軽にもっと行けるんじゃないかな、と思いました。もしその取組をもうやっているなら、もっと発展させていただきたいなと思いました。是非お願いします。

政策局長

私はもう58歳になりますけれども、厚木の保育所で父親教室というのをやっていまして、妻が妊娠したときに通って、お風呂の入れ方など学んできました。多分、今もやっていると思います。それが市町村の普通のやり方になっているんじゃないかと思います。

知事

さっき夫をイクメンに育てるんだという話もあったけれども、男性にそういう学ぶ機会を提供してみるというのも我々のやるべき仕事の1つかもしれないですね。ちょっと検討してみたいと思います。ありがとうございました。

参加者6

東京都の小平市からまいりましたタカハシ・ミユと申します。

私がお伺いしたいのが、県のデータを拝見したときに、第1子を産んだ方と第2子を産んだ方、第3子を産んだ方の割合のデータがあって、同じ年齢の方でも、初産の方と若い頃に第1子を産んだ方とでは出生率が違っていて、第1子よりも第3子を産む割合の方が出生率の全体の中で上がっていたので、若い頃に第1子を産めば、第2子、第3子というのは産みやすくなるのかなと思いました。

また、その神奈川県のデータを拝見したときに、他にも晩婚化が全国よりも進んでいるなと感じたので、その中でまず結婚する人数というのが減っているなっていうのを感じました。なので、結婚する人数が少ないというのは出会いとかもあると思うんですけれども、会社の雰囲気とか休めるか、休む状況にあるかという、旦那さん以外の職場での男性の役割っていうのも重要だと思うんですけれども、職場での男性についてはどのようにお考えかっていうのをお伺いしたいです。

知事

ありがとうございます。なかなかデータの読み方が鋭いですね。

齊藤先生、今、若いうちに第1子を産んだ人は第3子まで産むというようなことはデータ的に多いんですか。

齊藤 英和 氏(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)

1人産むと産みやすくなるというのはありますね。先ほどのデータで出した子宮内膜症という病気は妊娠して出産するときに、妊娠中のホルモンがその病気を治療するので、また妊娠しやすい体を作ります。ですから若い時期から2年、3年おきに産んでいるとずっと妊娠しやすい体が維持できます。産みやすい体が維持できるという意味でも若い頃から何年おきかで産んでいくことが医学的には一番良いと思います。

それが逆にずっと産まないでいて、いきなり30代の後半になってから産もうと考えると、身体的にも妊娠しにくい体ができ上がっている人もおります。病気がなくても加齢しただけで妊娠しにくくなる可能性もあります。もし人生の中でいつかお子さんを持とうと考えるのだとしたら、早めの時期から産むことは、産みやすい体を作ることになると思います。

知事

後半におっしゃった、職場における男性の話も非常に大事な問題です。残業がいつもあって、夜帰るのが非常に遅い日がずっと続いているという状態になると、なかなか子どもを産むという感じにならなくなってくるかもしれないですよね。そうするとやっぱり仕事をもっと考えて、残業ばかりしないようにすることも、これは職場全体としても必要でしょうし、特に子どもが生まれたといったときに、夫もちゃんと育児、教育に協力しようという気が本人にあっても、残業で帰れないとなると、気持ちがあってもできないというようなこともある。だから本当にその職場そのものがどういう雇用環境を作っていくかという問題とも、非常にリンクした話だと思いますね。非常に良いご指摘ありがとうございました。

参加者7

横浜市青葉区に住んでいます、県立新羽高校から来ましたスズキです。

先ほど保育士が不足しているという問題についての話題がありましたが、その国家資格を取るうえでの試験が神奈川県では年に2回とおっしゃいましたが、その国家資格を取るに当たっても、結果通らない人もいます。その通らない人を後押しして育成する、県で保育士を増やすことを目的としたプログラムを行って、保育士を増やして女性にも働きやすい環境を作ってあげて、人を増やすことによって産休だったり育児期間を延ばしてあげたりして、保育士はこれだけ働きやすいんだよというアピールができるようにしてあげられるようなプログラムは県で行っているのでしょうか。行っていなければやっていただきたいなというふうに思います。

知事

ありがとうございます。先ほど言った「地域限定保育士」というのはまだできていないんです。今、神奈川県が全国に先駆けて手を挙げているだけなんですね。これを実現していこうと国に働きかけている、特区だから。それだけでも実は簡単なことじゃないんですね。年に1回の国家試験を、年に2回やるといったら面倒くさいとかいうのがあるんでしょうかね。だから最初はすごい抵抗感がありましたけど、神奈川はやるんだ、と言っていると、だんだん国の方も変わってきているという感じはあるんです。だからこれからですね。

それから保育士の資格というのはですね、私も今回こういうことがあったので調べたんですけれども、試験というのは8科目あって、それで例えば6科目だけ合格で2科目落としたとします。でも1年後にはその2科目だけを受ければいいんです。そういう資格になっているんですね。だからもし落ちた場合には、落とした2科目だけに集中して勉強していくということなんです。

実は先日、厚生労働省に行って塩崎厚生労働大臣に言ってきた話なんですが、我々が言っている年2回目の地域限定保育士の試験は、国が進めている話では、8科目のうち6科目通った場合でも、次に2科目だけで済むようにはしない、もう1回ゼロから受け直さなきゃダメだと。要するに地域限定保育士の資格試験を一段下のものに位置づけようとしているんです。それじゃダメだ、同じようにしなきゃダメだという話を先日してきたところです。だから我々が目指しているのは、2科目落としてしまったときには、半年後にその2科目でもう1回挑戦できるチャンスをあげようということを、国と掛け合っているところでありましてね、それがサポートの体制かなと。試験勉強するのは皆さんに是非頑張っていただきたいというところじゃないですかね。

参加者8

神奈川県立保土ヶ谷高等学校から来ましたイトイです。

現在日本は経済大国そして生活小国とも言われています。子どもを育てた後、育児休暇を取った後仕事に戻れるのか、そういったような不安があったりなどしています。やはりそういった問題は、単純に考えたら、生活大国に行こうと目指していけば、自ずと解決するのではないかなと思ったので、ここは首都圏、神奈川県はやはり影響力がある県だと思うので、神奈川県がやっていけば、日本も国が動いていくのじゃないかなと思いました。

知事

ありがとうございます。ちょっと聞いていいですか。“生活小国”ってどんなイメージでとらえているんだろう。あなたも自分の生活は生活小国だという感じでいますか。

参加者8

僕自身はまだ結婚とか出産とかそういうのはあまり縁がないですけれど、今後するじゃないですか。でもやっぱり、ドイツとかは経済大国4位で、でも有給休暇を取ることができるじゃないですか。日本は10ちょっとなんですよ、取ることができるのが。でもその中でも半分くらいしかとっていないと。それは取るべきだと僕は思うのですが、それが取れない。そういうところが僕は生活小国なのかなと思いました。

知事

そういう意味ですね、分かりました。たっぷり自分の余暇を楽しんだり、海外に行ったら休みは2ヶ月くらいバカンスでいなくなっちゃうとか。そういうことができなくて、みんなあくせく働いていて、休みだってぱっと取ってまた戻ってという、その慌しい生活をしていて、人生をゆっくり楽しむようなことがなかなかできていないということですね。

なるほど、これは非常に良い指摘ですね。白河さんいかがですか、男子高校生がこういうことを言っていますが。

白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

さすがだな、神奈川県の高校生、と思いましたけれども。本当にいろんなデータ、各国比較を見るとですね、こんなにリッチな国で、もっと貧乏な国はいっぱいあるのにもかかわらず、日本のお母さんはものすごく睡眠時間が短いんですね、忙しすぎて。それから、こんなに皆さんが子どもを大切にしているのに、育児が楽しくないって答える割合も実は高いんですよ。多分そういったところが生活小国たるところかなと思いますね。

有休を取っていないというのもまさにおっしゃったとおりなので、日本人の素晴らしいところはもちろん勤勉さなんですけれども、やっぱりそこは働きすぎているというところもあるんじゃないかなと思いますね。その辺は企業のあり方とか生活、あと子育ても、結構一生懸命になりすぎていて辛い方も多分いらっしゃると思います。その辺を、子育てするときも一生懸命、仕事するときも一生懸命で男女が別々にやっているということじゃなくて、やっぱり男女ともに分かち合って、楽しんでできるようになったら両方良いなと思いました。本当素晴らしい指摘ですよね。

知事

ワークライフ・バランスなんて言葉を今使ってますけどね。一生懸命仕事をするのも良いし、人生をこう楽しむんだみたいことをうまくバランスを取っていくという。そういうふうな号令だけは言っているんですけど、なかなか現実問題として実現できていないというのは確かなところですね。いや、考えさせられますね。

参加者9

鎌倉市在住の私立高木学園女子高等学校から来ましたアラキです。

私の周りの友だちと、やはり結婚の話とかするときがあるんですが、そういうときにやはり友だちは、20代後半で結婚したい、や、30代で結婚で子どもは要らないかな、と言う子がすごく多いかなと思います。しかし先ほどの齊藤先生の話を聞いて、やはり遅い結婚では子どもが産みづらい体になってしまうっていうことを知りました。しかし私の周りの子にそれを知っている子は少ないと思います。なぜならそれは多分今の教育の場で、そういう遅い結婚では自分の体に負担はかかることは分かっている子が多いと思うんですが、そういう産みづらくなってしまうという環境になるっていうのをちゃんと知れる場が少ないからだと思います。なので、県でもっと早いうちから中学生・高校生くらいでもっとそういう結婚や妊娠、これからもう少子化になってしまうので、そういう部分で学べる場を多く増やしていただきたいなと思います。

知事

ありがとうございます。そのとおりなんですよ。

実は、正直なことを言いますと、齊藤先生に来ていただいて県の職員を集めて講演をやっていただいたんです。そのときに、先ほどのは10分ヴァージョンでしたけれども、あれの1時間ヴァージョンでレクチャーを受けたんです。そのときにみんな、目からうろこが落ちた感じだったんです、実は。今まで少子化問題をあまりそういう視点では考えていなかったのですね。女性は早く産んだ方がいろんな意味で医学的に良いですよという話というのは、そこでそうなんだと気づかされたんです。言われてみれば確かにそうだな、そうなんだろうなというデータが出てきたわけで、だからこれを多くの人に知ってもらいたいなと思ったんですよ。で、どうやって多くの人に知ってもらえるかなとなって、じゃあ“対話の広場”でやろうといって、齊藤先生にお願いしたところ快く引き受けてくださって、今日は本当はもっと長い話なのだけれども、10分ヴァージョンでね、エッセンスをお話しいただいたということです。

でも、ああいうふうに言ってくださるとうれしいですよね。なかなかこういうことを知識として、医学的な知識として意外に皆さん持っていないんですよね。

齊藤 英和 氏(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)

そうなのです。ですから、知識を持ったうえでどうするかは、自分たちのプランなのです。でも知らないと、自分の体をうまくコントロールできない。皆さんは、いろんな機械を使うときに必ず取扱説明書を見てうまく使おうとしますよね。それと同じで、自分の体もうまく使っていくには、やはり自分の体がどういうものなのかをきちんと知って、じゃあどうやって使っていこうかということになるので、この講義は早く言えば取扱説明書なのです。知識を得て、自分がどういうようなプランを作るかが大切です。もちろん子どもを一生持たないというのだって選択肢です。だけど子どもを持つことを選択するとしたら、どの時期が医学的に良いのかを知っていただき、仕事と家庭をどのように組み合わせるか、自分のライフプランをどのように設計するかに役立たせてもらうように、いろんなところでお話ししてます。

今回、黒岩知事に呼んでいただいたのはすごくうれしいことで20歳、30歳になってから考えればいいことではないのです。特に若い方が今、いろんな勉強をしながら、自分のライフプランも考えるきっかけにしていただきたい。

もちろん今なかなか教えられていないというのは、そのとおりなのです。だけど文部科学省も教科書を変えようとしています。もう少しするともっと充実した、今の世相に合わせた教科書が出てくると思いますが、今の若い方にもそういった教科書が出る前からいろいろ知っていただきたい。そして自分の人生をうまく設計していただきたいと思っています。

知事

さっき見せていただいた講義は、どこかのホームページで見られるんですよね。

齊藤 英和 氏(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)

我々がいろいろなところで講義しているのをYouTubeに載せています。私が40分、白河さんも40分。

白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

YouTubeで「『産む』×『働く』の授業」で検索していただくと、40分+40分、長い動画が上がっていますので、詳しく見たい方は是非どうぞ。

※動画へのリンク(各項目をクリックすると外部サイト(YouTube)のページが開きます)

知事

「『産む』×『働く』の授業」ね。YouTubeで皆さんに見てもらったら、どんどん広がっていきますよね。

参加者10

相模原から来ましたヤマミヤと申します。年齢は53歳です。

今日は一応テーマが少子高齢化ということで、実際初めて“対話の広場”に来させていただいたんですけど、やっぱり先ほどの先生方のお話を聞くと、出産する状況だとか社会の現状ですね、まあ労働環境の問題だとかいろいろあると思うんですけど。

私は相模原で団地住まいなんですね。今はURの公団、昔の分譲に住んでいます。その前は公社の賃貸にいました。実際規模的にもう2,000世帯、3,000世帯の団地なんですけど、正直言ってもう子どもがいないんですよ。朝もお年寄りの方ばかりで、犬の散歩とかで結構賑わっているんですけど、公園も子どもの遊び場も無くなっていっている。今、社会の老人ホームはどんどん増えてるじゃないですか。やっぱりお年寄りを対象とした施設っていうか設備も多いし、子どもさんは選挙権無いし、まあそれはちょっと話ずれるんですけど。やっぱり子どもをこれからだんだん増やしていこうっていう環境になってない。

相模原は73万人の政令都市なんですよ、横浜、川崎に次ぐ。だけどまあ実際人口は増えているんですけど、自分の身近な環境の周りを見てみると、団地っていうかそういうニュータウンのところで昔の学校はどんどん閉鎖しています。逆に今、川崎市の中原区だとかでは高層マンションがどんどん建ちますよね。そうすると若いご夫婦の方が来るんで、やっぱり小さいお子さんがどんどん増えてくるんですよ。だけど地域的な形が全然違っていて、その高層マンション群のところは子どもさんがいて公園があったりだとか、あるいは高級マンションになるとマンションの敷地の中に公園があったりだとかしてますね。

実際に収入的なことがあるのかもしれないけど、私ども相模原市の南区というのは、それでもやはり相模大野とか町田がありますから、まだ人口の流入はあるんですけど、ただ自分の身近なところを見るとやっぱり子どもさんが減っている。

あとうちの小・中学校の娘が2人いるんですけど、今はもう中1と高3にはなりましたが、やはり今不審者が非常に多いですね。特にうちは娘が2人いるんで、学校からはメールで回るし、実際に午後1時50分から4時の間っていうのは、ちょっと危険なっていうあれで、それで子どもさんを安心して育てる状況にはないような感じも見受けられるんですね。

知事

そうですね。子どもさんを育てるにはね、やっぱり町の環境というのを作っていかないといけないですね。

例えば団地でもですね、だんだん一人暮らしの老人が増えてきている団地をどう再生するかというのも非常に大きな課題ですね。そんな中で、我々は「健康団地」というコンセプトを出しているんです。要するに介護施設等をどんどん作ったならば、また人もたくさん必要になってくるし大変だからというので、団地が高齢化するのなら、そこに逆に医療・介護を持って行ってしまおうと。そこにいる方が在宅医療だ、在宅介護だと、そこを回っていけば済むという。こういうことで「健康団地」という構想を出していると同時にですね、多世代っていう、要するに空いているところに若いカップルに来てもらう。そのときに家賃なんかをちょっと安くしたりとかするとですね、そういう環境になってくると、多世代が交流し始めて、また町の賑わいも出てくるというふうなことで、団地をどうするかというのは、我々は非常に重要な課題だと思ってやっています。

参加者10

やっぱコミュニティの不足かなっていうのが。

知事

そうですね。コミュニティがやっぱりしっかりできていないと。先ほどの、子どもを育てるのが辛いというのは、やっぱりコミュニティが希薄になっているからということも非常に大きいですよね。昔だったら、子育てをしていても、近所の人が「じゃあちょっと見ておいてあげるから」と言って、「じゃあちょっとお願いね」と言って、遊びに行ったりとか買い物に行ったりとか、いろいろなことができたけれども、隣の人は誰だか知らないというような、じっと部屋にこもっているというようなことではなかなかうまくいかない。コミュニティの再生というのも非常に重要な要素だと思いますね。ありがとうございました。

参加者11

神奈川の川崎の高津区から来ました、県立の横浜翠嵐高校に通っていますタカハシと申します。よろしくお願いします。緊張しちゃってうまく話せないんですけど、3分以内に収めるんで2つ質問させてください。

まず1つ目なんですけど、政治は早い一手が肝心かなと私は思っているんですが、私の世代になってきますと、高齢出産で生まれた子どもというのが混じってくるんですね。そうしますと、もともと親が高齢ですから、その介護は近い。それなのにもかかわらず、早く出産するとかぶってしまうといった状況が出てくるんですね。介護と子育てがかぶさると大変だっていうことを、齊藤先生がお話しになっていたんですけれども、私の世代の中には生まれながらにしてそれが宿命づけられてしまうような人がいるんですね。そういった方々の負担、これをサポートするっていう話は私は寡聞にして聞いたことがないんですが、そういうことをお考えになっているのかということをまず聞きたいです。

で、2つ目なんですけども、先ほどの質問の中でコミュニティが大事だ、それは安心につながるっていうふうな話があったんですが、私は子育てが楽になるためには完璧主義だといけないんじゃないかなと思ってるんですね。この前NHKの「まいにちスクスク」なんかを見て、完璧主義だから結果を急いでしまって、結局何をすればいいか分からないっていうような話を聞きました。なので、今の教科書の、大事だ大切だっていうのを押し付ける一辺倒なやり方ではなくて、もっと完璧じゃなくて良いんだよ、もっと、なんて言うんですかね、懐の大きいそういった教育を特に保健なんかではやっていくべきなんじゃないかなと思います。

この2つ、黒岩知事にご回答いただければなと思います。よろしくお願いいたします。

知事

なんかすごいですね。先生の話を聞いているみたいでしたけど、子育てについて完璧主義はいかんよというのは、なんでそんなことが分かるんですか。すごいですよね。確かにそうですよね。完璧と言ったって、赤ちゃんはそれはいろんなことがあるから、ペットではないんですからね。ワンちゃんだったら結構言うとおりやるけど、子どもはやっぱり夜は必ず寝るとも限らないし、いろんなことがあるから、完璧なんてことはまあ無理であって、でもじゃあいい加減にやるというのもあんまりですけれども、まあその辺のバランスでしょうけどね。でも、いや、素晴らしいですよ。そのとおりだと思いますけどもね。

前半でお話しになったのは、高齢出産の子はどうですって。高齢出産の子が何とかぶるんでしょう。

参加者11

高齢出産で生まれた子どもが20代とかになりますと、親の介護と子どもの世話がかぶってしまう。

知事

さっき先生がおっしゃったことですよね。

参加者11

それが、さっきの話だと晩婚ゆえに自分の親の介護と自分の子育てがかぶるということでした。

知事

自分の親が高齢出産だという話ですね。先ほどのは晩婚の話だったから。親が高齢出産でも同じことですよね、ダブるというのはね。

参加者11

晩婚じゃなくてもそういうことが起こってしまうんです。

知事

親が高齢出産だからそうですね。そういうことですよね。

参加者11

ますます対策が必要なんじゃないかなと思った次第です。

知事

そうですね。どんな対策が必要なんでしょうかね。

参加者11

そういう場合の人に、プラスアルファでサポートするとか、そういったことができればなと思うんですけど。

知事

高齢出産の人に特別にサポートする。

参加者11

私はいろんな都合上介護の苦労が身に染みて分かるんですけれども、介護と子育てがかぶってしまった場合に何かできたらなと。

知事

そうですね。だから、高齢化は別にして、要するにみんなで育児を支えるというような体制ができ上がってくるということ。介護にしても、みんなで社会で支えるという体制が絡んでくると。みんな1人ずつ抱え込んでしまって、介護は自分1人になっちゃうとか、それで育児も自分1人になっちゃってとかでやっていると、本当にどんどんみんなが辛くなってしまうけれど、介護も子育ても社会みんなで支えてくるという形ができ上がってくると、両方の問題がうまくいくんじゃないですかね。そういう意味で行くとやっぱりさっきの話に戻りますが、地域のコミュニティの力って大事ですよね。

もう神奈川の高校生は只者ではない人がいっぱいいるからすごいですね。

参加者12

横浜市港北区から来ましたオオカワと申します。よろしくお願いします。

ちなみに私の方では仕事の関係で横浜の女性のためのウェブ・マガジン「HaMaWo(ハマウー)」というものを運営しております。こちらでは、横浜市内で子育てをしやすい女性支援・子育て支援というテーマで毎日情報を配信している記事を書いて、編集長を務めております。

今までのお話では、やはり子どもを産みやすい環境をどうするかっていうことが結構あったかなと思うんですけれども、あとコミュニティの問題っていうのもあったと思うんですけれども、具体的に横浜市ではなく神奈川県として子育てしやすい環境をどう作っていくかっていうことを、どのようにお話しされているのかっていうのをちょっと伺いたかったです。できればそちらの方に取材に伺わせていただければと思ったのと、併せて質問させてください。

次世代育成課長

いろいろな子育て支援の方法ってあると思うんですけれども、一番身近なものとしては、私どもの方で「かながわ子育て応援パスポート」というのを作っています。これに協力してくれた企業さんで、例えば割引制度があるとかミルクのお湯をそのお店で提供してもらえるとか、そういう身近な応援制度というのがあります。これを今横浜市の子育て家庭応援事業「ハマハグ」とタイアップしてどちらでも使えるということをやっております。これなどは一番身近な支援制度かなと思っています。これはすごく会員が増えていまして、応援してくれる企業さんも今増えていますので、こういうもっと身近なところでの支援という環境を育てていきたいなと思っています。以上です。

知事

是非メルマガで紹介してください、編集長。

参加者12

そうですね、結構皆さん知ってる情報だと思うので、できれば他の試みでっていう気持ちはあったんですけれども、どうもありがとうございました。

知事

もしいろんな提案があったら、教えてください。我々もどんどんそれを参考にして、実現したいと思いますから。ありがとうございました。

参加者13

神奈川県横浜市旭区に住んでいます、横浜清陵総合高校のカマタです。

すごいレベルの高い高校生の質問の次の高校生なのであまり良いことは言えないかも知れないんですけれども、まず私は少子高齢化について、例えば自分が小学生だったときとか、中学生だったときに、保健の勉強であまり勉強できなかったなと。例えばライフプランについてとか、M字カーブがどうだとか、ワークライフ・バランスがどうだとか、少子高齢とか。言葉としては自分の中で理解していても、考えることがあまり無いと思うんですね。今の教科書は詰め込みといいますか、なんか文部科学省がまた言葉を増やしたり、考えなきゃいけないとか、テストに出るから憶えなきゃいけないっていうのは分かっているんですけれども、自分の人生のものとして考えることがあまり無いなと思いました。なので、例えば、授業でやる際に、ライフプランについて考える時間を設けるとか、ただの詰め込み教育ではなくて、自分のこととして考えられるように授業してもらいたいというか、そういった時間を設けてほしいなと思いました。

知事

素晴らしいですね。これも全部の高校の先生に聞いてもらいたいし、うちの教育委員長にもちゃんと言っておきます。すごく大事なポイントだと思いますよ。そういうことのために今回やっているんです、この“対話の広場”を。やっぱり今、これはすごく大事な科目でしょう、科目というと変だけれども。自分の人生をどう作っていくのかという中で、正しい知識を持ちながら自分で選択していくということなのに、学校の勉強の中で、これは理科なのか、社会なのか、生物なのかというような、どの科目に入るものでもないですよね。そういうこともやっぱり必要だろうなという思いの中でやっているということでもあるんですね。非常に重要なご指摘ありがとうございました。

ということで皆さんとご議論してまいりましたけれども、本当に今日こういう若い人たち、高校生がどんどん意見を言ってくれる、これは素晴らしいことだなと思いましたけど、最後に感想を、白河さんからひと言お願いします。今日の総括として。

白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家、相模女子大学客員教授)

今日はありがとうございました。11月26日に第2回の少子化社会大綱策定の検討会があるんです。その時に言わなきゃいけないことを教えていただきました。今日はいっぱい宿題が増えたなと思います。特に高校生の皆さんからのご意見とかは、本当にすぐ国に伝えなければと思うようなことばかりで、素晴らしいなと思いました。

それから、先ほどの授業の話なんですけれど、実は私は山形県では高校生向けにライフプラン授業というのをやっています。その時に何をやるかというと、講義だけだとダメなんですね。知識を一方的に受け取るだけではなく、ワークショップというのを一緒にやるんです。体育館とかで、模造紙をわーっと広げて、そこに10人くらい来て、半分は結婚して子どもができたら男子が女子にしてほしいこと、半分は女子が男子にしてほしいこととかを書いてもらって、お互いに「へえ、こんなことを考えているんだ」といったことをやっています。今ワークショップという方式はけっこう教育に取り入れられているんですけれども、そういうふうに生徒が自分たちで考える場っていうのをいっぱい作っていくのが良いと思っています。

また、ライフプランってそのとおりになかなかいかないんですね。ですからそのとおりにガチガチにやるんじゃなくて、作ってうまくいかなかったら壊して修正していく。だから逆に、その考える力、何かにぶち当たったときに、課題にぶち当たって、今自分はこう行きたいのにここにしか行けなくてどうしようというときに、じゃあこう行くためにはどういう課題があるのかなっていうのを発見して、それを解決していくような力をつけることが必要です。教えるだけの授業じゃなくて考える時間を持つ授業じゃないとなかなかできないので、今先生たちはそういうことをすごく考えていると思いますし、そういう授業を導入している学校もいっぱいあると思うので、是非そういう時間を増やしていただければなと思います。

ありがとうございました。

知事

齊藤先生、ひと言最後にお願いします。

齊藤 英和 氏(国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター副センター長)

今日はどうもありがとうございました。

なんだかむしろ僕らが勉強させていただいたような気がします。皆さんの意見をなるべく反映できるように僕らもがんばっていきますし、白河さんと一緒に今、少子化社会対策大綱策定の委員に入っておりますので、その中でもいろんなことを訴えていきたいと思います。特に先ほど言われた介護とか、あとはよく考えるライフプランなど。

これはさっき言ったかもしれませんが、今、文部科学省で本をまた作り直しています。その中で少しずつ記載されてきていますが、もっと充実したものとするために、昨日も一緒に考えていました。副読本の中でライフプランをもっと入れようと考えています。今までは性教育とか避妊しか入っていなかったのです。そのスペースを減らしてライフプラン設計を増やそうと考えています。

あともう1つは、現場です。黒岩知事に頑張ってもらわなければいけないところです。現場でそれをいかに生かして若い皆さんがいかに考える力をつけていくかだと思います。すべて順風満帆とはいきません。いろんな問題がすぐ出てきます。でも、そのとき、考える力さえついていれば応用ができますから、皆さん、それは教科書を基にいろんなことを高校時代、中学時代に考えていただいて、また人生の次のステップにできるようにしていただければと思います。

今日はむしろいろいろと教えていただいて、ありがとうございました。

知事

ありがとうございました。

今日の“対話の広場”は半分近くが高校生という、しかも男子高校生がこんな来てくださるというのは、我々の想定外でありました。でも非常にうれしかったですね。皆さんからいただいたご意見は本当に素晴らしいご意見ばかりだったと思います。我々も本当にこれを真剣に受け止めてやらなければいけないなとつくづく思いました。

私から最後に1つだけ、私の自分の子育ての経験から1つだけ言いたいことがあって、というのは、なんと言っても子どもはやっぱり可愛いんですよ。自分の子どもを育てる、だんだん育っていくプロセスというのは、何にも増して楽しいです。可愛い、面白い、うれしい。それからどんどん時間が経ってくると、またいろんな形で変化しながら、これが人生の彩りを増してくれるということもあるので、その楽しいということも思いながら、こういう問題を考えていただきたいと思います。ただし、生き方は強制はできませんから、その代わり正しい知識を身につけながら、そしてそれを基にして自分の人生はどうあるべきなのかなということを、皆さんでこれからも考えていっていただきたいと思います。

今日は本当にどうもありがとうございました。

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