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更新日:2024年3月29日

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第21回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

平成29年9月5日(火曜)に開催された、第21回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川の実施結果についてご覧いただけます。

概要

第21回の開催画像です

テーマ

スマイルかながわ

第2弾:“認知症”を考える

日時 平成29年9月5日(火曜) 18時30分から20時
会場 県立青少年センター多目的プラザ
参加者数 100名
 
 
 
 

実施結果(テキスト版)

司会

本日はお忙しい中、ご来場いただきまして誠にありがとうございます。
ただいまから、第21回黒岩知事との対話の広場Live神奈川を開催いたします。
本日は知事の挨拶、ゲストのプレゼンテーションに続き、会場の皆様と意見交換を進めてまいります。
まず、本日のゲストをご紹介いたします。東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム研究部長の藤原佳典様です。公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部代表川崎幸クリニック院長杉山孝博様です。そして本日、認知症バーチャルリアリティー体験のお手伝いをしてくださる横浜市立市民病院の医師(現医療法人社団晃徳会横山医院医師)横山太郎様です。
なお、本日はライブ中継とともにツイッターによる会場外からのご意見も受け付けております。意見交換の中で紹介させていただくことがございます。
インターネット中継をご覧の皆様にご案内申し上げます。この中継をご覧いただきながら、ツイッターでご意見を投稿できますので、ぜひお寄せください。

ここで皆様にお伝えしたいことがございます。神奈川県では津久井やまゆり園事件の後に定めました、ともに生きる社会かながわ憲章の理念の普及と実現に向け、来月10月21日、22日には「みんな集まれ2017」を開催いたします。このイベントを通じ、ともに生きることの大切さを幅広い世代、多くの皆様に広めてまいります。
それでは、ここで、ともに生きる社会かながわ憲章を読み上げてまいります。

ともに生きる社会かながわ憲章

一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします

一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します

一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や
差別も排除します

一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます

平成28年10月14日神奈川県

以上でございます。
それでは大変お待たせいたしました。黒岩知事からご挨拶を申し上げます。

知事

こんばんは。ようこそいらっしゃいました。県民との対話の広場、神奈川県知事の黒岩祐治です。
対話の広場というのは、ずっと継続してやっているのですけれども、今日はライブ版ということで、インターネット中継していますから、全世界に流れています。そういう意味で、注目していただきたいと思います。

対話の広場2017年のテーマはスマイル神奈川毎年、統一したテーマでやっているのですが、今年のテーマは、スマイルかながわということです。若干どういう背景かをご説明したいと思います。スマイルかながわ、なぜこのようなことを言っているかということですが、昨年は、人生100歳時代の設計図を描いていきましょう、という言い方をしたのですが、
100歳以上の人口の推移・推計1963年、100歳以上の方は、全国で153人でした。2016年は、6万6千人ぐらいいます。2050年になりますと、約70万人が、100歳以上であります。この時になりますと、割り算をすると、142人に1人が100歳以上と、こういう時代がやってまいります。こういう時代に我々は備えなければいけない、こういったときにどんな100歳時代になればいいか、と言ったら、やはりみんなが笑顔でいるような、そんな100歳時代だったらいいですよね。みんな暗い顔をして、なんか100歳まで生きたけれども辛いよねという時代は、やっぱりうれしくないですね。だから、笑顔あふれる社会をめざしていきましょうということであります。スマイルあふれるかながわ

そのような中で、スマイルあふれるかながわ、共生でスマイル、さっき朗読しました、ともに生きる、そしてスマイル。未病改善でスマイル、後でまた説明しますけれども、マグネット力、引き付ける力、こういうのを持ってきて、いろいろなものが集まってくる。それでスマイルあふれるかながわを作っていきましょうと言っているのです。

 

未病改善でスマイル

 

 

そのような中で、「未病改善でスマイル」というところで、いろいろな項目を並べましたが、「認知症未病戦略の推進」といった項目も上げておりまして、これが今日の課題になっているところです。スマイルあふれるかながわの中で、今日はあえて、認知症という問題をクローズアップしたいと考えています。

これって何の数字?

 

 

 

 

 

 

 

さあ、何の数字でしょうか。346万人、140万人、517万人。たぶん、誰も分からないでしょうね。

 

これって何の数字?

 

私も分かりませんでしたけれども、140万人というのが日本の全国の幼稚園の子どもの数です。346万人というのは中学生の数。517万人というのが、実は、2015年時点の認知症の人の数です。全部の幼稚園児と全部の中学生を集めた数ぐらい、もう既に認知症の方がいらっしゃるということです。この現状です。ところが、今後ドーンと増えていきます。

 

 

認知症の人の将来推計値

 

これが今の予測でいきますと、2025年には約700万人の方が認知症になることが予想されているわけです。100歳以上になった、みんな長生きしたとしても、100歳以上の方がみんな認知症だったら、いろいろな形で、支えるのも大変だし、
お一人でも大変ですよね。

 

未病とは

そのときに、未病とさっきからずっと言っていますけれども、未病というのは、この真っ白な健康があって真っ赤な病気があるのではなくて、白から赤はこのようにグラデーションで連続的に変化するものだ、この方が我々の実感に近いでしょう。完全な健康の人と完全な病気の人がいるわけではなくて、なんとなく具合が悪いというのから、だんだん具合が悪いなというのが、行ったり来たりしています。それが未病で、これをどこにいても少しでも白い方に持ってこようとするのが未病の改善で、これが大事です。病気になってから治すのではなくて、未病のどこにいても少しでも白い方に持ってこようとすることが大事ということです。未病の改善を、今、神奈川県は、一番重要政策として進めています。これ実は、また後で先生のレクチャーがあると思いますけれども、まさに認知症の話と同じなのです。認知症の人というのは、完全な認知症ではない人が、ある日突然、ドーンと認知症になるという、そんなことありえないですよね。どこからか始まるのです。それで、だんだんこっちに来るのです。こっちに来ると止まりにくくなってくる。なるべく早いところで分かって止めることが大事。

認知症の未病改善の取組未病を改善するために何が大事かと言うと、食、運動、社会参加、こういったものが大事です。これがたぶん認知症にもつながってくる考え方だと思います。そのような中で、今、神奈川県は、やれることをどんどんやっていこうと思っています。このグラデーションが進まないようにするために、何が良いかといったときに、コグニサイズというのがあると聞きました。そこで、すぐやってみようと。とても簡単です。コグニサイズというのは、運動をしながら、脳を使うということです。これは、何をやっているのかと言ったら、みんなで歩きながら歌を歌っています。これは、2人並んで歩きながら、しりとりをしています。これ、お金がかからないですよね。これによって、認知症のまさに未病状態が進むのを止めることができる。こんな簡単なことで。これだったら、早くやろうということで、全県展開をしているところであります。認知症の未病改善の取組

 

そのような中で、認知症の医療的な部分もしっかりやらなければいけないということで、県立精神医療センターに専門の外来を開設いたします。

 

認知症の人や家族を支える取組

 

 

そして、家族や認知症の方を支える取組もしていまして、
「0570-0-78674 なやむことなし」と、この番号で、いろいろな相談に応じる体制も整えております。

認知症の人や家族を支える取組

 

そして、認知症の人や家族を支える取組として、いろいろな所に県内11か所の認知症疾患医療センターの指定、県内2か所の若年性認知症支援コーディネーターの設置、こういったことも進めているところであります。認知症未病改善対策というのは、徹底的にやっていこうと、今、思っております。

 

 

認知症サポーターというのは、認知症とはどんなものかというレ認知症の人や家族を支える取組クチャーを受けていただくと、こういうオレンジ色の輪をもらえます。認知症サポーターは、誰でもなれます。
それとともに、もうちょっとグレードアップして、認知症の方のお手伝いもしたいな、といった方のために、オレンジパートナー制度、これを神奈川県独自で設けておりまして、9月から県内各所で、オレンジパートナー養成研修をスタートさせようとしています。

ということで、一人ひとりが認知症の人やその家族に寄り添いながら支え合う、みんながスマイルあふれる、そのような神奈川を作っていきたい、と思っているところであります。そのために、今日、皆さんと議論をしたいと思うのですが、認知症は、どのようなものか、まず知ることから始めなければ話が始まらないですね。ですから今日は、3人の素晴らしいドクターに来ていただきました。認知症について話をしていただいて、あとはちょっと特別なバーチャルリアリティー体験もできる仕掛けを作っていますから、楽しみにしていただきたいと思います。それでは、まずはそのレクチャーから聞いていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

司会

黒岩知事、ありがとうございました。
続きまして、ゲストの方々にプレゼンテーションをしていただきます。
初めに、東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チーム研究部長の藤原佳典様、お願いいたします。藤原様は、多世代共生の地域づくりの視点から、高齢者の社会参加と認知症予防について、実践的に研究を進めていらっしゃいます。
また、2004年より世代間交流型絵本の読み聞かせシニアボランティアプログラム「りぷりんと」を開発し、認知症予防・健康増進と、子ども子育て世代、地域へもたらす多面的な効果を実証されていらっしゃいます。それでは藤原様、お願いいたします。

藤原 佳典氏(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム研究部長)

こんばんは。東京都健康長寿医療センター研究所というところから参りました、藤原でございます。今日は、10分間のお時間をいただきまして、特に、認知症の中でも、予防という面を中心にお話をさせていただきたいと思います。

まず、認知症の予防あるいは認知症のケアを考えるとき、認知症というものは、どういうものか、認知症の定義というものを少し押さえたいと思います。
認知症とは。早期対応が重要。一言で言いますと、認知症というのは脳の働きが落ちていくために起こる状態のことですけれども、この図は人間の、認知の機能、脳の働きの加齢の変化というものを表しております。
例えば、歳相応の物忘れということで、少しずつ記憶力なり、認知の機能は落ちていくのですが、最終的に少し物忘れが心配になってきたなといった頃に天寿を全うされる方が多いかと思います。

一方、幸いと言いますか、ずっと生涯現役で、頭の働きも体もお元気な方というのもごく一部いらっしゃるかと思うのですけれども、ここで言います認知症は、認知の機能の衰えのスピードが、普通の一般の高齢者の方よりもどんどん早くなる方のことを指しております。
特に、以前と比べて明らかに認知機能の障害があるという特徴があります。我々は、お買い物に行って日頃感じるように、三つ、四つの用事をこなそうと思ったときに、「あれ、今日買うのを忘れた。」とか「あっ、また買ってしまった。」といったことで、うっかりミスというのはあるかと思います。頭の働きについては、こういった出来事で、非常に心配になる方もおられるかと思うのですが、元々そういうタイプのうっかりさんもいらっしゃるわけです。
そうではなくて大事なのは、そういった変化がここ1年、2年の間に急に進んだかどうかという、ご本人の中での変化です。
そして、いつしか記憶力だけの低下の問題から、日常の生活にいろいろ支障が出てきて、つまり、生活の自立が障害された状態というのが認知症ということなのです。
先ほど黒岩知事もおっしゃいました未病というのが、そのグレーゾーンの段階、記憶力は落ちているけれども、まだまだ日常生活には支障のない段階があり、徐々に進行してやがて認知症になられる方がいらっしゃるという、こういう生活の障害が出ているかで判定します。

重要なのは、その時、早めに認知症の対応をするということです。つまり、お薬でも、あるいはいろいろなトレーニングでも、できるだけ早いうちにトレーニングをする、介入をすると、一時的にこの認知機能が上がる可能性が高いです。しばらく、上がっても、いずれはどうしても年齢や病気とともに落ちていきます。しかし、落ちていくけれども、落認知症の原因となる病気ちるその時間稼ぎといいますか、ちょっとでも上がった分、少し先送りができるというのが、早期の予防の重要性ということになります。

認知症の原因には、いろいろな病気がありまして、アルツハイマー病ですとか、脳の血管がつまったりとか破れたりということもあります。今日は特に、この中でもアルツハイマー病に対して、どう予防を考えていくかというお話をさせていただきたいと思います。

 

認知症の原因となる病気このアルツハイマー病については、皆さんの中でも、アミロイドβという言葉を聞かれたことがあるかと思うのですが、脳の中に異常なたんぱく質がどんどんたまっていく病気です。こういったアミロイドβというものは、実は40代から少しずつたまっていきます。どんどん年齢とともにたまってきて、いつしか認知症を発症するということですので、そういう意味でも、できるだけまだ何もない30代、40代の頃から少し予防に気を付けるということが、一つは重要になります。と申しますのは、認知症となりますと、脳の正常な細胞が、どんどん減っていったり、あるいはつぶれていったりということが起こります。いくらお薬を飲もうが、あるいはいろいろなトレーニングをしようが、もう既に脳の細胞がなくなった後に、いろいろ介入しても、なかなか効果が上がらないのです。そういう意味では、脳の細胞がまだまだ残っている間に、いろいろな介入をするべきで、早期の介入、早期の対応が重要だということになります。

生涯にわたる認知症の危険因子そこで、最近、いろいろな研究がなされている中で、ある総括したようなレポートが発表されています。国際的にも非常に有名な一流雑誌の検討委員会がまとめているものなのですけれども、生涯にわたって認知症になる危険性というのはどういう要因があるかというと、これはいろいろな要因があるのですが、単にお年寄りになってからだけの問題ではないのです。
今日は、学生さんも来られていますので、少し関心を持っていただければと思うのですが、確かに遺伝的な要因というのも約7%ぐらいあるとされていますが、一方、子どもの頃にはしっかり勉強するということが大事だと言われています。その間に脳の神経を発達させたり、あるいはその後、利口にたくましく世の中を生きていくだけの基礎知識を得るということは、非常に健康にも重要だということで、若い頃の勉強というのは、実は8%ぐらい効いていると初等教育の重要性を指摘しています。

そして中年期になると、今度は高血圧とか肥満とか耳の聞こえの問題も重要だと言われておりまして、さらに高齢になっていきますと、タバコとかあるいは心の健康、運動不足、社会的に孤立しているとか糖尿病、こういったものも悪さをしまして、人生の長きに渡って影響を受けてくるものだと言われています。特に、この中でも、後から改善することができるものは、この小児期以降の問題でして、トータルで3割ぐらいのものは、後の頑張りによって挽回できるのではと考えられます。
この3割というのを多いと見るか少ないと見るかは考えようですが、残りの6割、7割は年齢が影響しておりますので、完全に防ぎ切れるものではありません。この3割をもう少し紐解いてみます。

認知機能低下予防の戦略我々がいろいろな認知症の予防の活動をする中で、大きく分けて二つの予防法があります。一つは、生理的予防法と言いまして、脳の細胞自体を元気な状態にしておくというものです。例えば、有酸素運動がいいですよとか、血液をサラサラにするような食生活がいいですよといったようなことです。脳の働き自体を良くするということは、脳に血流がちゃんといって、栄養が脳の細胞の隅々まで行くような状態を作っておくということになります。こういった食と運動という、先ほどの未病の「栄養、運動、社会参加」が大事だというのが、実は認知症の予防にも重要だということです。

もう一つの認知的予防法は、頭を使うような活動をしましょうとか、人とコミュニケーションを取りましょうといったものです。実は、脳の神経というのも、使えば使うほど神経の伝達の効率が上がったり、あるいは伝達する道が太くなってきたりということがあります。そういう意味で、両方が先ほどの35%なのですけれども、大きく振り分けると、この二つに分かれるのです。

これを見ていただくと、「なんだ、食習慣か」、「有酸素運動か」、「人とコミュニケーションか」、「これならやっているよ。」という方が多いかと思うのですが、実はこういった当たり前の生活習慣の改善、あるいは日常の心がけというのが、実は認知症の予防に非常に重要だということが分かってまいりました。ですので、これは認知症になる前からも、あるいはなりかけた後からも非常に重要なことなのですが、あまりに当たり前すぎて、いつの間にか面倒くさくなって、やらなくなったとか、あるいは年齢が上がれば上がるほど、そういった健康習慣を守るとか、人と積極的に付き合うということが、ともすれば、面倒くさくなるのです。

絵本を読んで脳を活性化。長期持続効果あり。当たり前すぎるから、どうやって継続するのかが重要ということになります。我々は、例えば、その三つの原則として、一つ目は、脳に良いことの中でも自分にとって興味のあることとか楽しいことをやりましょうと。二つ目が、仲間と一緒にやりましょうと。これは、脳の働きの上でも、物事を「ながら族」するということは非常に重要でして、こちらの人に注意を払いながらも手はちゃんと疎かにならないとか、こちらとしゃべりながらもこちらのことは気を付けるといったような、人と一緒に行動することは、非常に頭にとって重要になります。そういうことが二つ目の秘訣です。
三つ目が、人の役に立つこと。健康自体にも、何かの役に立つことというのが重要なのです。これは、人間の頭の中には、ご褒美、つまり、何かをやると喜んでもらえるとか、感激してもらえる、拍手してもらえるということになると、頭の働きも非常に良くなったり、あるいは、やる気がどんどん出てきたりします。どうせ長続きさせないといけないのなら、この三つの視点というのが重要なのではないかなと思います。

最後に、私がこういったものを踏まえた活動として、「りぷりんと」という絵本の読み聞かせのプロジェクトを、川崎市多摩区とかあるいは横浜市青葉区のメンバーの方々とも10年以上続けております。こういった活動の方々は、先ほどの楽しみと役割、そして仲間と一緒に、といった活動を続けていらっしゃいます。確かに、こういう活動をしますと、まず、ボランティアになるための講座を受けただけで少し記憶力の頭の冴えが良くなってきます。その後、ボランティアとして活動をずっと続けることによって、良い時の成績が2年後に測っても維持されていることが分かりました。そういう意味で、認知症の予防というのは、継続しないと意味がありませんので、自分の中で継続できる活動を見つけていくということが重要なのではないかということになります。以上でございます。

司会

藤原様、どうもありがとうございました。
続きまして、公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部代表、川崎幸クリニック院長杉山孝博様、お願いいたします。
杉山様は、患者や家族とともに作る地域医療に取り組もうと考え、内科の診療と在宅医療に関わっていらっしゃいます。
1998年に川崎幸病院の外来部門が独立した川崎幸クリニックの院長に就任し、現在に至っています。1981年から公益社団法人認知症の人と家族の会の活動に参加されていらっしゃいます。それでは杉山様、よろしくお願いいたします。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

どうもこんばんは。私は認知症に関わりまして、37年になります。その当時は、認知症に対する社会的な関心も、また、援助も全くなかった時代です。今では、皆さんがこんなにたくさん集まってもらえるようになったことからも分かりますように、認知症に対する関心が非常に高まりました。そしてまた、介護保険を始めとした、いろいろな、家族やご本人を支える制度ができてきたように思います。しかし、認知症は、理解が難しい病気です。その病気を理解しないと、いくら気持ちとしては支えたいと思っても、なかなか支え切れないということがあるのではないかと思いますので、私はそういう視点で、今日はお話をさせていただきたいと思います。

認知症を支える基本まず、認知症を支える基本として、認知症という病気を知る、認知症の人の気持ちやその世界を知る、認知症の人を介護する家族の苦労や思いを、まず知っていただきたいと思います。

そして、ただ、かわいそうだと思うのではなく、自分自身の問題としてとらえることも必要だと思うのです。また、認知症の人とその家族を地域で支えるため、具体的にどうしたらいいかということも、今日、考えていければと思っています。

 

 

認知症という病気を知る

まず、認知症というのは、すでに前の先生がおっしゃったように、記憶力や判断力、推理力、学習能力といった知的機能の低下によってもたらされる生活障害であります。
そして、認知症の症状には、中核症状及び行動・心理症状(BPSD)に分けられます。中核症状は、物忘れ、理解力・判断力低下、見当識障害あるいは実行機能障害などがあって、認知症の人にはだれにも認められ、次第に進行します。BPSDは、中核症状を背景として、さまざまな要因が絡み合って発生する症状です。家族が、介護の負担を感じるのは、主にBPSDへの対応の難しさからです。さまざまな症状が挙げられていますが、ご本人の立場から考えますと、決しておかしなことではない、私だって同じ状況であれば、同じことをするのではないかということを、今日、理解していただきたいと思います。

認知症の人の気持ちやその世界を知るまず、認知症の人の気持ちやその世界を知るということですけれども、認知症といっても、実は仕事をしている人もいますし、家庭生活をかなりちゃんとできている人もいます。
国際アルツハイマー病協会の国際会議が今年4月に京都でありましたが、そこでは、10数名の認知症の方が、自分たちの意見をしっかりまとめ、発表されました。認知症と診断されても、そのようにできる方々がいるわけです。もちろん一方では、完全に寝たきりで何もできなくなった人もいます。そういう意味では幅が広くて、一言で、認知症だからもう何もできない、すべて介護が必要な人なのだと思わないでいただきたいと思います。
認知症と診断されたら、何もかも分からなくなるわけではありません。喜怒哀楽の感情もプライドも持っています。「認知症になっても心は生きている」と私はいつも話しています。
家族や自分の家が分からなくなる症状を見当識障害と言いますが、これもよく考えますと決して異常ではありません。認知症の人の特徴として、どんどん昔へ戻っていきます。記憶が5年、10年、15年、20年と、ごっそりなくなります。30年ぐらい前に戻れば、自分の妻は妻ではないのです。それから、今の子どもは自分のイメージとは全然違うわけです。だから、分からなくなるのは当然のことなのです。そういった理解をしないと、「私は、あなたの奥さんよ。」と言っても、かえって混乱を引き起こすだけのことになります。このような理解をしてはじめて上手な対応ができるのです。
お金や物に対する執着は、介護者を本当に悩ませます。これも、本人が、「この人が盗んだ。」と思ったら、本人の世界では、その人は泥棒なのです。だから、泥棒に対して、「お金を返せ、返さなかったら、警察に電話するよ。」というのは、自然なことです。このような認知症の人の気持ちも理解してもらわないといけないのではないかなと思うのです。
認知症の人の介護において最大の問題は、症状の理解の難しさにあります。例えば、身体的な症状に関しては、私たちは体験的に理解できます。体の不自由な人の気持ちや状態は、たいてい分かります。でも、認知症の症状の理解は、非常に難しいわけです。家族の顔が分からなくなったり、夜中に騒いだり、一番世話になっている人に向かってひどい症状を出すというのは、なかなか理解できないことです。そのためには、認知症の正しい知識を持つ必要があります。私は、この家族の会に関わる中で、認知症の人の示す特徴を「認知症をよく理解するための9大法則・1原則」とまとめてみました。
今日は時間がありませんので省略しますけれども、また後で、質問などがあれば説明したいと思います。

認知症の人を介護する家族の苦労や思いを知る次に、認知症の人の介護をされている家族の苦労や思いを知っていただきたいと思います。認知症の人の家族の苦悩は、家族を含めて、自分の身内にさえ、自分の介護の大変さを理解してもらえないことです。どうしてかと言いますと、認知症の特徴の一つに、一番身近な人にひどい症状を出して、よその人にはしっかりした対応をするということがあるのです。よその人にはしっかりした言い方をしますので、周りの人はそんなに認知症がひどいとは思っていないわけです。しかし、身近な介護者にはひどい症状を出すため、周囲の人から自分の苦労を理解してもらえず、家族は苦労するわけです。
ところが、寝たきりの方の介護者は、誰からも同情がもらえます。「大変ですね。おむつは何回替えますか。」と言ってもらえますけれども、認知症の方の場合は、「あなたの言うことは大げさじゃないの、あなたの対応が悪いから、お母さんはあなたに対してひどい症状を出すのだから、あなたこそしっかりしてもらわないといけない。」と、こう言われるわけですね。その大変さを理解してほしいと思うのです。認知症の介護者は孤立無援の思いに悩むことになるわけです。

介護者の負担を軽くするためには、認知症に対する正しい知識を持つこと、いろいろな介護サービスを割り切って使うこと。初めはハードルが高くて使えないのですけれども、思い切って使うことによって介護者の気持ちが楽になります。余裕が持てるようになりますと、ご本人も必ず良くなりますので割り切って使うこと。
それから、医師も含めケアマネージャーなどのいろいろな専門職との接触を持ちますと、家族の気持ちは次第に落ち着いていきます。そういう意味でも専門職との接触を持つことも大切です。自分の身内でもお友達でもいいですが、気軽に相談できる人がいると気持ちが軽くなります。認知症の人と家族の会神奈川県支部は、神奈川県からコールセンターの業務を受けていますので、コールセンターも利用していただけるとよろしいと思います。
あとは、家族の介護体験を実際にしている家族とのつながりを持つと、ずいぶん変わっていきます。
さて、認知症を自分自身の問題ととらえることが大事だということを申し上げました。既にお話がありましたように、認知症の方は、数がどんどん増えていきます。認知症高齢者数は2012年に462万人、2025年には約730万人というように増えると言われています。このような状況で、深刻な問題の一つが、一人暮らしの認知症の方を地域でどう支えるかということです。一人暮らしになるのも、認知症になるのも珍しいことではありません。私たち自身がそうなったときにどうしたらよいかを考えなければならないと思います。また、認知症の人が認知症の人を介護する「認認介護」も現実的な問題になっています。また、若年性認知症の方の問題も大事なことだと思うのです。
これは自分もなるかもしれないと思ってください。先週、私が診断した方は25歳の男性で、認知症の症状が出た方がいらっしゃいました。こういうのは、まれですけれども、他人ごとではないのです。

認知症を自分自身の問題としてとらえるターミナルケアまで含めた認知症の問題ということで、ここに厚生労働省の委員会の報告を載せておきました。
80歳から84歳までの認知症の出現率は約20%、85歳から89歳までが約40%、90歳から94歳までは60%、それから、それ以上ですと79%というように、加齢とともに認知症の出現率が高くなっていきます。そういう意味では、是非、皆さん、自分自身あるいは自分の身内の問題としてとらえていただきたいと思うのです。予防も大事なのですが、現実としては、私たちは認知症になる可能性が高いのだということも考えていただきたいと思います。

 

認知症の人と家族を地域で支えるために、具体的に取り組む。

 

具体的には、ここに書いてありますように、皆さんは、できることを是非やっていただきたいと思います。

 

 

 

 

最後に、世界アルツハイマーデーといって、9月21日を中心に、世界各国でいろいろな行動をすることになっているのですけれども、この世界アルツハイマーデーにちなんだ建物のオレンジ色のライトアップを、実は神奈川県でもやりたいと思っています。

こちら大阪城、京都タワー、山口県の海峡メッセ、山梨県庁、工業高校、高知城とか宮崎県庁などです。こういったところで、認知症をみんなで理解しようというためのライトアップをしています。
是非、神奈川県でもやりませんか、というのが私の提案です。ご清聴ありがとうございました。

司会

杉山様、どうもありがとうございました。
それでは皆様との意見交換に移ります。ここからは、黒岩知事にマイクをお渡しいたします。どうぞ、よろしくお願いいたします。

知事

認知症を知ることがどれだけ大事なことか、よくお分かりになったと思います。認知症にならないようするためにどのようなことが大事なのか、なった後、その認知症の方とどのように一緒に暮らしていけばいいのかということについて、素晴らしい、最先端のお話をいただきました。
実は、もう1人、ドクターがいらっしゃるのですけれども、この認知症を知るということ、この人のやっていらっしゃることを体験すれば、すごく分かりやすいです。頭では分かる、理論で分かるよりも、一目瞭然ということをやっていらっしゃる横山先生、ちょっとそのことについて解説していただけますか。

横山 太郎氏(横浜市立市民病院緩和ケア内科 副医長(現医療法人社団晃徳会横山医院医師))

横浜市立市民病院の横山と申します。私は、普段は緩和ケア内科というところでがんの患者を診ています。元々腫瘍内科で、がんの専門家なのですが、なぜ、それが今日は、認知症体験バーチャルリアリティーなのかというお話をさせていただきます。
私が、なぜこういう活動をしているかというと、病気や障害になっても、過ごしやすい地域だったらいいのではないかということで、Indicocrea(インディコクリエ)という任意団体を立ち上げて、二つの活動をしています。

インディコクリエ一つ目は「10年後の未来を考えるプロジェクト」ということで地域の中学生、高校生に医療の現場を見てもらって、課題を考えてもらいます。それで、その課題に対して中学生、高校生が解決できることは何かということを抽出してもらい実行するという会です。
もう一つは、「これでいいのだ!こうみんかん(Co-Minkan)プロジェクト」です。病気になる。あらかじめ準備ができていないと、決断が結構迫られてくるのです。そうすると、「まあいいか、これで」というふうに決めてしまうのです。そうではなくて、地域に茶の間のような、もしくはリビングを2LDKのものを2LLDKにするような感じで作り、そこでみんなの悩みごとを聞くことができれば、あらかじめ準備ができるのではないか、そうしたらみんなが「まあいいか」ではなくて、「これでいいのだ!」という自信を持った決断ができるのではないかということで、これに対して、「Co-Minkan」というところを、どんどんデザインできたらいいなというもので、これは日本財団の助成金を得て活動しています。バーチャルリアリティー

これらの二つの活動で言えることは、病気になるとか、病気で困る前から病気のことを考える若しくは体験するということなのです。今回、このバーチャルリアリティー、病気を体験するということは、すごく大事なのではないかということで、ご紹介させていただきたいと思います。ただ、このバーチャルリアリティーというのは、先ほどの「病気を知る」ことはすごく大事なのですが、「病気を知る」というだけではない。このバーチャルリアリティーで、認知症になってすごく怖い体験をするかというと、体験していただいた方は分かると思うのですが、そうではないと思うのです。何がすごく良いのかというと、このバーチャルリアリティーを体験すると、こういった感じになります。

 

認知症のある方が生活できない社会が問題なのだ

認知症が問題なのではない。それよりも認知症になった人が生活しにくい、そういった社会若しくはその社会を作っている僕たち一人ひとりが少しずつ問題なのではないか。だから、一人ずつ少しずつ変われば良くなるのではないかというような、勇気を持てるような素材になっています。

徘徊ではなく散歩それをちょっと具体的にお話すると、この方は、認知症がある男性です。歩いている。徘徊なのか。そうじゃない、やはり散歩なのです。認知症になって、歩いて全部徘徊と言われたら、やはりそれは少し違うのではないかと、そういった感覚を持ってもらえます。
このバーチャルリアリティーは、それだけではないのです。この方は、このバーチャルリアリティーを開発したシルバーウッドという会社が運営している銀木犀(ぎんもくせい)というサービス付き高齢者向け住宅に住まわれています。そのサービス付き高齢者向け住宅には駄菓子屋さんが併設されていて、そこの店長なのです。その店長をしているのですけれども、彼は、その部屋から、「おーい、子どもが来たよ。早く来て。店長頼むよ。」と言われたら、よく見ていただくと分かるのですが、歩行器を持って歩いているのです。それぐらい、やっぱり生きがいというものは、すごく人にとって大事なものだと分かる。このバーチャルリアリティーを作っている会社が、そういった空間を作れるのならば、みんなが装着して体験することができれば、そういった未来ができるのではないか。今日、体験してもらいたいと思ってお持ちしたので、ネットの前の皆様は、ちょっと体験できないかもしれませんが、是非、問合せなどしていただいて、体験していただけたらなと思います。
私自身もがんの医師として、お恥ずかしい話、認知症の方を診ていくということが、当初、怖かったのです。あるきっかけがあってこのバーチャルリアリティーを体験させてもらって以降、だんだんとそういった感情が抜けてきました。これが私一人ではなくて、日本若しくは世界に広がっていったら、病気や障がいが問題なのではない、それで過ごしにくいその社会を作っている自分たち一人ひとりが少しずつ変わればいいということになるのではないかと思ったので、今日ご紹介させていただきました。是非、この後、体験していただけたらと思います。私の話は以上です。

知事

バーチャルリアリティーは、分かりますか。体験すると分かりますけれども、今日は10台くらい持ってきていただきました。装着すると、認知症の人がどのような景色を見てらっしゃるのかということが体験できます。やった人いますか。高校生は、いっぱいやりましたね。是非、体験してください。あれを体験すると、ものすごく分かります。いろいろなストーリーがあるのだけれども、いないはずの人が、そこに座っているように見えるのです。こっちを見たら、またいなくなっているとか、それで、その人に思わず反応してしまいますからね。ところが、みんなから見れば、何を訳が分からないことを言っているのだという話になるし、車を降りて、「はい、どうぞ。」と言ってくれているのだけれども、車を降りようとしたら、実はそれがビルのすごく高いところで、ここに足を下ろせば、転落するというふうに見えてしまう。それで、「降りてください。」と言ったら、「いやだ、怖い。」となる。それを無理やり降ろすと怖い人だというふうな感情になってくるという、そういう認知症の人の気持ちが、こう見えているのだということが分かると、じゃあ、どう向き合えば良いのかが分かってくるという素晴らしい新しい技術ですから、帰りも是非、体験してみてください。
ということで、ここから先は、いつものとおり、ストーリーがないのです。皆さんと対話で進めてまいりますから、どんどん言ってください。
この県民との対話の広場、私はいつもうれしいのだけれども、テーマは認知症ですよ。でも見てください。今日、また高校生がこんなに来てくれているのですね。高校生とともに認知症という問題を語る場というのは、とても素晴らしいなと思います。どんどん、皆さんから発言をしていただきたいと思いますが、もう早くもツイッターで質問が来ています。やはり関心が高いです。まず、そちらからいってみましょうか。これが終わったらすぐ、皆さんに質問をしに行きますからね。意見でもいいし、質問でも、何でもいいですからね。
では、このツイッターです。「祖父が晩年に認知症になりました。お酒がとても好きでしたが、酔うと人が変わってしまうようなタイプでした。お酒と認知症との関連はあるのでしょうか。」
藤原先生、いかがでしょうか。

藤原 佳典氏(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム研究部長)

お酒も大体1合程度とか、あるいはワインですとグラス1杯とか、ほどほどのお酒は、確かに脳にも良いというような研究がたくさんあるのです。それが、3合、4合と度を越えると、認知症の発症にも非常に関係してくるということが言われておりますので、ごく少量のお酒なら、特に問題はないのではないかなというに考えております。

知事

ありがとうございました。ちょっと私はまずいかもしれないなと思いながら聞いていました。それではここから、皆さんとの対話に入りたいと思います。

参加者1

こんにちは。私たちは、横浜デジタルアーツ専門学校から参りました、認知症の人とその家族を支援する活動を啓発するプロジェクトの代表のモチヅキと申します。よろしくお願いいたします。
私たちは、神奈川県高齢福祉課の方々と連携して、認知症の人とその家族の方々をデザインの力で支援するという活動を行っています。私たちは活動するにあたって、家族の会の方々にインタビューに行ったり、認知症サポーター研修に参加させていただいたりなど、認知症に対しての理解を得るための事前調整を様々、行っていました。
認知症の方は、地域で支えていく必要があるということや、誰にも相談できず、悩みを抱え込んでしまう介護者の方々が多いことなど、今まで知らなかった認知症の様々な実態を知ることができました。そして、プロジェクトを経験することで、家族の会という認知症の相談先があるということや、コグニサイズで認知症予防することができるなどという知識を得られまして、将来の漠然とした不安感を払拭することができました。
身内に認知症の人がいないと、認知症のことについて知る機会というのは、なかなかないと思うので、家族が認知症になる前にそういう知識を得ることができたというのは貴重な経験だと思っております。これらの経験の中で、認知症になることの本当の恐ろしさについて感じたことがあるのですけれども、認知症になってしまうことの本当の恐ろしさというのは、社会が持つ偏見から、安心して暮らせなくなってしまうことなのではないかと私たちは考えております。しかし、県の方や家族会の方々とお会いする中で、社会の偏見をなくすために、たくさんの活動をしていらっしゃる方々がいるということを知りました。少子高齢化が進むにつれ、今は認知症とは無関係だという人も、将来、認知症に関わる機会というのは、絶対にやってくるものだと私たちは考えております。
認知症を考え、正しい知識を身に付けていくことというのは、将来の自分自身のためにもつながってくるのだということをプロジェクトの中で実感してきました。今、私たちは認知症への偏見をなくし、この問題が決して他人事ではないということを知っていただくために、認知症を皆さんに身近に感じてもらうことが一番大切なのではないかと考えております。
本日、皆さんのお手元にも資料としてオレンジパートナーの啓発チラシとパンフレット、中学生向けの研修冊子をお配りさせていただいていると思うのですが、それらを私たちが製作させていただきました。オレンジパートナーのチラシとパンフレットは、オレンジパートナー事業を啓発するものとして製作いたしまして、中学生向けの研修冊子は、中学生に向けた認知症の研修資料として、県の方々と連携して製作をしております。親しみやすいデザインですとかキャラクターを用いることで、認知症をより身近に感じてもらうための工夫をしております。私たちは、認知症を親しみやすいイメージで受け止めてもらいたいと思って活動を行っているのですけれども、私たちの取組や製作物について何かアドバイスやご意見などがございましたら、是非、お聞かせ願いたいと思います。

知事

もう素晴らしいとしか言いようがないと思いますよね。こういったものをデザインで作られたということです。どうですか、杉山先生。こんな活動をされている方がいらっしゃる。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

認知症の人と家族の会の神奈川県支部の代表も務めていますけれども、皆さんから発表をいただきました。また、もうすでに神奈川県支部との連携も取れていまして、支部の発行するいろいろなチラシなどもお願いしようと思っています。
大事なことは、やはりおっしゃったように、認知症だから問題なのではなくて、認知症という人の理解が、家族も含めて難しいということです。なかなか理解できない。まして周りの人はもっと理解できないということが一番大きな要素になっているわけです。
だから、そういう意味では、認知症について、どの人にもよく分かるチラシなどを作って、誰にでも持って行って読んでもらうという物を作るのが大事だと思います。教育用のチラシ、なんてやると、もらったらすぐ捨ててしまうわけですけれども、そうならないようなデザイン力を大いに発揮してもらうとありがたいなと思っています。

知事

中学生向けにもそういうものを作っているという発想自体が、やっぱりすごいですよね。是非、がんばって続けていただきたいと思います。ありがとうございました。はい、他にどうぞ。どうしました。圧倒されましたか。はい、どうぞ。高校生が発言してくれます。

参加者2

横浜市港南区に住んでいます、二俣川看護福祉高等学校3年福祉科のヨシムラと申します。私たちの学校の福祉科では、2年生の冬の時期に1週間、介護施設で実習させていただいたり、基礎的な知識なのですが、授業でも認知症について関わったりということがあるのです。今日、お話を聞いたり、あと、バーチャルリアリティーの体験をさせていただいて、もちろん、まだまだとは思うのですけれども、自分は今まで結構、勉強してきたと思っていたのですが、バーチャルリアリティーで、突然、その見た景色が屋上でした。まさか認知症の方がそんな景色を見ているというのは、今まで学習してきても、想像がつかないことだったので、これは見てみないと分からないなと思って、今日、感動したのですけれども、こういったバーチャルリアリティーについては、今日、こちらに来て初めて知ったのです。こういう体験は、どこに行ったらできるだとか、今どれくらい広まっているかなどということが、もしも分かったら、学校や家族に、是非、広めたいなと思っておりますので、教えていただきたいと思います。

知事

確かに、気になりましたよね。どこに行ったら見られるのだろうか。横山先生、いかがですか。

横山 太郎氏(横浜市立市民病院緩和ケア内科 副医長(現医療法人社団晃徳会横山医院医師))

今回のこのバーチャルリアリティーに関しては、シルバーウッドという会社が作っていますので、そちらに問合せていただくと体験会について分かると思います。
社長は、いろいろとお世話になっている人なのですけれども、全国を飛び回って、何千人、何万人になっているのではないかと思います。自分としては、一医療者として、こういった、すごくいいものを広げる場所を作ろうということで、先ほど、ちょっと挙げさせてもらった私設のCo-Minkanなどに置いてもらったり、あとは、この会場に来てそれを体験していただいたいろいろな人たちに、このバーチャルリアリティーを置いて体験してもらったりして、それがどんどん広がっていったらいいのではないかと思うので、是非、逆に、みんなで広げていけたらなと思っております。

知事

あの映像は、どうやって作ったのですか。聞き取ってやったのですか。

横山 太郎氏(横浜市立市民病院緩和ケア内科 副医長(現医療法人社団晃徳会横山医院医師))

一番は、サービス付き高齢者向け住宅、施設を運営している人たちが作ったことだと思うのです。ただ、やはりそれが、本当にその人たちが、そう体験しているかというのが、作っている側も疑問だし不安だと思い、実際の患者さんの方に入ってもらって一緒に作ったという経歴があるので、これはすごいというふうに自分も感じています。

知事

いろいろなストーリーがある中で、コミュニケーションがうまく取れないとご本人が思ってしまう。「こうではないの。」と聞くと、「違う。」と言って、「なぜ、そんなことばっかり言っているの。」と怒られる。ガンガン怒られると気持ちが萎縮してしまって、逆に悪さしてやろうとか、困らせてやろうとか、そういうことになってくる。そうすると、余計に周りの人が、「何やっているの。」とまた怒るから、また固まってしまうみたいなことなのだということが、よく分かりますよ。認知症では、いろいろな行為があるのですよね。
食事時なのですが、便をいろいろなところに出したり。私の友人なんかも、お母さんが認知症になって、家に帰ったらベッドの上に、こんなに便をしていたと言っていました。よくそういうのがあるのですよね。あれもやはり、反応なのでしょう。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

そうですね。まず便をしたい。私たちは、ちょっと我慢して、トイレに行ってするのが普通だと思っていますけれども、まず、トイレが分からない。それから、我慢するのがなかなか難しい。そうすると、結果的には、トイレ以外で排便してしまう。そうすると、こんな恥ずかしいことをしてはまずいからといって、ごまかそうとして、その汚れたものを片付けようとします。もし、汚した場合は、私たちだって、それをどうにかしようと思いますよね。そういう意味では誰でもやる行動をされているだけのことなのです。その辺りの理解がないと、「どうしてまたこんなことをしたの。もっと早く言ってくれなければ駄目よ。」と言うだけなのです。そうすると、認知症の人はもっと混乱して、ますます、萎縮してしまうわけです。そういう理解もしないと。私たちだって、その状況になれば同じことをします。

知事

あのバーチャルリアリティーで、もし、その場面を再現したら、その人にはトイレに見えていたかもしれませんね。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

そうです。

知事

自分は普通にトイレでしたと思っていたら、いきなり怒られるから、なんで怒られているのだろうと思いますよ。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

それから、例えば、水洗トイレの中で食器を洗ったりすることがあります。昔は、流しで食器を洗っていました。認知症が進行すると、昔に戻っていくわけです。洋式トイレなんて全然イメージがないわけです。そこに水がたまっている。ここは流しである。だから、洗うわけです。周りは、ビックリしますけれども、本人の気持ち、その時代であれば、決しておかしくないわけです。
このように、一つ一つ、なぜか、昔だったらどうだったのか、もし判断力が落ちていたら、どういうことをするのだろうと考えていただけるといいと思います。お風呂もそうなのですが、お風呂に入れるというのは、私たちは気持ちがいいと思っていますけれども、本人は、「嫌だ。あそこの中に入れられたら、水の中に浸けられる。」と思っているかもしれません。浴槽が、崖っぷちの上に置いてあったら怖くてたまらないですよね。でも、本人の世界では、あの浴槽は崖っぷちに置かれているものなのです。バーチャルリアリティーですよね。こういうとらえ方ができると、私たちは、どうやったらうまくお風呂に入ってもらえるかという工夫ができるようになります。

知事

でも、家族にとっては、それは大変ですよね。友人がまさにそうだった。家に帰って来たら、こんなに便があって、それはもうカッとなって、「何やってるの。」と言ってしまいますよね。では、どう付き合えばいいのか。その家族は、バーチャルリアリティーでは、そう見えていたとして、トイレだと思ってやったその人に向かって、どういうふうに接するのが正しい接し方なのでしょうか。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

まず、自分が悪いことをやったと思っていないわけです。もし、思っていても、それを露骨に指摘されると、たまらないわけですよね。だから、家族としては、あまり露骨には言わないで、さりげなく、片付けるのがよろしいのです。ただし、何回もされてしまうと、本当に大変ですよね。例えば、畳の上で便をされると、1回でもされると家族は後始末が大変だから、またやられたら大変だというふうに思います。そういう場合、「こんなことしちゃ駄目よ。」と言っても、まず駄目なのです。
では、どうしたらいいかというと、「先手を打つ」というやり方でして、畳に上敷きを敷くことを勧めます。上敷きの上で失敗されても後始末は簡単でしょう。そうであれば、介護者はあまりイライラしなくなります。
そのうち畳の上でやらなくなって、ベッドの上で排泄する。そうすると、今度は、オムツの中に手を入れて、また周りを汚す。そうすると、汚れてもいいように、布団や枕にビニールの袋をかぶせるなどの工夫をします。しかし、そのうちオムツの中に手を入れなくなります。
認知症の人は、いろいろなことをしますけれども、一つの症状はいつまでも続かないのです。必ず変わっていきます。そのときにすべて「こんなことをしては駄目よ。」と言ってしまうと混乱し、また家族の負担も重くなるだけです。
むしろ、割り切り方、理解の仕方とか手間のかからないやり方はどうしたらいいかということを考えた方が現実的ではないかと思っています。

知事

あるがまま受け入れていくというね。なかなか大変ですけれども、やはり、それが一番正しい向き合い方だということですね。他にいかがですか。
はい、どうぞ。出ました。対話の広場の常連さんであります。これも、認知症予防に、非常に効果がありそうです。

参加者3

今、ご紹介いただきました、7回こういう会に参加させていただいておりまして、常連といいますか、今日は、一つ提案と一つご報告をさせていただきます。私どものフジイリーダーから、今日は発表させていただきたいと思います。

参加者4

リーダーのフジイでございます。ご存知のように、これだけ情報があふれている中で、認知症の問題点は皆さん全部お分かりのはずなのですね。三つの習慣、運動習慣、食事習慣それから社会とのつながり、こういったものによって予防していくと。ところが、どうしてなかなか解決されていかないのか。現実には皆さんは、例えば食事はなんとかなる。社会とのつながりあるいは運動習慣、これをどうやってつけていくか。一人ではどうしてもできないので、私たちは、この運動を始めました。先般、設立10周年で、知事も・・・。

知事

何の運動か分からないです。おっしゃっていないです。

参加者4

ここで、今、紹介しておりますけれども、13センチの踏み台を、1段昇降、あるいは、今、やっていますけれども、いわゆるこのスクエアーステップ、あるいは飛び越し、この際に頭を使わないと、右から左、左から右に、それから、数を勘定するワン、ツーというときに、カウントダウンしたり、あるいは100から2を引いてきたり・・・。

知事

ステッピング協会ですね。

参加者4

知事のご紹介、ありがとうございます。

知事

それを最初に言わないと、何のリーダーだか分からないです。

参加者4

ステッピングは、もう私は当たり前だと思っているもので、つい、端折ってしまいましたけれども、これは、やはり一人ではなかなか家でもできない。どうやったら長続きするか、やはりこれは仲間が必要です。
それで、リーダーをどんどん養成しまして、既に16名、今度また、新たに5名とか6名のリーダーが養成されます。この人たちは、それぞれの地域で、またこの運動の紹介、リーダーを務めていきます。先般、本山教授という和歌山大学の教授が参りましたけれども、和歌山県の場合も、一番大きな問題は、どうやったら社会とのつながりを作れるか、一人だけではなくて、どうやったら運動を広げていけるかとのことでした。やはり上からの行政からの指導ではなくて、住民が一人ひとりの意識を持ってそういう活動をリードしていくと。これをやっている間に、皆さん、定期的に毎週火曜日とか木曜日に集まりまして、そこで近所の皆さんもお互いに同じ目的でこの運動をする。その時に、休憩の時間にはいろいろおしゃべりをしたり、あるいは、水分を補給した時にはいろいろなお話をしたりする。こういったことによって、社会的なつながり、仲間とのつながりが順調にできる。

知事

ステッピング。はい、藤原先生、これは認知症予防にバッチリですか。

藤原 佳典氏(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム研究部長)

ステッピングですね。しかも、ステップしながら、いろいろ計算したりといったようないわゆる注意を分割する能力というのは、脳の活性化に非常に有効ですので、そういう意味では、非常にいい取組をなさっているかと思います。1点、先ほどリーダーさんが、どうして広げていくかを課題として思ってらっしゃったのですけれども、おそらく、リーダーとして普及されている皆さん方は、これを普及するのだ、あるいは仲間を増やすのだといったようなこの活動のさらに上の目標というのを持ってらっしゃるかと思うのですね。それで、何か目標を持ってらっしゃる方というのは、自然にこれを楽しみながらやったりとか、こういう工夫して普及しようじゃないかというようなアイデアを持ってらっしゃるので、そういう方は、問題ないのですけれども、要はこれ、やるかやらないか、分からない人、声をかけてもやらない人がいらっしゃると、こういう方々に、何をもってこちらに関心を持ってもらうかを考えた場合に私は二つあるのではないかと思うのです。
例えば、このステップを踏むのが目的ですよ、とだけ言うと、なんだ、ステップを踏むことなのかということで、関心を示さないかもしれません。でも、このステップを踏むことをきっかけにダンスがうまくなりますよとか、これを男性、女性一緒に楽しんでこうやっていますよというような、楽しみの部分を示せば、もう少し見せ方で人気が出てくるのではないかと。
もう一つは、こういうステップを踏むことで、それぞれ一般の方々が、どういう具合に自分の人生を豊かにするかという発想も大事かと思います。私は先ほどご紹介いたしました、脳トレをしながら絵本の読み聞かせをする団体は、これは1週間に1回、地元の小学校とか幼稚園とか保育園に行って、朝の読み聞かせの場をやったりとか、図書のボランティアをやったりとか、そういう目的なのです。一方で、単に脳トレの朗読ですよと言うと、誰も来ないのですけれども、格好良くボランティアをしましょうとか、子どもたちとコミュニケーションを取りましょう、そのための手段として、そもそも絵本の脳トレがありますよと言うと、多くの人がやって来られるのだと思います。
そういう意味では、ステップを踏むことによってその先の目標を、何か皆さんが共有されていると、そのために、それを楽しく長く続けるためにステップがいいですよという発想も大事なのではないかなと思っております。

知事

ありがとうございます。
ずっと、続けてやっていて、くたびれませんか。

参加者5

暑くはなりますけれども。

知事

ありがとうございました。確かにそうですね。ずっとこれを、信念を持って、多くの人に伝えようとしている。すばらしいですね。
先生のご指摘、なるほどなあと思いましたね。私もこの未病改善するために、食、運動、社会参加をやりましょうとよく言っているのだけれども、一番難しいところは何かと言うと、健康にすごく関心がある人、この人たちは、どんどんやるのですよ。ところが、一番問題なのは関心がない人。この人たちをどう動かすかというのが一番難しいです。「体に良いことをやりましょう。」と言ったら、「いいや、そんなの。」と言うのだけれども、そこをちょっとひねると、皆がわっと参加するという。さっきの絵本の読み聞かせというのは、本を読むことによって、子どもたちが喜んでくれると言ったら、やってみようかなとなる。でも、認知症予防に絵本を読むのがいいですよ、と言っても、「そんなのいいよ、いいよ。」となって、みんなやらない。

参加者3

小学生、中学生ではなくて幼稚園児から。ある病院では小児糖尿病の患者さんに、これを取り入れていただいております。是非、幼稚園でやりたいと思います。

知事

この発想が面白いよね。子どもの時から未病対策をやっていかなければいけない。これ、ある整形外科の先生に言われたのですけれども、最近、基礎的運動能力が著しく欠如している子が、すごく増えている。しゃがむことができない子がいっぱいいるのですね。しゃがんだら後ろに転んでしまう。それぐらい運動能力がない。それを聞いてドキッとして、未病を改善するために、食、運動、社会参加といった運動は、すごく大事なことだけれども、子どもの時から運動習慣がなかったら、その子は、大きくなっても、絶対、運動習慣ができないでしょうね。
食は大丈夫なのかと言ったら、すごい偏食をする子がいるでしょう。社会参加は大丈夫なのかと言ったら、SNS、ゲームばっかりやっていて、あまり関わらないという。これはまずいなあと思って、子どもの時からやっていかなければいけないなと思った。だから、未病改善というのは、子どもの時からやっていこうと、今、神奈川県は言っているのですけれども、認知症対策も、幼稚園からやっていくみたいな。これ、やっていかなければいけない。今のステッピングをおじいちゃんと一緒にやったら、面白いかもしれないですね。ゲーム性があったり、音楽をかけて、それに合わせてやったりとか、考えましょう、いろいろね。せっかく7回も来ていただいたのですから。ありがとうございました。

参加者6

茅ヶ崎市から参りましたホリコシと申します。今、音楽という話が出ましたが、私は音楽を使った認知症予防や介護予防の活動をしています。残念ながら、今、活動しているのが神奈川ではないのですが、とても意識のある方々がいらっしゃって、今日のお話で出ている、自分ごととして考えることができる方が集まっていらっしゃるところに呼ばれて一緒に楽しく活動をしています。本当に頭が下がる思いと言いますか、私より元気なのではないかと思う方が本当にたくさんいらっしゃって、食事もいろいろなこと意識をされて、集まって活動してランチをして帰るのが楽しみと、しっかりお化粧をしてお越しになる先輩方がいっぱいいて、励まされて活動しています。例えば、物忘れ。私なんかもグレーゾーンなので、よく忘れてしまうのですが、活動中にご指摘をいただいたりすることもたくさんあったりします。例えば、おとといの晩御飯は覚えていますか。皆さんがしっかりと答えられる。何を食べているか、意識をして生活をされています。同じ質問を同じ年代の仲間に飲み会でしたら、答えが返ってこない。そういうことがいっぱいあります。歌いながら脳トレをしたりという活動もしているのですが、20代の後輩にしてみたらできないことが、80代の方が楽にできるというのは、やっぱりやっていけば人間は、ずっと向上するのだなということを常に感じています。昨年、一つ思ったことがありました。50人、60人が集まる活動を自主開催されているところに、呼ばれて行っているのですが、会長様の代替わりがあり、90歳だから引退をすると。90歳でスケジュールを組んで、会場を取って、みんなを集めてやってらっしゃるのは、どれだけ大変かと思ったのですが、代わられるとなった時に、次の会長様がなかなか難しかったようなのです。連合で何十人かの会長様がいらっしゃった中で、仕切っていらっしゃって、その方の代わりを見つけるのが、すごく大変だった。それで、引退を延ばされた。次の方も見つかって、活動も続いていて、皆さん、「来たいから良かった、続いて良かった。」とおっしゃっているのですが、その時に何もできない自分がいて非常に歯がゆくて、「続けばいいなあ。先生、また来てくれる?」とおっしゃってくださるのですが、続かなければ来られない。本当に続いて良かったなと仲間と思ったのですが、神奈川ではそういうことがどうなっているのかなあと。活動していないので、よく分からないのですが、自分の地元として、その人らしく笑顔でいられる、そういうコミュニティがあるのが素晴らしいなと、神奈川は、どうなっているのかなとちょっと気になっております。是非、神奈川にもそういった活動がたくさんあることを祈っております。

知事

ちょっと聞いていいですか。音楽を使って認知症予防を何かやってらっしゃるというのは、具体的に、どういったことですか。

参加者6

先ほどの冊子にもあったコグニサイズにさらに音楽を乗せています。辛いとなかなかできないじゃないですか。なので、楽しくやるために、先ほどの冊子の中の様子にさらに歌うことを入れてみたり、歌いながらさらに輪唱を入れてみたりという形で、楽しくできる、そして、声を出すことによって、呼吸もそうですし、飲み込みとか嚥下の部分も改善されますので、一気にたくさんいいことをやってしまおうという活動をしております。

知事

なるほどね。あるカラオケの会社がそういうところに注目してやっていると聞きました。カラオケでただ歌っているだけではなくて、今のステッピングをやりながらカラオケをやったら・・・。
やっているのですか。既にやっていますか。それと、やっぱりコグニサイズがあります。私は、さっきのコグニサイズでは、水前寺清子さんの「三百六十五歩のマーチ」を歌いながら、こうやって皆で歩くというふうにやっていました。しりとりも一緒です。頭を使いながら、あれもコグニサイズですよね。神奈川でもやっていますから、是非、神奈川でもやっていただきたいと思います。

参加者7

20代の横浜市民の者です。認知症など病気を知るということが大切だということを勉強や今日の話などで学ぶことができました。
認知症の患者さん、また、ご家族などは、やっぱりその病気について勉強するとは思うのですが、その前の段階の、なっていない方々、また周りの人たちは一切知らない。テレビで出ていることだけしか知らないということになっていると思うのですが、私も、高校、中学校、小学校の時は、認知症という言葉自体は知っていてもそれが何なのか分からず、認知症は病気だと思っていましたが、実際は認知症は病気ではなくて、症状だったとか、そういう状態でした。
それで、高校を卒業して、そういったことが勉強して初めて分かりました。認知症になったときに、ご家族が介護をする段階では遅いのではないかと私は思いまして、小学校、中学校で、そういった勉強をしたら、早い段階で介護、治療とかができるのではないかと私は思いました。以上です。

知事

確かにそうですよね。認知症に直面すると、皆さん、あれ、どういうことだろうとなるけれども、そうではないときはピンとこない。自分とは関係ないだろうと思うかもしれない。でも、今日の話の中で、幼稚園ぐらいからやってもいいのではないかと。中学生向けのパンフレットも作ってらっしゃるのだから。確かにそういうのを広げていく必要がありますよね。

参加者8

横浜市のセキと申します。今日は、貴重なお話、ありがとうございます。今、私は、5歳と2歳の子どもを育てていて、今日は、託児をお願いしてまいりました。こういう場所を設けていただいたおかげで、こうして参加ができるのでご配慮ありがとうございます。
67歳になる若年性認知症の母を介護中です。いわゆるダブルケアなのですが、母は父と同居していて、私は近所に住んでいます。今まで、母の介護は、父が全部担っていて、私は銀行に勤めていたのですが、勤務中に母から何度も電話がかかってきたり、子どもたちの体調不良なども重なって、介護休業を取らせていただいています。その1年間という時間をいただいた中で、母にとって何ができるのか、これから先、自分の生活と父の生活と両立させていくために、介護サービスや医療、そういったところのシステム作りをしようと、今いろいろと動いているところです。
認知症の母と実際に向き合って思ったのが、やはり、マンツーマン介護にはもう限界があるということで、父も、母が夜中に何度も起きて探し物をして、寝不足になって、悪影響を与えるのは分かっていても、イライラが募って、となってしまう。それがまた負のスパイラルに陥ってしまうということだったので、私がお休みをいただいて日中は母と過ごして、デイサービスなどを探したりしているのですけど、母も良い時と悪い時の波がすごくあって、デイサービスというと、「私は悪くない、なんでそこに行かないといけないのだ。」と怒り出してしまうので、先ほど、介護サービスをうまく割り切って使ってくださいとおっしゃったのですけれども、どううまくステップを踏んでいったらいいのかということが、まず1点です。
今、幸いにも、週1回、半日だけは見つかったので、それ以外は自分が見ているのですけど、母が好きそうなカラオケだったりとか農作業を近くの畑にしに行ってみたりだとか、平日は毎日行っていて、この生活がずっと続いて行くのには限界がある。私は1年間お給料をもらっていますけれども、復帰はできないと思います。これから先の組み立て方、特に若年性認知症は、これから先が長いので、他にもそういう方がいらっしゃると思うのですけれども、若年性認知症の方を介護している介護者は私みたいな現役世代が多いと思います。こういう場に来られればいいですけれども、来られない人も結構いると思うのですね。ですので、そういう方に、もっとアナウンスしたり、どうしていけばいいのか、道しるべを教えていただけたらいいなと思います。
あともう1点、母は、そういう状況なのですけれど、人の役に立ちたい、働きたいと言うのですね。ご存知かと思いますが、町田市に「DAYS!BLG」という有償ボランティアをやっているデイサービスがあるのです。神奈川県にも同じようなボランティアができるデイサービスはあるのですが、やはり数が少ない。なので、そういうものが増えていったらいいと思うので、是非、よろしくお願いします。

知事

はい、ありがとうございます。とても切実なお話だったですけれども、杉山先生、いかがですか。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

まず、お母さんは介護認定を受けてらっしゃるのですか。受けているのですね。先ほど申し上げましたように、やはり、まず認知症の正しい知識を持つこと。それから、いろいろなサービスを割り切って使おうということなのですけれども、認知症の初期の方は、まだプライドがあります。だから、「お母さんは病気よ、分からないでしょ。」と言うと、「私は、そんなことはない。」と強く反発します。そしてまた、身近な方にひどい症状を出す特徴があります。ですから娘さんとかお父さんに対してひどい症状を出す。これをどうしたらいいかというと第三者に登場してもらう。よその方がうまく誘ってくれると、言うことを聞いてくれるということがあります。例えば、医師とかお友だちとか、いろいろな仲間がいれば、その人に上手に誘ってもらえることもあります。
それから、これからは介護サービスだけでなく、経済的に厳しくなってくれば、公的な制度があるのです。それをうまく利用しますと、介護者の金銭的なあるいは気持ちの負担が軽くなっていきますので、そういった制度もぜひ理解して、うまく使ってもらうと気持ちが楽になります。
それから最後に申し上げましたけれども、家族の会の神奈川県支部は、神奈川県でも何か所かで、若年性認知症の集いというものを開いています。ここに来られますと、初めは泣きながら報告していた方が、2、3回参加しますと、もう表情が変わってきましてね、時には冗談も言えるくらいに。ご本人も家族も変わらないのですけれども、気持ちが変わってくると、そういう気持ちになれるのですよね。だから、もしよかったら、家族の会の若年性の集いがいろいろあります、また、若年性でなくても、集いがいろいろなところにありますので、まずそこに顔を出してもらうといいかなと思います。
また、認知症の知識を持ってほしいと思うのですよね。

認知症の方が激しい症状を示すときには、三つの特徴があります。
一つは、「記憶になければ、本人にとって事実ではない」ことです。「お母さん、昨日ちゃんと説明して、了解したでしょう。」と言っても、その記憶がなくなったら、「私はそんなこと聞いていない、私は了解していない。」と言って、激しく反発するのです。
二番目は、「本人が思ったことは、本人にとっては絶対的な事実である」ことです。「この人は、自分の財布を盗んだ。」と言ったら、誰であろうが、犯人になってしまい、追求がきます。
三番目は、「認知症が進行してもプライドはいつまでも持ち続ける」ことです。プライドがありますから、そのプライドを上手に認めて、うまくお願いするような形にすると、介護が楽になっていくのではないかなと思います。

知事

藤原先生も一言、お願いします。

藤原 佳典氏(東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム研究部長)

まず、ダブルケアの問題かと思いますが、なかなかダブルケアというのは、配偶者の介護とか保育と少し違い、なかなか相談する相手とかお仲間がいらっしゃらないというのが一つの課題だと思うのですね。幸いですね、この神奈川県は、横浜市を中心に、横浜国立大学の相馬准教授という方を中心にダブルケアのネットワークも推進されています。おそらく、もうつながっていらっしゃるかもしれませんけれども、やはり、そういった同じ境遇の方々同士で集まるようなネットワークで、いろいろアイデアをいただいたり、サポートし合ったりということが重要ではないかと思います。もう一点、お母さんが、デイサービスとかいろいろな介護サービスをお使いになりながらも、人の役に立ったりとか働いたりすることを希望されているというお話なのですけれども、たまたま私、昨日、そういった勉強会を、地域包括支援センターのケアマネージャーさんと、先ほどの読み聞かせのボランティアさんたちと一緒にしました。確かに、サービスを受けるところで逆にお金をもらうというのは、制度上、ちょっと問題があろう、しかし、同じ法人の中でサービスを受ける日はあっても、違う法人の他の施設で、例えば、有償のボランティアを違う曜日にやるなら、そういうのもありではないかといったことです。あるいは無償で、何かお手伝いをすることで、雑巾を縫ったりとか、あるいは、ちょっと掃除したりなどといったことで、役割を持ってもらうということも大切だと思います。その辺りは、非常にまだグレーなゾーンですので、どこまでケアマネージャーさんなり、地域の資源と団体さんと、相談していかれるかというのは、これは、おそらく行政を巻き込んで、いろいろ考えていく重要課題だと思っております。

知事

はい、ありがとうございます。私の話の中でもちょっとご紹介したのですが、今年の6月から、神奈川県でも若年性認知症の方への支援を強化するために、2か所の認知症疾患医療センターで、若年性認知症支援コーディネーターが相談を受け付けています。

もう一度、番号を出します。
0570-0-78674(なやむことなし)

ここが、認知症の方や家族を支える取組としてのコールセンターですので、今日の話だけではなかなか進まないご自分の話は、是非、ここに電話をしてみていただきたいと思います。だんだん時間がなくなってきましたけれども、いかがでしょうか。

参加者9

横浜市神奈川区から参りましたスギモトと申します。私の夫は、若年性認知症になりまして12年経ちますけれども、今、当事者発信ということで、新子安地域ケアプラザで月に1回、若年性認知症カフェ「AcafeええかふぇALL」というものを開催しております。今、2年目なのですけれども、「あみけるひろば横浜」という任意団体なのですが、部活動を始めまして、畑とかアートですね、美術館プログラムもありますけれども、絵を1時間で4枚見ていただく双方向型の絵画鑑賞プログラム、あと、認知症の方の、忘れるということによって得る創造力を活かした物語創作プログラム、米国ではタイムスリップスと言いますけれども、それを日本のフォトストーリーというプロジェクトにして、今度、10月から開催することになります。
そんな自己紹介の方が長くなってしまったのですけれども、男性にしても女性にしても先ほどの仕事というのが、重要なキーワードだと思うのですね。特に、うちの場合、大手の自動車メーカーに勤めていまして、発症したのは、53歳くらいなので、その後、7年間、人事部の産業医さんに相談して、杉山先生にも一度、ご相談に行ったこともありますけれども、何とか勤め上げることができたのですが、退職する前に私はフルタイムで働いていたのですけれども、退職してしまったら、自分が支えなければいけない。当時はまだ6年位前でしたので、ジョブコーチとかを検索して調べました。認知症のジョブコーチは、当時いませんでした。でも、最近聞いた話だと、岐阜の方で若年性認知症の方がジョブコーチについてリワークできたという話を聞きました。神奈川でもそういう若年性のコーディネーターの方や、ハローワークの方に、是非、頑張っていただきたい。私自身もジョブコーチまではいかないですけれども、地域で独居の高齢者へのお弁当配食サービスの配達を夫と一緒にしたり、仕事をいろいろ見つけようとして、シルバー人材センターに行ってみたり、いろいろなことをしていますが、やはり私がついていないと駄目なのです。今、畑仕事もしていますけれども、農家の方は喜んでくださるのです。草取りが大好きなので。だけれども、やはり私がついて行かないと駄目なのです。
認知症×(かける)農業とか、地産地消というか、要するに、介護サービスも作っていけるような、そんな可能性についても今は思っています。是非、制度面でもジョブコーチなども導入して、できたらやっていただけたらいいなと思っています。若年性認知症の方のご家族の皆さんも、やはり仕事ということを思ってらっしゃいますので、よろしくお願いしたいと思います。

知事

若年性ジョブコーチ、これ、システムになっているのですか。どうなのですか。

杉山 孝博氏(公益社団法人認知症の人と家族の会神奈川県支部 代表・川崎幸クリニック 院長)

あまり詳しくは分からないのですが、私の患者さんでも仕事をしている人もいらっしゃいます。その場合でも、会社の中では、だんだんできなくなっていって、どう対応していいのか分からないということがあります。そんなとき、私は、こういう対応の仕方をしたら、ご本人も安心して仕事ができますよというようなアドバイスをしますと、しばらくできるわけです。
例えば、ある役所のリーダーをやっている方が認知症になったのです。部下から、「こういうことをやりたいのです。ご意見はどうですか。」と言われてしまうと答えられない。でも、大体、やることは決まっているわけです。そのときに、「こういうことをしたいのですけど、よろしいですか。」と言うと、「ああ、では、それで。」となると安心して仕事ができるわけです。こういう対応をするだけで、しばらくの間は仕事ができるようになります。しかし、認知症というのはだんだん進行していきます。地域の中で生活しやすくするにはどうしたらいいか、若年性の方はやはり仕事をしたい、みんなの役に立ちたいという思いを強く持っていますので、そういうことをうまくできるようにする。そうすると、デイサービスに行って、ただ歌を歌ったりではなくて、自分が何かやりたいこと、「これをお願いしますね。」と車いすを押してもらうとか、これはできるわけです。
でも、そうすると、あそこに行ったのにお金を払ってくれない、給料を払ってくれないという人もいらっしゃるわけです。そんなときは給料袋を作って、家族から1,000円ぐらいお金をもらって、今週はありがとうございますと言うと、けっこう良くなるというふうに、いろいろな工夫がありますので、是非、皆さん、工夫しながら支えてあげてほしいと思います。

知事

はい、ありがとうございます。若年性認知症の方にどんなお仕事をすればいいか、ご案内するような仕組み、こういったものを県としても何かできないか、宿題として、今日は持ち帰らせていただきたいと思います。ありがとうございます。
今日は、ツイッターもいろいろ来ていまして、「若年性認知症に独身、親族なしでなったら、どうしたらいいのかな。」こういったツイッター、つぶやきがありましたけれども、確かにそうですよね。独りぼっちでずっといて、自分がそのまま誰も家族がいなくて認知症になってしまったら、どうしようかなというご心配、これも今日のお話でもいろいろヒントがあったと思いますけどね。社会に関わっているということが非常に大事だと。それから役に立っているということを何か見つけて、ボランティアでも何でもいいし、仕事でも何でもいいし、そういうのがあると、かなり進行を止められるということですからね。そういったことがヒントになるのではないでしょうか。
「認知症になる要因の一つに、子どもの勉強8%。」、さっき、ありましたね。「小児期の勉強は8%だ。これは子どもに言い聞かせようと思います。私はもう遅いので。」と書いてあります。
「こういった問題について、窓口があるのですか。」というのも来ています。
もう1回、最後に言っておきます。県の窓口です。

認知症の人や家族を支える取組かながわ認知症コールセンター
0570-0-78674(なやむことなし)

コールセンターでは、皆さんのお悩みにお応えするように努力をしていますから、是非ここに問合せていただければと思います。

あっという間に時間が過ぎてしまいました。皆さんとお話をした中で、まず認知症にならないようにするためにはどうすればいいのか、また、なったときにどうすればいいのかといったこと、やはり最初に言ったことと同じですが、この認知症といったものを正しく理解する、そうなった方の気持ちにそのまま寄り添う、そのためにはバーチャルリアリティーなども体験しながら、気持ちが分かると対応の仕方も変わってくるだろうという中で、最後はやはり、みんながスマイルで生きていけるような神奈川、高齢社会の神奈川を作っていけるのではないかなと思った次第であります。この対話の広場、これからもずっとやっていきますので、是非また参加してみてください。今度8回目、ステッピング協会の皆さんも来ていただいて、大歓迎であります。
今日は、どうもありがとうございました。先生方もどうもありがとうございました。

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